「乾きもの」の大定番である柿の種。特に有名な「亀田の柿の種」は、米菓売上No.1のベストセラー商品です。その亀田が2019年に、柿の種とピーナッツの配合について投票を実施。その結果を受けて今春、柿の種とピーナッツの割合が「6:4」から「7:3」に刷新されました。
そんな話題もあり、今回は、柿の種が好きな食べ物5本の指に入るほど好物なフードアナリストの筆者が、定番〜個性派まで柿の種を食べ比べて味や特徴をチェック。指標を踏まえてレポートします!
今回比較するのは、こちらの10商品。
発祥の「浪花屋 元祖柿の種」から、新鋭ブランド「かきたねキッチン」まで、多彩に揃えました
・亀田の柿の種
・浪花屋 元祖柿の種M
・三幸の柿の種
・越後製菓 とうがらしの種
・でん六 ピー柿
・かきたねキッチン ロングバッグ 甘醤油のあと辛
・八幡屋礒五郎の種
・祇園味幸 日本一辛い 黄金一味 柿の種
・なとり 激辛柿の種&ピーナッツ
・王様堂本店 手延し柿ピー
それでは食べ比べていきましょう!
まずは1966年に発売され、半世紀以上の伝統を誇る米菓売上No.1※の「亀田の柿の種」(※インテージSRI 調べ:せんべい/あられ 2019年1月〜2019 年12月累計金額の同ブランド累計)から。実は、当初は柿の種とピーナッツの配合が7:3であったものの、時代の要望に合わせて6:4となり(一時期5:5だったという説も)、今年再び7:3になったというサイドストーリーがあります。
また、数字の10の「1」が柿の種、「0」がピーナッツに見えるという理由で、10月10日が「亀田の柿の種の日」に制定されています。ある意味強引な理由に感じなくもありませんが、柿の種好きの筆者としてはまったく異論はありません。
内容量100gあたり、エネルギーは453kcal。全体量としては6袋入りで200gです
亀田製菓は、米どころ新潟のメーカー。ベースのお米は国産のうるち米(日本の一般的なお米のこと)100%です
柿の種好きの筆者ですが、やはりなんだかんだ言って一番好きなのはこのベーシックな「亀田の柿の種」。亀田製菓は、さまざまなフレーバーの柿の種を出していますが、やっぱり還るところはこのプレーンです。今回食べ比べて、そのウマさを改めて確信しましたが、尽きるところは素材と味付けにあると実感。米のうまみと、ダシ感豊かな香ばしい醤油味が好バランスで、ピーナッツの存在感も絶妙です。
柿の種の粒は小さくは感じませんが、今回の中では最小サイズのため大きさは1とします。なお、柿の種好きあるあるのひとつが、食べ終わった後も口内に残り続ける独特の風味。それも含めて愛おしい!
現在の柿の種を最初に作ったのが、1923(大正12)年創業の浪花屋(なにわや)製菓。小判型の金型で切り抜いてあられを作っていたある日、その金型を踏み潰してしまったとか。その金型であられを作ったところ、ある主人に「柿の種に似ている」と言われ、それをヒントに1924年、柿の種が誕生したそうです。
内容量は135g。100gに対して385kcalです
浪花屋も新潟のメーカーですが、創業当初のうるち米のせんべい作りから、後に大阪のあられ作りを取り入れてもち米を使ったあられを作るようになった(うるち米=せんべい、もち米=あられorおかき)ことから浪花屋という名に
同ブランドは、大きな缶入りのお土産用で知っている方も多いのではないでしょうか。今回のような袋入りもあり、ピーナッツ入りもあるのですが、今回は王道の、なしのほうを実食。「亀田の柿の種」よりも若干硬さがあり、ダシ感や味付けの方向性が違います。元祖のほうがストレートかつシャープな印象で、醤油テイストは少々強めに感じるものの、味は濃すぎません。いぶし銀のおいしさを感じさせる、銘菓と言える存在感です。
生地は国産のもち米と、うるち米をブレンド。135gの量であれば、チャックがあるとうれしいです
柿の種の小分けパックカテゴリーで、「亀田の柿の種」との二強に君臨するのが「三幸の柿の種」。昔ながらのもち米100%と杵つき製法にこだわって作った、お米の風味の豊かさと、醤油ダレにかつおの風味を加えたコクとうまみが特徴です。
小分けの1袋は24g。100gに対して509kcalあります
亀田や浪花屋より粒がやや大きめ。なお、大袋の中に割れ防止のための薄いプラスチックの緩衝材が入っていますが、世界的なエコ化にともなっていつかなくなるのではないかと思っています
個人的にはダシ感よりも甘みのほうが印象的。粒が大きい分お米の味も豊かですが、照りのある甘みがあって、香ばしさもなかなか。辛さはその分控えめで、子供でも食べやすいと思います。
公式情報がないため、柿の種とピーナッツの割合を計ったところ、約5.5:4.5で柿の種のほうがやや多いという結果に。亀田の柿の種よりカロリーがやや高いのは、甘さとピーナッツの割合が関係しているのかもしれません
個人的に“新潟メジャー柿の種四天王”は、亀田、浪速屋、三幸、越後だと思っています。そしてこちらは涙なくしては語れない一品。今は亡き「みながわ製菓」が1986年に世に放った傑作「とうがらしの種」を、同郷の越後製菓が2017年に復活させたというストーリーを持っています。
内容量80gに対し、319kcal
国産うるち米100%。袋口が金色のビニール針金バンドという点も見事に復刻されています
こちらは筆者の中で、辛口柿の種の原風景と言える商品であり、初めて食べたときは衝撃的でした。今は難なく食べられますが、湖池屋の「カラムーチョ」よりも断然辛く、ヤミツキになるうま辛さだと改めて実感。チリシーズニングの影響か、どことなく香りに酸味を感じますが、味に酸味はありません。
平べったくやや大きめのサイズで、微細な一味唐辛子が振りかけてあるのも特徴です
「豆はでん六」のCMで知られる豆菓子メーカー、でん六からは、同社らしいピーナッツ側からのアプローチによる「ピー柿」をピックアップ。亀田が6:4から7:3に変更と、世の声に合わせて柿の種のほうを増量しましたが、こちらは4:6でピーナッツが多いという仕様。ピーナッツ派の柿の種好きにとっては、救世主的な存在なのです。
100gあたり533kcal。内容量は160g入りです
確かにピーナッツのほうが多い印象です。そして柿の種には国産米100%を使用
世界で初めて落花生の食味計を開発し、おいしさを化学的に数値化。また、産地や農家を指定しておいしい豆だけを選ぶという徹底ぶりもでん六ならではでしょう。確かにピーナッツの粒はやや大きめで、味も良好。それでいて柿の種が劣る感じもなく、高い完成度となっています。
でん六は山形のメーカーで、蔵王の森の中に工場を持っています。その自然もおいしさにひと役買っているのでしょう
日本初の柿の種専門店として2011年にデビューし、百貨店を中心に拡大しているのが「かきたねキッチン」です。運営元は1902(明治35)年創業の、大阪の老舗米菓メーカー、とよす。商品の特徴は、多国籍な料理の特徴を取り入れた多彩なフレーバーにありますが、今回はベーシックな醤油味をセレクトしています。
内容量は105gで、エネルギーは402kcal
パッケージも数種あり、今回はその中からピーナッツの入らないロングバッグシリーズを選びました
柿の種は大きめで、その分内部のふくらみも増すため、エアリーさを感じます。「甘醤油のあと辛」というだけあって甘めで、辛みは余韻でほんのり。ダシ感は控えめですが、お米の香ばしい風味は豊かでうまみも十分です。同社はピーナッツに限らず、フレーバーに合わせてさまざまなナッツを組み合わせているので、ナッツ入りを選ぶ際はそこにも注目してみてください。
一部にタイ産を用いたもち米と、国産うるち米をブレンド。タイのもち米は個人的に好きで、同商品の個性にもプラスに働いているのではと思います
東京・浅草の「やげん堀」、京都・清水寺の「七味家」と並び、日本三大七味唐辛子と称されるのが長野・善光寺の「八幡屋礒五郎」です。同社は攻める老舗としても知られ、そのひとつが柿の種シリーズです。
内容量は60gでエネルギーは239kcal
製造は、前記「とうがらしの種」の越後製菓が担当。それもあって、形などがよく似ています
「とうがらしの種」は一味でしたがこちらは七味。陳皮(みかんの皮)、ごま、しそ、山椒、生姜なども入っていて、辛みの奥にジワッとした奥行きを感じます。複雑みのある辛さで、刺激はなかなか。また、こちらにもチリシーズニングが使われていて、どことなくエスニックなニュアンスを感じました。
国産うるち米100%で、スパイスが振りかけられている点も「とうがらしの種」同様です
関東の柿の種メーカーの雄、千葉の三真が、祇園味幸の「日本一辛い 黄金一味」とコラボレーションしたのがこちら。黄金一味は赤唐辛子の10倍の辛さながら、スッと引くキレのよさがあり、祇園味幸の商品の中でも人気No.1となっています。
100gあたり384kcal。内容量は120gです
今回は箱入りの120gですが、箱なしの50g入り袋タイプもあります。ちなみに右が元の「日本一辛い 黄金一味」
箱の中は透明な袋入り。柿の種はやや大きめで、無造作な手作り感のある形です
辛さはジワジワ広がるタイプで、今回比較した中ではトップレベル。筆者は途中で限界を感じ、手が止まりました。いっぽうで照りのある甘さも強く、たまり醤油のような熟成感のあるコクと甘みもあります。
ベタつくほどではないものの、見た目的にも照りは十分
今回、唯一の総合おつまみメーカーとして参戦しているのが、なとり。通常の柿の種商品もある中、選んだのは個性派の「激辛柿の種&ピーナッツ」です。辛み成分(カプサイシン)がハバネロの3.4倍も含まれた、沖縄県育ちの超激辛唐辛子「アカハチ」を使用。キレのあるシャープな辛さがクセになる、ホットな味が特徴です。
内容量60gに対し、エネルギーは300kcal。裏面には「アカハチ」のことがより詳細に載っていますが、ほかの情報はシンプルで、米の産地は明記されていません
見た目はベーシックで、色的には辛さを感じません
前記「祇園味幸 日本一辛い 黄金一味 柿の種」も破壊力抜群でしたが、こちらも負けず劣らず。もしやそれ以上かと思わせる暴力的辛さがあります。辛さはどんどんヒートアップし、舌に残ってなかなか消えません。味はぼやける感じがあるものの、適度な醤油フレーバーが下で支えている印象。ピ―ナッツは小粒ですが、これがオアシス的存在になっています。
ナッツが入っていなければ今回一番の辛さかも。鼻にも響く辛さがあり、得意でなければ一気に食べるのは注意が必要です
最後に紹介するのは、高級スーパーなどで売っているリッチ系。1924(大正13)年に浅草で創業した王様堂本店の「手延し(てのばし)柿ピー」です。こちらは100gで648円(希望小売価格)という代物なだけあって、手間ひまも随所に。千葉県産ピーナッツ、国産水稲もち米、愛知県産のたまり醤油を使用し、さらに柿の種は職人が手延ばしでていねいに作っています。
内容量は100gで466kcal
同社の工場は醤油で有名な千葉の野田にありますが、同商品ではその探求心から愛知県産のたまり醤油を使っているようです
確かに、味わいのアプローチはかなり別物。大きいもののあまり平べったくない分、立体感があってソフトな食感です。柿の種というよりは、粒あられっぽいおかき(サイズの大きいあられをおかきと呼ぶそうです)に近い印象ですが、筆者には手延ばしのありがたみが感じられませんでした。これは好みの問題でしょう。なお、筆者は同社の、おそらく手延ばしではない普通の「柿ピー」のほうが好きだと再確信しました。
そして、その「柿ピー」もなのですが、ピーナッツのおいしさが圧倒的。今回の中でぶっちぎりでウマいです。香ばしくてカリッとしていながら、ただ硬いだけではない奥深さのある絶妙な弾力。うまみやコクも深く、千葉の落花生はやはりスゴいと思いました。
柿の種の味付けは、素材のうまみを生かした方向性の、マイルドでやさしい印象。辛さも控えめです
今回10品を食べ比べてみて、結局「亀田の柿の種」が一番好きという点は揺るがなかったものの、柿の種ひとつとっても各メーカー・商品によって千差万別ということがわかりました。ピーナッツと一緒に食べると味の印象がガラリと変わるという点も再発見で、また、ピーナッツの大きさや味の濃さでもブランドイメージが変わることを実感しました。最後に、筆者の個人的なNo.1柿の種をカテゴリー別に紹介します。
・個人的おすすめNo.1:亀田の柿の種
・辛さNo.1:なとり 激辛柿の種&ピーナッツ
・甘うまさNo.1:三幸の柿の種
・パッケージNo.1:八幡屋礒五郎の種
・ピーナッツのうまさNo.1:王様堂本店 手延し柿ピー
辛さやピーナッツの有無など、好みによって好きなブランドは分かれるはず。ぜひ食べ比べをお試しあれ
柿の種の最良の相棒であるビールが、酒税改定で安くなったこの10月。合わせ買いのタイミングに、ぜひ柿の種の再評価を!
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。