高級機イヤホンに比べて種類が多い低価格イヤホン。とりわけ5,000円を切る価格帯のモデルは、その数が多いこともあり、出始めたばかりの新製品だと、たとえ「これはかなりイイ」と思える音の製品があっても、“定番”や“人気”製品の後ろにどうしても隠れてしまいがちだ。
今回紹介する、韓国のイヤホンメーカーT-PEOSの「RICH300」も、そんな隠れた良品だ。予算4,000円(税込)で購入できる低価格モデルだが、そのサウンドを確認したところ、実力は価格以上のものがあると感じた。本体の作りも音も、仕上がりのよさが実感できる。9月上旬ごろより一部の専門店で販売が開始されたばかりで、知名度はまだ低いが、今後注目を集めそうな製品だ。低価格イヤホン“良品コレクション”の第5回では、そんな、T-PEOSのRICH300を取り上げる。
T-PEOSのRICH300
RICH300は、ダイナミックドライバー採用のカナル型イヤホンだ。代理店のeme audioによれば、「ふくよかな低音とリズミカルな全音域が魅力」というイヤホンで、低価格イヤホンの中では、比較的大型の10mm径ドライバーを採用している。また、ハウジングには、アルミニウムと真鍮を使用し、重く硬くすることで制振性のすぐれたボディとなっている。
さらに、ハウジングは見た目にも配慮しており、表面にはツヤがあるほか、本体後方には金属製のメッシュパネルを装備するなど、安いイヤホンでありがちなチープな印象のないデザインとなっている。なお、カラーラインアップとして、ブラック、レッド、ホワイトが用意されている。
円筒形のシンプルなデザインの本体
ボディは金属製となっている
ノズル径は10mmで、目の粗いスクリーンが装着されている
本体の後方にある金属製のメッシュパネル
3サイズのイヤーチップとケーブル止め用クリップ
ケーブルは幅3mmのフラットタイプ。断線しやすい印象はないが、クセが付きやすく若干だが絡まりやすい。分岐はY型で前後の太さは変わらず。ケーブルの衣擦れ音はほぼ気ならないが、肌に触れたりこすれたりするとやや目立つ。プラグはL型。断線防止加工は、プラグ側とエンクロージャー側の両方にしっかりと施されている。
右側イヤホンケーブルにはマイク付きコントローラーを搭載。ボタンを1回押すことで通話と再生/一時停止が可能だ。ボタン2回押すことで曲送りもできる。なお、楽曲のコントロール機能はiOSでのみ利用可能で、Androidには対応していない。
プラグはL字型。断線防止効果が施されている
分岐はY型。右チャンネルのケーブルにマイク付き
低音にパンチがあるストレートなサウンドだ。音はキレイで、低価格イヤホンの中では、各帯域が比較的きっちり分かれている。帯域バランスはモニターライクのように聴こえるが、低音の量感が強めでこれが程良く気持ちいい。生楽器はふかよかに膨らみつつもボワつかず、逆にエレクトロではタイトに強調される。
ボーカルは少し離れたところでフォーカスされるが、定位感は予想を上回った。中央にピッタリくるものから立体感のあるものまで想像以上に幅広くこなす。声色自体は奇をてらわず、モニターライクの音調。定位感と音色のバランスのよさが絶妙だ。
高音は、刺さらず、ぎらつかず。きらびやかな雰囲気やヌケが多少足りないものの、低価格帯の中では十分なレベルを確保している。
S/Nや解像度は価格相応で音の密度もそれなりだが、全体を通して見ると、これがうまくまとまっている。低音に比重を置いたオーソドックスなサウンドと言えるだろう。オーソドックスだからこそ、どのジャンルの楽曲でも合いそうだ。
RICH300は、やや低音重視のサウンドだが、クラシックにもあうオールラウンドなイヤホンだ。低価格イヤホンといえども、そのクオリティーは想像以上。また、音だけでなく、真鍮とアルミニウムを組み合わせた本体は、金属的な質感をいかしたデザインとなっている。さらに丈夫な作りを思わせる重量感のあるボディもチープな印象を与えない。スマートフォンで活用できるマイクを装備するなど、実用面もしっかり押さえている。
なお、週末10月24日から25日に東京・中野で開催されるヘッドフォン祭でも展示予定とのこと。代理店eme audioのブースで試聴できる。ぜひこの機会に聴いてみて欲しい。
製品パッケージ