自動車ライターのマリオ高野です。
災害や悪天候などに備える防災意識は、常に高めているつもりでもいつの間にか緩んでしまうものですよね。
クルマに乗っていても、思いがけず立ち往生してしまい、それが命の危機に直結してしまう可能性は誰にでもあります。
たとえば、人気のない山奥で車にアクシデントが発生し、“立ち往生”しないとも限りません……
先日も、クルマの運転中での遭難をリアルな危機として実感する出来事がありました。岐阜県の山奥を走行中、同行者が路上の落石を跳ねてフロントタイヤがパンクしたのですが、タイヤのサイド部分がパックリと裂けてしまったため、車載のパンク修理剤では応急処置もできず、そのまま立ち往生。最近のクルマは軽量化などのためにスペアタイヤを搭載しない場合が多いので、タイヤに深刻なトラブルが発生するとどうしようもなくなります。パンク修理剤は、トレッド面に釘が刺さったなど、タイヤの空気が徐々に抜けてしまう類いのパンク(スローパンクチャー)には有効ですが、即座に空気がすべて抜けてしまうようなパンクにはまったく効果がえられません。
タイヤというのは、地面との接地面であるトレッド面はかなり強く作られていますが、サイド部分は意外と弱いものです。岩や段差などに強くぶつけると、案外アッサリ裂けてしまいます
サイドが裂けて空気圧がゼロになってしまうようなパンクでは、パンク修理剤での応急処置はまったくの無意味。国産車の場合、今でもセダンタイプのクルマはスペアタイヤ搭載率が高めとなっています
そのときは、複数のクルマで行動していたし、携帯電話の電波も通じるエリアだったので遭難には至りませんでしたが、今でも人里離れた山奥へ行くと、携帯電話の電波が届かなくなる場所は結構あります。もし、交通量が極端に少なく電波の届かない場所でパンクしていたら……? しかもそれが真冬の深夜だったら……? そんなときに限ってガソリンの残量もなく車内で暖をとることもできなかったら……? などと想像すると恐ろしくなりました。
今の季節(真冬)だと、豪雪エリアを走行中にスタックをしてしまうリスクも高くなっています。四輪駆動のクルマでも、迂闊(うかつ)に深い雪の中を走るとスタックしてしまうことがあるのです。
震災などの災害に備え、自宅に緊急用の備えをしている人は多いでしょうが、ドライブ中の有事に備え、クルマにも防災グッズを搭載しておきたいものですね。
そこで今回チェックしてみたのが、防災製品大賞2017優秀賞を受賞した車載用防災セット「ボウサイブロック for CAR」です。
クルマで立ち往生したときなど、緊急時に役立つ12点の防災アイテムがセットになっています。長期保存ができる最低限度の食べ物と水、寒さに耐えるための防寒グッズ、作業用のグローブ、居場所を知らせる笛、最低限のプライバシーが確保できる簡易トイレなど、イザというときのためにトランクに1つ積んでおきましょう。
幅26センチほどなので、一般的な実用車ならトランクに常備してもじゃまにはなりません。美観的にも問題ない、というかむしろシックでオシャレな感じさえします
内容物は以下のとおり。
(1)7年保存水
(2)7年保存クッキー
(3)ポンチョdeトイレ
(4)ハンディトイレ
(5)3WAYポンチョ
(6)あんしんペンライト
(7)あんしんグローブ
(8)防じんマスク
(9)あんしんホイッスル
(10)常備用カイロ
(11)ポケットティッシュ
(12)伝言カード・防災ペン
今回はこのボウサイブロックを、真冬の関東エリアで早朝にテストしてみました。外気温は0〜1度くらいでした。
この手のカイロは年月がたつと酸化などして使えなくなることもありますが、5年は大丈夫とのこと
水も安心の7年保存OK。水は重いのでクルマに常備するのを避けたくなりますが、500ml1本なら気になりません
-20〜80度の広い温度範囲に対応するポンチョ。ペラペラしてますが、意外としなやかで動作音は少なく、気温0度でもかぶると体温を逃さない感覚がありました。視認性も高そうです
トイレの目隠しにもなります(トイレ目隠し用のポンチョは別途ついてます)
車外で何らかの作業をするのに必要なグローブ。整備士さんが使うメカニックグローブに似た感触で、作業性はよさそう。反射材付きで夜間も安心です
人の耳に一番聞こえやすい3,000hZ付近の音が出るというホイッスル。耐温度域は-40〜80度!
音についてはこちらをご参考に
折りまげるだけで発光するペンライト。アイドルのライブなどで使うものと似てますが、これは10〜12時間発光します
4個300円ぐらいで売ってるマスクとは一線を画すフィット感に感動するマスク。放射性粉じんの吸入リスクさえ低減するという本格派
大小便兼用の簡易トイレ。密着チャックでニオイ漏れを防ぎます。水分はゼリー状に固まります。もちろん使い捨てですが
目隠しポンチョを合わせて使うとこんな感じ。大型連休などでの大渋滞でも重宝しそうですね
加圧加熱殺菌により7年保つクッキー。味には期待しませんでしたが、普通においしくてびっくり。平常時にリピートしたくなるほどではありませんが、全然悪くありません
クルマのウインドウに文字が書ける色鉛筆。エンコしたクルマから離れる際にメッセージを残すのに便利。雨程度では消えませんが、乾いた布で拭くと取れます
撮影をしながらチェックしていると、いずれも「あるのとないのとでは大違い」と思えるばかりでした。
一生使わずにトランクの肥やしになるかもしれませんが、有事の際は「あってよかった」と思えることでしょう。
個人的には、ドライブ以外のときでもこういう防災グッズを可能なかぎり常備しておくべきだと思います。趣味の「山城めぐり」をしているときに携帯電話の電池がなくなって山の中で道に迷い、真冬の漆黒の世界で命の危険を感じた経験もありますが、現代人は、思わぬ油断から「遭難」をすることが意外とあるのです。