いきなり「ざわ…ざわ…ざわ…」とカイジの効果音が聞こえてきそうな感じで失礼します。ライターのmegayaです。
今年は何度もニュースで「カジノ法案」という言葉を目にしたことがあると思う。正式には「IR推進法案」だが、これまで日本では違法とされてきたカジノが解禁される動きとなっている。これにより経済効果が期待される半面、治安の悪化や依存症を心配する声もあり、その意見は賛否両論。
僕もそうなのだけれど、日本ではカジノっていうと「リスクの高いギャンブル」というイメージが強いのではないだろうか。一瞬で高額なお金を失って路頭に迷う…みたいな、まさにカイジの世界である。
しかし本当にそうなのか? 気になってカジノのことを調べているうちに、渋谷にカジノの学校があるということを知った。
日本カジノ学院
カジノの学校…。授業風景がまったく想像がつかない。いったい誰が通って、何を学んで、卒業後はどうするのだろか…とさまざまな疑問が浮かんできた。そもそもカジノ自体がまだ日本にないのに、学校があることにも疑問が残る。
ということで、今回は日本カジノ学院に行ってみて、どんなことを教えているのか実際に体験させてもらい、さらに「カジノって危なくないの?」「給料いくら?」など気になる質問をドンドン聞いてみることにした!
<目次>
日本カジノ学院ってどんなところ?
ブラックジャックの授業を見学
生徒さんにインタビュー
ルーレットを実際に体験してみた
玉の回し方を教えてもらうも…む、難しい…
カジノやディーラーについて気になることを質問してみた
カジノ学院に行ってみて、カジノについて少し理解が深まった
明るくて開放的な雰囲気に驚いた
日本カジノ学院は、渋谷駅から10 分ほど歩いた場所にある。僕が思い描いていた「カジノ」はもっと薄暗く照明がギラギラしたアングラ的な世界観だったので、学校の教室内を見て驚いた。カーテンも開け放たれていて、開放的な雰囲気だった。
マネージャー/ディーラーの竹田新吾さん
今回、カジノ学院を案内してくれたのはマネージャー/ディーラーの竹田新吾さんだ。欧米人のようなディーラーを想像していたから言葉が通じなかったらどうしようかと思っていたが、爽やかな日本人が来て安心した。
実際の授業風景
この学校は、カジノディーラーや講師を目指す人のための学校。バカラ、ブラックジャック、ポーカー、ルーレットなどのカジノで扱われる主要なゲームをひと通り勉強できるコースが用意されている。すべてのコースを受講すると6か月〜1年間ほどで修了するカリキュラムになっており、しっかりと時間をかけて勉強できるみたいだ。卒業後はインストラクター試験(講師になるための試験)の受験資格も得られるという。
今日はちょうどブラックジャックの授業をやっているということだったので、見学させてもらうことにした。
今日授業を受けていた生徒の小泉さんは今回が初めての授業だそう
初回の授業では普通にゲームをプレイして楽しみ、2回目3回目以降はディーラー席に立ってさまざまな技術を習っていくらしい。
ディーラーのカードを切ったり、配ったり、めくったりする所作が全部カッコイイ
ブラックジャックの教科書
きちんと教科書も用意されている。「ダブルダウン」「スプリット」などの聞きなれない言葉も飛び交っているが、講師の方が解説を入れつつ進めていく。実際にゲームをやりながら教えていくやり方は、端で見ていてもわかりやすかった。授業って感じがしなくて楽しそうだ。
先ほど授業を受けていた小泉さん
ブラックジャックの授業を受けていた小泉さんに「なぜこの学校に入ろうと思ったのか?」ということを聞いてみると、
「ニュースでカジノ学校があるというのを知って検索してみました。そしたらこの学校のホームページが出てきて、楽しそうだったので入学しました」
といっていた。特に昔からディーラーに興味があったわけではないらしい。フットワークめちゃくちゃ軽いな。小泉さん友達になったら絶対楽しいタイプの人だ。
テレビなどのメディアで取り上げられることも多くなってきていて、それが検索につながっているということは、やっぱりそれくらいカジノやディーラーというものに興味や関心を持っている人が増えてきているんだな。
カジノの定番、ルーレットに挑戦
見ているだけじゃわからないということで、カジノのゲームの代表ともいえるルーレットを体験させてもらえることになった。「日本人が見たことがあるけれどやったことがないゲーム」でアンケートをとったらルーレットはかなり上位だろう。僕もやるのは初めてだ。
まずはルールを把握
ルーレットのルールはものすごく単純で、赤と黒に分かれた1〜36と0、00の数字があり、そのどこに玉が入るか位置を予想して当てるだけだ。
玉が落ちる数字は赤と黒に分かれており、そのどちらかの色を当てると賭けた金額の2倍がもらえ、「1〜12」「13〜24」「25〜36」などの1/3の予想を当てると3倍…などと賭け方が数種類あって倍率もかなり変わってくる。数字だけをピッタリ当てるとなんと36倍だ。
賭けに使うチップ
ルーレットを始める前にカジノで使用されるチップを渡されたのだけれど、これだけでワクワクしてくる。ちなみにこのチップは大きさが決まっており世界の標準があるらしい。
カジノはかなりお金を使うイメージがあったのだけど、最低レートはチップ1枚が約100円という場所もあり、外国人であれば入場料無料でゲームセンターのような感覚で遊べるそうだ。写真だとチップがものすごく多くあるように感じるが、1枚100円だと考えると1万円くらいで済む。思っていたよりもリーズナブルだな。
ではいよいよルーレットスタート!
チップの置き場所を決めよう
ルーレットでは玉が回っている間も、ディーラーがストップの合図を出すまではチップを好きな場所にいくつも置いて賭けることができる。つまり、玉が回転し始めてからでも、速度を見ながら落ちる場所を予想して賭けることができるのだ。
うん…わからん
ただし回っている玉を見ながら予測してみても、もちろんなかなか当たらない。ルーレットには玉が当たるひっかかりがいくつもあるので、どこに落ちるのか予想しづらいのだ。やってみるとこれが思っていたよりも楽しい。玉が落ちるまでの一瞬の緊張感がたまらないし、ディーラーがストップの合図を出すタイミングを見極める駆け引きもおもしろい。
せっかくなので授業体験の一環として、ルーレットの玉の回し方も教えてもらった。
このように持って、玉をはじく
人さし指と中指で挟むようにして、思いきり玉をはじくだけだ。簡単そうに聞こえるかもしれないがやってみると意外に難しい…玉に勢いがなくうまくルーレットの溝を回ってくれない。
そしてこのへっぴり腰である
練習すればある程度は誰でもできるようになるそうだが、僕のセンスではまったくできる気がしなかった。こういうのをスッとできるとカッコイイんだろうな…。教わっているときは真剣だったけど、写真を見てみると立ち姿がへっぴり腰でダサい。講師の方との立ち居振る舞いのスマート差が違いすぎる。
気になるあの質問をしてみた
ちなみに噂で「ルーレットはディーラーが狙っている場所に落とせる」という話を耳にしたことがあったので聞いてみると「よく聞かれますけどできないですね。都市伝説のようなものです」と笑っていた。確かにそれが仮に本当にできるのであれば、お客にまったく勝ち目がなくてゲームとして成立しないよね。
カジノ学校がどんなところなのかはなんとなくわかったけど、やはりまだ「カジノ」という存在自体には一歩引いてしまうところがある。本当に日本にカジノがやってきて大丈夫なのだろうか…という不安は拭えない。
日本カジノ学院 学院長/一般社団法人 日本カジノ協会 理事 白石勝樹さん
そこでカジノ学院の学院長である白石勝樹さんに、カジノやディーラーについていろいろと聞いてみることにした。白石さんはディーラーとして18年目のベテランだ。
やはり一番聞きたいのは「安全なのか」という点だ。何度もいっているが、カジノはどうしても危険なイメージが浮かんでしまう。しかし話を聞いてみると、日本で進められているIR(統合型リゾート)にはそんな心配はないようだ。
「そもそもIR(統合型リゾート)というのは、カジノ中心の施設というわけではなく、エンターテイメント施設としての役割のほうが大きいんです。シンガポールのセントーサ島などはよい例で、USJのような遊園地や買い物施設、スパなどが一緒になっているんですね。その施設の中にカジノが入っているイメージです。カジノカジノといわれていますが、カジノだけができるわけではないんですよ」と、白石さんにIRについての認識の違いを教えてもらった。
シンガポールのマリーナベイサンズなどは成功例で、お母さんや娘は買い物に行って、お父さんと息子は遊園地で遊んで、夜はちょっとだけカジノで遊ぶ…などのいろいろな楽しみ方ができるということだ。IR=ギャンブル施設ができるというわけではないようだ。
また国外にあるカジノの多くはセキュリティがしっかりしており、顔認証システムやカメラシステムなどが導入されている。世界のカジノはお店同士で提携しているので、一度ブラックリストに入れられると、ほかのお店にも入場不可になる場合もあるほどセキュリティは厳しいという話だ。これなら確かに思っていたより健全で安全そう。
ギャンブルでまず思いつくのは依存症だ。パチンコなどを考えるとカジノにハマってしまう日本人も増えてしまうのでは? という不安が拭えない。そういった点は大丈夫なのだろうか。
これに関しては「実は日本でいわれているギャンブル依存症というのは、ほとんどがパチンコ依存症なんですよ」ということを白石さんから聞いて驚いた。外国人から見ても、駅前にパチンコ店が並ぶ文化というのはクレイジーなことらしい。
またパチンコのように駅前にカジノが次々にできることはない。さっき挙げたようにエンターテイメント施設の一環として管理して建設されるからだ。
また「ニュースなどで裏カジノなどの悪いイメージが先行していると思うんですけど、カジノに来れる回数を制限したり、外国人誘致のために作るのでそもそも日本人が入れないようにしたりなど規制はされると思います」ということだ。そういったルールが整備されればIRに安心感を抱く人も増えるかもしれない。
少し質問の角度が変わるが、単純に僕が疑問に思っていたことだ。いやらしい話かもしれないが、カジノ学校というものがあってもそもそも稼げないのであればこれから「ディーラーになりたい」と思う人も増えないだろう。
これについては「もちろん地域や各国の差はありますが、だいたい公務員の1.5倍はもらえますね」という話で驚いた。また、ディーラーになるためには犯罪歴などもしっかり調査されるので、カジノディーラーという職業に就けただけである種のステータスとしてもみられるという話だ。世界では憧れの職業として挙げられるほどらしい。
それから日本ではなじみが薄い文化であるが、サービス料として「チップ」がもらえるのも大きい。カジノには必ずVIP席が用意されていて、VIP席のお客は数千万、数億を一瞬で賭ける世界になってくるので、もらえるチップの額もものすごいらしい。現実とは思えない漫画みたいな話だ。
ディーラーとして経験を積むと、そういった高額な賭け金を扱うテーブルをまかせられるようになってくるので、必然的にもらえるチップの額も多くなっていく。ただ当然だが、お金の管理に関わることなのでミスが許されず、プレッシャーはものすごいものがあるのだろうなと思う。数百万のお金の移動を一瞬で判断して管理するなんて、想像しただけでも怖い…。
IR法が施行され、ディーラーの勉強ができる学校があったとしても、まだ日本にはカジノ自体が存在していない。そうなると就職先などはどうなるのだろうか?
これについてはさまざまで、卒業後に海外のカジノディーラーになったり、日本のアミューズメント施設にあるゲームカジノのディーラーになったり、カジノ学院の講師になったりなどの道があるらしい。
実際にシンガポールのマリーナベイサンズのカジノで働いていた講師も、カジノ学院には在籍しているようだ。
今回案内してくれた講師の竹田さんも、元は学院の一期生
竹田さんはもともとカジノ学院の一期生であり、卒業後に講師を務めるようになった人だ。そもそもなぜカジノ学院に入ったのかを竹田さんに聞いてみた。
「カジノってまだ日本にないものじゃないですか? 僕はそこに引かれた部分がありました。海外のカジノにはもともと行ったことがあって、あれが日本にできたら相当でかい規模になるなと思って、いろんなビジネスが生まれると考えていました。
そう考えたときに、自分がカジノを知っていないとだめだなと思い、ここの学校に入って勉強しようと思ったんですね。
カジノの法案とかも最初は詳しくなかったんですけど、勉強していくうちに法案や海外のカジノ事情も理解していき、よりこの仕事おもしろいなと思えるようになりました」
オリンピックに向けてこれから日本にもIRが建設されていくと考えると、確かに今のうちに勉強しておくというのは、先を見越した選択肢の1つだなと感じた。
白石さんがこの学校を作った理由とは?
また、この学校を作った理由の1つには、この先の日本人の雇用喪失を防ぐという面もあるようだ。
白石さんがいうには「ディーラーっていうのは各国の自国民の雇用なんですね。そのため、もし日本にカジノができるとすると日本人のディーラーが必要になります。そうすると日本人の雇用喪失の助けにもなると思っています」ということで、IRが進んでいくとそういったメリットもあるのだなと知ることができた。
また、海外で数多くのカジノを見てきた白石さんは「海外のディーラーを見ていると日本人特有のおもてなしの心というものが足りないように感じました。しっかりと勉強しすれば日本人は世界でも有数のディーラーになれると思います」と言っていた。日本人の気遣いや心遣いというのがディーラーという職業に合っているんだな。
今まではイメージの先行で、「危ない」「怪しい」と思っていたが、話を聞いてみると、カジノ施設が日本にできるメリットも多くあるのだなと知ることができた。また、IRが日本にできるということで、オリンピックまでに勉強しておくのは選択肢として大いにありだと思う。
もちろん法設備などの問題で「カジノは100%安全!」とはまだいえないかもしれないけれど、いろいろと誤解のあった部分を今日で正しく理解することができてよかった。少なくとも一度はカジノに行ってみたくなった。
カジノの話を聞いてみたい人も、見学に行きたい人も、カジノ学院では体験会をやっているようなので興味がある人は一度申し込んでみるといいと思う。
ただ僕もまたもう一回行くときは、せめてシャツだけでも着ていこうと思った。ディーラーの服装との格差がすごかったので、せめてパーカーはやめればよかったなと写真を見て後悔している…。
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