文具対談
【連載】文具ソムリエール・菅未里と色物文具ライター・きだてたくの「文具対談」

布も段ボールもサクッ! 7,000円の最上級ハサミ「エクスシザース」

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本連載は、文房具の専門家2人がそれぞれお気に入りの新製品を互いにプレゼンし合う対談企画。専門家として対談を行うのは、テレビ番組「マツコの知らない世界」にたびたび出演する文具ソムリエール・菅未里さんと、文房具コラムサイト「森市文具概論」編集長のきだてたくさんの2人だ。

第3回となる今回は、きだてさんがカール事務器の高級ハサミ「エクスシザース」を菅さんに紹介。「日本文具大賞」の機能部門グランプリを受賞した逸品の切れ味に、2人ともモノを切る手が止まらない!

プロフィール紹介
●きだてたく(左)……1973年京都生まれのライター/デザイナー。自称「世界一の色物文具コレクション(3000点以上)」に囲まれながらニヤニヤと笑って暮らす日々を送る。文房具コラムサイト「森市文具概論」では、文房具魔改造講座などピーキーな記事を連発している
●菅未里(かん みさと/右)……Webサイト「STATIONERY RESTAURANT」を運営する文具ソムリエールとして活躍。大学卒業後、文具好きが高じて雑貨店に就職しステーショナリー担当に。現在は、文房具の紹介、コラム執筆、商品開発、売場企画などの活動をしている

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7,000円もするハサミ、必要……?

きだて(以下、き) 今回のオススメは、このハサミ。なんと2017年の「日本文具大賞」で機能部門グランプリを獲得した、カール事務器の「エクスシザース」です。これね、ちょっとスゴいんですよ。

菅 文房具業界内では大きな話題になりましたよね。ただ、話題になった割に、触ったことがある人はまだ少ないんじゃないでしょうか。

き そこはもう、お値段が税別7,000円ですからね。国産の文房具ハサミとしては超高級品!

パンチ、裁断機、鉛筆削りなどで定評があるカール事務器の「エクスシザース」。全3色で展開する

パンチ、裁断機、鉛筆削りなどで定評があるカール事務器の「エクスシザース」。全3色で展開する

菅 普通にその辺で売ってるハサミでも、500円以下でちゃんと切れるのが買えますからね。

き 安いハサミなら「エクスシザース」の消費税分だけで買えちゃうという。菅さんはこれ、もう試しました?

菅 実は私、カール事務器さんの「カレンダー手帳」というアイテムを監修させていただいたご縁がありまして、この「エクスシザース」も発売前の試作品で切らせてもらいました。

き あ、僕より早かった。感想としてはどう?

菅 やっぱり切れ味は、スゴかったです。そのときは、フェルトとか布とかを切らせてもらったんですけど、裁ちバサミの代わりに十分使えるレベルでした。

き そうそう。いわゆる文房具ハサミだと、布は切りにくいんですよね。素材がやわらかすぎて、刃と刃の隙間に入っちゃったりして。なので布を切るときは、刃の鋭い専用の裁ちバサミを使うんですけど、よく切れるのを買おうとすると1万円ぐらいしちゃうというね……。ほら、そう考えると7,000円で布が切れるハサミってお得じゃないですか?

「エクスシザース」が7,000円もする理由を熱弁するきだてさん。菅さんを説得できるか!?

「エクスシザース」が7,000円もする理由を熱弁するきだてさん。菅さんを説得できるか!?

菅 でも、そもそも普通の人が、そんなにしょっちゅう布を切るかっていう話ですよね(キッパリ)。

き ……うん、ですよね〜。じゃ、今回はもうちょっと一般的に切る機会のありそうなもので、普通のハサミと「エクスシザース」の切り比べをしてみましょうか。

2,000円前後のチタンコーティングのハサミと切り比べ

き じゃあ、まず紙で。

菅 紙は……、まぁ普通に切れますよね。

き コピー用紙1枚ぐらい切っても、切れ味に差なんかつかないですからね。えーと、それならコピー用紙を3枚重ねて、さらに4つ折りにして……、これでコピー用紙12枚分の厚さを切ってみましょうか。

菅 あ、サクって。刃の根元じゃなくて、力の入りにくい刃先だけで切れました!

き じゃ、こっちの普通のハサミ……って、編集の牧野さんが用意してくれたやつ、チタンコーティングの割といいハサミだな。

菅 ですよね。これでも切れちゃうんじゃないですか? わっ、ダメだ、切れないわ。

2,000円程度のそこそこよいハサミの先端で、12枚分の厚さのコピー用紙に挑戦するが切れず

2,000円程度のそこそこよいハサミの先端で、12枚分の厚さのコピー用紙に挑戦するが切れず

き コピー用紙でさえ、10枚超えると途端に難しくなるんですよ。普通に「よく切れる」と言われているハサミでも、5枚から10枚ぐらいのところに大きな壁がありまして。

編集・牧野 うわー! 「エクスシザース」、すげぇ! 本当に刃先だけでも、すごい切れる! なんで? なんで?

き 知りたがりの子どもか(笑)。ハサミってやっぱり刃物なので、刃のクオリティが重要なんですよ。「エクスシザース」は、刃物の町・岐阜県関市の刃付け職人さんが1丁ずつ手作業で水研ぎしているそうで、刃の鋭さのレベルがそもそも違うんですよ。

「エクスシザース」の刃先。職人の水研ぎ「湿式研磨」による刃付けで、圧倒的な裁断力を実現している

「エクスシザース」の刃先。職人の水研ぎ「湿式研磨」による刃付けで、圧倒的な裁断力を実現している

「エクスシザース」、どこまで切れる?

き じゃあ、さらに難易度を上げて梱包用プチプチシートを切ってみましょうか。これも、ハサミにとっては非常に難しい素材なんですよ。布と同様にやわらかいフィルムを何層も重ねて作ってますから。

菅 普通のハサミだと、やっぱり刃の間に巻き込んじゃいますね。切れても切り口がグチャグチャです。

き 僕はハサミの新製品の記事を書くときなんか、切れ味テストはプチプチを使います。これがサクサク切れるのは、刃の鋭いハサミなんです。

菅 ほんとだ、サクッサクッて切れます。開閉したときに刃の重みだけで切れている感じ。

「エクスシザース」なら、プチプチシートもサクサク切れる

「エクスシザース」なら、プチプチシートもサクサク切れる

き 雑誌やウェブメディアの編集者とか、僕らモノ系ライターって、メーカーから借りたサンプルの返送とかでプチプチを日常的に使うでしょ。やっぱりプチプチがよく切れるハサミは1本あると、作業がはかどりますよね。

編集・牧野 そうですね〜、プチプチはよく切りますね。だいたいは刃を開いたままプチプチの端に当てて、ザーッと押し切っちゃうんですけど。

き そこそこのハサミならそれで切れるんだけど、細かいコントロールは難しいから、斜めに切れちゃったりするし。ちゃんと刃を開閉して切るほうがきれいに切れますよね。

菅 私も店で文房具の販売をやっていたときは、お客様への商品発送でよくプチプチを使ってたんですけど、あれはハサミで切り口が変わるんですよね。新人の子があまり切れないハサミで切ったんでしょうね、切り口がグチャグチャになってしまったプチプチでお客様の品物を梱包しているのを見つけちゃって。私の切れるハサミを渡して「お願い、これで切り直して!」って頼んだことがありました。

段ボールも切れるその理由は「硬さ」と「厚さ」にあり!

き 次は、ちょっと硬い素材を切ってみましょうか。段ボールは、本当はカッターを使って切るのがベストなんだけど、面倒だからってハサミで切ることもありますよね。

菅 そうそう、段ボールも意外と切りますよね。……うへへへ。これ切れるわー。

編集・牧野 菅さん、今日イチのよい「うへへへ」が出ましたね(笑)。テンション上がってるな〜。

段ボールもサクサク切れる「エクスシザース」

段ボールもサクサク切れる「エクスシザース」

菅 いや、これはテンション上がりますよ。段ボールに刃がめり込むんじゃなくて、サクーッと切れながら刃が入っていく感じですね。

き 普通のハサミで段ボールを切ると、最後まで切れる前に力だけ加わっちゃうので、切り口が押し潰されちゃうんですよね。だから、切ってる最中に「メリメリッ」て音がするでしょ。

菅 本当だ! 切り口を比べるとわかりやすい。「エクスシザース」のは潰れずにカッターで切ったみたいな切り口になっています。

左が「エクスシザース」で、右が2,000円程度のハサミで切った跡。「エクスシザース」の切り口は潰れていないが、2,000円程度のハサミだと段ボールが押し潰されたように切り口が汚い

編集・牧野 これだけ切れるのって、やっぱり刃の鋭さが理由なんですかねー。

き そうですね。あと、ここも大事ですね。刃の厚みをちょっと比べてみてください。

左が「エクスシザース」で、右が普通の工作用ハサミ

左が「エクスシザース」で、右が普通の工作用ハサミ

菅 普通のハサミと比べたら、めちゃくちゃ分厚いですね!

き 実際に数字の上でも倍ぐらいの厚さがあるんですよ。普通のハサミがだいたい1.5mmほどの厚さのステンレスを使ってるんですが、「エクスシザース」は3mm厚。

菅 確かに、見ためもゴツいですもんね。

き コピー用紙を束ねたものとかを切るときに力を込めると、薄い刃だとそれ自体が微妙にブレるんで、うまく切れないことがあるんです。いっぽうで厚さ3oのステンレスとなると、人間の力でブレたりよじれたりすることはないんで、グイグイと力を入れて切れる。

菅 このステンレスが厚すぎるうえに硬いんで、カール事務器のスタッフが「エクスシザース」を製作するときに金型じゃ切り抜けなくて、レーザーカッターで切っていますって言ってましたよ。

き 硬さで言うと、「ビッカース硬さ」っていう硬度の基準があるんですが、それが「800」って言ってましたからね。金属加工用の旋盤に付いている切削刃より硬い。あと、これもグイグイ切れる理由のひとつなんですが、ハンドルの端を見てもらっていいですか?

「エクスシザース」の独特な形状のハンドル。ステンレスが端から飛び出ているのがわかる

「エクスシザース」の独特な形状のハンドル。ステンレスが端から飛び出ているのがわかる

編集・牧野 あれ? なんか刃の金属部分がハンドルから突き抜けて外に出てるみたいに見えますね。

き 見えてるんじゃなくて、実際に貫通してるんですよ。透明な樹脂ハンドルのハサミを見てもらうとわかりやすいんだけど、ほら、ハンドルの途中までしか刃が埋まってないです。

普通の工作用ハサミのハンドル部分。大抵のハサミは、刃がハンドルの途中までとしか結合していない

普通の工作用ハサミのハンドル部分。大抵のハサミは、刃がハンドルの途中までとしか結合していない

編集・牧野 あ、本当だ。

菅 「エクスシザース」は、刃からハンドルまで1枚の金属でできていて、持ち手の部分だけ樹脂が被せてある……みたいなイメージですね。

き やっぱり握って力をかけるのって、ハンドルの部分じゃないですか。でもハンドルと刃が別パーツだと、つなぎ目のとこで力が逃げちゃう。古いハサミで、ここのつなぎ目がグラグラになってる危険なヤツとか見たことありますけど。

編集・牧野 なるほど。刃とハンドルが一体になってるほうが力がかけやすいんですね。

き 高級で刃が鋭いハサミって、よく切れるけど、やっぱりその分だけ繊細に扱わないといけない。ところが「エクスシザース」は、硬くて分厚くて鋭いので、グイッと力を入れて、サクッと切れるという点がほかのハサミと違うところなんです。この切り心地は、ちょっと今までになかったな〜。

菅 これはね、欲しくなっちゃいますね。

編集・牧野 いやー、今日これだけ切り比べると、さすがに「7,000円か……でもそれぐらいの価値はあるな」って思い始めちゃいましたよ。今使っているハサミとは明らかに次元が違いました。

き 今、カール事務器は、自社内の基準を満たした最高の製品の名前に「エクス」って付けています。つまり、一種の称号なんです。その「エクス」のハサミだから、「エクスシザース」。この「エクス」って付く基準は製品によっていろいろとあるらしいんですが、刃物の場合は「従来製品の2倍以上の切断力がデータで証明できること」とか。ムチャクチャハードルが高いんですよ。

菅 私としては、力の弱い女性とかお年寄りこそ、よく切れるハサミを使うべきだと思います。作業にかかる負荷が大きく変わってきますから。切れるハサミを使うとラクだもん! 見ためはちょっと無骨ですけど……。

き ハサミとしてはちょっとお高いけど、でも性能的に見たらむしろ安いと思います。さすがにこのお値段だから無理して買う必要はないけれど、でも欲しいなら買っても絶対に損はしない!

【本日の逸品をおさらい】
カール事務器
「エクスシザース XSC-70」
7,000円(税別)

刃に従来の2倍となる厚さ3mmのステンレス鋼板「SUS420J2」を採用するハサミ。職人が水研ぎ(湿式研磨)による刃付けを1本1本行っており、圧倒的な裁断力を実現している。また、ステンレス鋼板がハンドルの末端にまで入っているため、刃先まで力を伝達しやすい。本体サイズは71.5(幅)×166(高さ)×13(厚み)mmで、刃渡りは70mm。重量は82g。

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きだてたく

きだてたく

最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。

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