CHORD「Hugo 2」。2017年6月26日発売予定。直販価格は299,980円(税込)だ
CHORD「Hugo」といえば、同社独自開発のDACシステム、独自プログラムを組み込んだFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ)とフリップフロップ回路を組み合わせたDACシステムにより高品質サウンドを実現したDA変換パートを、持ち運び可能なコンパクトボディに搭載。さらに、バッテリーをも内蔵することで、ポータブルヘッドホンアンプとしても活用できるという、画期的な製品として誕生した。
現在は、さらに小型サイズのハイコストパフォーマンスモデル「mojo」が登場したため、発売当初のインパクトこそ薄れたものの、このサイズでこの価格(CHORDは高級製品がメインストリームのイメージがあるためこの内容でこの価格はお買い得にすら感じられた)で、同社据置型の高級モデルに匹敵するサウンドクオリティを持ち合わせている実力のほどは、いまでも色あせていない。実際、筆者もいまだ現役でHugoを活用し続けている。
そんなHugoが、このたび第2世代機「Hugo 2」へとモデルチェンジされた。Hugoオーナーとしては、大いに気になる存在だ。ということで、今回はHugo 2の詳細について紹介するとともに、“現HugoオーナーはHugo 2に買い替えるべきか否か”からもスペック/音質の両面から徹底検証させていただきたいと思う。
さて、Hugo発売から3年余りが経過した今回のモデルチェンジだが、進化の著しいデジタルオーディオ機器だけに、さまざまな部分で進化が見られる。まずは変更された内容とスペック的な進化の程を紹介していこう。
まず、CHORD Hugoならではの独自技術にしてHugo 2の核心部分といえる、FPGAを活用したDACシステムをグレードアップ。Hugoに対して約10倍のパフォーマンスを持つFPGA(Xilinx社「Artix7」)へと変更し、それにともないWTAフィルター(ロバート・ワッツ氏が研究開発しているトランジェントに影響する)を8倍オーバーサンプリングから16倍オーバーサンプリングに向上させるなどプログラムも進化させることで、ダイナミックレンジや時間精度をクオリティアップ。さらに、グランド電圧変動を抑えた4層基板ともあいまって、-175dBという格段の超低ノイズフロアを実現している。
同時に、アナログ回路や電源部の強化も行われている。なかでもいちばんのポイントとなっているのがアナログノイズシェイパーで、据置型のフラッグシップDAC「DAVE」のノウハウを反映することで、200dBを超えるフィルタリング性能を実現。奥行き感のある音場表現を獲得しているという。
Hugo 2には、mojoにも搭載されたXilinx社のFPGA「Artix7」が搭載された。mojoは筺体サイズなどの制限で、FPGAの性能に制限がかかっていたが、Hugo 2は100%の性能を発揮できるという
いっぽう、目に見えて分かりやすい部分では、まず対応する再生ファイルがスペックアップしている。リニアPCMが最大768kHz/32bit、DSDが最大22.5MHz(DoPでは11.2MHz)までネイティブ再生できるようになったので、この先数年にわたって、対応スペック的に不満が生じることはないはずだ。
Hugo 2では、リニアPCMが最大768kHz/32bit、DSDが最大22.5MHz(DoPでは11.2MHz)までネイティブ再生できるようになった。ちなみに、再生ファイルのサンプルレートはオリジナルHugoと同様、インジゲーターの色で確認することが可能だが、Hugoを長期愛用している筆者でも相変わらず覚えられない
また、バッテリーは2600mAh容量のリチウムイオンバッテリーを搭載。約4時間の充電で、約7時間の音楽再生が行えるという。加えて、Hugoでは3タイプ用意されていたデジタルフィルター切替も4タイプへと増加されている(オフがなくなった模様)。
なお、入力に関しては、USB、光(最高192kHz/24bit)/同軸デジタル(最高384kHz/24bit)、Bluetooth(aptX対応)とほぼ変わりないが、16bit系とハイレゾ系で分けられていたmicroUSBがひとつにまとめられていたり、同軸デジタル端子が3.5mmミニプラグに変わっていたり、多少の仕様変更が行われている。出力は6.3mmと3.5mmのヘッドホン出力に加え、RCA出力を用意。こちらについてはオリジナルHugoとほぼ変わっていない。
USB端子は、本体側面に本体充電用と入力用の2系統を装備。オリジナルHugoでは「SD USB」と「HD USB」の2系統のUSB入力を備えていたが、Hugo 2ではそれらが統合された
USB入力のある側面の反対側。USB以外の入力端子と出力端子はこちら側にまとまっている
このように、とにかく音質に関しては隅々まで徹底的なクオリティアップを行っているHugo 2だが、同時に、ユーザビリティに関してもかなりの検討を行い、改良を盛り込んでいった感がある。そこで、音質以外の部分、使い勝手や機能性については、Hugoと直接比較した進化ポイント(改善ポイント!?)を箇条書きで挙げていきたいと思う。
CHORDらしいというべきか、エッジの効いたスクエアなデザインに変更された、同時に、幅のみほんの少し大きくなっている。デザインに関しては好み次第だが、ありがたいのは底版のゴム足の位置。何故かオリジナルHugoでは中央寄りだったのだがHugo 2では四隅に移動され、ポータブル利用時にも組み合わせた製品と金属部分同士がぶつかり合いカタカタいうことがなくなった。
写真左がオリジナルHugo、右がHugo 2。本体デザインがエッジの効いたスクエアな形状に変更になったほか、本体サイズもやや大きくなっている
オリジナルHugoでは充電にACアダプターを使用していたが、Hugo 2では専用microUSB端子からの充電に変更されている。スマートフォンなどにも使われている汎用的なmicroUSB端子から充電できるのはとってもありがたい。また、データ通信用microUSB端子が1つになったため、どちらがハイレゾ用だったっけ?と迷うことがなくなった。
電源スイッチやフィルター/入力切り替えなどの操作ボタンがすべて天板に集められたうえ、大型化されたので格段に操作性が向上。各ボタン位置の側面に機能名が書かれている点もありがたい。またmojo同様ボタンがさまざまな色に光るため(オリジナルでは基板上にLEDがレイアウトされていた)、フィルターや入力端子、充電状況など、現在の状況が簡単に把握できるようになった。
Hugo 2では切り替えボタンがmojoなどで採用されているボール状のものになり、位置も本体側面から天面へと移動した
接続端子の保護のためか、オリジナルHugoでは、光デジタル端子や3.5mmヘッドホン端子、microUSB端子などがアルミボディを一段えぐった奥に配置されていて、太めのコネクターを持つケーブルを接続することができなかった。これがなくなり、気に入っているケーブル類を活用できるようになったのは嬉しい限り。
オリジナルHugoは、接続端子の一部が筺体の奥に配置されていた関係で接続ケーブルを選ぶという問題があったが、Hugo 2ではそういった問題が解消された
こちらは賛否両論あるかもしれないが、RCAのときはザグリが邪魔になって利用できるケーブルが限られていたため、悪くない変更といえる。
ちょっとした改良点だが、天板に配置されているダイヤル式のボリュームコントロール事態は変化ないものの、動きがスムーズになった印象を持った。ちなみに、Hugo 2ではボリュームまわりが円形にほんの少し飛び出したデザインとなったため、こちら側にDAP等を重ねるのは難しそう。まあ、(ボリュームが使えなくなるため)重ねることはないでしょうが。
Hugo 2のボリュームダイヤル部分。ボール状のボタンの周りがやや盛り上がったデザインとなっている
先にも紹介した話ながら、手持ちのハイレゾ音源が全てネイティブ再生できるのは嬉しい限り。さらにいえば、このスペックの高さがあれば、5年どころか10年近く不満を持つことはないはず。
というように、使い勝手に関しては、相当に改善されている。オリジナルHugoユーザーにとっては、気になるポイントばかりだ。
ここからは、肝心の音質についてチェックをしてみよう。今回は、オンキヨー「GRANBEAT」とADL製USBケーブル「OTG-MM(Micro B - Micro B)」を使って接続。ヘッドホンはゼンハイザー「HD800」やパイオニア「SE-Master1」を使い、いったんオリジナルHugoを聴いてから、続けてHugo 2を試聴した。
ひとことでいえば、とてつもなくピュアで上質なサウンド。オリジナルHugoの音ですら音色の甘さを感じるくらい、キレがよく、解像度感が高い。また、歪み感がまったくといっていいほど感じられないため、演奏本来の魅力がストレートに再現されている。サラ・オレインを聴くと、声の伸びやかさはもとより、張り上げた声で直接体を揺すられているかのような、突き抜け感とリアルさを持ち合わせている。
ちなみに、音色傾向はニュートラル、全く脚色のないありのままの音を再現しているイメージ。弦楽器などのアコースティックな演奏を聴くと、響き伝わる空間までもあまさず伝わってきて、とてもリアルな演奏に感じられる。ピアノはタッチが軽やかで響きか美しい。
いっぽうで、音場表現の豊かさにも感心させられた。TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの楽曲を聴くと、こだわり抜いた彼らの音場表現が、左右どころか奥行き方向にも広大かつ正確なフィールドが広がってくれる。これはいい。
また、ヘッドホン出力の駆動力の高さも魅力的だ。価格が価格なので、あえて高級ヘッドホンで試聴してみたのだが、HD800もSE-Master1も十全に鳴り、躍動感のあるサウンドを聴かせてくれた。ヘッドホンアンプとしても、かなり重宝しそうだ。逆に、あまりに音がダイレクトすぎて聴き疲れしてしまいそう、という人がいるかもしれない。そういった場合は、デジタルフィルターを活用するのがよさそうだ。こちら、基本的な音色傾向は変わらないものの、モードをホワイト(英文取扱説明書によるとDAVEモードと名付けられている様子)からグリーン(DAVE with HF(High-frequency roll-off)フィルターモード)に変更すると、ほんの少し高域の印象が柔らかくなる。このあたりは、好みや音源次第で、いろいろ変えてみるのがいいだろう。
さて、オリジナルHugoを持つユーザーとしての結論はというと、ユーザビリティ、音質ともに格段にクオリティアップしているため、入手は必至といわざるを得ない。ただし、予算が許せば買い替えではなく、買い足しが望ましいかもしれない。というのも、Hugo 2は音質的な素性のよさから、据置型として活用したくなってくるからだ。価格的にDAVEまでは手が届かないものの、ハイクオリティなCHORD製DAC(兼ヘッドホンアンプ)が欲しい人にはベストな選択だし、ポータブルとしては大柄なボディも据置型としてみるとかなりのコンパクトさを誇っている。そう考えると、Hugoをそのまま持ち続け、引き続きポータブル用として使い続けるのもひとつの手だ。
もうひとつ、これを機会にポータブルDACはmojoなど持ち運びしやすい製品に変更するという手もあるし、シンプルに高級DAP単体で済ますという考えもある。いずれにしろ、Hugo 2か素晴らしいサウンドと使い勝手を持つ、とても優秀な製品であることは断言しよう。
ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。