Googleが発売するハードウェアには魅力的なものが沢山あるのだが、日本での発売が妙に遅れたり、とうとう日本で発売されなかったりするものもけっこう多い。Chromecast Audioもそんな製品の1つだった。米国ではすでに9月末から販売が開始されていたが、日本で発売が開始されたのは2月19日と、およそ5か月も待たされる結果となった。
初代Chromecastは、2014年5月に鳴り物入りで発売されたデバイスで、多くのメディアに取り上げられた。4,200円と安かったこともあり、何に使うのかよくわからないのに量販店の行列に並んだ人もあったようだ。
2月に発売された新型Chromecastは、初代と同じく映像をワイヤレスで飛ばせるモデルと、オーディオ専用のモデルがある。どちらも価格は同じで、4,980円。同じ値段なら映像が飛ばせるほうがお得だろうと思われるかもしれないが、用途が全然違う。Chromecast Audioは、スピーカーに対して音楽が飛ばせるデバイスで、対応アプリも映像用とは違っている。
購入したての両モデル。左がChromecast、右がChromecast Audio
ChromecastはHDMIケーブルが直接Chromecast Audioのケーブルは着脱式
筆者宅には、そこそこ上質のパッシブ型スピーカーがいくつか余っている。以前PC用スピーカーとして愛用していたものだが、最近は接続をUSB DACでデジタル化したり、自宅のPCの数を減らしたりした関係で、使い道がなくなってしまったのだ。だが部屋によっては音楽を再生するものが何もなかったりするので、どうにか活用したいと思っていた。
最近音楽プレーヤーはすっかりスマートフォンになってしまっているが、パッシブスピーカーとはケーブルでつながないと音が鳴らない。そうは言ってもスマホは手元で使う必要があるので、ずっとスピーカーのそばに紐付きで置いて置くわけにもいかないのだ。
どうにかなんないかなとずっと模索していて、Bluetoothのレシーバーの購入を検討したりもしたのだが、なかなか良い製品がなくて悩んでいた。そんなところにぴったりはまったのが、Chromecast Audioだった。
Chromecast Audioは、USB型電源端子とオーディオ端子があるだけのシンプルなデザインだが、BluetoothではなくWi-Fiを使って音楽のストリームを受信できるのがポイントである。Bluetoothスピーカーと違い、スマートフォンと直接つながるわけではない。正確にはWi-Fiルータとつながり、ルーターを経由でスマホからのコントロールを受けるという仕組みになっている。
AppleのWi-Fiルータ「AirMac Express」にもオーディオ端子があり、同様のことができるが、Chromecast Audioはルータ機能も何もない。その分低価格だ。
筆者が開拓したかったのは、ダイニングキッチンの音楽環境である。以前から料理をしながら音楽を楽しみたいという欲求があり、Bluetoothスピーカーを置いてみたりもしたのだが、電子レンジを使うと音楽再生ができなくなるのが問題だった。
Bluetoothは2.4GHz帯を使用するのだが、電子レンジもこの周波数帯で動作する。電子レンジを使った途端、周囲に2.4GHz帯の強いノイズを撒き散らすので、Bluetoothの通信が切れるのである。
その点Chromecast Audioは、Wi-FiのIEEE 802.11acに対応し、2.4GHzと5GHzのデュアルバンド対応である。Wi-FiルータがIEEE 802.11acの5GHzに対応していれば、2.4GHz帯を使わなくて済むので、電子レンジと共存できるわけだ。
実際に今もキッチンで使用しているが、電子レンジを使っても音楽が途切れることもなく、快調である。オーディオの再生に高速通信は必要ないと思われているが、5GHz帯への対応は重要であり、しかも低価格で提供されるというのはありがたい。
Chromecast Audioに音楽を投げるためには、アプリ側の対応が必須だ。現在対応している音楽サービスは、Google Play Music、AWA、KKBOXなどがある。Chromecast Audio自体はハイレゾ再生にも対応するが、まだストリーミングサービスでハイレゾを配信するところがない。さらにキッチンも料理中は結構うるさいので、ハイレゾにこだわるような使い方をしていないというのが現状である。
実にちょっとしたことだが、料理中にワイヤレスで音楽を聴くということを最短コースで実現できるのは、今の所Chromecast Audioしかないのだ。
AV機器評論家/コラムニスト。デジタル機器、放送、ITなどのメディアを独自の視点で分析するコラムで人気。メルマガ「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」も配信中。