無謀 or 英断? 36歳から始めるトライアスロン

初心者には高額過ぎ? 「トライアスロンバイク」5傑と選び方

“鉄人レース”とも呼ばれるトライアスロンは、過酷なスポーツというイメージが強い。そんな競技に今、ひとりの男がチャレンジしようとしている。「価格.comマガジン」編集者、牧野(37歳)だ。トライアスロンを趣味にしているライターの私からその魅力について吹き込まれ、ちょっと興味があるそぶりをしていたら、いつの間にかチャレンジすることに……。準備期間は1年間。果たして、超初心者の牧野は完走し、トライアスロンの魅力と感動をお届けできるのか?

第4回は、「トライアスロンバイク」について紹介

第4回は、「トライアスロンバイク」について紹介

【連載バックナンバー】
第1回 トライアスロンとは?/ランニングシューズの選び方
第2回 ウェットスーツの選び方
第3回 ロードバイクの選び方

今回もまた編集・牧野(右)が東京・千駄ヶ谷にあるトライアスロン専門ショップ「アスロニア」の店長、蒔田俊史さん(左)にお話をうかがった

前回、ロードバイクをトライアスロンに使う場合のポイント、そしてその選び方を紹介した。今回は、トライアスロンのために作られた自転車「トライアスロンバイク」について紹介する。ロードバイクとトライアスロンバイク、同じ自転車ではあるが、そこには大きな違いがあった!

トライアスロンバイクの3つの特徴

牧野 ロードバイクとトライアスロンバイクを比べると、見た目が異なるのは明らかですが、それがどういった違いになるのかがわかりません。ただ、トライアスロンバイクのほうが価格は高そうには見えますが(笑)。

蒔田さん 坂道を上ったり下ったり、平らな道を走ったり、オールラウンドに活躍するのが一般的なロードバイクだとすれば、トライアスロンバイクは「平らで真っ直ぐな道をひとりで走る」のに適している自転車です。トライアスロンの自転車パートは、基本的に単独で走ることが求められます。一緒にレースに出ている人を風よけにして走ることができない、という前提条件をもとに設計されているので、以下の3つが大きな特徴になります。

(1)DHバーが最初から取り付けられている
(2)フレームがエアロダイナミクスにすぐれるように設計されている
(3)ストレージ(小物入れ)が取り付けられるように設計されている

世界最高のトライアスロンバイクのひとつ、サーヴェロ社の「P5X DISC」。エアロ性能を高めるためのフレームデザインなど、ロードバイクとは大きく違うことが見て取れる。メーカー希望価格は、1,830,000〜2,280,000円(税別)!

前傾姿勢を保つためのDHバー

蒔田さん DHバーについては前回も紹介しましたが、これは長い時間、楽に前傾姿勢で走るためのギアです。ロードバイクでトライアスロンに出る場合は、後付けで取り付ける必要がありますが、トライアスロンバイクには最初から搭載されています。

トライアスロンバイクには、前方に突き出したハンドル(ブルホーンバー)とDHバーが最初から取り付けられている。写真は、プロファイルデザインの「AERIA T4 カーボン ブラック」

パッドに身体を預けて前傾姿勢をとることで、空気抵抗を減らし、効率よく走ることができる

パッドに身体を預けて前傾姿勢をとることで、空気抵抗を減らし、効率よく走ることができる

牧野 トライアスロンバイクは、ハンドルがかなり特徴的ですね。

蒔田さん これは「ブルホーンバー」といって、ドロップハンドルとは異なる形状のハンドルです。エアロ効果のために、ブレーキレバーがかなり細く作られているのも特徴です。あと、シフトチェンジをDHバーの先端についているシフトレバーで行うのも、ロードバイクと異なる点です。

DHバーの先端に、写真のレバーを取り付けてシフトチェンジを行う。写真は、シマノの「デュラエース 7900 10スピードロードバー エンドシフター」

エアロダイナミクス効果が高いフレーム設計

トライアスロンバイクには、一般的な自転車では見られない特殊なフレーム形状を採用しているモデルがある

トライアスロンバイクには、一般的な自転車では見られない特殊なフレーム形状を採用しているモデルがある

蒔田さん トライアスロンバイクの次のポイントは、エアロ効果が高いフレーム設計。簡単に言えば、前方から見て「薄く扁平した」作りに仕上がっています。前方投影面積を減らすことで、まさに空気を切り裂いて走るように作られています。

牧野 確かに! 刀の刃みたいな感じに見えます。

蒔田さん ブランドによっていろいろな形状が用意されているのですが、トライアスロンバイクの大半がこのような“縦に薄い”作りになっています。DHバーに身体を預けて前傾姿勢をとり、エアロ形状フレームのバイクで走ると、かなり力をセーブして走ることができます。

牧野 さっきから気になっていたのですが、こういう幅が広いホイールもトライアスロンバイクの特徴なのですか?

蒔田さん ホイールの外周のことを“リム”と呼びますが、リムの幅が広いホイールほど、空力の効果がより期待できます。リムの幅が90mmくらいのモデルだと、時速35qに到達したころから、ホイールが勝手に回っていくような感覚になります。ガンガン踏み込まなくてもフワーっと浮き上がるようにスピードに乗っていく。脚の力をセーブできるので、ランニングに力を残しておくことができるんです。

ホイールの外周部分「リム」の幅を広げることで、エアロダイナミクスの効果を増幅させる

ホイールの外周部分「リム」の幅を広げることで、エアロダイナミクスの効果を増幅させる

蒔田さん しかし、物理的にホイール自体は重くなるので、平地では威力を発揮しますのが上りにはあまり強くありません。もうひとつデメリットとしては、横風に弱いという点があり、風にかなりあおられてしまいます。

牧野 リムを広くすることしか、スピードアップはかなえられないんでしょうか?

蒔田さん いや、そんなことはないんです。回転のよいホイールに交換することでも、効果は出ます。よくグレードアップの相談をされますが、新しいフレームを買うよりも、ホイールを変えたほうが走りがガラッと変わるのでオススメすることが多いですね。ホイールチェンジは、かなりコスパがいいカスタムと言えるでしょう。

ストレージ(小物入れ)が取り付けられる設計

蒔田さん レースでは「エイドステーション」といって、水や補給食がとれる場所がところどころに設置されていますが、水や補給食は自分で準備するのが基本です。牧野さんがチャレンジしようとしているトータル51.5kmのオリンピックディスタンスでは、そこまで補給食を必要していませんが、パンクを修理するためのギアは持っておく必要があります。

牧野 パンクは自分で修理するんですか!?

蒔田さん トライアスロンは自分ひとりで走って、必要がある場合はひとりで修理してフィニッシュまで走り抜くスポーツなので、修理も自分で行う必要があります。従って、自転車には、修理道具を積むためのストレージが必要になるのです。

トライアスロンバイクには、荷物が取り出しやすいコクピット周りにストレージが搭載されているか、ストレージを取り付けるためのボルト穴が開いている。このほか、サドルの後ろにストレージが搭載されているタイプもある

牧野 ここまで話を聞いていると、「トライアスロンバイクしかない!」って気持ちになってきますね……。

蒔田さん そうなる気持ちもわかります。でも先ほども話しましたが、トライアスロンバイクは基本的にまっすぐ平らなところを走る自転車です。車重も重い。トライアスロンを始めるにあたって、通勤やロングライドなど、別のシチュエーションでも自転車を楽しみたい、と考えているのであれば、まずはロードバイクを買ってみるのがいいと思います。

しばらくロードバイクで練習やレースをこなし、引き続きトライアスロンを楽しみたいと思ったときに改めてトライアスロンバイクを購入する、というのが自然な流れだと思います。もちろん、いきなりトライアスロンバイクを買っても問題はないです。

最初の1台に選びやすい! 初心者にも最適なトライアスロンバイク5選

さまざまなシーンで使えるロードバイクに比べ、“トライアスロンのレースに使う自転車”であるトライアスロンバイク。間違いなく効率的な走りをアスリートにもたらし、後半のランニングまで脚が残せる。そんなトライアスロンバイクは、ロードバイクに比べて高額ではあるが、手が出せない価格でもない。そんな初心者にも最適なモデルを紹介しよう。

サーヴェロ「P2 105」

メーカー希望小売価格は、421,200円(税込)

メーカー希望小売価格は、421,200円(税込)

トライアスロン世界大会でシェアNo.1を誇るブランド、サーヴェロ。「P2」は高い振動吸収性に加え、後輪に沿うようなシートチューブや、リアブレーキを隠すようにデザインされたフレームを持つロングセラーモデルだ。細かいモデルチェンジを経て今なお愛される、最初のバイクとして失敗しない1台と言える。

【SPEC】
・フレーム素材:カーボン
・メインコンポ:「SHIMANO 105」(2×11速)
・サイズ:48/51/54/56p

フェルト「IA 16」

メーカー希望小売価格は、429,840円(税込)

メーカー希望小売価格は、429,840円(税込)

一般的に「横風に弱い」とされているトライアスロンバイクの欠点を補うフレーム設計や、ユーザーの体型や乗り方に合わせられる調整幅が広いパッド位置など、初心者トライアスリートの完走の助けになるモデル。コンポーネントは、グレードアップしやすい「SHIMANO 105」を採用しているので、“相棒”として長く愛用できる。

【SPEC】
・フレーム素材:カーボン
・メインコンポ:「SHIMANO 105」(2×11速)
・サイズ:48/51/54/56p

トレック「スピードコンセプト 」

メーカー希望小売価格は、611,280円(税込)

メーカー希望小売価格は、611,280円(税込)

前方からだけではなく、斜め前方からの風に対しても高いエアロ効果を発揮するフレーム形状を採用したモデル。ブレーキとシフトケーブルはすべてフレーム内に格納されているため、仕上がりが美しく、さらに空気の乱れもカットする効果も。追加料金は発生するが、自分好みのカラーにカスタムできるのもうれしい。

【SPEC】
・フレーム素材:カーボン
・メインコンポ:「SHIMANO アルテグラ」(2×11速)
・サイズ:S/M/L/XL

ジャイアント「トリニティ アドバンスド」

メーカー希望小売価格は、248,400円(税込)

メーカー希望小売価格は、248,400円(税込)

上位グレードと同等のフレームを採用しながら、価格を抑えた高コスパモデル。手に入れやすい価格帯でありながら、「SHIMANO 105」、トライアスロン用サドル、乗り心地のいいチューブレスタイヤなど、手抜きなしのパーツが最初からセットされている。初心者は1台目のバイクとして、ベテランはカスタムベースとして使用できるモデルだ。

【SPEC】
・フレーム素材:カーボン
・メインコンポ:「SHIMANO 105」(2×11速)
・サイズ:460(XS)/490(S)/515(M)/545(L)mm

スペシャライズド「シヴ エキスパート」

メーカー希望小売価格は、486,000円(税込)

メーカー希望小売価格は、486,000円(税込)

自社の風洞実験室でテストを繰り返し、空力性能を極限まで高めたモデル。あらかじめフレームの内部に水分補給が行える「ウォーターバッグ」が内蔵されているうえ、大きなストレージがフレーム下部にセットされているなど、余計なパーツを取り付けることなく、このままレースで活躍できるバイクに仕上がっている。

【SPEC】
・フレーム素材:カーボン
・メインコンポ:「SHIMANO アルテグラ」(2×11速)
・サイズ:495(XS)/514(S)/540(M)/565(L)mm

【連載バックナンバー】
第1回 トライアスロンとは?/ランニングシューズの選び方
第2回 ウェットスーツの選び方
第3回 ロードバイクの選び方

今 雄飛

今 雄飛

ミラソル デポルテ代表。自転車、トライアスロン、アウトドア関連のライターとしても活動中。趣味はロングディスタンスのトライアスロン。

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