定番の事務用品として、オフィスはもちろん自宅でも大活躍のホッチキス(海外ではステープラーと呼ぶのが一般的だそうです)。今では、金属製の針を使わない、いわゆる“針なしホッチキス”も登場しております。筆者も、気になる新製品が発売されるたびにこのコーナーでご紹介しておりましたが、当時は、製品によっては数枚しかとじられない、目立つ穴があくといった短所も……。
しかし、2009年12月に“紙で紙をとじるステープラー”としてコクヨから「ハリナックス」が発売されてから今年で10周年を迎えます。改めて、最近の針なしホッチキス事情をチェックしてみました。
ということで、今回登場いただくのはこちらの面々です
その前に針がないのにどうして用紙がとじられるのか気になりますよね。あたりまえといっちゃああたりまえですが、針以外のものでとじているからなんです。針なしホッチキスには大きく分けて「穴あけ式」と「圧着式」の2つの方式があり、多くは穴あけ式を採用しております。つまり、用紙に穴をあけ、穴の部分の紙を用紙に織り込む(挿し込む)ことで用紙を固定しています。メーカーによって穴の形が違うので比べてみるとおもしろいですよ。一方の圧着式は、強い力で用紙を上下から凸凹をつけながらプレスすることで用紙をとじます。凸凹は残りますが、用紙に穴が開かない画期的なホッチキスだと思います。それでは、各社から代表的な商品を選んでご紹介いたしましょう。
カラーリングはグリーン、ブラック、ライトブルー、ピンク、ホワイトの5色
針なしホッチキスを「ハリナックス」として商品化したコクヨの製品です。ホッチキスには、机の上に置いて使う卓上型、手に持って使うハンディ型、ハンディ型を小さくしたコンパクト型などがありますが、こちらは最も一般的なハンディ型。針なしホッチキスは、構造的にあまり多くの用紙をとじられない短所があるのですが、この製品はなんとハンディ型ながら10枚とじを実現しています。しかも、とじ穴に矢印状の用紙を織り込む仕組みになっているため、とじた部分が外れにくいという特長もあります。さらに、とじ穴が開く位置が事前にわかるので、文字にかかる位置を避けてとじられるという親切設計です。
以下、紹介した製品の「とじ強度」を5点満点で採点してみました。要は、ホッチキスでとじた紙がどれくらいの強さでくっついているかを筆者の主観で示したものです。ホッチキスとはいえ構造や仕組みが違うので、正直なところ同列の基準で点数をつけるにはどうかとも思ったのですが、皆さんの参考になれば幸いです。
とじ強度:4.5点
ハリナックスは他社とは異なり、矢印状の用紙を織り込むという複雑な形状のとじ穴を採用。とじた部分が外れにくくなるよう工夫していることを高く評価しました。
穴はこんな複雑な形状(比較のため通常のホッチキスの針も使っています。以下同様)。ひっくり返すと、矢印状になった部分が織り込まれているのがわかります
この部分に穴があきます。とじる前に穴の開く位置が確認できるのもポイント
握った感じも悪くなく力が入りやすい印象です
ハンディ型ながら10枚とじを実現、握った感じもよく、細部にもこだわった作りのよさは、さすが針なしホッチキスを最初に商品化したコクヨだと感じ入りました。「ハリナックス」シリーズはラインアップも豊富で、10枚もとじないという方には8枚タイプや4枚タイプ、もっと小さいのがいいという方にはコンパクト型、もっととじたいという方には12枚とじられる卓上型、さらには2穴タイプもありますよ。
カラーリングは、ブルー、ホワイト、グリーン、ピンク、イエロ−の5種類
こちらは、プラスの「ペーパークリンチ」。ハンディ型のコンパクト設計で、手の小さな方でも握りやすい大きさです。さらに、軽い力でもとじられるプラス独自の「パワーアシストメカニズム」機構を採用。片手でも軽くとじられるよう工夫されています。針なしホッチキスでは、金属針を使わないためとじ終わりを実感しにくいのですが、「ペーパークリンチ」では、「カチッ」という音で、とじ終わったことがはっきりとわかるように工夫されています。
こちらの穴はスッキリしたU字型
透明ケースなのでおおよその穴の位置を確認してからとじられます
同じハンディ型でも先ほどの「ハリナックス」よりもコンパクトで、見慣れた形状ですね
最大とじ枚数は6枚ですが、コンパクト設計ながら軽い力でとじられるのがいいですね。また、とじ終わりを音で知らせてくれるのもうれしい機能です。形状だけでなく、とじたときの感触も、従来のホッチキスに近い気がしました。本品のほかにも、さらにコンパクトで4枚とじの「ペーパークリンチミニ」、12枚とじられる「ペーパークリンチ卓上型」が用意されています。
とじ強度:4点
一般的なU字字型のとじ穴を採用。通常使用では、用紙が簡単に外れることは想定できませんが、ハリナックスと比べるとやや評価が下がります。
カラーリングは、ピンク、ブルー、ホワイト、ブラックの4色
続いてはアスカの「針なしとじ開け切〜るII」。文字どおり、これ1台で、針なしホッチキスとしてはもちろん、パンチ、レターオープナーとしても使える多機能タイプです。とじは穴あけ式で5枚です。
穴は「ペーパークリンチ」と同じくU字型
本体を閉じてロックすれば、小さくまとまります
必要最小限の機能が1つにまとまっているのがいいですね。オフィスはもちろん自宅用としても使い勝手がよさそうですし、バッグにしのばせておけば、いろんなシーンで活躍してくれそうです。
とじ強度:4点
ペーパークリンチ同様にU字型のとじ穴を採用しています。同じ理由で4点としました。
カラーリングはホワイト、グリーン、ブルー、ピンクの4色
再びコクヨの「ハリナックス」シリーズからですが、こちらは今までご紹介してきた穴あけ式ではなく“圧着式”のもの。圧着式は、強い力で用紙に圧力をかけて、用紙を凸凹の形で密着させているので、穴をあける必要がありません。簡単にはがすこともできますし、穴が目立つこともありませんよ。
圧着式といっても、使い方は特に変わりません。用紙を奥までさし込んで押すだけ、底部が安定しているので床に置いて使うこともできます
とじ位置まであまり余裕がないので、用紙を奥までしっかり入れること
横とじも角とじもできます。穴ではなく凸凹が残るのが特徴
大きな力を加えなければ外れることはなく、しっかりととじられています
あえて問題点をいえば、とじ枚数が最大5枚とあまり多くないことと、とじるときにほかの針なしホッチキスよりも力が必要になることでしょうか。しかし、穴が開かない、用紙の取り外しが簡単といった長所も多く、個人的には針なしホッチキスを代表する逸品だと思っております。
とじ強度:3点
しっかりと密着しているので、とじること自体には何の問題もありません。ただし、力を加えて引っ張れば、やはり用紙が外れてしまうことは否めません。
筆者が購入したのは10枚までとじられる「P-KISS 10」、ほかにも15枚までとじられる「P-KISS 15」、20枚までとじられる「P-KISS 20」もあります
最後にご紹介するのは、MAXの「P-KISS」。実はこの商品、これまでご紹介してきた針なしホッチキスとは異なり、針を使っています。ここにきて何ゆえ? といぶかる方がいらっしゃるかもしれないのは承知のうえ。しかし、「P-KISS」が採用しているのは金属製ではなく紙製の針なのです。金属針で用紙をとじると、捨てるときに針を取り外さないといけない場合もあり、針なしホッチキスを使う最大のメリットは、まさにその必要がないという点でした。だとすれば、針があったとしても紙製なら、そのメリットを享受できるというわけです。このコンセプトにがぜん興味を持った筆者、急遽こちらでご紹介させていただくことにいたしました。
こちらが本体。正直でかいです(幅70mm×長さ162mm×高さ170mm)
まずは紙針を装填(そうてん)。紙針をセットしてカバーを閉めるだけで終了です
使い方は普通のホッチキスと同じ。写真では力が入っているようにも見えますが(笑)、それほど力は必要ありませんでした
針というにはちょっとゴツイ気もしますが、しっかりととじられています
こちらが専用の紙針(「P-KISS 10」には付属しておりません)。1巻で900本あります
本体自体がハンディタイプのホッチキスよりも相当大きいので、非常にがっちりとした印象です。とじられる枚数も多く、紙針ながら金属針のような強い保持力があります。また、とじあともフラットなので、重ねてもそれほどかさばることはありません。紙針もブルーとホワイトの2種類があり、あえて紙針部分を目立たせるといった工夫もいいアイデアだと感じました。異物混入に神経を使う食品会社、分別が細かかったり、廃棄時に金属針を外すことを求められるような会社には最適だと思います。ただし、ホッチキスとしてはかなりの高額でしかもデカイ……! 自宅用として気軽に購入というわけにはいかないかもしれません。
とじ強度:5点
紙製ながらも幅のあるしっかりした針を使っているため、用紙が破れないかぎり外れることは想定できません。文句なしの5点満点です。
筆者が個人的に最も使い勝手がよいと思ったのは「ハリナックス(ハンディ10枚タイプ)」。ハンディ型ながら10枚の用紙をしっかりととじられるという基本性能に加えて、とじ穴の位置が確認できる、ストラップ穴がある(使うかどうかはわかりませんが……)、といった細かな部分まで気が行き届いていると感じたことが高評価につながりました。
また、どうしても穴をあけたくないという方なら、「ハリナックスプレス」がいいでしょう。穴も針もなしで用紙をとじられるという、画期的な商品です。もう少し軽い力でとじられて、とじ枚数が増えてくれば、さらに魅力的な商品になるでしょう。
そして、高価格で専用の紙針が必要ではありますが、「P-KISS」シリーズは、その商品コンセプトと商品としての完成度にも感銘いたしました。ホッチキスの世界も奥が深いですね♪
主に東京の湾岸エリアに生息しているが、中国、タイ、インドネシアなどでの発見情報もあり、その実態は定かではない。仲間うちでは「おっちゃん」と呼ばれることも。