レビュー

プロジェクターや「iPad」の音質が爆上がり! Bluetoothレシーバー「BR13」レビュー

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

FiiO(フィーオ)Electronicsは、2007年に中国で設立された世界最大級のポータブルオーディオメーカー。DAP(デジタルオーディオプレーヤー)類の企画開発が得意で、今回お預かりしたDAC機能を中心としたモデルも、価格を超えた高音質と多機能ぶりに驚かされます。

近年の製品ではデスクトップユースにぴったりのオーディオストリーマー「R7」を試聴したことがありますが、スマートフォンのような洗練された操作性と、XLRなどの充実したインターフェイス、愚直とも言えるほどウケを狙っていない素直な音質に、先入観を打ち砕かれたのを覚えています。

本稿では、2023年12月に発売されたばかりのBluetoothレシーバー兼USB-DACの「BR13」をレビューします。既存のオーディオシステムにアドオンすることで、最新のBluetooth受信機能を拡張できるうえ、DAC(D/Aコンバーター)機能に加えDDC(D/Dコンバーター)も付けちゃうという盛りだくさんな内容のデジタルハブです。さっそく「BR13」ならではのいろいろな使い方を試してみることにしましょう。

USB-DAC機能を持っているという意味で「BR13」と似た製品として、FiiOには「K11」がありますが、こちらはヘッドホンアンプ機能がメインで、Bluetoothには非対応。「K11」は以下関連記事でレビューしていますので、ぜひこちらもご覧ください。

関連記事
格安でもバランス駆動の魅力を味わえるヘッドホンアンプFiiO「K11」レビュー
格安でもバランス駆動の魅力を味わえるヘッドホンアンプFiiO「K11」レビュー
FiiOのヘッドホンアンプ兼USB-DAC「K11」は、2万円台でもスペックが充実。バランスヘッドホン出力にハイレゾ対応など、オーディオの楽しみを存分に味わえます。
2024/01/24 09:00

「BR13」の主要スペック
●入力端子:USB Type-C、デジタル音声入力2系統(同軸、光)※同軸端子は入出力兼用
●出力端子:デジタル音声出力2系統(同軸、光)、アナログ音声出力1系統(RCA)
●Bluetoothバージョン:Ver.5.1
●対応コーデック:SBC/AAC/aptX/aptX LL/aptX Adaptive/aptX HD/LDAC
●対応サンプリングレート/量子化ビット数(USB Type-C):最大96kHz/32bit
●寸法:98(幅)×96(奥行)×26.5(高さ)mm(アンテナ含まず)
●重量:約135g

「BR13」は多機能すぎるデジタルハブ

平面でおよそ10cm四方のコンパクトな「BR13」は、別途ACアダプターなどが付属しないUSB Type-C給電の製品。フロント左のボタンで電源ON/OFFと再生/一時停止を行います。VA液晶ディスプレイは大きくてブルーの文字が明瞭。必要十分な接続や設定内容をきちんと表示してくれるのもうれしいところです。

右の十字キーのようなボタンは、音量の上下と、入力切り替え(Bluetooth/USB/光/同軸)、イコライザー(音質の)切り替えができます。なお、独自のコントロールアプリ「FiiO Control」を使えば、イコライザーをカスタマイズすることもできます。

大きめの表示が見やすいVA液晶ディスプレイ

大きめの表示が見やすいVA液晶ディスプレイ

先述したとおり、「BR13」は、Bluetooth入力を持っていないプレーヤーやアンプの入力を拡張するほか、USB Type-C、同軸、光デジタル入力も備え、アナログRCA出力できるDACとして使えます。同軸、光デジタル出力も持っているので、DDC(D/Dコンバーター)としても使えます。同軸デジタル端子は1つしかない(入出力兼用となる)ことには留意しましょう。

本体リアにはUSB Type-C(右端)のほか各種音声入出力端子が並びます

本体リアにはUSB Type-C(右端)のほか各種音声入出力端子が並びます

この価格帯とサイズの製品ですとDAC、セレクターなど、それぞれ必要な機能に合わせて変換機器を購入することになりそうなものです。でも本製品は、Bluetooth受信機能だけでなく豊富なデジタル入出力を持っていることから、デジタルハブとして使え、かつDACとしての機能も有しており、ユーザー環境次第でいろいろな使い方ができそうです。

逆に、多機能すぎてどう使ってよいのかよくわからない側面もありますが、基本的には、Bluetoothを含む多彩なデジタル入力信号を、高音質なアナログで出力するDACととらえればよいでしょう。

素性を知るために同軸デジタル入力をテスト

まずは同軸デジタル(COAX)入力を使ってDACとしての基本能力をチェックしました

まずは同軸デジタル(COAX)入力を使ってDACとしての基本能力をチェックしました

「BR13」が対応するデジタル入力信号は、同軸は192kHz/24bit、光は96kHz/24bit、USB Type-Cは96kHz/32bitまで。ということで、とりあえず192kHzの信号が入る同軸デジタル入力にUltra HDブルーレイプレーヤーをつないでみることにします。プレーヤーはソニーの「UBP-X800M2」、プリメインアンプはAccustic Arts「POWER-1MK3」、スピーカーはKEF「Reference5」という、音に誇張感のない布陣です。

「UBP-X800M2」をネットワークプレーヤーとして使い、宅内NAS内のハイレゾファイルを聴いていきます。「BR13」はイコライザーをかけることもできますが、聴いたところ各プリセットはかなり誇張感があるので、ひとまずOFFを選びます。

上原ひろみのジャズアルバム「Move」(192kHz/24bit)では、流麗なピアノは縁取られたような硬さがなく、ウッドベースの豊かな響きも案外深く、各シンバルや大小さまざまのタムがそこかしこにきちんと定位。

ピアノ高音域に時折響きが濁るほか、低音域がやや甘く超低域まで長く伸びきっていないあたりが高級DACに及ばないかなぐらいのもので、むしろ素直かつクリアなサウンドは褒められて然るべき。ドゥダメル指揮ロサンゼルス・フィルによる「幻想交響曲」(96kHz/24bit)も、やや人工的で軽く平板に感じる箇所がありながらもライブ感はよく出ており、とても1万円そこそこの製品とは思えない穏当な仕上がりで、まずはひと安心といったところです。

USB-DAC機能も自然で聴き疲れしない安定した音質

それならばと、今度はPCとUSB Type-C端子をつないで、USB-DACとしてハイファイオーディオシステムに組み込み、サウンドチェックします。このときはPCから音声入力をもらうだけでなく、同時に電源も取ることになります。「BR13」の「IN(Input)」ボタンを押して「USB IN」モードに入ります。

接続したのは「MacBook Air」(M2、2022)で、音楽再生ソフト「Audirvana」を使用。Eight Island Recordsのチックコリアトリビュートジャズアルバム「Spirits of Chick Corea」(96kHz/24bit)では、クラリネットの高音域の響きも濁りや揺らぎがなくていねいに描きます。

ボーカルの定位もよく、ほかの楽器が入ってきても混じり合わず正確な印象です。やはりやや平板で低域がゆるめなのが高級機との違いでしょう。もっとも、全体的に誇張感がなく自然なので、長時間聴いていても疲れない心地よさがあります。

Bluetoothレシーバーとしても安定して優秀!

入力を「BLUE IN」とし、電源長押しでウォークマン「NW-ZX707」とペアリング。ディスプレイには「LDAC」の表示もされました

入力を「BLUE IN」とし、電源長押しでウォークマン「NW-ZX707」とペアリング。ディスプレイには「LDAC」の表示もされました

「BR13」は、LDAC、aptX Adaptiveといった最新の高音質コーデックでBluetooth転送を高速かつ安定して行えるのがひとつのウリ。そこで、ソニーのウォークマン「NW-ZX707」からのLDAC伝送を試します。LDACは96kHz/24bitのハイレゾ音声をダウンサンプリングなしにBluetoothで伝送できるソニーが開発した技術です。

「Spirits of Chick Corea」を聴くと、先ほどの「MacBook Air」とのUSB Type-C接続と定位や音場感では遜色なく、むしろ高音域にやや華やかさと艶が乗って、聴きようによっては心地よく感じられるほど。アリソン・バルサムのトランペット・コンチェルトも、刺々しさが減り音階が滑らかに丸まり、不思議とやや重厚感も出て、ハイファイオーディオの香りがほのかに感じられます。

ビリー・ジョエルの80年代ロック「Allentown」(96kHz/24bit)も、カッチリとしたピアノとバスドラ、ビリーのやや硬質な声、鮮烈なシンバルが、アルバム冒頭で示される反戦の熱量を感じさせます。

一転、大貫妙子の「Tema Purissima」(DSD 2.8MHz)では、ウォームな大貫の声が滑らかに響きます。もちろんPCM変換でそのほかの音質調整機能はすべてオフという条件にして再生しましたが、有線接続に遜色ない音が聴けることに驚きました。音量を手元のウォークマンで調節できるのも便利です。

実は「iPad」で映画を見るのにもぴったり

次に、「iPad(第10世代)」の音声をBluetooth(コーデックはAAC)で「BR13」に飛ばし、アナログ音声出力(RCA)で接続したアクティブスピーカーで音声を再生してみましょう。ちょっとしたデスクトップシアターです。

用意したのは、FOSTEXの10cmウーハーと19mmドームツイーターによる2ウェイアクティブスピーカー「PM0.4c」。手持ちの「iPad」を活用して、リラックス姿勢でミニシアターを楽しもうという趣向です。

「iPad」のBluetooth設定。「BR13」とBluetooth接続しています

「iPad」のBluetooth設定。「BR13」とBluetooth接続しています

Amazonプライム・ビデオで見る「葬送のフリーレン」16話では、フリーレンとフォル爺のセリフが生々しい。「BR13」は若干硬めでややハイ上がりな、いかにもESSテクノロジーのDACっぽいところがありますが、スピーカーの「PM0.4c」に刺々しさがないこともあって、全体的には自然なハイファイサウンドで聴けます。2人が夜の丘で会話を交わすシーンでは、無数の星の下で背景に流れる鮮明なゴーゴーという風の音が、あたかも80年の記憶を走馬灯のように詳らかにさかのぼっているかのよう。シーンの意味を見事に伝えます。

ちなみに「BR13」は、同時に2つの機器でBluetooth接続が可能です(マルチポイント対応)。ソースを切り替える際にいったん切断してから再接続するといった手間がなく便利な機能ですが、ここでは「iPad」で映画を再生しつつ、同時接続した「iPhone」の「FiiO Control」アプリで音質調整の操作をしてみます。

左のふたつが「iPhone」の「FiiO Control」アプリ画面。イコライザーの調整などを行えます

左のふたつが「iPhone」の「FiiO Control」アプリ画面。イコライザーの調整などを行えます

これがかなり便利。イコライザーの効果をリアルタイムで確認しながら調整できるのです。イコライザーは7個のプリセットのほか、2つの「Custom」が用意されています。プリセットはどれもかなり誇張感があるので、「Custom」で好きなパラメトリック曲線を描いたほうがよい結果が得られるかも。

「FiiO Control」アプリではイコライザーのカスタマイズも可能です。右の画面のように、帯域ごとに強調したり抑えたりして、2つのスロットにメモリーしておけます

「FiiO Control」アプリではイコライザーのカスタマイズも可能です。右の画面のように、帯域ごとに強調したり抑えたりして、2つのスロットにメモリーしておけます

リップシンク調整に有効な「Low Lantency mode」

なお、「BR13」には「Low Lantency mode」(低遅延モード)があるので、映像と音のズレが気になる場合はこの機能も試してみるとよいでしょう。この機能はaptX LL(Low Latency)モードを優先するという設定のようです。Bluetoothの送信側も同コーデックに対応している必要があることには注意しましょう。

ただし、「BR13」のBluetooth音声は、初期設定のまま使っていても一般的な映画などを見る限りさほど遅延を感じませんでした。それでも「Low Lantency mode」があるのは、精神衛生上心強いものです。

「Low Lantency mode」のオン/オフはやはり「FiiO Control」アプリで。モードを切り替えると、本体が再起動します

「Low Lantency mode」のオン/オフはやはり「FiiO Control」アプリで。モードを切り替えると、本体が再起動します

条件さえ揃えばプロジェクターと組み合わせてハイコスパシアターに!?

「BR13」のサウンドが予想以上によかったので、オマケとして、プロジェクターと組み合わせた大画面シアターシステムを組んでみました。もちろんBluetooth入力もあるので、プロジェクターを使わない場面では音楽再生のハブとなる“ハイコスパリビングシアター”を目指します。

プロジェクター側のインターフェイス次第ですが、Bluetooth接続や光デジタル接続を使えばプロジェクターの音質強化にも使えます

プロジェクター側のインターフェイス次第ですが、Bluetooth接続や光デジタル接続を使えばプロジェクターの音質強化にも使えます

プロジェクターは、エプソンの超短焦点プロジェクター「EH-LS650」。本体端から27cmほどの投写面に100インチ映像を映せます。ここでは、「EH-LS650」からの光デジタル音声出力を「BR13」でD/Aコンバートし、さらにアクティブスピーカーにつなぎます。ここではさきほどのFOSTEX「PM0.4c」より一回り大きい「PM0.5d」を使ってみます。

接続イメージはこちらのとおり。今回はさらにプロジェクターにUltra HDブルーレイプレーヤーを接続しました。音楽を再生する場合はDAPやスマホなどと「BR13」をBluetooth接続すればOK。なお、プロジェクターは製品によってBluetooth対応や光デジタル出力を持っているものなどさまざま。スペックを確認してみましょう

接続イメージはこちらのとおり。今回はさらにプロジェクターにUltra HDブルーレイプレーヤーを接続しました。音楽を再生する場合はDAPやスマホなどと「BR13」をBluetooth接続すればOK。なお、プロジェクターは製品によってBluetooth対応や光デジタル出力を持っているものなどさまざま。スペックを確認してみましょう

「EH-LS650」は、先行する上位モデル「EH-LS800」よりもちょっと焦点距離を要しますが、価格はリーズナブルで本体サイズもコンパクト。画質も「EH-LS800」と遜色なく自然なトーンが良好で、いわゆる画素ずらし4Kながら顔アップになった肌理まで十分解像します。

ヤマハとのコラボレーションによる内蔵スピーカーも悪くはなく、この1台で映像も音も完結できますが、ここでは「EH-LS650」が光デジタル音声出力を持っているのを利用して、好きなDACやアクティブスピーカーを活用したシンプルな2chでのさらなる高音質化を目指します。

フォステクス「PM0.5d」

フォステクス「PM0.5d」

FOSTEX「PM0.5d」は、13cmウーハーと19mmソフトドームツイーターをそれぞれ35W、23Wのデジタルアンプでバイアンプ駆動する圧倒的コスパのアクティブスピーカー。映画のセリフやボーカルが明瞭で、背景にオーケストラを従えたライブコンサートブルーレイ「Peter Cetera with Amy Grant」では2ch再生でも各楽器の定位や音色、そして奥行きに拡がるサウンドステージが感動的。高価なオーディオシステムを揃えるのが馬鹿らしくなるほどです。

Ultra HDブルーレイで再生する映画「宇宙戦争」も、このサイズならサブウーハーなしでも十分恐く、作品として楽しめます。ちょっとしたトールボーイ型スピーカーと並べて鳴らしても、どちらが鳴っているかすぐにはわからないでしょう。

このハイコスパリビングシアター、スピーカー裏にあるボリュームノブを操作しなくてもよいとはいえ、「BR13」にはリモコンがないため、入力切り替えと音量調整がリモートでできないのが難点。“リビングシアター”と言いましたが、「BR13」をデスクトップに置いての“書斎シアター”が現実的でしょう。

【まとめ】「BR13」は映画作品の音質強化に使いたい「プラスワン」アイテム

手のひらサイズで1万円ほどの「BR13」は、既存のオーディオシステムを最新のBluetooth対応にする製品です。しかし、据え置き型ハイファイオーディオに匹敵するDACやそのほかのアーキテクチャーを備えています。

これだけの優秀な機能性であれば、音楽ソース再生だけに使うのはもったいない。「iPad」などのタブレットやプロジェクターと組み合わせて、映画やドラマ、ライブなど映像作品の音を強化する「プラスワン」アイテムとする使い方を提案したいです。

遠藤義人
Writer
遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。
記事一覧へ
柿沼良輔(編集部)
Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
記事一覧へ
記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
本ページはAmazonアソシエイトプログラムによる収益を得ています
関連記事
SPECIAL
ページトップへ戻る
×