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サウンドバーの代わりにも検討したい! 超ハイコスパスピーカー ELAC「DCB41」

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ELAC(エラック)のアンプ内蔵(アクティブ)スピーカー「Debut ConneX DCB41」。ARC対応HDMI、USB Type-B、光デジタル、フォノ、Bluetooth(aptX対応)など多彩な入力に対応し、テレビから音楽サブスク、アナログレコードまで、スピーカー1ペアでさまざまなコンテンツを高音質で楽しめる

ELAC(エラック)のアンプ内蔵(アクティブ)スピーカー「Debut ConneX DCB41」。ARC対応HDMI、USB Type-B、光デジタル、フォノ、Bluetooth(aptX対応)など多彩な入力に対応し、テレビから音楽サブスク、アナログレコードまで、スピーカー1ペアでさまざまなコンテンツを高音質で楽しめる

テレビの音がよくなるなら、5.1chまではいかないまでも、せめて2chスピーカーを導入したい。でも、AVアンプやプリメインアンプと組み合わせるのはシステム的に大掛かりになるし、それなりに予算もかかる。アンプ内蔵のアクティブスピーカーという選択肢もあるけれど、アナログ接続だとテレビを見るたびにスピーカーの電源を入れたり切ったりしなければならないので、それはそれでめんどくさい……。

ドイツのオーディオブランド、ELAC(エラック)が発売した「Debut ConneX DCB41」は、そんな悩みを抱える人にとって待望のスピーカーである。いちばんのポイントは「ARC対応HDMI端子搭載アクティブスピーカー」であるということ。

テレビとケーブル1本をつなぐだけでも使える! 万能性を備えたアクティブスピーカー

上記のとおり、「Debut ConneX DCB41」はARCに対応したHDMI端子を備えている。つまり、テレビ本体とスピーカーをHDMIケーブルで直結してしまえば、テレビの電源オン/オフや音量調整と完全に同期でき、個別の操作は基本的に必要ない

もちろんHDMIだけでなく、USBや光デジタル、Bluetooth、それにフォノ入力(MM対応)にも対応しており、有線・無線でつながるさまざまなデジタルメディアからアナログレコードまでをシームレスに鳴らせる、メディアセンター的な万能性を備えたスピーカーである。

19mm径ソフトドームツイーター、115mm径ポリプロピレンコーンウーハーの2ウェイ構成。サイズは140(幅)×245(高さ)×203(奥行)mmで、一般的なブックシェルフスピーカーの中ではやや小ぶりな印象。ダークブラウンを基調とした外観も相まって、テレビ横にも置いてなじむ佇まいだ

19mm径ソフトドームツイーター、115mm径ポリプロピレンコーンウーハーの2ウェイ構成。サイズは140(幅)×245(高さ)×203(奥行)mmで、一般的なブックシェルフスピーカーの中ではやや小ぶりな印象。ダークブラウンを基調とした外観も相まって、テレビ横にも置いてなじむ佇まいだ

HDMIからフォノ端子まで、多彩なインターフェイスを搭載

まず、ブランドと製品の概要を簡単にまとめておこう。ELACはドイツに拠点を置く老舗ブランドで、2026年には創業100周年(!)を迎える。極薄のアルミ板をアコーディオン状に折りたたんだ構造の「JETツイーター」や、クリスタルラインが美しいハイブリッド振動板を用いた「AS-XRコーンウーハー」、アルミ押し出し材を使ったスタイリッシュキャビネットなど、一見すればELACのスピーカーだとわかる独自のプロダクトで知られる。

近年は精力的に新シリーズの展開や価格レンジの拡大を進めていて、世界有数のエンジニアとして知られるアンドリュー・ジョーンズ氏による「本気のエントリーシリーズ」としてローンチされた「Debut」シリーズなどのヒットにより、新たなユーザー層を獲得しつつある。

「Debut ConneX DCB41」は、その「Debut」シリーズの流れを汲むアクティブスピーカー。ジョーンズ氏はすでにELACを離れているが、その設計思想は本機にも反映されている。

従来の「Debut」シリーズと同様に、上位モデルで使用される「JETツイーター」や「AS-XRコーンウーハー」は使用されず、19mm径のソフトドームツイーターと115mm径ポリプロピレンコーンウーハーを搭載したスタンダードな2ウェイ構成。

ラウンドの仕上げが美しい木製キャビネットで、背面上部にはスリット状のバスレフポートが設けられている。50W×2のクラスDアンプと各種入出力端子は片方のスピーカーに集約。アンプ内蔵側のスピーカーは3.5kgあり、比較的コンパクトなサイズの割にずっしりとした重みがある。テレビ横に置いたAV用途からデスクトップオーディオなどのニアフィールド用途まで、幅広い使い方が考えられそうだ。

アンプおよび端子類は、片方のスピーカーに集約されている。2本のスピーカーのL/Rアサインは、背面のスイッチで任意に切り替えが可能だ。使用時は、両者のスピーカーターミナルを付属のスピーカーケーブルで接続する

アンプおよび端子類は、片方のスピーカーに集約されている。2本のスピーカーのL/Rアサインは、背面のスイッチで任意に切り替えが可能だ。使用時は、両者のスピーカーターミナルを付属のスピーカーケーブルで接続する

アンプ内蔵側スピーカーの背面パネルには、多彩な入力端子が並ぶ。最初に触れたように、ARC対応HDMI端子を装備することがスペック上の大きな特徴。そのほかにも通常のライン入力とMM型対応フォノ入力を切り替えて使えるRCA端子、最大96kHz/24bitまでのハイレゾ音源に対応するUSB Type-B端子、光デジタル端子などを装備。サブウーハー接続用の端子も備えるので、2.1chの再生が可能だ。

また、両スピーカーは付属のスピーカーケーブルでターミナル同士を接続する形式になっているのだが、2本のスピーカーのL/Rアサインは背面のスイッチで任意に切り替えられる。電源の引き回しや組み合わせるテレビのHDMI端子の位置など、各自の設置上の都合によって自由に設定することができるのがありがたい。

目玉はARC対応のHDMI端子の装備だが、PCと接続できるUSB Type-B端子、Bluetooth対応、フォノ入力など、全方位的な対応力を備える

目玉はARC対応のHDMI端子の装備だが、PCと接続できるUSB Type-B端子、Bluetooth対応、フォノ入力など、全方位的な対応力を備える

「Debut ConneX DCB41」の付属リモコン。テレビとHDMI接続する場合、音量などの操作はほとんどテレビのリモコンで可能だが、入力切り替えや低音を強調するエフェクト機能「X Bass」などを使う場合は、このリモコンでの操作が必要になる

「Debut ConneX DCB41」の付属リモコン。テレビとHDMI接続する場合、音量などの操作はほとんどテレビのリモコンで可能だが、入力切り替えや低音を強調するエフェクト機能「X Bass」などを使う場合は、このリモコンでの操作が必要になる

「ARC」+「CEC」で“テレビのスピーカー”として完全に同期する!

というわけで、まずはARC対応HDMI端子を利用して、自宅リビングに設置しているTVS REGZAの55V型液晶4Kテレビ「55Z670K」との組み合わせを試してみた。ARC(Audio Return Channel)は、テレビなどの映像表示機器から音声信号をオーディオ機器に“戻す”ための技術。

以前AVアンプ/プリメインアンプ+スピーカーの組み合わせでテレビの音の強化を試したことがあったが、ARC対応HDMI端子搭載アクティブスピーカーである今回の「Debut ConneX DCB41」の場合は、スピーカーをテレビに直結できるので、よりシンプルにテレビの高音質化を図れる。

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具体的には、HDMIケーブルで両機を接続し、テレビの「外部入力設定」よりCECの設定を行うだけ。「CEC(Consumer Electronics Control)」はHDMIデバイスをひとつのリモコンで一括して制御できる機能で、一度設定してしまえばスピーカーをテレビと完全に同期でき、電源のオン/オフや音量調整をテレビのリモコンで一括操作できるようになるというもの。製品によっては完全に同期せず、動作が不安定なことも少なくないのだが、「Debut ConneX DCB41」は問題なく同期し、我が家の環境では何の問題もなく“テレビのスピーカー”として使用できた。

本体前面右下にあるLEDは、入力信号を表す。緑はHDMIで、そのほかに赤(光デジタル)、白(USB Type-B)、紫(フォノ)、青(Bluetooth)など、信号により色が変化する。リモコンの「LED」ボタンでLED表示のオン/オフも可能だ

本体前面右下にあるLEDは、入力信号を表す。緑はHDMIで、そのほかに赤(光デジタル)、白(USB Type-B)、紫(フォノ)、青(Bluetooth)など、信号により色が変化する。リモコンの「LED」ボタンでLED表示のオン/オフも可能だ

写真のように普段リビングルームのオーディオ用に使っているフォステクスの2ウェイスピーカー「GX100MA」の専用スピーカースタンドに「Debut ConneX DCB41」を設置。映像コンテンツを見る前に音楽コンテンツを再生し、スピーカーとしての音質を確認してみた。

テレビ内蔵アプリからAmazon Music Unlimitedを起動し、坂本龍一のピアノ・ソロ曲「Aqua」(アルバム『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020』収録)を聞くと、しんと静まり返ったステレオイメージが眼前にスッと立ち現れる。坂本龍一の晩年のピアノ・ソロは、空間に楽音を一音一音ゆったりと間をおいて配置し、その隙間に生まれる豊かな響きを聞かせることを何より大切にしたが、その意図をしっかり反映した鳴り方だ。

筆者宅リビングの55V型液晶4Kテレビ、TVS REGZA「55Z670K」と組み合わせたところ。スピーカースタンドはオーディオ用に使っているフォステクスの製品。再生音を聞きながら、スピーカーの前後位置を検討。最終的に写真のようにスピーカーのバッフル面をテレビ画面より8cmほど前方へ出した位置で落ち着いた

筆者宅リビングの55V型液晶4Kテレビ、TVS REGZA「55Z670K」と組み合わせたところ。スピーカースタンドはオーディオ用に使っているフォステクスの製品。再生音を聞きながら、スピーカーの前後位置を検討。最終的に写真のようにスピーカーのバッフル面をテレビ画面より8cmほど前方へ出した位置で落ち着いた

正しく設置すれば繊細で濃密な空間表現力を発揮する

エラックといえば、「JETツイーター」による繊細な空間表現をサウンドのキャラクターとして認知されているオーディオファンは多いと思う。先述のようにこの「Debut ConneX DCB41」は、エントリークラスの製品であることから「JETツイーター」ではなく一般的なソフトドームツイーターが採用されているものの、基本的なトーンは従来のエラックサウンドに通じる

彩度を抑えたモノトーン調の音色、エッジがやさしく丸められた音像の再現も的確で、静謐ながらも濃密な空間再現も相まって、日中の室外の騒々しさから我が家だけが完全に隔離されたような感覚すらある。

55V型テレビの両脇に設置しているので、左右スピーカー間の距離は約140cm。最初はテレビの画面とスピーカーのバッフル面がフラットに並ぶように設置し、その後スピーカーを約8cm前に出して同じ音源を聞き比べたのだが、後者のほうが明らかに音像のフォーカス感が高まり、音場の広がり感も豊かになった。

専用ルームでテレビと正対して視聴するという人ならスピーカーをやや内振りに設置し、2本のスピーカーと自身の視聴ポジションで正三角形を結ぶのが理想だが、家族の集うリビングに設置する場合は無理に内振りにする必要はない。

ただし、テレビとスピーカーの前後関係においては、テレビ画面との干渉を避けるため、画面より5〜8cmほどスピーカーを前に設置したい。低音のダブつきが気になる場合は、背面のバスレフポートと壁面の距離を十分に確保する、スピーカー底面にインシュレーターを挟むといった対処で、ベースラインが引き締まって聞こえるようになる。

この設置のまま、ネット動画のさまざまな映画コンテンツを見ると、テレビの内蔵テレビよりも鮮明で押し出し感の強い再生が楽しめる。もちろん、ただ単純にテレビの音がブーストされ前面に出てくるだけでなく、全体の質感の向上が目覚ましい。

声の湿り気、劇伴の弦楽器のしなやかさ、管楽器の光沢感などの再現力がグッと上がる。今回はサブウーハーを接続した2.1ch再生は試せなかったが、代わりに低音を強調するエフェクト機能「X Bass」を使ってみると(この機能のオン/オフには付属リモコンで行う)、小型スピーカーらしからぬ量感の低音が広がった。コンテンツによって相性があるが、アクション/SFなどの大作映画ではおおむね好印象が得られたので、適宜切り替えながらその効き目を試していただきたい。

なお、テレビとの接続には光デジタル端子を使うこともできるが、その場合は「Debut ConneX DCB41」の付属リモコンで入力切り替えや音量調整をすることになる。

音楽コンテンツに引き続き、各種ネット動画なども再生。サブウーハーの併用や、低音を強調するエフェクト機能「X Bass」などでより迫力のある再生も期待できる

音楽コンテンツに引き続き、各種ネット動画なども再生。サブウーハーの併用や、低音を強調するエフェクト機能「X Bass」などでより迫力のある再生も期待できる

アナログレコードやハイレゾもミニマムな組み合わせで楽しめる

MM型対応フォノ入力の搭載も、アナログレコードが復権した昨今の状況を考えればうれしいポイント。今回は、自室で使用しているトーレンスのターンテーブル「TD-147 Jubilee」(MM型カートリッジはゴールドリングの「1012GX」)をリビングルームに持ち込んで「Debut ConneX DCB41」と組み合わせて聞いてみた。

4月にリリースされた大滝詠一「NOVELTY SONG BOOK」のアナログレコードから「ゆうがたフレンド(USEFUL SONG)」を再生すると、イントロのホーンセクションがいきなり快活に響き渡る。自室では普段、ハーベスの「HL-Compact」と組み合わせて聞いているのだが、ウェルバランスで中庸を得たハーベスの鳴り方と比べるとこちらはよりスピーディーで、弾力ある低音の再現が印象的。バンジョーが刻むリズムも小気味よく、大滝詠一と鈴木慶一のデュエットボーカルの描き分けも巧みだ。

小型スピーカーらしからぬサウンドステージの広さなので、リビングでレコードを楽しむ向きにも好適。巷では1万円前後のスピーカー付きターンテーブルが人気だが、そこからのグレードアップ・プランとしても強くおすすめしたい

トーレンスのターンテーブル「TD-147 Jubilee」を組み合わせて試聴。「Debut ConneX DCB41」はMM型のみの対応でMC型には対応していない

トーレンスのターンテーブル「TD-147 Jubilee」を組み合わせて試聴。「Debut ConneX DCB41」はMM型のみの対応でMC型には対応していない

PCやスマートフォンとUSB接続して、各種ストリーミング音源やハイレゾ音源も簡単に楽しめる。書斎のデスクトップに設置して、PCとの組み合わせで聞いてもよいが、リビングルームで使用するならスマホとの組み合わせが便利だ。

今回は「Debut ConneX DCB41」のUSB Type-B端子と「iPhone SE」のLightning端子をつなぐ変換USBケーブルを使用し、同じくAmazon Music Unlimitedでハイレゾ音源を聞いた。たとえばザ・ウィークエンド「Take My Breath」(44.1kHz/24bit)のようにファットなベースが含まれた楽曲では、低域を強調し過ぎることなく、中域のボーカルやコーラスワークを中心として無理のないレンジ感でキビキビとした再生を聞かせる。

同じ曲をBluetoothのワイヤレス接続で聞くと、スネアドラムの独特なアタック感や中高域を華やかに彩るシンセサイザーのニュアンス再現性がやや薄れる印象。家族時間にBGM的にカジュアルに鳴らすには過不足のない鳴り方だが、有線接続によるハイレゾ/ロスレス再生と聞き比べるとその差は歴然。しっかり音楽と向き合いたいときは、迷わず有線接続を選びたい。

Lightning→USB Type-B変換ケーブルを使用して、「iPhone SE」と「Debut ConneX DCB41」を有線接続。USB接続時は「Debut ConneX DCB41」本体のLEDは白に点灯する

Lightning→USB Type-B変換ケーブルを使用して、「iPhone SE」と「Debut ConneX DCB41」を有線接続。USB接続時は「Debut ConneX DCB41」本体のLEDは白に点灯する

まとめ:老舗ブランドの高音質をミニマムシステムで楽しめる、これ以上ないほどハイコスパなスピーカー

オーディオビジュアルの基本は、テレビの両脇にスピーカーを置くところからスタートすると言われている。しかし現代の日本の住環境でそれを実践するのは、言うほど簡単ではない。そもそも設置できるほどの十分なスペース確保が前提条件になるし、確保できたとしても家族、特にパートナーの了承を得ることを最大の難関とするご家庭は少なくないだろう(筆者もそうです)。

その点、ARC対応HDMI端子搭載アクティブスピーカーである「Debut ConneX DCB41」は、「AVアンプの類を必要としない」「一度設定してしまえば従来となんら操作性が変わらない」という圧倒的なアドバンテージがある。10万円以下のスピーカーを1ペア導入するだけでテレビの音質が飛躍的に向上し、音楽サブスクやアナログレコードも楽しめてしまうわけだから、「テレビの音をどうやってよくするか問題」の最有力ソリューションとして「Debut ConneX DCB41」の導入を検討してみてはいかがだろうか。

伊藤隆剛
Writer
伊藤隆剛
雑誌編集者、広告デザイナー/プロデューサーを経て、フリーランスのライター/エディターへ。音楽・映画・オーディオ/AV系ガジェットのレビュー、インタビュー&構成を得意分野とする。愛用スピーカーはハーベス「HL-Compact」。
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柿沼良輔(編集部)
Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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