iPhoneでもLDACやaptX Adaptive、aptX Losslessを使いたい。それらのコーデックにフル対応でコンパクトなドングル型Bluetoothトランスミッターが欲しい。ワイヤレスオーディオ好きiPhoneユーザーのその願いへの最適解になってくれそうなアイテム、FiiO「BT11」が登場しました。
さっそく試してみた率直な感想は「発売直後の現状でも十分に実用的。しかし予告されているアップデートが実施されたときこそ最適解として完成する!」です。それすなわち、アプデ前に導入すれば導入時とアップデート時で二度喜べるやつ! その内容を紹介していきます。
Apple Musicではロスレスハイレゾストリーミングを提供していながら、iPhoneのBluetoothコーデック対応はいまだSBCとAACのみ。AirPlayもいまだハイレゾ非対応な現状を見れば、アップルにiPhoneへの高音質コーデック搭載を期待するのは難しそうです。iPhoneユーザーがLDACやaptX系の高音質コーデックに対応するイヤホンやヘッドホン、スピーカーの全力を発揮させられる日は永遠に来ないのか……
そんな状況を覆してくれそうな新製品がFiiO「BT11」です。もちろんAndroidスマホやMac/PC、ゲーム機との組み合わせもいけます。
「iPhone 15 Pro」の装着でこんな収まり具合
中央のスリットはインジケーターランプ。表裏同じ形なので向きを気にせず挿してもランプの見やすさに変わりなし
カラーバリエーションはブラックとシルバーの2色をラインアップ
要は「高音質コーデック対応のUSBドングル型Bluetoothトランスミッター」ですが、それだけなら似たような製品は以前からあるにはありました。ですがそれらの先行製品はLDACかaptX 〇〇系のどちらかへしか対応しておらず、誰にでもおすすめできる決定版製品として広くプッシュするのが難しかったのです。さまざまなイヤホン&ヘッドホンを取っ替え引っ替えする必要のあるマニアや筆者のようなライターにとって、両系統どちらも対応というのは必須事項ですからね。
とくればお気づきでしょう。その弱点をクリアして登場したのがこの「BT11」なのです。LDACにもaptX系にもどちらにも対応! aptX系にいたってはaptX AdaptiveとaptX Losslessはもちろん、aptX、aptX HD、aptX Low Latencyにまで対応する完璧っぷりです。ほか、標準コーデックであるSBCにも当然対応。加えてアップデートでの次世代標準コーデックLC3対応追加も予告されています。
なおLDACは2024年12月12日時点では48kHz/24bitまでの対応ですが、これもアップデートでの96kHz対応が予告されています。
対応コーデック以外の部分も見ていきましょう。
スペック面としては、クアルコムの最新チップ「QCC5181」を採用し、それによって前述の幅広いコーデックとSnapdragon Sound、Bluetooth 5.4対応などを実現。PDSアンテナ技術により超小型筐体でありながら安定した通信性能を実現したそうです。
接続端子は当然USB-Cです。最近のAndroidスマートフォンやMac/PCはほとんどがUSB-C対応なので問題ないでしょうが、一応USB-Aへの変換アダプターもパッケージに同梱されています。
デスクトップPC背面の端子などではまだUSB-A端子も多いので、そこは付属の変換アダプターで対応
Lightning端子世代のiPhoneに向けては、サポートページで以下のように案内されています。
現時点ではLightning端子対応版はご用意がございませんため、接続のためにはデータ転送機能付きのLightning to Type-C変換アダプターを別途お買い求めいただく必要がございます。”
ですが変換アダプターを継ぎ足した形での装着だと、持ち運び中に変な力が加わってしまったときに端子周りが破損する危険性は高まるはず。そこは要注意になりそうです。
この状態でポケットやカバンに入れて持ち歩くのは危なすぎる気がします
本体にはボタンなどの操作インターフェイスは一切用意されていません。ペアリング、各種設定、ファームウェアアップデートなど、あらゆる操作はすべてスマホアプリから行う仕組みです。
なので主にMac/PCやゲーム機で使用する場合でもスマホアプリは必須になります。その際ポイントになるのが、「BT11」は使用開始時に「BT11」とスマホとの間でBluetoothペアリングを行い、スマホアプリからの操作や設定変更はUSBではなくBluetooth経由で行われているということ。
iPhoneの場合、「BT11」をUSB-C端子に挿してアプリを起動するとペアリングをうながすダイアログが表示されました
おかげでPCやゲーム機に「BT11」を装着したまま、ペアリングしてあるスマホのアプリから「BT11」の操作や設定が可能です。PC背面のUSB端子から「BT11」を取り外してスマホに取り付けて設定変更してまたPC背面に戻して……みたいな手間は必要ありません。
操作はいつだってスマホアプリから!
ということで本体はボタンレスですが、インターフェイス的な要素としては前述のようにインジケーターライトを搭載。「ペアリング中は赤と青に交互点滅」「aptX Adaptive/Lossless接続時は緑で点滅」のように、点滅カラーで情報を案内してくれます。自分が常用するコーデックの点滅色を覚えておけば、正しく接続されているかをさっと確認できそうです。
そういったわけで本機の機能性や使いやすさについては、そのほぼすべてが同社アプリに依存することになります。そのアプリ「FiiOコントロール」での設定画面を見ていきましょう。
ペアリング周りの操作やコーデックの選択ができます
そのほかは現状ではこんなところですが……
実は発売直後だった本稿執筆時点では、アプリの機能は最小限しか実装されていません。「ペアリングとコーデック選択とファームウェアアップデートができるだけ」と言ってしまってもよいでしょう。そのペアリング周りについても、iOSやAndroidのBluetooth設定でのペアリング操作のわかりやすさや簡単さと比べると、ペアリング済みイヤホンやヘッドホンのリスト表示がないなど残念な状況です。
ですが注目してほしいのは先ほどの文章「ペアリングとコーデック選択とファームウェアアップデートができるだけ」の後半部分。そうです。これまでもちょくちょく「アップデートでの〇〇対応も予告」といった情報を交えてきたように、本機は発売時点で、今後のファームウェアアップデートで追加や強化される機能がある程度予告されています。その予告には、本体の仕様や機能の強化はもちろん、アプリ周りの内容も含まれているのです。
ここは製品ページからまるっと引用しましょう。
BT11は、OTA(Over-The-Air)アップデートを通じて継続的にアップグレードされる予定です。LDAC 96kHz/24bit、LC3、音量調整、インジケーターライト制御、チャンネルバランス調整、ペアリングリストなどの機能追加を予定しております。
近日配信予定のファームウェア 1.0.8 にてLDAC送信時のビットレート選択機能が追加され、LDACに正式対応する予定です。
LE Audioについては現状未対応となっており、ファームウェアのアップデートを通じて将来的に対応する予定です。
予告されているだけでこの充実っぷり。先ほどあげたペアリング機器のリスト表示がない点もしっかり解消されるようです。
なお現状でも、有効にするコーデックを任意に選択できる設定が用意されているのはうれしいポイント。LDACとaptX Adaptiveに両対応するイヤホンにLDACで接続したいならaptX Adaptiveをオフにする、ゲーム機にaptX LLで接続したいならaptX LL以外をオフにするなど、活用できそうです。
それにしてもコーデックがこれだけずらっと並ぶのは壮観!
最後に、このアイテムには、スマホとイヤホンやヘッドホンと組み合わせての普段使いにおいて実用上での 弱点になり得る点もあるにはあるので、そこについて触れておきましょう。
この「BT11」はオーディオ再生専用Bluetoothトランスミッターとして設計されており、Bluetooth接続プロファイルのうちオーディオ再生用プロファイルにのみ対応。通話用プロファイルには対応していないので、「BT11」に接続したイヤホンやヘッドホンでの通話はできません。サポートページによると具体的には、
本製品は、通話や通知には現時点では対応していないため、着信時や通知がきた際にはBT11自体は自動的にミュートになるため、楽曲再生時には音楽が途切れるような状態となります。
という動作になるようです。
この点については、それを大きな弱点と感じるかどうかは人それぞれでしょう。僕などは「電話機は耳元に持ってきて話すのが当然」が身体に染みついている世代なので、別にいいじゃんね? という感じです。ですが「イヤホンをタップして通話開始してそのままハンズフリー」が習慣になっている方にとっては違うでしょう。そこはみなさんそれぞれ「イヤホンで通話できなくなったら」をイメージしてみて、自身にとってありかなしかを判断していただければと思います。
このようにFiiO「BT11」は現状でも十分に実用的で魅力的なアイテムです。現状での弱点もアップデートでおおよそ解消され、コーデック対応もさらに強化される見込みとなれば、高音質コーデック全対応ドングル型Bluetoothトランスミッターの現時点での最適解はこれ! と言えるでしょう。
しかし実際のところそもそもの話として、外出時iPhoneに常にこういったドングル型トランスミッターを装着しておくことに違和感を覚える方もいらっしゃるはず。その場合は、普段使いのイヤホンは普通にiPhoneに直でペアリング、高音質コーデック対応のハイエンドイヤホンは「BT11」にペアリングというように、2ペア用意しての使い分け運用などもありかもしれません。
そしてもちろん、音がよくなるのであればそのほかの些事などわたし は一向にかまわんッッというのでしたら遠慮なく常に「BT11」運用でOKです。