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AMDの単体GPU搭載ゲーミングノートPCの実力は? ASUS「TUF Gaming A16 Advantage Edition」レビュー

ASUS JAPANの最新ゲーミングノートPC「TUF Gaming A16 Advantage Edition FA617NTR-R74R7700S」をレビュー。ゲーミングノートPCとしては珍しい、AMDの単体GPU(ディスクリートGPU)を搭載した本モデルの実力をチェックしていこう。

CPUにAMDの「Ryzen 7 7435HS」を、単体GPUにAMDの「Radeon RX 7700S」を搭載する「TUF Gaming A16 Advantage Edition FA617NTR-R74R7700S」。ASUS公式オンラインストア価格は199,800円(税込)

CPUにAMDの「Ryzen 7 7435HS」を、単体GPUにAMDの「Radeon RX 7700S」を搭載する「TUF Gaming A16 Advantage Edition FA617NTR-R74R7700S」。ASUS公式オンラインストア価格は199,800円(税込)

AMDの単体GPUを搭載した希少なゲーミングノートPC

「TUF Gaming」シリーズは、その名のとおり堅牢(タフ)なボディと手ごろな価格が魅力のゲーミングノートPCだ。同社はさまざまなゲーミングノートPCをラインアップしているが、その中でも、PCゲーム初心者や価格重視のユーザーをターゲットにした入門シリーズという位置づけだ。

今回取り上げる「TUF Gaming A16 Advantage Edition FA617NTR-R74R7700S」の注目ポイントは、タフさや価格ではなく、その“中身”。ゲーミングノートPCにとっていちばん重要なパーツである単体GPUにAMDの「Radeon RX 7700S」を搭載しているのだ。

ゲーミングノートPCの単体GPUは現在、ほとんどがNVIDAの「GeForce」シリーズだ。価格.comの「ゲーミングノートPC」カテゴリーには506製品が登録されているが、AMDの単体GPUを搭載するモデルは2モデルしかない(AMDのCPU内蔵のGPUを利用するモデルは26モデルあるが、ほとんどがポータブルゲーミングPC。2024年4月26日時点)。CPUにAMDの「Ryzen」を搭載するモデルは多いものの、単体GPUに同社の「Radeon」シリーズを搭載するモデルは希少と言える。

価格.comの「ゲーミングノートPC」カテゴリーでは、単体GPUにAMDの「Radeon」シリーズを搭載するモデルは2機種しかない

価格.comの「ゲーミングノートPC」カテゴリーでは、単体GPUにAMDの「Radeon」シリーズを搭載するモデルは2機種しかない

「Radeon RX 7700S」は、薄型・軽量ゲーミングノートPC向けの「Radeon RX 7000S」シリーズの上位版。AMDによると、一部の1080pタイトルにおいて前世代より平均29%高いパフォーマンスを発揮するという。NVIDIAの「GeForce」シリーズと比較すると、「GeForce RTX 4060 Laptop GPU」と同じ”エントリーよりひとつ上“というポジショニングだ。

GPUの各種情報を確認できるソフト「GPU-Z」で、「Radeon RX 7700S」の情報を確認してみた。製造プロセスは6nmだった

GPUの各種情報を確認できるソフト「GPU-Z」で、「Radeon RX 7700S」の情報を確認してみた。製造プロセスは6nmだった

その中身には、最新アーキテクチャ「RDNA 3」が使われている。演算ユニット数は32個、ゲーム周波数は2200MHz、キャッシュは32MB。ビデオメモリー(GDDR6)の容量は8GBというスペックだ。フレートレート向上が期待できるフレーム生成技術「Fluid Motion Frames」(FMF)や、NVIDIAの「DLSS 3」に相当する超解像技術「FidelityFX Super Resolution」(FSR)の最新版「FSR 3」もサポートする。

「FMF」はDirectX 11/12対応のどのゲームでもフレームレートを引き上げられるということで、最近注目されている機能だ。いっぽう、「FSR 3」はゲーム側での対応が必須。残念ながら、対応ゲームはまだ少なく、NVIDIAの「DLSS 3」対応ゲームのほうが多いのが現状だ。

ドライバソフト「AMD Software Adrenalin Edition」。ドライバレベルのフレームレート生成技術である「FMF」を正式にサポートする

ドライバソフト「AMD Software Adrenalin Edition」。ドライバレベルのフレームレート生成技術である「FMF」を正式にサポートする

CPUは「Ryzen 7 7435HS」。8コア16スレッド、最大ブースト・クロックが4.5GHz、基本クロックが3.1GHzというスペックだ。アーキテクチャは最新の「Zen 4」ではなく、「Zen 3+」。国内では搭載モデルは少なく、価格.comで探しても、本モデルのスペック違いである「TUF Gaming A16 Advantage Edition FA617NSR-R74RX7600S」しかない(2024年4月26日時点)。

そのほか、メモリーは32GB(DDR5-4800)、ストレージは1TB SSD(PCI Express 4.0 x4接続 NVMe/M.2)を搭載。入門シリーズではあるものの、充実したスペックを誇る。

AMDの単体GPUの気になる性能は?

国内では希少なスペックのモデルということはわかったが、肝心の性能はどうなのだろうか?

グラフィック性能を測定する定番ベンチマークソフト「3DMark Professional Edition」の結果を、「GeForce RTX 4060 Laptop GPU」と「GeForce RTX 4050 Laptop GPU」を搭載したモデルと比較してみた。結果は以下のとおり。

3DMark Professional Editionの結果

3DMark Professional Editionの結果

単体GPU以外のスペックを統一しているわけではないので、参考程度になってしまうが、ポジショニング通り、NVIDIAの「GeForce RTX 4060 Laptop GPU」に近いスコアだった。「Speed Way」と「Port Royal」というレイトレーシング系の項目は、「GeForce RTX 4060 Laptop GPU」のほうが上だが、Direct X11系の「Fire Strike」では、「Radeon RX 7700S」のほうがスコアは高かった。

実際のゲームはどうなのか?「フォートナイト」(Epic Games)で、前述の「FMF」の
オン/オフを試してみた(画質設定は自動設定)。FMFをオフにしたときは50〜70fpsだったのに対して、オンにすると50〜100psと30fps前後のフレームレート向上が見られた。目視での数値なので、参考程度ではあるが効果はあるようだ。

続いて、ヘビーなタイトルとして「サイバーパンク2077」(Projekt RED)のベンチマークを試してみた。結果は以下のとおり。

低…平均fps 110.32
中…平均fps 101.61
高…平均fps 85.44
ウルトラ…平均fps 73.57
SteamDeck…平均fps 102.29
レイトレーシング:低…平均fps 79.74
レイトレーシング:中…平均fps 48.62
レイトレーシング:ウルトラ…平均fps 36.24
レイトレーシング:オーバードライブ…平均fps 11.09

「レイトレーシング:中」だと、平均60fpsを切っているが、実際にプレイしてみると、滑らかな画質でプレイできた。「レイトレーシング:低」では平均60fpsを超えているので、動き重視なら「低」で遊ぶといいだろう。

こちらも「FMF」のオン/オフを試してみたが、ベンチマークでも、実際のプレイでも目立った差は見られなかった。なお、「サイバーパンク2077」は「FSR 2」には対応しているが、最新の「FSR 3」には対応していないため、今回はその効果を試すことはできなかった。

CPUの性能はどうだろうか? CPU性能を測定するベンチマークソフト「CINEBENCH R23」の結果を「Ryzen 9 8945HS」搭載モデルと比べてみた。さすがに、スコアはかなわないものの、CPU性能が足を引っ張るようなシーンはなかった。

CINEBENCH R23の結果

CINEBENCH R23の結果

使い勝手やデザインをチェック!

最後に使い勝手やデザインなどパフォーマンス以外の部分をチェックしていこう。

搭載するディスプレイはアスペクト比が16:10の16型液晶。解像度は1920×1200で、リフレッシュレートは165Hzで、エントリークラスのゲーミングノートPCとしては必要十分なスペックだ。16型クラスのゲーミングノートPCは解像度が2560×1400というモデルも多いが、解像度が低い分、滑らかな表示が期待できる。画面占有率が約90%と額縁が狭いのも見逃せない。

リフレッシュレートが165Hzの16型液晶を搭載。ノングレアタイプで、視野角は水平170度/垂直170度。有機ELや広色域のディスプレイを採用する同社の上位シリーズと比べると、スペック的には劣るが、入門モデルとしては必要十分なディスプレイだ。上部には92万画素のWebカメラを備える

リフレッシュレートが165Hzの16型液晶を搭載。ノングレアタイプで、視野角は水平170度/垂直170度。有機ELや広色域のディスプレイを採用する同社の上位シリーズと比べると、スペック的には劣るが、入門モデルとしては必要十分なディスプレイだ。上部には92万画素のWebカメラを備える

スピーカーは2W×2のステレオスピーカーを内蔵。ゲーミングノートPCとしては迫力に欠けるサウンドなので、音にこだわりたい人はヘッドセットなどを利用するといいだろう。

外部インターフェイスは左右両側面に配置されている。右側にUSB 3.2(Type-A/Gen1)とケンジントンロックがあり、左側に有線LAN、HDMI出力、USB 3.2(Type-C/Gen2)×2、USB 3.2(Type-A/Gen1)、マイク入力/ヘッドホン出力を備える。有線LANポートは1000BASE-Tにとどまるが、有線で接続できるのは心強い。無線LANはWi-Fi 6をサポート。

外部インターフェイスは両側面に配置されている。左側手前に外部インターフェイスが集中しているので、多くの周辺機器を接続するとごちゃついてしまう

外部インターフェイスは両側面に配置されている。左側手前に外部インターフェイスが集中しているので、多くの周辺機器を接続するとごちゃついてしまう

充電は付属のACアダプター(280W)のほか、USB Type-C経由でも可能。ただし、USB Type-C経由で充電する場合は大容量タイプのアダプターが必須なので、付属のACアダプターを使うのが現実的だろう。バッテリー駆動時間は約5.5時間(JEITA測定法2.0)

充電は付属のACアダプター(280W)のほか、USB Type-C経由でも可能。ただし、USB Type-C経由で充電する場合は大容量タイプのアダプターが必須なので、付属のACアダプターを使うのが現実的だろう。バッテリー駆動時間は約5.5時間(JEITA測定法2.0)

本体のデザインはシンプルだ。直線的なデザインで、タフさをウリにするモデルだけにがっちりとした作り。派手なゲーミングノートPCが苦手という人でも選びやすいのではないだろうか。キーボードは4列テンキー付き。ゲームだけでなく、仕事やクリエイティブなどの用途にも便利に使えるだろう。キーボードのバックライトは白色LEDで色は変えられないが、光り方はカスタマイズ可能。

耐久性や耐腐食性にすぐれたアルマイト加工を施した天板。「TUF」のロゴは右上にさりげなく配置されている。軍用規格である「MIL-STD 810H」の基準をクリアした堅牢なボディだ

耐久性や耐腐食性にすぐれたアルマイト加工を施した天板。「TUF」のロゴは右上にさりげなく配置されている。軍用規格である「MIL-STD 810H」の基準をクリアした堅牢なボディだ

4列テンキー付きキーボード。キーピッチは実測19mmで快適にタイピングできた。キーレイアウトもオーソドックで使いやすい

4列テンキー付きキーボード。キーピッチは実測19mmで快適にタイピングできた。キーレイアウトもオーソドックで使いやすい

まとめ:ライバルと比べてそん色のない性能を発揮!

「TUF Gaming A16 Advantage Edition FA617NTR-R74R7700S」」は、AMDの単体GPU「Radeon RX 7700S」を搭載した国内では希少なゲーミングノートPCだ。試したタイトルは少ないものの、NVIDIAの同じポジショニングの単体GPUを搭載したモデルと比べて、そん色のない性能を見せてくれた。DirectX 11/12のゲームなら、フレーム生成ができる「FMF」が使えるのも魅力だ。今回は試せていないが「FSR 3」にも期待したい。

価格はASUS公式オンラインストアで199,800円(税込)。「GeForce RTX 4060 Laptop GPU」を搭載した同シリーズの「TUF Gaming F16 FX607JV -I7R4060S」と同じ価格設定だ。搭載するCPUは「Core i7-13650HX」で、メモリーが16GBとスペックに違いがあり、メモリー容量を考えると、コストパフォーマンス的には「TUF Gaming A16 Advantage Edition FA617NTR-R74R7700S」のほうが上と言えるかもしれない。

なお、もう少し安いモデルを探している人は、単体GPUにもうひとつ下のグレードである「Radeon RX 7600S」を搭載するスペック違いの「TUF Gaming A16 Advantage Edition FA617NSR-R74RX7600S」をチェックするといいだろう。こちらは価格.com最安価格149,800円と比較的手が届きやすい価格となっている。

三浦善弘(編集部)
Writer / Editor
三浦善弘(編集部)
出版社で月刊誌やWebメディアの編集・記者を経験し、2013年にカカクコム入社。「価格.comマガジン」にて、PCやスマートフォン分野を担当。取材歴は20年以上。現在は「価格.comマガジン」全体を統括する。
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