「桃屋」といえば、「ごはんですよ!」などのビン詰め食品のイメージをお持ちの方が多いでしょう。しかし、桃屋にはもうひとつ、創業(1920年)以来のロングセラー商品があるのをご存じでしょうか。それが「鯛みそ」 です。桃屋のオンラインショップでも常に上位にランクインしている商品なんですよ。
こちらが「鯛みそ」。ビンではなく缶に入っています
スーパーではよく見かけるんですが、筆者は一度も食べたことがなく、味の想像がつきません。レトロなパッケージだし、購入者の多くはご年配なのでは? つまり、自分もふくめて、ネットに親しみのある層はあまり知らないのでは? ということで、「鯛みそ」の味と可能性を実食して調査します。定番からアレンジ系まで、6パターンの食べ合わせも試してみました。
「鯛みそ」は味噌に鯛のそぼろを混ぜた、「なめ味噌」の一種です。「なめ味噌」というのは、魚・肉・野菜などの具材を入れて調味した、そのまま食べる味噌のこと。金山寺味噌やピーナッツ味噌などは聞いたことがあるでしょうか? ふろふき大根に添えられていたり、生野菜をディップしたりというシーンで見かけることが多いです。その鯛バージョンというわけですね。
それではさっそく、初めての鯛みそ、いざ実食!
缶は裏から開けます。ひっくり返すとプルタブになっています
でも、なぜ缶なんでしょう? 桃屋の公式サイトによると、内容物を光から守るために容器はビンではなく缶入りにしているとあります。しかし内容量(170g)からしても一度に使いきりづらいし、フタができるビンのほうがよさそうな気が…。ちなみに「保存料無添加のため、開缶後はすぐ冷蔵庫(10度以下)に入れ1か月を目安にお召し上がりください」的なことが書いてあります。
そんなパッケージに関するプチ疑問はさておき、まずはペロッとなめてみました。想像以上に甘くて濃厚、粘度がかなり高くてドロっとしています。田舎っぽい味わいは、味噌(みそ)おでん、長野の五平餅、群馬の焼きまんじゅうのタレにしてもよさそうです。日本人なら絶対好きな味ですね。
スプーンですくってみました。傾けても落ちないくらいのペースト感
そして、「鯛みそ」のネーミングから想像していたイメージとは少しギャップがあります。まず、鯛の味や風味はあまりしません。ほのかに感じるかな? という程度。
たとえば一般的によくある「肉みそ」なら、肉そぼろを味噌で味付けしたもので、つまり、ほぼ肉。肉が優勢。一方「鯛みそ」は、鯛のそぼろが入っているようですが、ほとんどペースト状で入っている感じがしません。つまり、ほぼ味噌。鯛が劣勢。缶詰といっても、シーキチンのような魚介類の具材というわけではなく、これは調味料なのです。
ちなみに原材料は、2種類の米みそ、砂糖、鯛そぼろ、水あめ。保存料無添加で塩分控えめだから、体にやさしそうですね。
ここからは、鯛みそのおすすめの食べ方を探ります。いくつかの食べ合わせを試してみましょう。最初は超定番の「ごはん」から。
鯛みそ×ごはん。これは間違いありません
ホカホカのごはんと「桃屋」商品の相性は、言わずもがな。お米の持つ甘みと、鯛みその素朴な甘みがよく合います。ただ筆者的には、甘さが前に出ているせいか、悪くないけど、もっとしょっぱいほうが合いそうだとも思いました。焼きおにぎりに塗るともっとおいしいかもしれません。
続いて、トーストに鯛みそを合わせてみました。世の中には多種多様な総菜パンが販売されているし、群馬県では「味噌パン」が名物になっているし、これも期待できそう。
トーストしたパンに、しっかりめに塗ります
硬めペーストの鯛みそは、パンにも塗りやすい!
食べてみると、うん、これも悪くない! ジャム感覚でいけるから、ごはんよりもむしろパンのほうが合っている印象です。
食材の和洋を問わず、いろいろなレシピが生み出されているパスタ。では鯛みそはどうでしょうか?
ゆでたてのパスタをバターとあえて、海苔と鯛みそをトッピング
今回、麺は太めのフェットチーネをチョイスしました
パスタに甘い鯛みそは微妙か? と思ったけど、これがなんと結構いけます! ほのかに香る鯛の風味は、和風タラコパスタに近いイメージでしょうか。最後にふりかけた海苔が、かなりいい仕事をしています。
野菜との相性はどうでしょうか。まずはそのまま、スティック状に切ったキュウリをディップ。
もろみ味噌をキュウリにつけて食べる、いわゆる「もろきゅう」のような味です
これはこれで悪くないんですが、1つおすすめのアレンジを。野菜にはやっぱりマヨネーズ、ということで、鯛みそと混ぜてみました。
マヨネーズに鯛みそを混ぜます
そして大根をディップ!
するとどうでしょう、鯛みそとマヨネーズが、お互いに欠けていたものを補完しあったようです。甘さ、酸味、しょっぱさのバランスが完璧に。恐ろしいほどの傑作が誕生しました! 野菜に合うのはもちろん、それ以外のさまざまな食材にもいけそうです。
次はみんなが大好き、何でもできちゃう万能食材「卵」です。今回はオムレツにしてみました。
フライパンの上に薄く広げた卵に、鯛みそを入れて包みます
やわらかめに仕上げた卵の中から、鯛みそがトロ〜リと
さすが卵。その包容力で、鯛みそだって受け入れてくれました。少しモッタリした鯛みその甘みが、うまい具合にまろやかになっています。甘い味付けの卵焼きが好きな方には、特におすすめですよ。一緒にチーズなどを入れてもおいしそう。
先ほどの「鯛みそマヨ」をつけてもGood!
ラストはメインディッシュとして、肉料理を。今回は、ちょっとイイ値段で売られている、牛の「ミスジ」という部位をソテーしてステーキにしてみました。
ステーキと鯛みそ。おいしい飲食店で、たまに見かけそうなビジュアルです
鯛みそをしっかりつけて、いただきます!
これは結構アリ。ステーキの肉汁と鯛みそは意外と相性がよく、肉のうまみを引き立ててくれます。甘酸っぱいバルサミコ酢で食べる肉料理があるし、甘めの焼き肉のタレも結構ありますよね。あれに近い味わいです。
いろいろと試してみまして、ここでまとめ。
「鯛」というネーミングですが、魚っぽさはほとんどありません。クセのない“甘い味噌”として使うのがベター。甘さと相性がいい料理にはバツグンに合います。特に、たとえば卵焼きは甘いほうが好きという“甘党”にはおすすめ。ごはんと食べるのもいいですが、お餅と食べるともっとよさそう。みそ田楽などにすると最高ではないでしょうか。そして、米よりは小麦のほうが合いそうです。塩分は5%と控えめなのもうれしいですね。料理好きの人はぜひアレンジの1つとして、また自宅で飲むのが好きな人はつまみに添えるディップの1つとして買ってみてはいかがでしょう。
意外な部分が多く、そのポテンシャルは計り知れない、桃屋の「鯛みそ」。なお、鯛みそという食べ物自体は、愛媛、新潟、大分、千葉など各地の伝統調味料として存在するようです。その味を一般化したこと、そして古くから愛される普遍的なおいしさを再現したことからロングセラーになったのかもしれません。こういう、そのまま食べるみそってあまり売っていないですよね。みなさんも思い思いのシーンでお召し上がりください!