災害時、「電気」の確保はライフラインの維持そのものです。
日本の電力会社の復旧作業は一般的には迅速かつ優秀です。経済産業省の資料によると、東日本大震災時でも発災後に発生した停電の約80%は3日後に、94%は8日後に解消しています。
そのため、最低限の停電対策はまずは3日程度の停電に備えることを念頭に、準備を進める事を考えるのが適切といえるでしょう。
しかし一方で、東日本大震災時、復旧作業が可能な地域の全停電が完全に解消するまでには、約3か月を要しました。運悪く被害の大きな地域に該当してしまった場合は、長期の停電を覚悟する必要があります。
加えて、停電直後は、いくら電池やポータブル電源などを備えていても、自分の地域の停電がいつまで続くかわからないことも多い状況下、手元の限られた電気をどの程度のペースで使ってよいものか悩むことになるのは、容易に想像できます。
そんな時、自宅で電気を作る手段があれば、少なくとも「作った分の電気は安心して消費できる」という精神的な余裕に繋がります。
そこで役立つのが、ポータブル電源とソーラーパネルの組み合わせです。ソーラーパネルは燃料を補給せずに発電でき、日射が得られる間は繰り返し利用できます。ただし、夜間や悪天候時は発電量が大きく低下するため、発電した電力をポータブル電源に蓄えて使うのが基本です。
画像は高荷智也氏のYoutubeチャンネル「死なない防災!そなえるTV」より
本記事では、備え・防災アドバイザーの高荷智也氏の解説動画を軸に、ソーラーパネルの選び方から発電効率を最大化する設置テクニック、ポータブル電源との組み合わせまでを解説します。
合同会社ソナエルワークス 代表社員
備え・防災アドバイザー
「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに「自分と家族が死なないための防災」のポイントを分かりやすく解説する防災専門家。大地震・水害・噴火・感染症などの自然災害から、銃火器を使わないゾンビ対策まで幅広く解説をする。
講演、執筆、防災グッズ開発などの実績も多く、防災YouTuber、Voicyパーソナリティとしても活動する。著書に「今日から始める家庭の防災計画」「防災リュックはじめてBOOK」他多数。1982年、静岡県生まれ。
YouTube(そなえるTV)https://youtube.com/@sonaerutv
Voicy(そなえるらじお)https://voicy.jp/channel/1387
災害対策としてポータブル電源を購入する際、多くの人が「とにかく大容量のバッテリー」を求めがちです。しかし、予算や持ち運びの重さ、収納場所などを考慮すると、大容量化には限界があります。ここで重要になるのがソーラーパネルなどによる「発電の力」です。
従来の停電対策は「カセットコンロ」や「乾電池」など、電気の代わりになる「物」を備蓄するのが主流でした。しかし、高荷氏は「令和時代の停電対策は、電気そのものを『作る』ことそして『貯める』ことが重要」と指摘します。
中でもソーラーパネルは、燃料が不要で排気ガスも出ず、晴れていれば無限に電力を作り続けられる有効な手段といえます。
画像は高荷智也氏のYoutubeチャンネル「死なない防災!そなえるTV」より

「ソーラーパネルは、リチウムイオン電池のような自己放電や化学的な劣化が少なく、とりあえずポータブル電源とソーラーパネルを買って、しまっておけば安心です。いざというときは、ソーラーパネルで給電しながら、ポータブル電源でライフラインを維持できます。必要ならば他の発電手段を後から追加検討してもいい。まずは手軽なソーラーパネルを給電の軸に据え、できれば日頃から生活の中に取り入れていくことがおすすめです」
ソーラーパネルといってもモバイルバッテリーに付属している小型のものから、100W級、さらに大型の固定設置型まで種類は様々です。
ここでは、持ち運んで使用するタイプを中心に、サイズによる用途の違いを整理します。
モバイルバッテリーなどについている手のひらサイズの小型パネルは、発電面積が限られるため、スマートフォンを安定して充電する用途には向きません。製品によっては、日中に表示ランプを点灯させる程度の発電量にとどまることもあります。
緊急時の補助やお守りとして考え、主力の充電手段にはしないほうがよいでしょう。

「手のひらサイズのパネルは、実用的ではありません。現在の変換効率では、この面積でスマホを充電するのは困難です。あくまで『お守り』として、万が一に備えるアイテムと考えてください」
A4用紙数枚分程度の面積に展開できる20〜30W前後のソーラーパネルになると、スマートフォンやタブレット、モバイルバッテリーなどの充電に実用性が出てきます。
晴天時に直射日光をしっかり当てれば、スマートフォンの充電などに利用できます。
ただし、実際の充電時間は、スマートフォンのバッテリー容量や天候、パネルの向き・角度、変換ロスなどによって大きく変わります。
そのため、「晴天時ならスマホの充電に使える」ぐらいの考え方で選ぶのがおすすめです。
100Wクラスは、持ち運びにはやや苦労しますが、ポータブル電源への充電を現実的に行いやすい出力です。スマートフォン、通信機器、LED照明、低消費電力の扇風機などを優先して使う構成に向いています。
ただし、定格出力100Wのパネルが、常に100Wを発電するわけではありません。晴天時でも、太陽の位置、パネルの角度、温度、影、充電機器の損失などによって実際の発電量は変わります。
冷蔵庫、電子レンジ、エアコンといった家電を使えるかどうかは、パネルの出力だけでなく、ポータブル電源の容量、定格出力、最大出力、入力上限、家電の消費電力によって決まります。100Wパネル1枚だけで、これらの家電を継続的に動かせるわけではありません。

「ソーラーパネルは完全に『大は小を兼ねます』。コンディションが悪い場合でも、パネルの面積が大きければパワーでねじ伏せることができます。基本的にソーラーパネルに関して言えば、大きいものは正義です」
画像は高荷智也氏のYoutubeチャンネル「死なない防災!そなえるTV」より
ソーラーパネルを買っても、置き方次第で発電量に大きな差が出ます。十分な発電量を確保するために、高荷氏は以下の 3 点に注意するよう呼びかけています。
ソーラーパネルは屋外設置が基本です。窓ガラス越しでは発電効率が極端に落ちる場合があります。特に合わせガラスや複層ガラス、遮熱加工されている窓ガラス越しではほとんど発電できなくなります。
地面にペタ置きするのではなく、太陽の方向に向けて角度をつけ、光を垂直に受けることが重要です。
可能であれば、時間を区切って手動で太陽の方向に向けるなどすると発電量が増えます。

実験では、例えば夏の時期、平置きでは 71W しか出ていなかった100Wパネルが、太陽の方に向けて角度を調整すると 92W まで出力が上昇した例がありました。ひまわりのごとくこまめに太陽の方向に向ける。これが非常に効率よく発電されるポイントです
パネルの一部に影がかかると、影の面積以上に出力が低下することがあります。影の位置やセルの配線、バイパスダイオードの構成によって影響は変わるため、影の面積と出力低下の関係を一律にはいえません。
落ち葉、手すり、建物、樹木、ペットの影にも注意してください。設置後は、パネルの一部にでも影がかかっていないか確認しましょう。
•実測データ: 高荷さんの実験では、パネル面積の 1% に影がかかっただけで出力が 14% ダウン。16% の影では55% ダウンという事例も。

「わずかな影ができるだけでも、ソーラーパネルの出力はぐっと落ちます。30 分〜1 時間に 1 回は様子を見て、影がかかっていないかを確認、太陽の位置に向くよう動かしてください」
さらに発電量を増やす裏技として、高荷氏は、ソーラーパネルの周囲に反射材を設置し、直接光だけでなく反射光もパネルに当てることで発電量を増やす実験も行っています。ただし、反射材を使った効果は、太陽の位置や反射材の角度、周囲の環境などによって変わります。非常時にどうしても発電量を増やしたい場合には、試してみる価値があるでしょう。
ソーラーパネルは、単体で家庭用コンセントの代わりになるものではありません。発電した電力を蓄え、夜間や悪天候時にも使うには、ポータブル電源などの蓄電手段が必要です。
そして、日常と同じレベルの生活ができる電力の確保は、現在のポータブル電源の技術ではまだ困難です。
しかし、防災用としてだけでなく、日常生活にも節電用、緊急バックアップ用として組み入れることで、使い方や容量の限界に慣れ、非常時には最低限の「電気の自給自足システム」を速やかに構築することはできるでしょう。
余裕があれば、ポータブル電源の容量を増やしたり、ソーラーパネルの枚数を増やすことも、考える事ができるようになります。
特に電子レンジやエアコンの使用は、消費電力が大きく、起動時に一時的な大電力を必要とする場合があります。
100Wのソーラーパネル一枚だけでは、十分な時間の稼働は難しいでしょう。家電を使いたい場合は、まず、家電とポータブル電源の仕様を確認、必要に応じてソーラーパネルもより大きな発電ができるよう、枚数を増やしていくことも検討が必要です。
画像は高荷智也氏のYoutubeチャンネル「死なない防災!そなえるTV」より
逆に、災害時には普通の家電ではなく、代替のLEDランタン、電気毛布、ポータブル扇風機などの活用により使用電力を抑える考え方も重要です。画像は高荷智也氏のYoutubeチャンネル「死なない防災!そなえるTV」より

「晴天時、100W のパネル 1 枚とポータブル電源があれば、ある条件下の実験ではスマホを 2 回フル充電し、夜中にランタンを点けっぱなしにし、扇風機を 24 時間回し続けることができる発電が可能との結果となりました。1 人なら 2 日分、2 人なら 1 日分。結構使えると思いませんか?」
住宅の屋根にソーラーパネルがある場合にもポータブル電源は停電対策になります。
住宅用太陽光発電システムがあっても、停電時に通常どおり家全体へ給電できるとは限りません。
通常、停電時にはパネルの発電量の全量を使用できるわけではなく、一般的には「自立運転モード」に切り替えることで、ソーラーパネル発電時にのみ専用コンセントから最大1500Wの電気のみを使用できます。
これを最大限活用するためには、日中に屋根で発電した電気を、急速充電対応のポータブル電源(電気のバケツ)に貯め込み、夜間や別の部屋へ持ち運んで使用するという連携テクニックが非常に有効です。
高荷氏の解説を参考に、防災用ソーラーパネルを選ぶときのポイントをまとめると、次のようになります。
スマートフォンなどを充電したい
→ 20〜30W級を検討
ポータブル電源を充電したい
→ 100W級以上を検討
発電量を増やしたい
→ 直射日光、太陽の方向、影に注意
家電を使いたい
→ ソーラーパネルだけでなく、ポータブル電源の容量(Wh)と出力(W)も確認
「大は小を兼ねる」という考え方はソーラーパネルにも当てはまりますが、実際にはベランダや庭など、実際に日当たりのよい場所へ設置できるか。持ち運んで使えるか。ポータブル電源がどれだけのソーラー入力に対応しているか。
こうした条件を考えたうえで、自分の防災スタイルに合ったサイズを選ぶことが大切です。
そして、ソーラーパネルは「非常時にだけ使う防災用品」にするより、普段からモバイルバッテリーやポータブル電源の充電などに使っておくほうが、いざというときにも使い方に迷いません。
停電が長期化したとき、ポータブル電源に電気を補充できるソーラーパネルは、電力を「作る」防災対策になります。
そんな「電気を作って貯める仕組み」を、ソーラーパネル、ポータブル電源で構築しておくことは、停電への備えを一段進める方法のひとつといえるでしょう。
参考動画:
ポタ電&ソーラーパネルによる停電対策・リアル解説!
停電対策「ソーラー充電器・ソーラーパネル」の基本・選び方
令和時代の停電対策!予算と規模別の蓄電池&ソーラーパネルの選び方
防災視点のソーラーパネルの選び方・個人編
ソーラーパネルの発電量を増やす3つのポイント&100円の裏技!