近年、スマホのカメラ機能が向上したおかげで、“撮影”は大人だけでなく子供でも容易になった。筆者も親戚の子供に会うと、真っ先にスマホを奪われる。そして連写をされる。しかし怒らない。だって、好かれたいんだもの。
兎にも角にも、子供は撮影が好きなのだ。もし、子供にカメラを渡し「自由に何でも撮っていいよ」と言ったら、いったいどんな世界を切り取ってくれるのだろうか。ぜひ見てみたい!
というわけで、こんなアイテムを購入した。
VisionKidsから販売されている「HappiCAMU ハピカム」(以下、ハピカム)
子供向けに作られたデジタルカメラ「ハピカム」だ。カラーは、色鮮やかなブルーとピンクの2色で展開しており、パッケージからしてかわいらしい。なお、ポップな見た目もさることながら、そのスペックもスゴかった。
まず、子供用のカメラでは初めて1500万画素センサーを採用しており、1080pの動画も撮影可能。さらに、3枚連続撮影、タイマー撮影(2秒-5秒-10秒)、4倍ズームなどの便利な機能が盛りだくさん。
80×55×60mm(幅×奥行き×高さ)、重さ73gのコンパクトサイズで、背面には2インチの液晶モニターが。ボタンは必要最低限のため、操作も楽々
また、手ブレ防止機能や顔認識機能など、子供用カメラには欠かせない機能も充実。いっぽうで、4種類のカラーフィルターや21種類以上のデコレーションフレーム、ボタン操作時に鳴るかわいい効果音といった、子供がよろこぶ仕掛けも多数搭載している。
カメラのほか、付属品にはネックストラップ、メモリーリーダー、リストストラップ、充電ケーブルなどが入っている。首から下げれば、落とす心配もない
加えて、手になじみやすい丸みのあるフォルムかつ、シリコン素材でつくられているため、子供の手にもしっかりとフィットする設計だ。
子供用カメラとしては、これ以上ないスペックである。
恐るべし、ハピカム……。
これだけ機能が充実していれば、大人顔負けの写真も撮れるのではないか? というわけで、今回は知人の子供にカメラマンをお願いしてみることにした。
ご協力いただいた、Wさん家族
今回、カメラマンを依頼したのは中央に映る、モン君(5歳)。お父さんいわく、カメラが好きでよくスマホで撮影しているとのこと。カメラマンの素質あり!
早くもハピカムに興味津々のモン君
お父さんが基本的な使い方をレクチャーしただけで、すぐにマスターしてしまったモンくん。……最近の子供は、スマホだろうが、カメラだろうが、瞬時に理解してしまうから驚きだ。
ともあれ、今日はモン君カメラマンとともに記事を制作していきたいと思う。なお、今回のロケ地は、Wさん家族が日常的に遊びにくるという「世田谷公園」。カメラマン・モン君、ライター・小野洋平(筆者)による、世田谷公園の紹介記事である。
スタートと同時に芝生へ駆け上がったモン君。どうやら、まずは我々を撮影してくれるみたいだ。
お父さんからは「そんなに引くー!?」との声が飛ぶが、モン君カメラマンには届かない。きっと、一番いいアングルを探ってくれているのだろう。
世田谷公園のシンボルである噴水をバックに。写真の色味が紫っぽいのは曇り空だからか、もしくはレトロかブルーのフィルターがかかっているのかもしれない
こちらが記念すべき1枚目。左から筆者の友人、筆者、お父さんを撮影してくれた(日付設定をしていなかったため、日時が2018年になっていますが、取材は2021年春です)。
やや引きすぎの気もするが、噴水や後ろの丘までバッチリ写っており、公園の特徴が詰まった1枚と言える。大人ではなかなか思いつかない大胆なアングル。さすが5歳児、さっそく自由な発想を見せてくれる。
ここからは園内を散策していく。いつものスマホのシャッターとは勝手が違うようで、シャッターボタンを押すのに苦労している様子のモン君。
カメラは彼に渡した1台のみで、予備は持ってきていない。つまり、この記事の写真に関しては完全にモン君頼み。ちゃんと撮れているのか、ちょっと心配だが……。
そんな心配をよそに、ナイスショットの2枚目。葉桜に思いを馳せて……いるかどうかはわからない
「きー!」と発しながら撮られた3枚目。そうだね、木だね。(※日付はお父さんが消してくれました)
木の根っこの部分に、ぐっと寄った1枚。目線の低い子供ならではのアングルだ。ちなみに、なぜこれを撮ったのか聞いてみると「かっこいいから!」とのこと。シンプル!
都会で忙しく働いていると、まじまじと木の根っこを眺める機会もない。改めて見ると、生命の強さ・尊さが感じられて、確かにかっこいいといえるかもしれない。
バスケに興じるおにいちゃんや
スケボーに興じるおにいちゃんたち。。モン君は、目に映るものすべてを撮影してくれる
モン君が撮ると、自然なローアングルでどこか印象的な写真になる。また、写真のバリエーションが多いと記事の構成の幅も広がるので、普通に助かる。ライター的には、非常に仕事がしやすいタイプのカメラマンである。
ここで、世田谷公園の名物「せたがや公園ミニSL駅」へやってきた。
子供に大人気のミニSL「ちびくろ号」の前
モン君は遊びたい気持ちをグッとこらえて撮影に徹する。筆者が5歳だったら、カメラを捨てて列車に飛び乗ることだろう。
カメラの連写機能を駆使して、モン君はSLの勇姿をバッチリおさえてくれた!
SLの力強さが伝わる、すばらしいショット
アングルもタイミングもバッチリ。すごい……機能まで使いこなして、メキメキ上達していくな、モン君よ。
世田谷公園で人気のプレイパークを、あえて斜めに切り取ったショット。モン君の写真には、1枚1枚にメッセージがある……気がする
誰かのお絵描きが気になったようだ。こういうのに気付くのも子供ならでは
大人のカメラマンであれば、プレイパークで遊ぶ子供たちを被写体にするだろう。しかし、モンカメラマンは違う。誰かのお絵描きという「遊びの痕跡」を切り取ることで、この場所の楽しさ、自由さを表現しているのだ。たぶん。このセンス……、冗談じゃなく、本当に鬼才なんじゃないだろうか。
モン君の写真は、人物の顔が切れていることが多い
だが、プレイパークで楽しく遊ぶ子供たちに感化されたのか、ここで一気にテンションが上がるモン君。
自身もパークを縦横無尽に走り回りながら撮影していく。ユーザーの気持ちになって撮影することが大事。そういうことなのかもしれないし、ただ遊びたいだけという疑惑もある(そりゃ遊びたいよね。ゴメン、モン君)。
これはナゾの1枚。こちらを試すように、たまにこういう難解なカットを混ぜてくる
ここで撮影を一時中断し、工作に励むモン君
おもむろに、工作を始めるモン君。お父さんの助けを借りながら、一生懸命に「はしご」を作っていた。
しかし、完成した作品の写真は、なぜか撮影しない。仕事とプライベートをしっかり分けたいタイプなのかもしれない。
しかし、お父さんのノコギリさばきはバッチリおさめていた。すごいスピードで木を切るお父さんが、かっこよかったのかもしれない
続いての被写体は世田谷公園のシンボルでもある蒸気機関車。だが、シンボルだからといって安易に正面から狙ったりしないのがモン君流。撮りたいものを撮る。そんな、写真家としてのエゴが垣間見える1枚だった。
世田谷公園の目玉である蒸気機関車(右端)
窓から車内をパシャリ。アシスタント、もとい、お父さんに抱っこされながらの1枚
これは車輪?
止まっているのに疾走感あふれる1枚。こうした狭い部分に入り込み、ギリギリのローアングルを攻められるのも子供カメラマンならではだろう。
歴史を感じさせる、年季の入ったネジ。こういう細部も、きちんと押さえてくれる
SLに興奮したのか、ここぞとばかりにシャッターを切りまくるモン君。公園のメインでもあるSLは記事的にも最も盛り上がる部分だけに、写真の選択肢が豊富にあるのはありがたい。
しかし、さすがに少しお疲れのご様子。ちょっと休憩して、そろそろ帰ろうか
ありがとうモン君。
ということで、ギャランティ代わりのソフトクリームを買ってさしあげよう。
とんがりコーンにソフトクリームを合わせるというツウな食べ方をしていた(撮影:お父さん)
筆者にもくれた。やさしい(デコレーションフレーム機能で撮影)
さあ、帰ろうか。と腰を上げたところ、モン君は再びカメラを手にとり、何かを追いかけ始めた。
ハトだ
動く被写体に5歳児カメラマンの血がさわいだらしく、執拗にハトを狙うモン君。あとでデータを調べたら、ハトだけで50枚くらいあった。どんだけハト好きなんだ。
ハトの群れ
ぼやけハト(とんがりコーンの油でレンズが曇っています)
遠鳩(トーハト)
ハト目線の1枚
30分以上は格闘していただろうか。やっと至近距離の1枚をおさえられたことでモン君も満足したようだ。ありがとうモン君。偉大なる小さきカメラマンよ。
というわけで、子供にカメラマンをお願いしたところ、大人にはマネのできない斬新なアングル、セオリー無視のユニークな写真を次々におさめてくれた。
子供には子供の感性でしか表現できない世界がある。世のママパパも我が子の写真を撮るだけでなく、たまにはカメラを渡し、撮影をお願いしてみるのもいいかもしれない。
photo/モンくん