ELAC(エラック)から、HDMI端子を搭載するアクティブスピーカーの新モデル「Debut ConneX DCB41 DS」(以下、「DCB41 DS」)が登場した。型番を見てピンとくる方もいるだろうが、2023年5月に発売され話題になった「Debut ConneX DCB41」のカラバリに位置づけられる製品だ。スタンダードモデルでブラック基調だったキャビネットが、シックなつや消しのホワイトにブラッシュアップされ、明るい印象になっている。
専用スタンドも付属する「Debut ConneX DCB41 DS」。スタンダードモデルよりも高価だが、付属品のことを考えれば、お値打ち価格と言える。そのレビューが本稿の趣旨
……と、この情報だけだと、「はいはい、人気のスピーカーにホワイトモデルが出たのね」という認識で終わると思う。しかし、単に色が白くなっただけじゃないのだ。というのもこの「DCB41 DS」、ブルックリン発のメンズウェアブランド「Adsum(アドサム)」とコラボしたものなのだが、色に合わせてデザイン全体も大きく変更されているのである。もちろん型番が共通なので、スピーカーとしての機能はスタンダードモデルと同じだが、正直、パッと見で別モデルに見えるほど外観が変わっている。
「DCB41 DS」のイメージ写真もオシャレ
ちなみに「DCB41 DS」の価格.com最安価格は94,908円(税込、2024年4月17日時点)で、大体どのショップも10万円前後で販売されている。いっぽう、スタンダードモデルの価格.com最安価格は75,924円(税込)。単なるコラボモデルで、本体カラーが白くなっただけだとすれば、約2万円の価格差は大きく感じる。しかし、「DCB41 DS」のデザイン詳細を知ると、「予算を2万円プラスしてホワイトのほうが欲しいな」と思わせるほど洗練されているのだ。
というわけで、少々前置きが長くなったが、今回はこの外観「デザイン面」を中心に、オシャレになった「DCB41 DS」の魅力に触れていきたい。スピーカーのレビューとして、デザインを軸に語るのは少々邪道感があるかもしれないが、それくらい見た目がエモいモデルなのだ。
まず、製品の基本情報を簡単におさらいしておこう。本機は、19mm径ソフトドームツイーターと、115mm径のポリプロピレンコーンウーハーを搭載する2ウェイ・ブックシェルフタイプのアクティブスピーカー。50W×2のクラスDアンプも内蔵する。
ARC対応のHDMI端子を搭載し、テレビと直接接続して音を出せるのが機能的な特徴だ。また、Bluetooth音声入力にも対応し、USB入力経由では最大96kHz/24bitのハイレゾ再生も行える。そのほか、光デジタル入力とアナログ(RCA)入力も備え、後者はフォノ入力も兼用している(アナログレコード再生に必要なフォノイコライザーを内蔵している)。つまりは、テレビ、スマートフォン、PC、アナログレコードを含むプレーヤーなど、多様化する今どきのオーディオビジュアル環境に全方位的に対応するスピーカーだ。
パッケージに記載されていた接続イメージ。PCやスマートフォン、アナログレコードプレーヤー、テレビ……とさまざまな機器に接続できる。特に重要なのはHDMI端子を搭載していること。テレビと電源連動するだけでなく、テレビのリモコンで音量調整もできる
と、事前資料で確認した時点では、スタンダードモデルと同じ基本仕様だったわけだが……。
今回、取材で実物を取り出してまずびっくりしたのが、スタンダードモデルとキャビネットの形が全然違うこと。角の仕上げに丸みがなくなり、直線的な形状に変更されている。ホワイトの色味はシックでやわらかい印象ながら、フォルムはシャープになっているというバランスが非常によい。インテリアになじみやすいオシャレ感がある。
キャビネットがより直線的な形状に変更されていて、パッと見で受ける印象がスタンダードモデルとはだいぶ違う。これは保護用サランネット取り付け穴がないことも影響しているだろう。つや消しのホワイトもシック
ちなみに、スタンダードモデルがこちら。角に丸みがあるほか、フロントバッフルがツートンカラーだったり、ユニット保護用サランネット(ネットはジャージのような素材)取り付けのための穴があったり、大きめの「ELAC」ブランドロゴがあったりする
そして、サランネットが金属製のグリルになって、マグネットで留められるようになった。これにより、グリルネットの取り外しがしやすいだけでなく、フロントキャビネットの四隅にあったサランネット固定用の穴がなくなり、グリルネットを外した際の見た目が非常にスマートになっているのだ。さらに、スタンダードモデルで本体フロント下部に配置されていた「ELAC」ロゴも省略され、とにかくシンプルでカッコよい。
ユニット保護用のネットは金属製
「ELAC」ロゴはネットの右下に小さく配置される形になった
しかしELACといえば、ドイツ発のスピーカーブランドとして高く評価され、その地位を確立している存在。それが、いかにファッションブランドとのコラボとはいえ、ロゴの配置まで含めてここまで大きな外観の変更を許したことに驚いた。しかしこうして実機を見ると、コラボした意味が最大限に発揮された意匠になっている。
あと個人的に感動したのは、左右スピーカーをつなぐためのケーブルを接続する背面端子の+/−の色までシックになっていること。大体、+が赤で−が黒になる場合が多いと思うが、+にグレーを配置したことに感激した。さらに付属ケーブルまで本体カラーに合わせたホワイトにしており、先端部の+/−もスピーカー端子の色に合わせている。なんというか、今回のコラボへの本気度を感じた次第だ。
片方のスピーカーにアンプなどが集中する形で、L/R両スピーカーはスピーカーケーブルでつなぐ。そのためのスピーカー端子が黒とグレー(元々は黒と赤)に変更されている! 普段は見えない部分にまで手を抜かない本気度の表れか……
電源・HDMI・スピーカーケーブル、リモコンも付属。スピーカーケーブルとリモコンの色も本体に合わせられていて、スピーカーケーブルの+/−の色は端子と揃えられている。接続を間違えないという意味でも親切な設計だ
もうひとつ、デザインに関して重要なのは、「DCB41 DS」に付属してくる専用スタンドがかわいいこと。スタンダードモデルにはスタンドは付属しないので、これは「DCB41 DS」ならではの魅力だ。スピーカー本体の直線的なフォルムに対し、スタンドは金属製でスマートな流線形となっているのがまたよい。オシャレなスピーカースタンドをネットで検索すると出てきそうなもので、予算を2万円プラスすればこれが付いてくるというのは単純にうれしい。
ブラウンのスピーカー「L2」を思わせる金属製のスタンドが付属。スピーカースタンドは買うと結構高いし、サイズがぴったりなものを探すのは難しいのだ
さらにオマケ(?)として、Adsumとコラボしたトートバッグまで同梱されている。これがまた、シンプルなロゴ入りデザインで、マチ付きの大容量タイプと、普通に使い勝手がよさげなバッグなのだ。
これら専用スタンドとトートバッグに関しては、特にAdsumのセンスをシンプルに感じられる部分だと思う。オーディオ機器として必要なデザインだけにこだわったのではなく、ファッションブランドの目線でこだわったアイテムが付属しているというのがポイントだ。
持ってみるとこんな感じ。肩掛けもOK
テレビ脇に置くもよし
スピーカーの記事なので、一応最後に音質についても軽く触れておくが、内部のスピーカーユニットや構成は同じなので、基本はスタンダードモデルと変わらないと思う。音質の徹底レビューについては、ぜひ以下より、スタンダードモデルの試聴記事を参照いただきたい。
「DCB41 DS」の試聴で印象的だったのは、中低域が豊かで、打ち込み系の楽曲を再生したときの低音にキレがあること。質感もよく、ハイパワーでも音が破綻せず心地よく聴ける。スピーカーで音楽を鳴らす楽しさがちゃんとあり、スマホからのBluetooth再生も十分に楽しめた。ダイアナ・クラールのようなジャズボーカルでは、楽器のアコースティック感やハスキーな声の質感が伝わり、オーソドックスな部分での表現力が高いことを実感できる。
いっぽう、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」を再生するとリズムのキレがよく、打ち込み音源の押し出しと立体感が表現されていて、今どきの楽曲を楽しく鳴らせる地力があるのがわかる。ブラッシュアップされた本体デザインに似たエモさを、音にも感じた次第だ。
PC脇に置くもよし。ちなみに本体前面のLEDライトはリモコンで消灯できる。こういったオーディオライクなニーズに配慮しているところは、さすが老舗のスピーカーブランドである
というわけで、「DCB41 DS」が単なるカラバリモデルではないことがおわかりいただけただろうか。そもそもスタンダードモデルの仕様だけでも十分に話題性があり、実際に人気だったわけだが、そこに高いデザイン性が加わり改めて魅力が増した。
個人的に、昔から音楽とファッション的なカッコよさはセットになることが多いと思っているので、マストではないけれども、オーディオ機器が見た目のよさも追求してくれていると気分が上がる。
最近は、「何となくカッコいい」という感覚からレコード再生を始める若年層も増えていると聞く。「DCB41 DS」は、「レコード再生に必要なフォノ入力を搭載しているオシャレなアクティブスピーカー」という側面もあるわけで、そういうファッション的感覚からオーディオ分野に入った人にとって有力なスピーカーでもあると思うのだ。
今どきのオーディオビジュアル環境への全方位的な対応力を持ちながら、ファッション的なカッコよさも兼ね備えている、とにかく製品力の高いアクティブスピーカーである。
最後にオフィシャルのイメージカットをもう1枚。ここでも「DCB41 DS」アナログレコードプレーヤーと組み合わせられている。フォノイコライザーやスピーカーまで内蔵したアナログレコードプレーヤーもあるが、そういうアナログレコードユーザーのステップアップにもぴったりの存在だろう