「お笑い第7世代」の一角として人気沸騰中のお笑いコンビ「宮下草薙」の宮下兼史鷹(けんしょう)さんは、実はボードゲームマニア。そんな宮下さんにボードゲームの魅力についてインタビューを敢行! 後編は、宮下さんが大好きな海外ボードゲームの中でもオススメのゲームを聞いてみた。
聞き手は、「ボードゲーム王選手権2018」優勝者の筆者、河上拓。
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宮下草薙・宮下さんイチオシ! ソロプレイも楽しい「ボードゲーム」【前編】
【PROFILE】
宮下兼史鷹(みやした・けんしょう)さん
1990年11月16日生まれ、群馬県出身。相方、草薙航基さんとお笑いコンビ「宮下草薙」として活動中。「お笑い第7世代」として注目を浴び、多くのメディアに出演中だ。春のシーズンレギュラーとして出演中の「ヒルナンデス!」(日本テレビ系列)で「アグリコラ 日本語版」(旧版)を紹介して話題となった
河上 現在、「日本語版」が発売されているゲームの中で、オススメのものを教えてください。
宮下 1年ほど前、相方の草薙と初めて一緒に遊んだのが「宝石の煌き(きらめき)」です。あいつは「ボードゲームってこんなに面白いんだ!」って驚いていました。
相方の草薙さんが初めて体験した海外ボードゲーム「宝石の煌き」
宮下 草薙も「人生ゲーム」はプレイしたことがあるけれど、海外のボードゲームには触れてこなかった。でもこのゲームがきっかけで、よく遊ぶようになりました。
ホビージャパンから発売されている「宝石の煌き 日本語版」のパッケージ。ルールは簡単で、リソースマネジメントおよび拡大再生産といったゲームシステムが楽しめる人気作だ
プレイヤーはルネサンス期の商人となり、宝石鉱山や輸送手段、販売店を買い取り、職人を雇い上げ、そして宝石を集めながら事業を発展させていく
宮下 2人で遊ぶ時って、大勢で遊んでいる時よりも相手の動きを見ながらプレイするので、より戦略性が高まる気がしますね。いつも草薙はめちゃめちゃダイヤを独り占めするんですよ。ダイヤを全部取って、こっちにひとつもくれないっていう。まあでも、草薙には負けたことはないんですけどね。
河上 草薙さんは、宮下さんと同じアパートに住んでいるんですよね。
宮下 そうですね。だからほかにも、いろいろなゲームで遊んでいます。重たいゲームだと「ツォルキン」とか「アグリコラ」とか。
河上 仲がいいですね! 「ツォルキン」を一緒に遊んでいるお笑いコンビってなかなか聞いたことないですよ!
「ツォルキン:マヤ神聖歴 日本語版」(ホビージャパン)は、マヤ暦をテーマにした傑作ワーカープレイスメント
ボード上に設置された、ほかと連動して動く歯車のギミックが特徴。プレイ時間が2時間以上かかる重量級ゲームだ
宮下 「ツォルキン」に関しては、草薙は「ちょっと長いな!」って言ってました。けど「アグリコラ」は、楽しそうにやってましたね。
河上 「宝石の煌き」から入って、どんどんほかのゲームも好きになっているんですね。
宮下 まんまと(笑)。だから、あまり海外ボードゲームで遊んだことがない人にオススメのゲームを聞かれた時は、その経験も踏まえて、「宝石の煌き」って答えるようにしています。
宮下 2人用のアクションゲームでオススメなのは「クラスク」です。
デンマークで生まれたアクションゲーム「クラスク」(カワダ)。ボードの下からマグネットを使って、盤上のスティックを操作する
宮下 子供の頃、ゲームセンターに置かれていた「エアホッケー」が大好きだったんですけど、僕はあんまり運動神経がよくないので、いつも遊ぶと負けていたんです。
「クラスク」は「エアホッケー」に似ているけれど、僕でも対等に戦えるんですよ。ボードの下で磁石を動かすことで盤上のスティックを操作して、ボールをゴール(穴)に入れるというシンプルなルールなんですけど、相手のゴールに入れる以外にもいくつか得点方法があるのでいろんな戦略が取れるんです。
「クラスク」の得点方法は4つ。
(1)相手のゴールにボールを入れた時。
(2)相手のスティックに白いマグネットが2個くっついた時。
(3)相手のスティックが制御不能になり、操作できなくなった時。
(4)相手が相手側のゴールにスティックを落とした時。
宮下 相方と一緒にプレイすると、向こうはボールを追うのに必死になっちゃって、自分のゴールにスティックを落として失点するというミスばっかりして、シンプルゆえに人柄が出るんですよね。僕は、コートの真ん中にある白いマグネットを相手にくっつけるというプレイが得意で、そればっかり狙っちゃいます。
河上 3つ置かれている白マグネットのうち、2つがスティックにくっついてしまうと失点になるんですよね。
宮下 ボールで白マグネットをはじいて、相手にくっつけることを狙うんですけど、たまに勢いがつき過ぎて、マグネットがこっちに跳ね返ってきて自分にくっついちゃったりもするっていう。
河上 あと、はじくと白マグネットがボードの外へよく飛んでいかないですか?
宮下 そうなんですよ! 飛んでいっちゃうと、ゲームにまったく集中できなくなるんです。
河上 丸くて小さいから転がるし、探すのが大変っていう。
宮下 予備が1個しか付属していないから、なくしちゃったんじゃないかと、そればっかり気になっちゃって負けてしまうんですよね。
ちなみに、もし白マグネットなどのパーツを紛失した場合は、カワダの公式通販サイト「ナノブロックファクトリー」でスペアパーツが購入できる
宮下 プレイ時間の長い重量級ゲームは、できることがたくさんあるから、初めて遊ぶ時は何をしたらいいかわからなくなることが多いものなんです。でも「サイズ -大鎌戦役-」は、やることはそこまで複雑じゃないので、あまり重量級ゲームをプレイしたことがない人でも何をすればいいかがある程度わかる。ちょっと重たいゲームを遊んでみたいってなったら、まずやるべきゲームはこれだと思います。これを遊んだら、もうボードゲームの世界から抜けられなくなる。
「サイズ -大鎌戦役- 完全日本語版」(アークライト)は、世界のマニアをうならせた大ヒットストラテジーゲーム
河上 激推しですね(笑)。
宮下 僕、このゲームが好き過ぎて、立体化された資源とか、金属のコインを買っちゃいました。
河上 雰囲気を盛り上げるために差し換えて使う、リアルに作られたトークンや硬貨が別売りされているんですけど、結構値段が張るっていう……。
宮下さんの私物。付属の紙製コインは別売の金属製のものに、付属の木製の資源コマは塗装されたリアルトークンに差し換えている
宮下 ゲーム本体よりも、そっちのほうが値段が高かったです(笑)。あと、このゲームはその世界観もたまらないんですよね。
河上 「第一次世界大戦直後の1920年代にもしメカ兵器があったら」という設定なので、パッケージのイラストのような農業ベースの牧歌的な風景と、巨大メカバトルの世界が融合した独特な雰囲気がたまらないんですよ。
独特な世界観の中で、拡大再生産と陣取りを同時進行させるゲームシステムが秀逸
宮下 「メック」というメカ兵器の立体コマが付属しているので、いかにもバトル中心のゲームに見えるんですけど、思ったよりも戦争が起こらないというのも面白くて。それぞれが兵器を保有することで抑止力になって、緊迫したにらみ合いが楽しめたりします。
河上 このゲームもひとりから遊べますよね。
宮下 ソロプレイも、ほかの長時間ゲームと比べると遊びやすいと思います。敵はNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)なんですけど、対人戦と比べて戦争がひんぱんに起きることもあって、ソロプレイならではの面白さがあるんです。
宮下 2020年で今のところいちばん感動したゲームは、「ウイングスパン」です。まず、コンポーネントが美しい。鳥の生態を観察するゲームなんですけど、カードに図鑑のような鳥のイラストが描かれているんです。
2019年の世界のボードゲーム賞を総なめにした人気作「ウイングスパン 完全日本語版」。プレイヤーは鳥類愛好家となり、鳥獣保護区に鳥を呼び寄せて多くの種を集めていく
プレイヤーは、野鳥の特徴をとらえた特殊能力を使って、ゲームを優位に進めていく
宮下 で、それぞれの鳥のカードに特殊効果が設定されているんですが、卵を盗む生態の鳥のカードにはゲーム内で卵を奪う特殊効果が設定されていたり、獲物を捕らえる肉食の鳥のカードにはほかの鳥のカードを取り込む特殊効果が付いていたりと、各カードの能力がその鳥の実際の特徴を参考に設計されているんです。あっ、この発想はスゴいな!って衝撃を受けました。ゲームとしてもとても面白いですし、遊んでいると野鳥に詳しくなります(笑)。
美しいコンポーネントが魅力
宮下 プレイ時間が短いゲームのオススメだと「花火/HANABI」かな。協力ゲームなんですが、自分の手札を自分だけが見えない状態で持って、お互いにヒントを出し合ってそれぞれが何を持っているか教え合うんです。このゲームも2人で遊んでも面白かったですね。
「花火/HANABI 日本語版」
「花火/HANABI 日本語版」は、自分の手札が見えない中で、うまく花火が打ち上がるようにカードを出していく協力ゲーム
河上 今回紹介したほかのゲームと比べると、プレイ時間も30分ほどで、かなり軽いゲームですね。
宮下 重たいゲームは、ルール説明だけで1時間くらいかかるんですけど、これは数分でルールが把握できるんで、ちょっとした時間に遊ぶことができます。家族でやったら相当楽しいはず。
河上 まだ家族とは遊んでないんですか?
宮下 そうなんですよ。次に実家に帰る時は持って行こうと思っています。今、いちばんおばあちゃんとやりたいゲームですね。
今、東京の部屋で所有しているゲームは30個ほど。残りは実家に保管しているとか
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宮下草薙・宮下さんイチオシ! ソロプレイも楽しい「ボードゲーム」【前編】
「日経エンタテインメント!」から「月刊ムー」まで、エンタメやホビーを中心に幅広く活躍するマルチライター。トランスフォーマーなどの変形玩具、海外ボードゲームに詳しい。