今回は、収納の場所をとらず、使用中も準備・後片付けもスマートなJ-FUNのホットプレート「abien MAGIC GRILL(アビエン マジックグリル)」を紹介する。斬新な機構を採用した本製品は、クラウドファンディングで話題になり、2021年に市販されてからも高い人気の続く製品だ。
厚さわずか3mmのプレートに、直接、スタンド(脚)が付いたabien MAGIC GRILLは、見た目からして斬新。これは、一般的なホットプレートで使われる棒ヒーターとは異なる熱源を採用することで実現した形状だ。この仕組みについては後ほど説明するが、まず、利便性の高さを見てほしい。プレートとスタンドははめ込むことで簡単に接続できるようになっており、分解すれば、スリムなプレートは食器のラックに立てかけ、スタンドと電源コードは引き出しに入れておくというようにスマートに収納もできる。
使用時のサイズは約400(幅)×300(奥行)×83(高さ)mm。価格は19,800円(税込)となっている
スタンドは、抜き差しするだけで簡単に着脱できる
すべて分解すると、プレート、スタンド、電源コードのパーツに分けられる
薄い1枚板のプレートは食器ラックに立てかけておくこともでき、収納場所に困らない。収納してある姿が主張してこないのも魅力的だ
裏技的な使い方かもしれないが、スタンドにはマグネットが装備されているので、プレート背面にくっ付けておくこともできた
スタンドの着脱が簡単に行えるということは、準備も短時間で済ませられるということだ。下の動画は組み立ての様子を撮影したものだが、プレートの接続部にスタンドを差し込むだけなので一瞬で終わると言っても過言ではない。プレートの重量は約2kgで、スタンドはひとつが約0.5kgなので、組み立て時に重さが負担になることもないだろう。
前述のとおり、厚さ3mmの薄型プレートにできた大きなポイントは、採用する熱源にある。本製品は、一般的な棒ヒーターではなく、面状に発熱するフィルムヒーターを採用しているのだ。しかし、従来のフィルムヒーターは高密度に張り巡らせることができないため、ホットプレートの熱源としては適していなかったという。そこで、使われたのが「サーキットヒーター」だ。サーキットヒーターとは、独自で開発したフィルムヒーター。高密度と高温を両立できるサーキットヒーターならホットプレートにも適するのではないかと考え、導入したとのこと。こうして、abien MAGIC GRILLはフィルムヒーターを初めて採用したホットプレートとして製品化された。
わずか3mmの厚さのプレートだが、「プレート」「絶縁シート」「サーキットヒーター」「絶縁シート」「ステンレス鏡面プレート」という5層構造となっている。サーキットヒーターでプレートを加熱するだけでなく、最下部にあるステンレス鏡面プレートで熱を反射させ、その熱も加熱に利用しているとのこと
abien MAGIC GRILLの温度調節は「弱」と「強」の2段階。「弱」は約180〜200℃まで、「強」は約250℃まで温度が上昇する
棒ヒーターの場合、ヒーターに近い部分と遠い部分でプレート表面の温度差ができやすいが、面状のサーキットヒーターはプレート全体を均等に加熱できるため、食材の焼きムラや焦げ付きが起こりにくく、食材の水分を保持したまま、中までしっかりと焼き上げられるという。また、ヒーターとプレートが一体化されているので、食材を置いた時のプレート表面の温度低下のリカバリーも早いとのこと。
サーモグラフィーカメラで、加熱開始から約1分後のプレートを撮影してみた。わずか1分程度でプレート全体がかなり温まっているのに加え、温度ムラも少ないことがわかる
ホットケーキを焼いてみると、部分的に焦げることなく、全体にきれいな焼き色がついた。プレート全体が均一に近い温度で加熱されているようだ
さらに、プレート表面には独自の特殊コーティング加工が施されており、油なしでも焦げ付きにくいという。試しに、プレートに油をひかずに目玉焼きを焼いてみたが、まったく焦げ付かず、下の動画のように、スーッ、スーッとプレート上ですべらせることができた。
実際に、abien MAGIC GRILLでいろいろな調理をしてみた。まず試したのは、厚みのあるステーキ肉。表面はしっかり焼きつつ、中は火が通り過ぎない焼き上がりを目指したいが、うまく焼けるだろうか。
温度設定は「強」で焼いてみた。プレートに油を引かずに焼いてみたが、肉がくっつくことはなく、ひっくり返すのもスムーズ。調理中に出る煙やニオイも少ないのも好印象だ
ステーキ表面には全体的に焼き目が付き、理想的な焼き上がり。カットしてみると、中はほんのり赤みが残っており、ちゃんと火は通っているものの、加熱され過ぎてはいない。実際に食べても、やわらかく、肉汁もしっかり残ったおいしいステーキだった
abien MAGIC GRILLのプレートのサイズはそれほど大きくないが、ステーキと一緒につけ合わせの野菜を焼くスペースはある
プレートはフラットで、フチも2か所にしか装備されていないが、中央がわずかに湾曲しているので、水分が出やすい食材を焼いてもプレートから水分は落ちにくい。なお、プレートがむき出しなので、焼いたものを取る時に手が触れないように注意しよう
ステーキを焼いた際に煙があまり出なかったので、魚でも試してみよう。
鮭の切り身を焼いてみたが、ステーキと同様に煙はほとんど出なかった。もちろん、焦げ付きもないので、ひっくり返しても身や皮が剥がれることもなく、キレイな焼き上がりだ。外はこんがり、中はふっくらで、文句のつけようがない
最後に、焦げ付きやすいチーズを使ったチーズタッカルビも作ってみた。
チーズに焼き色はつくが、焦げ付いてしまうことはなかった。ただ、食材をたくさん載せるとサイドから落ちてしまうことがあったので、載せる量には気をつけよう
ちなみに、チーズタッカルビを作ったあとのプレートの様子が下の写真。全面に汚れが付いているが、焦げがこびり付いたところはほぼないので、少し濡らしたキッチンペーパーで軽く拭き上げてみたところ、大部分の汚れを落とすことができた。もちろん、プレートは洗浄可能。プレートが完全に冷めてからスタンドを外し、プレートを洗うのだが、プレートが薄く、重量も約2kgなので洗いやすい。
チーズタッカルビを楽しんだあとのプレートには、けっこう汚れが付いているが……
少し濡らしたキッチンペーパーで拭くと、かなり汚れは取れた。黒く焦げた部分も大部分が取れたので、焦げ付きは少ない印象だ
残った汚れも、洗浄すれば軽い力で完全に落とすことができた。プレートが薄くて比較的軽いので、非常に扱いやすい
チーズタッカルビを含め、ステーキや魚など、今回紹介したすべてのメニューを作って洗ったあとのプレートがこちら。複数回作っても、焦げ付きや汚れの残りは見られない
シンプルな構造で人気を博したabien MAGIC GRILLだが、実際に使用しているユーザーからの声を受け、より使いやすく、より多様な調理を楽しめるアクセサリー(別売)が続々とラインアップされている。
調理中に手がプレートの縁に触れた際の火傷を防ぐ効果が期待できる耐熱シリコン製のガード。簡単に装着でき、使用後に取り外して洗浄もできる。また、プレートを立てかけて収納するスタイルの場合、「abien GRILL GUARD」を装着しておくとプレートの破損防止にもなるという。
サイズは約405(幅)×305(奥行)×11(高さ)mmで、abien MAGIC GRILLのプレートの縁にぴったりハマるサイズとなっている。価格は2,480円(税込)
約250℃の耐熱性を備えた耐熱シリコンを採用。「abien GRILL GUARD」を装着しておくほうが火傷を防げるのは間違いない
ホットプレートは基本的に焼き物を中心に楽しむものだが、フタを使えば蒸し焼き料理も作れるようになる。そのような調理に対応できるように開発されたabien MAGIC GRILL専用のフタが「abien FOOD COVER M」だ。コンパクトに収納できるabien MAGIC GRILLの利便性を損なわないように、「abien FOOD COVER M」もプレート全体を覆うタイプではなく、プレート中央にポンとかぶせるような小さいサイズとなっている。さらに、サイズだけでなく、このフタは手で押すと凹む設計となっているのもポイント。薄い状態にして収納できるので、場所をとらない。
サイズは約220(幅)×220(奥行)×75(高さ)mm。プレートに直接載せるスタイルだが、耐熱温度約250℃の耐熱シリコン製なので溶けることも、プレートを傷つける心配もない。価格は3,480円(税込)
「abien FOOD COVER M」をかぶせて、温度を「弱」で10分加熱した蒸し焼き野菜。ほくほく食感と、プレートと接する部分が焼けた香ばしさがミックスされて、とてもおいしい
フタの中央を押せば平たくなる。収納時のサイズは約220(幅)×220(奥行)×45(高さ)なので、場所はごらない。もちろん、フタは丸洗い可能だ
「abien OIL TRAY」には、余分な油や水分を流しながら調理できるようにするためのトレイとピンがセットになっている。片方のスタンドを高さの低いピンに付け替えることでプレートを斜めにし、フチから流れた油や水分をトレイで受け止める仕組みだ。脂が出やすい料理でも油を流しながらヘルシーに楽しめる。
油を受けるトレイと、スタンドの代わりに使用するピンがセットになっている。価格は1,980円(税込)
片側のスタンド(端子のついていないスタンド)をピンに交換し、油が流れるほうにトレイを置いて使用する
豚のバラ肉を3枚焼いてみたところ、かなりの量の脂が出てきた。ゆるやかな傾斜なので、食材がズレ落ちることはなく、不便さは感じない。フラットで、サイドにフチのないプレートだからこそできる使い方だ
卓上調理の代表格「ホットプレート」はあると便利な調理家電だが、収納する際のサイズがけっこう大きいのがネック。その点、プレートとヒーターを一体化して薄型化し、スタンドを取り外せる構造にすることで収納の課題をクリアしたabien MAGIC GRILLは革新的だ。プレートとヒーターが一体化しているホットプレートはほかにもあるが、ここまで薄型のものはない。また、プレートとヒーターが一体化したタイプの中には、プレートに電源コードの接続部が付いているため、丸洗いできないものもある。そうした“ちょっと気をつけなければならないこと”が少ないのもabien MAGIC GRILLの魅力だと思う。パッと準備でき、立てかけて収納しておける感覚は、フライパンに近い。ホットプレートとしての性能も申し分ないので、abien MAGIC GRILLを手に入れたらホットプレートを使う頻度がこれまでよりも高まりそうだ。
若干、コンパクトなサイズので、4人で囲っても楽しめるが、ある程度食べるなら3人くらいで使うのがちょうどいい印象だ
編プロでの広告制作、雑誌編集を経てフリーライター/エディターに。家電をはじめ、自動車、ファッション、ビジネス関連など幅広い分野で活動。86年、秋田県出身。「大曲の花火」とグミをこよなく愛する。