特別企画

対応モデル続々! リアスピーカーをワイヤレス化できるサラウンドシステムに注目

近年、映像配信やゲームの世界で、「5.1chサラウンド」「Dolby Atmos」といった高品位なサラウンド音声に対応するコンテンツが増えていることもあり、テレビの音のリッチ化はひとつのトレンドだ。テレビ用のスピーカーと言えば、最も手軽で人気があるのはサウンドバーだが、せっかくならリアルに5.1ch以上のスピーカーを置いて、本格的なサラウンド音声を楽しみたいという人も多いだろう。とはいえ、現実的にはなかなかハードルが高い。特に「視聴者の背面にリアスピーカーを設置する」という点が、リビングでは難しい場合が多いからだ。

しかし昨今、この「リアスピーカー設置のハードル」を劇的に下げる画期的なソリューションがにわかに注目を集めている。それが「リアスピーカーをワイヤレス接続できるサラウンドシステム」だ。ソニーやデノン、Sonos、B&Wなど、オーディオファンに定評のあるメーカーから対応機種が登場しているので、今回はその情報をまとめてみた。

リアスピーカーの配線が床を這わないというメリット

改めて、テレビ周り=リビングにリアルなサラウンド環境を構築しようとした際、ネックになるのが「リアスピーカー」の存在。特に、視聴者の背面に配置したリアスピーカーから、テレビ側に設置したAVアンプと接続することになるため、どうしてもケーブルが床を這ってしまうのが大きなデメリットである。個室のオーディオ&ホームシアタールームならまだしも、リビングは生活動線を優先したい場所なので、リアスピーカーからの配線が床を這うようなセッティングには躊躇してしまう人が多いだろう。

こんな感じで、リアスピーカーから伸びるケーブルが、テレビ側(AVアンプ)まで床を這う

こんな感じで、リアスピーカーから伸びるケーブルが、テレビ側(AVアンプ)まで床を這う

そこで注目したいのが、本企画で取り上げる「リアスピーカーをワイヤレス化できるサラウンドシステム」なのだ。Wi-Fiなどの無線通信機能を備えたワイヤレスアクティブスピーカーを組み合わせてサラウンド環境を作り、スピーカー間をワイヤレスで接続するのが基本の構成となる。

つまり、2本のリアスピーカー(アクティブスピーカー)に必要なケーブルは、電源ケーブルだけ。さらに、中にはバッテリーで動くモデルまである(詳細は後述)。リアスピーカーを設置してもケーブルが床を這わないというのは、設置性の点でかなりのアドバンテージとなる。

2本のリアスピーカーからテレビ側へ伸びる配線はナシ! リアスピーカーに接続した電源ケーブルを壁側に逃がすなどの工夫もしやすい

2本のリアスピーカーからテレビ側へ伸びる配線はナシ! リアスピーカーに接続した電源ケーブルを壁側に逃がすなどの工夫もしやすい

ちなみに、配線の問題が解決したとしても、そもそも「リビングにリアスピーカーを置くスペース自体を確保しづらい」という人もいるかもしれない。その場合は、以前に実施した以下の記事を参照されたい。

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テレビで本格サラウンドを目指すなら、手軽で音がよい3.1chから始めてみない?

上記は、リビングにリアルなマルチチャンネル環境を作りたい人向けに、「まずは3.1ch再生(=リアスピーカー抜き)から始めてみよう」という記事である。掲載当時、多くの方に読んでいただけたようで、やはり注目度の高いテーマであることが伺えた。

リアスピーカーをワイヤレス化できるテレビ用スピーカーのポイント

さてここからは、リアスピーカーをワイヤレス化できる製品のポイントを整理していこう。該当製品には、大きく以下の2種類がある。

・フロントに1本のサウンドバー+リアに単体ワイヤレススピーカーを2本設置するシステム
・フロントおよびリアのそれぞれに、単体ワイヤレススピーカーを設置するシステム

リアスピーカーをワイヤレス化できるサラウンドシステムの中には、単体のスピーカー製品同士を組み合わせて利用するものもあれば、すべてのスピーカーがオールインワンのセットになっているものもある。特に前者の場合、それぞれ個別で販売されている単体のサウンドバーと単体のワイヤレススピーカーを組み合わせているパターンが多い。そのほか、低域を強化する専用サブウーハーが別売で用意されているシリーズもある。

対応するサラウンドフォーマットは、オーソドックスないわゆる「5.1chサラウンド音声」から、「Dolby Atmos」や「DTS:X」などの立体音響に対応するモデルもある(後者2つは、本来はハイトスピーカーの設置が必要なので、バーチャルでの再生となる)。

スピーカー間のワイヤレス通信方式については、2.4GHz/5GHz帯の無線LANの電波を利用するもののほか、独自の通信方式を採用することでサラウンドの高品質化を実現した製品も存在する。

余談だが、この分野ではデザイン性の高い製品が多く、リビングに設置してもインテリアを損なわないのがよい

余談だが、この分野ではデザイン性の高い製品が多く、リビングに設置してもインテリアを損なわないのがよい

ちなみにテレビ視聴時以外で、普通に音楽再生用のスピーカーとしても使えるのも魅力だ。Bluetooth接続でスマホやパソコンと接続して音楽を再生できるものがほとんどで、なかには、「Spotify」などのインターネットを通じた音楽配信サービスの再生が単体で行えるモデルもある。

▼基本的なセッティング方法

セッティング方法はモデルによって若干異なるが、おおよそ以下の3ステップに分けられる。

【1】すべてのスピーカーに電源ケーブルを接続する(バッテリー内蔵式はスイッチをオンにする)
【2】サウンドバーまたはメインユニットを、HDMIケーブルもしくは光TOSケーブルでテレビと接続する
【3】サウンドバーなどの操作アプリからリアに割り当てる2本のスピーカーを設定する

サウンドバー、またはハブとなるメインユニットを、それぞれHDMIケーブルもしくは光デジタルケーブルでテレビと接続する必要がある

サウンドバー、またはハブとなるメインユニットを、それぞれHDMIケーブルもしくは光デジタルケーブルでテレビと接続する必要がある

基本の3ステップで準備は万端! 定額制の映像配信&音楽配信サービスなどを利用するには、もちろん各サービスの契約も必要となる

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リアスピーカーをワイヤレス化できる5シリーズを紹介

ここからは、リアスピーカーをワイヤレス化できるサラウンドシステム製品を個別に紹介していこう。

▼ソニー「HT-A9」

ワイヤレスの利便性に加えて、先進的な機能が数多く搭載された4chのホームシアターシステム。テレビなどとHDMI接続できるコントロールボックスのほか、フロント2本、リア2本のアクティブスピーカーがセットになったパッケージとなる。コントロールボックスから4本のスピーカーへは、独自の無線技術で通信を行う。

サウンドモードは、「Dolby Atmos」と「DTS:X」の立体音響フォーマットに対応。独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping(サンロクマル スペーシャル サウンド マッピング)」機能を備えており、各スピーカー間や天井までの距離を内蔵マイクと測定波で計測することで、スピーカーの置かれている空間を把握し、部屋の形状やスピーカー設置場所に左右されることがなく、バランスの取れた「360立体音響」を実現する。

4本のスピーカーはそれぞれ、ウーハー、ツイーター、イネーブルドスピーカーの3ウェイ構造を採用しており、上部のイネーブルドスピーカー「X-Balanced Speaker Unit」から出た音を天井に反響させ立体的なサラウンドを実現する仕組み。これら4本のスピーカーだけで、7.1.4ch音場を創出するのがポイントだ。さらに、別売のサブウーハー「SA-SW5」「SA-SW3」を利用して低域を強化することも可能。

コントロールボックスは8K信号とHDR信号、4K/120p信号のパススルーに対応する。音楽再生機能も強化されており、スマートフォンやタブレット用の操作アプリ「Music Center」が利用可能で、360 Realty Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)によるオブジェクトベースの立体的な音楽再生フォーマットにも対応できるのが特筆点。

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▼Sonos「Sonos Arc」「Sonos One」「Sonos One SL」「Sub Gen 3」

早くからネットワーク機能に対応したワイヤレススピーカーによる音楽再生の利便性に注目し、機材構成やデザイン、ユーザビリティまで多くのメーカーのベンチマークとなっていた米国Sonos社のWi-Fi対応システム。単品で販売されているサウンドバー「Sonos Arc」に、同じく単品販売されているワイヤレスアクティブスピーカー「Sonos One」または「Sonos One SL」を組み合わせてサラウンド環境を構築する形となる。さらに、低域を強化するサブウーハー「Sub Gen 3」も用意されている。

機能的には、メインユニットとなるサウンドバー「Sonos Arc」に準拠する形となるが、このSonos Arcの高音質仕様も魅力的。ハイトチャンネルも含めた合計11基のスピーカーユニットを搭載しており、立体音響は「Dolby Atmos」に対応。アカデミー賞受賞歴のあるサウンドエンジニアたちが手がけたチューニングも特徴だ。専用操作アプリ「Sonos」を使用することで、各種音楽配信サービスの再生も行える。そのほか、Sonosの製品群は基本的に「Apple Music」に対応しており、さらにデザイン性の高さも特筆点。箱から出して実際に使用開始するまで、一連の設定の流れが直感的かつスムーズなのもうれしい。

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▼デノン「Denon Home Sound Bar 550」「Denon Home 150」「Denon Home 250」「Denon Home Subwoofer」

国産オーディオブランド、デノンのネットワーク対応スピーカー「Denon Home」シリーズを組み合わせて構築するワイヤレスサラウンドシステム。製品はそれぞれ単品販売されており、サウンドバー「Denon Home Sound Bar 550」に、ワイヤレスアクティブスピーカー「Denon Home 150」または「Denon Home 250」をリアスピーカーとして組み合わせる形となる。また、別売の専用サブウーハー「Denon Home Subwoofer」もラインアップされている。スピーカー間はピア・ツー・ピアで接続される仕様のため、安定しやすく優位性があるのもポイント。

対応する機能は、メインユニットとなるサウンドバー「Denon Home Sound Bar 550」の機能に準ずる形になる。サラウンドフォーマットは「Dolby Atmos」と「DTS:X」に対応。サウンドモードは、「Movieモード」「Musicモード」「Nightモード」に加えて、原音を色付けなくストレートに再生するデノンサウンドバーならではのメニュー「Pureモード」を搭載している。同社のサウンドマスター、山内慎一氏が音質チューニングしているのも特徴。デノン独自のネットワークオーディオのプラットフォーム「HEOS」に対応しており、「Amazon Music HD」や「Spotify」などのストリーミングサービス、ハイレゾ楽曲ファイルの再生、インターネットラジオ、AirPlay 2などのネットワーク再生機能に対応。Bluetooth再生も含めて幅広い音楽再生に対応しており、ピュアオーディオ機器としての価値も高い。

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▼Bowers & Wilkins「Formation Suite」

英国の高級スピーカーメーカー、Bowers & Wilkins(B&W)が開発したワイヤレススピーカー「Formation Suite」シリーズのモデルを組み合わせて構築するシステム。それぞれ単品販売されているサウンドバーの「Formation Bar」をフロントに、単体スピーカーの「Formation Flex」を2本リア側に設置し、さらにサブウーハー「Formation Base」を追加することで、5.1chのサラウンドシステムが構築できる。

Formation Suiteシリーズのワイヤレス通信は独自開発の音声伝送方式となり、各スピーカーのタイムラグが統一されているほか、各スピーカーの音の移動感がシームレスで、高品位なサラウンド再生を実現しているのが特徴となる。なお、メインユニットとなるサウンドバーのFormation Barは、55型クラスのテレビとのマッチングが想定された、現在市場にあるサウンドバーの中でも比較的大型のハイエンドモデル。ただし、ドルビーデジタルのデコード機能を持つもののHDMI接続は行えず、テレビとは光デジタルケーブルでの接続となることに注意したい。そのほか、専用アプリ「Bowers & Wilkins Music」は、対話式の設定画面でイラストも豊富に出てくるので、初期設定がスムーズ。

▼ソニー「HT-A7000」「SA-RS5」

単品販売されているソニーのサウンドバー「HT-A7000」に、専用のワイヤレスリアスピーカー「SA-RS5」(ペア販売)を組み合わせて構築できるワイヤレスサラウンドシステム。最大の特徴は、リアスピーカーとなるSA-RS5がバッテリーを内蔵していることだ。これにより、リアスピーカーにはスピーカーケーブルも電源ケーブルも接続する必要がなく、設置の自由度が大きく向上した。バッテリーの持続時間は約4時間の充電で最大約10時間。なお、ACアダプターで電源に接続しながらの使用も可能となる。

上述のHT-A9と同じく、独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」を搭載し、内蔵マイクによりサウンドバーと連動した音場補正にも対応する。専用モデルということで、SA-RS5の電源をオンにすると自動的にHT-A7000とペアリングを行う簡単な接続機能を搭載するほか、リアスピーカーの設置場所を大きく変えた場合に、本体上部の電源/オプティマイズボタンを押すことで音場補正を即座にやり直せる機能も有するなど、ユーザビリティも考慮されている。また、HT-A9と同様に、360 Realty Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)による立体的な音楽再生に対応することも魅力。

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まとめ

というわけで、リアスピーカーをワイヤレス化できるスピーカーシステムについてまとめてみた。実際にこれらの製品を使用するとわかるが、やはり、スピーカーケーブルなしでリアスピーカーを設置できるメリットは大きく、リアスピーカー導入の難易度が大幅に抑えられるのは魅力だ。リアルなリアスピーカーを設置することで、映画などのコンテンツを視聴する際にも臨場感が大きく向上する。また、いずれの製品も映像を見ないときは音楽再生用のスピーカーとして楽しめる。どの製品もオーディオ機器としての作り込みはしっかりしているので、ある程度本格的な音楽再生も可能となるなどイイことずくめ。ぜひチェックしてみてほしい。

土方久明

土方久明

ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。

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