テレビと接続できるHDMI端子を持ったプリメインアンプ「POWERNODE(N331)」をレビュー。SpotifyやTIDAL、Qobuzといった音楽ストリーミング再生にも対応したマルチな1台だ
映画音響を楽しむためのAVシステムというと、プレーヤーをはじめとしてAVアンプ、何本ものスピーカーを揃える、というスタイルを想像するかもしれない。しかし、もっとシンプルに映画を楽しみたいという人は多いはず。そういう人に注目してほしいのがBluesound(ブルーサウンド)の「POWERNODE(N331)」だ。
テレビと接続するためのHDMI端子を搭載した、3ch(チャンネル)アンプを内蔵したプリメインアンプという風変わりな1台。テレビと「POWERNODE(N331)」、そして必要に応じた本数のスピーカーがあれば音楽も映画も自在に楽しめるシンプルなシステムが完成する。気軽なのに懐の深い、新世代の製品なのだ。
日本ではなじみが薄いかもしれないが、Bluesoundは、NADエレクトロニクスやPSB Speakersといったオーディオブランドと同じグループにあるカナダのブランド。Bluesound自体は2013年に始まった若いブランドだが、NADエレクトロニクス、PSB Speakersは1972年から続く老舗と言える存在。
つまり、確かなオーディオ知見を持った技術者集団がプロデュースする最新の製品がBluesoundというわけだ。
主力製品は、見た目は「オーディオ製品らしくない」印象の「NODE」シリーズ。現在主流となっているストリーミング音楽配信サービスに対応したネットワークオーディオプレーヤーだ。パソコンを使うのではなく、シンプルで小さな機械だけで、幅広くインターネットの音楽ストリーミングサービスを快適に楽しめるスタイルの先駆的な存在と言える。
そのスリムで美しいスタイルはそのままに、時代に合わせて「NODE」も進化し、さまざまなスタイルに派生している。コンパクトさを追求した「NODE NANO」、音質を高めてHDMI端子なども搭載した「NODE ICON」などをラインアップに加え、新しいスタイルのハイファイオーディオを展開しているのだ。
ここで紹介する「POWERNODE(N331)」も、「NODE」のコンセプトにのっとった「オーディオらしくない」外観と時代に合わせた多機能を備えたモデル。パワーアンプを内蔵したプリメインアンプ一体型のネットワークオーディオプレーヤーだ。
以前から「POWERNODE」というモデルが存在していたが、そちらは2chアンプ内蔵モデル。新モデルと区別して「POWERNODE(N330)」とされ、しばらくは併売されるそうだ。
背面には3系統のスピーカー端子を備える。常用したいのはeARC対応のHDMI端子。テレビとHDMIケーブルをつなげば、テレビで再生した音声がアンプ経由で出力される
新モデルの「POWERNODE(N331)」は、3chのアンプを内蔵したうえ、アンプ自体も一新。最新の「DirectDigital」(デジタル入力した音声はデジタルのままアンプ部へ送られる)プラットフォームを搭載して音質向上も図られた。コンパクトなボディはそのままに3chモードで80W×3、2chモードで100W×2のパワーを発揮する。このほか、ヘッドホン用アンプも一新され、THX-AAAテクノロジー搭載ヘッドホンアンプを内蔵。ヘッドホン端子は3.5mmから6.3mm標準ジャックに変更されている。
接続端子はアナログ音声入力(RCA)、デジタル音声入力(光)のほか、eARC対応のHDMIを持つことが何よりの特徴。これ1台でシステムが完結するコンセプトではあるが、外部機器との接続には事欠かない必要十分な端子を揃えている。
重要なのはHDMI端子だろう。テレビ(やプロジェクター)とHDMIケーブルで接続でするだけで、テレビの音声を高品位で再生できる(このとき、音量調整はテレビのリモコンで行える)。「POWERNODE(N331)」はDolby Digital音声のデコードに対応するという特徴があるため、ここで3chアンプが生きる。Amazonプライム・ビデオやNetflixで映画を再生すれば、その多くが5.1chなどのサラウンド音声に対応している。それをデコードし、3chの再生(フロントL/Rスピーカーとその間に置くセンタースピーカーの計3スピーカー再生)が可能なのだ。
さらに、同社製品を追加(連携)することで5.1chなどのサラウンドシステムへグレードアップすることも可能(※)。おおげさなAVアンプを使うことなく、かなり本気な映画再生向けAVシステムができあがる。
※対応製品は「POWERNODE(N331)」や「POWERNODE(N330)」など。「PULSE FLEX 2i」などのワイヤレススピーカーをサラウンド(リア)スピーカーとして組み合わせることもできる
「BluOS」アプリで音量調整などの基本操作のほか対応サービスでの音楽再生が可能。特にSpotify、Qobuz(コバズ)、TIDALでは各サービスの「Connect」機能に対応。それぞれのアプリで選曲を行い、「POWERNODE(N331)」で再生という操作がスムーズに行える
「POWERNODE(N331)」は独自OS「BluOS(ブルーオーエス)」で動くことも特筆される。このOSのおかげで、前述のサラウンド対応など、非常に幅広い機能を実現しており、さらに各種音楽ストリーミングサービスへの対応するほか、高精度な音場補正を期待できる「Dirac Live」へも有償で対応する(別売りの専用マイクも必須)。別途ライセンス料がかかるものの、部屋の過剰な反射や定在波の制御なども行えるし、その効果は高い。筆者は自宅のサラウンドシステムで「Dirac Live」を使っており、その効果にも満足している。部屋の音響が気になる人は試してみるのもよいだろう。
つまり、映画、音楽を十全に楽しめるベースがマニアックなほどに充実しているということだ。
製品発売時にはアップデート対応予定とされていた「Dirac Live」にも対応済み。利用には別途ライセンスと専用マイクの購入が必要だ
自宅にてテストを実施。使ったスピーカーはBWVの「H-2」だ。シンプルな2ウェイスピーカーだが、出力音圧レベルは81dB/W/mと低め
今回は筆者の自宅試聴室に「POWERNODE(N331)」を置いて、実力を確かめてみた。家庭のネットワークに接続して、まずは音楽ストリーミングから再生しよう。
使ったのは、ロスレス音声やハイレゾ楽曲の配信で人気の高いQobuz(コバズ)。日本ではSpotifyほどメジャーなサービスではないが、音質重視のユーザーに支持されているサービスだ。こうした多彩な対応も「BluOS」の大きな魅力だ。
各種音楽ストリーミングサービスの利用は、スマホの「BluOS」アプリを使うのが基本。Spotify、Qobuz、TIDALの場合は各サービスの専用アプリから「Connect」することも可能。たとえばQobuzアプリで再生先を「POWERNODE(N331)」に指定すれば、Qobuzアプリから選曲の指令が出て、「POWERNODE(N331)」が再生(再生機はスマホではなく、「POWERNODE(N331)」)を始めてくれる。よりスムーズに音楽再生ができる便利な機能だ。
「BluOS」アプリでは本体設定なども可能。センタースピーカーの有/無しやサブウーハーの追加もここで行う
ここでは「BluOS」アプリでQobuzを選ぶと、Qobuzの専用画面に切り替わる。プレイリストやよく聴く音楽の表示もできるので、スムーズな操作が可能だ。
ウラジーミル・フェドセーエフ指揮モスクワ放送交響楽団による「チャイコフスキー:交響曲第6番『悲愴』」の第3楽章を再生すると、小型アンプで鳴らしているとは思えないほどのパワフルな音。弦楽器の音色も自然でリアルだ。気持ちテンポの速い演奏をゆるむことなく再生していく。素早い旋律を整った音で描き、低音楽器や打楽器の勢いも良好。豊かな響きが収録されているホールの残響やオーケストラの奥行きのある広がりも十分だ。
「POWERNODE(N331)」のD級アンプは、十分な出力を備えるだけでなく、歪み感が少なくしなやか。オーディオに詳しい人ほど、こんなに小さな筐体で、しっかりとパワーがあり、音質的にも優秀な実力を持っていることに驚くに違いない。
テレビアニメ「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」のオープニングテーマであるKing Gnuの「GO GHOST」では、ボーカルがしなやかで、しかもよく通る。左右に広がるコーラスとの溶け合いもきれいだし、それぞれの声がきれいに調和しながら、しかも粒立ちよく再現された。
SENDY AUDIOの「Peacock」(インピーダンスは50Ω、出力音圧レベルは103dB/mW)を使ってヘッドホンアンプもチェック
新しくなったヘッドホンアンプも軽く試してみた。接続したSENDY AUDIOの「Peacock」は平面磁界型で少々駆動力を求められるヘッドホンだが、低域の力強さを含めて駆動力に不満はない。音質的にはニュートラルで、一音一音をくっきり描き、音場感も十分に広い。バランスのよい聴きやすい音だ。ヘッドホン好きな人からはバランス出力が欲しいという声も出そうだが、一体型システムのヘッドホン出力としては十分な実力を持っている。
センタースピーカーにはBWVの「H-1」を2台パラレルで接続。同じ端子にスピーカーを2台接続するのは、本来推奨されていないことには注意。アンプに負荷がかかりすぎるからだ。こちらの出力音圧レベルも「H-2」と同じ81dB/W/m
ここで、センタースピーカーも加えて3chモードの再生を試してみた。センタースピーカー使用時に音楽などの2ch音源を再生する場合、フロントL/Rスピーカーのみの2chで音を出すか、センタースピーカーにも音を振り分けるか、選択が可能だ。そこで、センタースピーカーからも音を出す「ステレオサラウンド」設定を試してみると、主に2ch再生でセンターに音が定位するボーカルなどが自動的にセンタースピーカーに分配される。音量バランスなども自動で調整されるようだ。
バランスが大きく変わるわけではないが、センタースピーカーが加わったことで、ボーカルが一歩前に出たようなより実体感のある再生になる。再生するスピーカー数自体が増えた分、音の広がりや奥行き感もより豊か。広範囲に豊かな音を届けられるので、広いリビングや複数人数でのリスニングには適した再生方法だと言えるだろう。
もちろん、「ステレオサラウンド」設定をオフにすれば、2ch音源はフロントL/Rスピーカーだけで再生できる。
「POWERNODE(N331)」単体では、写真のような最大3.1chシステムが可能。さらに同社製品アンプやスピーカーを足して5.1chへの拡張にも対応する
そして、テレビとHDMIケーブルで接続すれば、HDMI(eARC)経由のサラウンド音声再生も可能だ。先述のとおり、同社製品をグループ化し、サブウーハーを追加することで最大5.1chシステムにも発展できる。
センタースピーカーがあると、音楽で重要なボーカル、映画で重要なセリフなどが専用のスピーカーから再生される。つまりそれぞれで重要な要素がより明瞭にしっかりと聴き取れるようになるのだ。やはり、このメリットは特に映画で強く感じられるだろう。
部屋が広い場合や、画面が大きい場合(筆者宅は120インチスクリーンとプロジェクターで映像を投写している)は、センタースピーカーがあるほうが、画面中央に定位する音がより明確になり、映像との一体感向上も期待できる。だから、音楽だけでなく、映画もきちんと楽しみたいならば、3chアンプでセンタースピーカーを使った再生は大きなメリットがあると言えるのだ。
「POWERNODE(N331)」でのサラウンド再生の実力も確かなもの。別件で拡張した5.1chシステムを体験すると、しっかりと映画のサラウンド音場を再現できていた。2ch音声を5.1ch化して音場感豊かに再生できるほか、センター、サラウンドスピーカーの音量を個別に調整可能。
AVアンプのような自動音場調整のような機能は持たず、リスニングポイントからスピーカーの距離を実測値で入力するなど、機能としては最小限であることには留意したい。この点を逆に言えば、あまり詳細に設定を追い込まなくても手軽に質のよいサラウンド再生ができるということ。あくまで手軽に映画を楽しみたいならば、使いやすいと感じる人が多いはずだ。
Dolby Atmosなど、最新のイマーシブオーディオへ対応できるわけではないが、多くの映画が対応している5.1chサラウンドは必要十分と言えるスペック。シンプルなシステムを志向する「POWERNODE(N331)」としては十分だろう。
天面のボタンで入力切替えや音量調整などが行える
「POWERNODE(N331)」はオーディオ製品としての実力が高いのはもちろん、スリムでコンパクトなうえ、極めて高機能。本機(と好きなスピーカー)があれば、多彩な音楽ストリーミングサービスを楽しめるだけでなく、HDMI(eARC)でテレビ(やプロジェクター)と連携し、動画配信サービスの音声を3chや5.1chで楽しめる発展性も備えている。音質的にも十分に優秀だ。
ここまでの機能性を実現したことには感心するばかり。気軽に、でも本格的に音楽や映画を楽しみたい人にはよく似合う新しいスタイルのオーディオ機器なのだ。いかにもオーディオ機器という感じの見た目や大柄な筐体は避けたいと考える人にも、「POWERNODE(N331)」のモダンなデザインは親しみやすいだろう。