万が一に備え、自転車やバイクに乗る際にもドライブレコーダーを装備しておくほうが安心できる。しかし、電源の確保や車体への固定のしにくさ、複数台所有している場合、すべての車体に取り付けるのはハードルが高いといった理由から、あまり普及が進んでいない。そんな課題をクリアしてくれそうな、ウェアラブル・ドライブレコーダーを発見! 身に着けて使用する、プラススタイル「FITT360 PB」を試してみた。
「FITT360 PB」は車体に取り付けるのではなく、乗車する人の首にかけて使用するネックバンド型のドライブレコーダー。バッテリーで駆動する充電式で、2つのフロントカメラとひとつのリアカメラで周囲360°を記録し、内蔵マイクで音声も記録する。3つのカメラで撮影された動画は、3つの動画を並べた形に合成され、ひとつの映像となって保存されるので、確認する際は、1度に全方向を確認可能。また、動画だけでなく、静止画の撮影も行える。
サイズは175(幅)×195(奥行)×35(高さ)mmで、推奨首まわりサイズは最小31cm〜最大47cm。価格は63,800円(税込)
本体をそのまま首にかけるだけで使用できるが、装着時には、本体を水平に保つネックガイドと落下を防ぐベルクロを付けたほうがいい。ネックガイドはS/M/Lの3種類が同梱されている
フロントカメラは、左右にひとつずつ搭載。側方も画角に収めるため、カメラはやや斜めに取り付けられている
リアカメラは本体背面の中央に搭載されている
左から、リアカメラ、フロントカメラ(左)、フロントカメラ(右)の順で合成された動画が保存される。左上に表示されているのは、撮影日時だ
撮影できる動画は3,840×1,280ピクセルのMP4(H.264、AAC)で、ビットレートは20/12/5Mbps、フレームレートは30/15/8fpsから選択できる。46GBの内蔵ストレージを搭載しており、最高画質の動画の場合、最長3時間30分録画できるという。一般的なドライブレコーダーと同じように、動画の長さは1分/3分/5分/10分で設定でき、ストレージがいっぱいになっても自動で上書きする機能も完備。録画しておける容量を増やしたい時は、別途microSDカード(128GBまで)を使うこともできる。なお、動画の設定は専用アプリ(無料)で行う。
リアカメラの下部に、microSDカード(写真右側)のスロットがある。中央にあるのが電源ボタンで、写真左側が充電用のUSB Type-Cポートだ
インターフェイス部にはフタが付いており、首もとに設置するため、装着する前に電源をオンにしておく必要がある。リアカメラ近くのLEDランプが点灯したら起動した証拠。なお、このLEDランプはバッテリー残量を示すインジケーターの役割も果たす
バッテリー駆動のため、充電は必須。最大3時間の録画(3,840×1,280ピクセル/15fps基準)ができ、バッテリー残量ゼロの状態から満充電までは約2時間かかる
さっそく、FITT360 PBを使ってみよう。電源をオンにして首にかけるだけなので、準備の手間はない。あとは、フロントカメラ(右)側にある録画ボタンを押して、出発すればいいだけだ。なお、ここで掲載する録画した動画は、すべて3,840×1,280ピクセル(15fps)の設定となっている。
ネックガイドも使用しているので、本体は水平に保たれている。首もとで固定されるため、不安定に動くこともなかった。また、本体重量は約240gと軽いので、重さが負担になることもない
右側にある、赤い●マークの付いたボタンを長押しすると録画スタート。録画開始時に音声(英語)で通知されるので、ボタンを押したつもりが録画されていないという事態が防げる
まずは自転車で利用してみたが、スポーツタイプの自転車だったためか、ライディングポジションにあわせてFITT360 PB本体も前傾になってしまった。カメラが広角なので、リアカメラに空しか映らないという事態は起こらなかったが、公式サイトには、乗車姿勢が前傾になる状態での撮影は正しく撮影できないと記されていたので注意しよう。
上体が起きた姿勢で乗れるほうが、FITT360 PBには適しているという
ただ、筆者はスポーツタイプの自転車しか持っていないため、今回のテストはやや前傾姿勢となる状態で行うことになった
最初に試したのは、日中の街中。人の身体に直接装着するということで、ブレを気にしていたが、撮影した動画を見た限り、その点は問題ない印象(下の動画参照)。幹線道路で抜いていったクルマのナンバーも映っており、万が一の事故の時に役立ちそう。風切り音も入ってしまうが、ほかの音声を妨害するほどではない。ただ、途中で、後ろ襟や髪の毛がリアカメラにかかってしまうことが結構あった。髪の毛については難しい部分もあるが、着用する服は襟付きでないほうがいいかもしれない。
上の動画と、別日に撮影した自転車走行中に記録された動画の中から、気になるポイントを静止画にして抜き出してみた。
リアカメラ(左写真)はかなり上を向いているが、路面まで画角に入っているので、うしろから来るクルマも撮影できていた。メーカーが推奨する上体の起きたライディングポジションなら、もっとしっかり後方をとらえられるだろう
リアカメラに髪の毛がかかった瞬間。けっこうな頻度で起こっていたので、ちょっと気になる部分だ。だが、クルマのナンバーもしっかり映っており、日中に使う分には文句のない画質と言える
別の日には、高さのある後ろ襟の服を着ていたのだが、リアカメラが襟で覆われてしまった。襟付きの服には注意が必要だ。フロントカメラは何も問題がなく、交差点で横から来たクルマも撮影されており、なかなか優秀と言える
次は、夜間に走行して録画した映像をチェックしてみよう。下の動画のとおり、外灯の少ない場所では画質が落ちる。近い距離であればナンバーも確認できるが、角度や暗さによっては識別できない場合も。ただ、さらに前傾姿勢になるロードバイクに乗車してしまったため、リアカメラは上を向いてしまった。これは完全に筆者の落ち度なので、申し訳ない。
自転車よりもはるかにスピードの出るバイクでも試してみた。日中に使った限りでは、速度が上がることで映りが悪くなることもなく、ナンバーもしっかり確認できる。前述の自転車での検証よりも上体が起きた姿勢で乗車できるので、後方もバッチリ映せる……はずだったのだが、またも筆者が服装をミスってしまった。後ろ襟が高い服を着てしまったため、風であおられ、リアカメラの視覚を妨害。リアカメラがほとんど機能しない状態だった。
なお、フルフェイスのヘルメットを装着した状態でもFITT360 PBは問題なく使用できる。
最後に、歩いている時にもFITT360 PBを着けてみた。自転車やバイクに乗っている時よりも身体が動いてしまうため、映像の揺れは大きめ。長時間見ていると酔いそうなほどだ。しかし、直立しているので、後方はしっかり映っている。メーカーが推奨する乗車姿勢で乗れる自転車やバイクなら、このくらいの画角で後方を映せるだろう。
なお、FITT360 PBはIPX4の防水機能を備えているので、多少の汗などが付く分には問題ない。しかし、雨が降る中での使用は想定されていないので、天気には注意が必要だ。
車体に取り付けずに使えるFITT360 PBは、複数台の自転車やバイクを所有し、その日によって乗るモノが違うようなケースでも1台で対応できるのが大きなメリット。シェアサイクルでも使えるのも便利だ。ただ、前傾のライディングポジションに向かないのは残念。今回、スポーツタイプの自転車で試した限りでは、フロントカメラは必要な画角を映してくれているし、リアカメラもまったく後方が映らないわけではないので使えるといえば使えるが、万全とは言えない。スポーツタイプの自転車に乗っている人のほうがドライブレコーダーの必要性を感じていると思うので、この課題をクリアできるアタッチメントなどが登場してほしいところだ。また、前傾姿勢だったからかもしれないが、リアカメラに後ろ襟や髪の毛が干渉するのも気になる。乗車姿勢にかかわらず、首に固定する仕様上、襟はつぶれてしまうので、跡やシワが気になる人は襟付きの服でないほうがよさそう。
とはいえ、日中に撮影された動画の画質は想像以上にキレイ。周囲が暗くなると画質は落ちるものの、記録用としては役立ちそうだ。
カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。