1976年のデビューから愛され続ける国民的カップうどん&そば「どん兵衛」(正式なブランド名は「日清のどん兵衛」)ですが、発売から46年を経た2022年に「日清の最強どん兵衛」なる商品が爆誕! 麺、つゆ、具材、薬味とすべてにこだわった、いわゆるプレミアム版の「どん兵衛」です。
当初はきつねうどんとかき揚げそばの2種類でしたが、2024年12月の時点で4種類がラインアップ。「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」(左上)、「同 かき揚げそば」(右上)、「同 カレーうどん」(左下)、「同 鴨だしそば」(右下)
「最強どん兵衛」シリーズの発売に際し、筆者は「さては、以前の『もっちもち麺』はこのための布石だったな?」と、ピンときました。というのも、2020年末には「日清のどん兵衛 限定プレミアムきつねうどん 史上最もっちもち麺」が発売され(レビューはこちら)、45周年だった2021年にも再発売されていたからです。
あの知見を踏まえたうえで全体的にブラッシュアップし、そば版も商品化するとは、さすが日清食品! ただ、やはり気になるのはその味です。麺を太くしたり、6種の合わせダシを使ったりしているとのことですが、はたして通常版と比べてどれぐらいウマいのか。
4種類それぞれを、スタンダードな「どん兵衛」(つゆは東日本版)と食べ比べ、何がどうグレードアップしているのかをレポートします。
4種の「最強どん兵衛」を、スタンダードな「どん兵衛」と食べ比べます。なお、日清食品の公式オンラインストアでは、通常版が254円(税込)で、最強版が302円(税込)。約50円の差があります
まずはきつねうどんのデザインやスペックから比べていきましょう。「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」は、基本のデザインを踏襲しつつ金色を用いた高級感のある装い。また、差別化ポイントが文字と写真でわかりやすく主張されています。そして、調理時間が通常版より3分長い8分であることもポイント。
「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」の差別化ポイントは大きく4点。「極太うどん」、6種の合わせだしを使用した「つゆ」、通常よりぶ厚い「おあげ」、長野の老舗「八幡屋礒五郎」が特別に調合した「特製ゆず七味唐辛子」です
うどんの太さが違うので、重量も違うのかと思ったらやはりでした。「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」の麺は66g(全体では93g)なのに対し、「日清のどん兵衛 きつねうどん」は74g(全体は96g)。意外にも、通常版のほうが8g多いという結果に。
最強(上)は410kcalで、炭水化物が53.9g。通常版(下)は421kcalで56.1g。(E)というのはEAST=東日本版の味という意味です
ともに開封して中身をチェックすると、なんとなく「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」のほうが貫禄のある印象。特に粉末スープに付いた「八幡屋礒五郎(やわたやいそごろう)」のゆず七味が印象的です。また、麺に関しても確かに太め。
左が最強版。麺の太さの違いは一目瞭然です
そして「おあげ」に関しては、四方の大きさはほぼ一緒ですが厚さに違いがあり、乾燥した状態での重さを量ると、最強版が23gで通常版は14g。商品ごとに個体差はあると思いますが、筆者のチェックでは約1.7倍であることがわかりました。
おあげを重ねて比較。最強版(上)は、最も厚い部分で1.6cm、通常版(下)は最も厚い部分で1.0cmでした
「史上最もっちもち麺」を食べ比べたときと同様、先に8分調理の最強版に熱湯を入れ、3分後に通常版を調理開始。同時に完成させると、仕上がりのルックスでも違いが浮き彫りになりました。
パッと見でわかるのが、薬味の色。ゆずが入った「八幡屋礒五郎」の七味唐辛子は、色もオレンジが強めです
では肝心の味をチェック。立体感のある麺はふわっともっちりした食感で、ボリューム感やなめらかなタッチがリッチさを演出します。つゆはダシの複層的な香りのあとに七味のゆずが華やかな表情を添え、かえしの甘みと醤油感がジンワリと。「おあげ」のジュワッとした弾力も見事です。
乾麺タイプのカップうどんで、この高級感は秀逸。全体的に贅沢な味わいであることがわかりやすい仕上がりです
では、改めて通常版の味はどうでしょうか。麺は立体的でない分淡麗なタッチですが、さすがの「どん兵衛」クオリティで弾力もコシも十分。つゆはより関東らしい醤油感の豊かなテイストで、甘みも若干強め。「おあげ」も安定のジューシーさで、当然ではあるものの悪くないおいしさです。
通常版は比較的シンプルながら、完成度の高さはさすが。麺もつゆも、こちらのほうが好きという人は少なくないはず
麺とつゆだけを取り出して比較。つゆの色は最強版のほうが若干淡くなっています
以下は、通常版をオール3とした場合の「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」の評価点です。
次はかき揚げそば。こちらもきつねうどんと同様の差別化が図られており、弾力とのどごしが豊かな「新太そば」、6種の合わせだしを使用した「つゆ」、通常より厚い「鬼かき揚げ」、東京・浅草の老舗「やげん堀」で特別に調合した「特製七味唐辛子」が「日清の最強どん兵衛 かき揚げそば」の特徴です。
最強版(左)の調理時間は、通常版(右)より2分長い5分
スペックを比べてみると、きつねうどんとかき揚げそばとでは数値相関が若干違いました。「日清の最強どん兵衛 かき揚げそば」の麺は66g(全体では101g)なのに対し、通常版の「日清のどん兵衛 天ぷらそば」は72g(全体は100g)。最強版は麺が軽いいっぽうで、全体容量は重いのです。最強版は、かき揚げが重いということかもしれません。また、最強版は通常版より炭水化物が低いものの、カロリーは通常版を上回っていました。
最強(上)は494kcalで、炭水化物が55.7g。通常版(下)は487kcalで57.2g
中身に関してはきつねうどんのときと同様、最強版のほうがゴージャス。麺が太く、かき揚げにもインパクトがある「日清の最強どん兵衛 かき揚げそば」のほうが貫禄十分です。
麺の太さと、ずっしり感のあるかき揚げに注目。なお、写真のかき揚げは両方とも袋から取り出して撮影しています
また、きつねうどんの「おあげ」は厚さの違いだけでしたが、かき揚げ(天ぷら)は素材からして別物。特にたまねぎの甘香ばしい風味を強く感じます。
かき揚げ(天ぷら)も比較してみることに。最強版(上)は31gで、最も厚い部分は2.3cm。通常版(下)は19gで、最も厚い部分は1.2cmでした(筆者調べ)
ともにかき揚げは、あと乗せする形で調理開始。2分の時間差を考慮して熱湯を注ぎ、七味唐辛子を振って完成です。第一印象で感じたのは、最強版のかき揚げの存在感。やはりたまねぎの甘香ばしさが前面に出ています。
「やげん堀」の七味もナイスな仕事ぶり。黒ごまが香ばしく、上品さを演出しています
最強版の麺は、田舎そばを彷彿(ほうふつ)とさせる素朴な歯応えがあるものの、決してボソッとした感じはありません。「どん兵衛」らしいしなやかなタッチや、りりしいテクスチャーも健在です。つゆは最強版きつねうどんよりも醤油感が主張。かき揚げのたまねぎにも影響されているのか、甘みも豊かに感じます。
そしてかき揚げは、つゆに浸った底面はふわっと、上面はサクサクで、たまねぎのシャキシャキ感もしっかり。その分海老や青のりの香ばしさは息をひそめますが、リアルなかき揚げ感があって驚きのおいしさです。ただし大きめのかき揚げは油分も増えるからか、若干こってりした印象も。
麺のファーストタッチはモフッとしていて、かむとコシの強さがわかります。また、比較的に硬めかつほぐれにくいので、よく混ぜたほうがいいでしょう
続いて通常版の味をチェック。ツルッとなめらかな麺はのどごしもよく、繊細という面での上品さであれば通常版のほうが上かもしれません。また、天ぷらは最強版のかき揚げとは明らかに違う方向性。通常版は海老の香ばしさと青のりの磯っぽい香りが前に出ていて、海鮮風味が強めです。
麺、つゆ、天ぷら、薬味のバランスがピカイチ。「どん兵衛といえばこの味だよな」と、思わず納得してしまう安定感です
そばつゆの色は、うどんに比べて最強版と通常版で違いはあまり感じません
以下は、通常版をオール3とした場合の「日清の最強どん兵衛 かき揚げそば」の評価点です。
きつねうどん、かき揚げそばに続く「日清の最強どん兵衛」シリーズ第3弾として発売されたのが、「日清の最強どん兵衛 鴨だしそば」です。最初のデビューは2023年12月。このタイミングは歳末の風物詩である年越しそばを狙ったもので、当時のプレスリリースでも「年越しにピッタリな新商品が登場!」とうたわれていました。
「日清の最強どん兵衛 鴨だしそば」(左)はテーマカラーが紫であり、デザイン的には最も飛躍している印象。調理時間は、通常版「日清のどん兵衛 鴨だしそば」(右)より2分長い5分となっています
なお、「最強どん兵衛」シリーズの中では唯一レギュラー商品化せずでしたが、2024年の歳末には装い新たに再登場。そのプレスリリースによると“過去10年間の期間限定商品の中で最も売れた”とのことで、2025年以降も同スタンスで準レギュラー化していくのかもしれません。
最強版(上)は内容量103g(麺66g)あたり423kcalで、炭水化物が49.6g。通常版(下)は内容量104g(麺72g)あたり413kcalで炭水化物51.5g
スペックの数値相関は、前述の「かき揚げそば」vs「天ぷらそば」同様で、麺の量やカロリーなどに“ねじれ”がありました。そんな「日清の最強どん兵衛 鴨だしそば」の特徴は、4点。弾力やのどごしをリッチにした「太そば」、鴨の旨味とたまり醤油が効いた「鴨だしつゆ」、さらに香り高くする「特製鴨オイル」、大きくて炭火で焼いたような風味が楽しめる「香ばしつくね」です。
かやくは、最強版(左)は裸で、通常版(右)は袋入り。麺の質感は、最強版かき揚げそばと同様に貫禄があります
つくねはサイズだけでなく、個数にも違いがありました。今回比較した商品を調べたところ、最強版は大玉が7個で通常版は3個。また、ネギに関してもわかりやすい違いがあり、最強版は青(緑)い部分が多くて細かめのカット。通常版は白い部分のほうが多くて大きめでした。また、通常版に入っている揚げ玉が、最強版には存在しないことも特徴です。
メインとなる具材の比較。通常版と最強版ともに、つくねは大小が存在します。後述しますが、通常版にだけ入っている揚げ玉は、見た目以上に味に影響を与えていました
調理してみると、いちばんわかりやすい違いは香りにありました。最強版のほうが、断トツで鴨がアロマティック! やはりこれは「特製鴨オイル」によるものでしょう。つゆの色も最強版のほうが濃いめですが、それ以上に風味が大きく異なります。
見た目の差では、ネギの違いがわかりやすいポイント
また、「鴨だしつゆ」の甘さもパワフル。こちらは濃口醤油をベースに鴨の旨味を加え、たまり醤油でコクと深みを出しているとのことですが、通常版に比べると確実に糖分が多く、深い旨味によって全体のパンチを豊かにしています。
麺は、かき揚げそばで感じた印象と同様。やや太めでコシも強く、もっさりした感じはなくてシュルッとしなやかなタッチです
改めて通常版を食べてみると、甘さが抑えめな分、塩味を豊かに感じます。また、揚げ玉が、最強版の「特製鴨オイル」とは違ったパンチを醸し出しており、カップ麺らしいジャンク感を演出。とはいえ総じて感じるのは、これはこれでウマいということ。特に麺に関しては、細いからこその上品なニュアンスもあって、こちらのほうが好きという人も多いはずです。
細くて長い麺。シュッとしたつるみのあるタッチと、のどごしのよさは最強版より秀でています
また、つくねに関しては、最強版の「香ばしつくね」は大きくて色が濃く、香ばしさもあるのですがドライな印象。ジューシーではなく、あっさりした味です。また、どこかイワシなどで作るつみれのような、シャープな風味も感じられました。いっぽう、通常版のつくねはほんのりスパイシーで、こちらのほうが鶏のつくねっぽい味わい。なかなか興味深い比較でした。
全体的な貫禄や贅沢感は、最強版のほうが上。ただし通常版の完成度もきわめて高く、さすが「日清のどん兵衛」ブランドです
以下は、通常版をオール3とした場合の「日清の最強どん兵衛 鴨だしそば」の評価点です。
2024年2月にシリーズ第4弾としてデビューし、そのまま通年販売となったのが「日清の最強どん兵衛 カレーうどん」。第3弾の「日清の最強どん兵衛 鴨だしそば」は季節色が強かったからか、レギュラー入りしませんでしたが、それだけカレーうどんは定番の味ということでしょう。
左が「日清の最強どん兵衛 カレーうどん」で、右が通常版の「日清のどん兵衛 カレーうどん」。調理時間はきつねうどんと同じく、最強版が3分長い8分となっています
スペックは、最強版が94g(麺66g)あたり396kcalで、炭水化物が60.5g。通常版は86g(麺66g)あたり380kcalで炭水化物54.2g。こってりしたイメージのカレーうどんですが、カロリーはほかの味に比べて最も低い設定に。
麺は最強版と通常版で太さが違うものの、量(重さ)は66gで同じです
最強版カレーうどんの特徴は、「極太うどん」「6種の合わせだし粉末」「特製カレー粉末」「一枚おあげ」の4点。なかでもカレー粉末は、既存の「日清のどん兵衛」史上最多となる30種のスパイスを使った意欲作です。
最強版(左)にはかやくの袋がなく、具材は「一枚おあげ」とネギのみで勝負。いっぽうの通常版(右)には、大豆たんぱくを主原料にした疑似肉や乾燥ニンジンなどが入っています
肉系のかやくを捨ててまで「一枚おあげ」になっているのは、「日清のどん兵衛」の矜持でしょうか。日清食品には、カップヌードルで培った「謎肉」のノウハウもあり、最強版の具材に関しては肉っぽい素材をグレードアップさせる手法もあると思うのですが、ここには何となくこだわりを感じます。
左が最強版で、右が通常版。彩りの豊かさは通常版のほうが上と言えます
とはいえ、つゆの豪華さは最強版の勝ち。ベースとなるダシにはカツオ、宗田ガツオ、サバ、干し椎茸、昆布、煮干しと6種を使い、そのうえで30種のスパイスを調合したカレー粉末との相乗効果を図っています。ただし通常版カレーうどんも、カツオ節と昆布のダシに、牛の旨味を効かせたつゆとなっており、こちらもおいしさとしては十分。
最強版は2袋使うこともあり、どっさりしたパウダー感。熱湯と混ぜる際にも豊かなとろみを感じました
ということで食べてみると、最強版はスパイス感が強いうえに香りもフレッシュ。スパイスを30種使っているからか、ビターなコクのニュアンスなど、アロマの複雑さを感じさせる深みがあります。また、とろみも強めでぽってりしたタッチ。太めの麺とも好相性です。
「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」でも感じた、ふわもちの多加水麺。ふくよかなおいしさに拍車をかけます
対する通常版は、最強版ほどの香り高さや奥深いスパイス感はないものの、いい意味でシンプル。おいしさとしては申し分ないレベルです。麺も、もちっとシルキーかつ適度なコシがあり、十分な完成度。特筆すべきはメリハリを演出する疑似肉と、シャキッとしたにんじんです。なお、こちらのおあげは刻みタイプで少量ですが、これはこれでナイスアクセント。バランスのよさや味の多彩さで言えば、最強版より上かもしれません。
麺もつゆも、最強版ほど贅沢なテクスチャーではありませんが、通常版もおいしさとしては負けていません。カレールウで言えば、「ザ・カリー」よりも「バーモントカレー」が好きな人が多い的な感じです
改めて最強版カレーうどんの味を振り返ると、余計なお世話かもしれませんが、「一枚おあげ」以外の具材構成にするなど、味に多様性を持たせるべきな気がします。つゆはスパイシーさだけでなく、魚介の風味もいい塩梅ですし、香りやとろみも秀逸。麺との相性もすばらしく、甘くジュワッとした「一枚おあげ」の味も絶品ですが、なぜか飽きてくるというか、単調さが否めないのです。もちろん個人的な感想ですが、この点は読者の方もぜひ食べ比べていただけたら。
麺の質感やつゆの色はご覧のとおり。なお、残ったつゆにご飯を入れてカレー雑炊にしたいのは、明らかに通常版です
以下は、通常版をオール3とした場合の「日清の最強どん兵衛 カレーうどん」の評価点です。
今回うどんとそばをそれぞれ食べ比べ、最強版で特に名役者だと感じた素材をまとめました。感じ方は人それぞれですが、味わう際の参考にしていただけたら。
・日清の最強どん兵衛 きつねうどん:麺のふわもち感とゆず入り七味の華やかな香り
・日清の最強どん兵衛 かき揚げそば:麺の強いコシとたまねぎ入りかき揚げのリッチな旨味
・日清の最強どん兵衛 鴨だしそば:たくましい麺に調和する鴨風味豊かな甘いつゆ
・日清の最強どん兵衛 カレーうどん:複雑かつスパイシーでとろみのあるつゆとふわもち麺
多くの人が食べたことのあるブランドだけに、ちょっとしたネタとして知人と一緒に味わって感想を言い合うのもおすすめです
衝撃のデビューから数年経ち、定着した感もある「日清の最強どん兵衛」シリーズ。期間限定商品もありつつ、少しずつラインアップは拡充しているので、進化を含め今後にも期待です!