近年注目が高まっている車中泊向きの自動車で実際に1泊し、その寝心地を確かめている筆者。スズキ「ハスラー」、ホンダ「N-VAN」と軽自動車に順番に車中泊してきた第3弾は、ダイハツ「ウェイク」だ! なお、本レビューは夏に行ったため、今の季節には適さない格好で寝ているが、その点はご了承願いたい。
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「ウェイク」は、全高1,835mmという高さを持つトールワゴン(ハイトワゴンと呼ばれることもある)。同じ軽自動車でも荷物を積むことに特化したホンダ「N-VAN」のような軽商用車ではないため、スペース効率は一般的な軽乗用車並みではあるが、その中でも室内空間が広いのが特徴だ。その大きな鍵を握っているのは、やはり全高の高さ。体を横にするためのシートアレンジはスズキ「ハスラー」とほとんど変わらないものの、全高が高い分(ハスラーと比べると17cm高い)、天井が高くなり、実際のサイズよりも広く感じるのだ。ロードバイクなどタイヤ径の大きな自転車もタイヤを外すことなく積むことができる積載能力は、かなり頼もしい。また、この天井が高いことでフロントウィンドウも広く確保でき、軽自動車とは思えないほどの視界のよさを実現している。
サイズは3,395(全長)×1,475(全幅)×1,835(全高)mm。175cmの身長の筆者よりも背が高い
全高は高めだが、車高は低め設計なので乗り降りしやすいので、子どもや高齢者のいる家庭にもよさそう
リアシートを前方に倒すと、広いラゲージスペースが作れる。リアシートの背面は硬い素材が採用されているので、荷物が積みやすく、汚れも拭き取りやすい
リアシートだけでなく助手席を前方にたたむと、写真のようにロードバイクをそのまま積載できる。ハンドルがサドルよりも高い位置になるシティサイクルタイプの自転車は、ハンドルが天井に接触するかもしれない
全高が高いので、身長175cmの筆者の場合、腰をかがめずに荷物を積み下ろしできた。これは、非常にラク!
この全高の高さは、視界のよさにも直結。運転席からの視界はかなり開けており、ストレスが少ない
※撮影のためヘッドレストを外しています
まずは、車中泊できるように横になれるスペースを作ろう。シートアレンジの方法は、大きく3つ。ひとつは、上で紹介した自転車を積んだ時のスタイルだ。助手席とリアシートを前に倒せば、ひとり分の寝床は確保できる。
助手席は単に背もたれを倒すのではなく、座面を前方に起こし、背もたれをたたむ仕様。普通に背もたれを倒すだけよりも、圧倒的に水平になる
助手席とリアシートを倒し、ラゲージスペースをつなぐアレンジはフラットにはなるが、シートの背面が体に接するので、マットなどを敷いて寝よう
アレンジ方法2つめは、リアシートは前方にたたみ、運転席と助手席の背もたれを後ろに倒して全面をフラットな状態にする「フルフラットモード」。ただし、このモードにするには「上下2段調節式デッキボード」が必要となる(「レジャーエディション SA V」「Gターボ SA V」「L レジャーエディション SA V」グレードには標準装備)。リアシートとデッキボードの部分は硬く、隙間も空いているので、寝る時にはマットなどを敷いたほうがいい。
ヘッドレストを外した前席を後方に、リアシートを前方に倒すアレンジ。空いたスペースを埋めるため、「上下2段調節式デッキボード」(グレードによっては別売/17,820円)をセットする
最後のアレンジ方法は、ヘッドレストを外した前席の背もたれを後方に倒すという、もっとも準備に手間がかからないもの。シートのやわらかい部分が体に接するので、マットなどを敷かなくてもけっこう快適に眠れる。今回は、ハスラーで車中泊した時と同じ、このスタイルで車中泊することにした。
リアシートを最後部まで下げ、前席のヘッドレストを外して背もたれを倒せば、寝床が完成!
運転席と助手席の背もたれの間を肘掛けで埋める手法は、この手の車種では見慣れたものだが、その部分も凹凸が極めて少ない
外したヘッドレストがシート下に収められるのも高評価。こういった配慮がない車種もあるので、チェックしておきたいポイントだ
身長175cmの筆者の場合、縦にまっすぐ横になると頭が少し持ち上がる状態となる
少し体を斜めにすれば、それほど体を曲げずに横になれるので、かなり体はラクに。このレビューを行った時期は暑かったので、筆者は枕だけ持参し、シートもかけずに寝たのだが、朝までぐっすり。翌日、体が痛むことも、疲れが残るようなこともなかった
トールワゴン系は窓が広いため光が入ってきやすいが、ウェイクはリアシートの窓に引き出し式のシェードが装備されている。日差しの侵入が防げ、車内温度の上昇も抑えられるので、ありがたい
日差しがもっとも入ってきそうなフロントウィンドウにも、車内に射し込む光を低減する工夫あり! フロントのルーフを前までせり出した構造とすることで、直射日光を射し込みにくくしている
ダッシュボードを見ると、手前側で射し込む光が抑えられていることがわかる。これは、車中泊だけでなく、運転している時にもありがたく感じた
寝転んだ時に気付いたのだが、シートのクッション性がいい! ハスラーのシートより、弾力がある感じだ
横になったまま手が届く位置にドリンクホルダーがあるのも◎
朝起きた時、伸びをしても天井が高いからへっちゃら! 窮屈さを感じないのは快適だ
快適な寝床は準備できたが、広い居住空間を確保すると、積んできた荷物の置き場に困ることも。しかし、ウェイクはそんなところもしっかりフォローできるように収納スペースがたっぷり用意されてる。
助手席の座面の下にはアンダーボックスを装備。靴などが入れられるくらいの大きさだ
ラゲージスペースの下にも収納場所があるのがポイント。これは、ハスラーにはなかった仕様だ
容量は90L。1泊分のお泊まりセットは余裕で入れることができた
加えて、今回車中泊したようなシートアレンジであれば、ラゲージスペースにも荷物が置いておける。大きなキャンプ道具は持たずに車中泊するなら、このくらい収納スペースがあれば困らなそう
もちろん、インパネボックスもある。そのほか、ハンドルの下にも細かい棚を発見!
ハンドル下の棚はかろうじて手が入るくらいのサイズ感。フタがないので運転中は入れておかないほうがいいと思うが、車中泊の際には細かいものを置くスペースにしてもいいかも!?
ダッシュボードも広いので、車中泊で過ごす間は物置として使ってもいい
車中泊では寝るだけでなく、車内で食事をとることもある。そんな時には、助手席を前側に倒してテーブルを出現させよう!
シートの背面がテーブルになる。座面を前方に立ててからシートを倒す仕様なので、汁物を置いても不安にならないくらい水平だ。また、ハスラーのようにインパネボックスのフタをテーブルにするよりサイズが大きいのも便利
食事中は、こんな感じになる。リアシートに腰かけると、テーブルの高さもちょうどいい
これまで筆者は、ハスラーとN-VANで車中泊を体験しているので、軽自動車でも快適に寝泊まりできることは実感している。もちろん、軽自動車であるため、やや制約があるのも事実だが、車中泊は車内で泊まることが目的ではなく、旅やアウトドアを楽しむための宿泊手段のひとつであり、準備はそこそこでも手軽に寝られることが重要だと個人的には思う。その点、今回レビューしたウェイクは、シートを倒した際のフラット感がバツグンで、シートのクッション性もよく、特別なアクセサリーを用意しなくてもかなり快適。収納できるスペースがたくさん用意されていたり、天井が高い設計だったりと、ちょっとした違いではあるが、軽自動車というカテゴリーながら窮屈さを感じない空間を提供してくれる。非常にざっくりした言い方だが、これまで取り上げてきた車種と比較すると、ハスラーよりもスペース効率が高く、N-VANよりも快適なのがウェイクである、と言えるだろう。
なお、このレビューでは車中泊について中心に紹介しているが、今回借りたターボ付きモデルはパワーやトルクも十分で、車体の見切りもよく、かなり運転しやすかった。移動中の快適さも疲労を抑えてアクティビティを楽しむために大切な要素だが、その点でも申し分ないポテンシャルを備えている。
フロントウィンドウの上部にはステレオカメラが装備されており、このカメラで前方を監視し、衝突回避支援ブレーキ機能(いわゆる自動ブレーキ)を作動させたり、車線逸脱を警報で知らせる先進安全機能「スマートアシストV」も装備されているので、安全面についても不安はない
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カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。