女子力! そう、女子力。在宅ワークの時代、おっさんに求められるものは女子力。「何で?」と言われても、そう感じたから。異論は認めない。我が家の場合、コロナ禍になってもカミさんのパートに休みはないし、娘たちも社会基盤系の仕事をしているので出勤が止まらない。つまり、リモートワークができるのは自分しかなく、1日中家にいる自分が家事をすべきなのです。
なかでも食事。日々の夕飯については以前、料理下手なおっさんでも簡単においしく調理できる電気圧力鍋を紹介しましたが、今回は休日のおやつや昼食をおいしく簡単に作れる家電の紹介です。
右が今回紹介するオーブントースターの「ビストロ」。左は10年前のスチームオーブンレンジ(同じ「ビストロ」シリーズです)。オーブンレンジとオーブントースターなので単純に比較はできませんが、「ビストロ」はとてもコンパクトなのがわかります
いつもお仕事ご苦労さま、とおいしいおやつで家族を労ってあげたいと思っているおっさんの女子力を上げてくれるオーブントースターが、パナソニック「ビストロ NT-D700」(以下、ビストロ)。機能・性能の詳細はすでに別記事にて紹介されているので、ぜひご覧ください。
<関連記事>
約20年ぶりにリニューアル!パナソニックのオーブントースター「Bistro(ビストロ)」を使ってみた
受け皿と餅焼き網が付属します
一般的に、トースターで使われている遠赤外線ヒーターは、食材の表面をパリッとこんがり焼き上げるのに適したヒーターですが、熱が中まで届きにくいという特性があります。
唐揚げなどの揚げ物や惣菜パンをオーブントースターで温めると、表面は焦げるくらいにアツアツだけど、中は冷たいってことがよくありますよね。それは遠赤外線ヒーターの特性によるものなのです。
ビストロではこの問題を解消するために、近赤外線ヒーターを追加搭載。近赤外線ヒーターは食材内部まで熱を浸透させやすいという特性を持っているため、遠赤外線と組み合わせることで外はカリッ、中はジューシーに焼き上げることができるわけです。
また、庫内上部に近赤外線ヒーター1本と遠赤外線ヒーター1本、下部に遠赤外線ヒーター1本の合計を3本のヒーターをそれぞれ独立して細かく制御。これによって、食材に合った焼き加減で仕上げる15の自動メニューを搭載しているのですが、この制御がかなり秀逸なのです。
手前の黄色い管が遠赤外線ヒーター、奥の透明な管が近赤外線ヒーターです
女子力うんぬんはとりあえず置いといて、優秀な自動メニューから試してみましょう。本機のユニークな機能のひとつとして、2種類の「焼きいも」モードがあります。
筆者は時々、近くのバーベキュー場で落ち葉を使って芋を焼くので、焼き芋のおいしさはよく知っております。落ち葉が燃え尽きた後の熾火(おきび)でじっくり焼いた、蜜たっぷりの芋のなんとおいしいことか。なので、先述の発表会の記事を読んだ時、家電で焼く芋の味にはちょっと懐疑的でした。
まず、ベニアズマを使って、「焼きいも」モード、焼き加減「5」で30分ほど焼いてみました。中までホクホクして、おいしいです。うん、よくあるホクホク系だよね。口の中の水分を全部持っていかれるから、バターかマヨネーズが欲しいところ。
ベニアズマを「焼きいも」モードで焼いてみました。芋の品種にもよるのでしょうが、ホクホクしておいしいことはおいしいです
おいしいことはおいしいけど、熾火の焼き芋には勝てないかなー。と、ある意味納得しつつ、もうひとつのメニュー「じっくり焼きいも」を使ってみました。焼き加減は「4」です。こちらは、ねっとり系のべにはるかを使ってみます。
「焼きいも」モードが30分前後で焼き終わるのに対して、「じっくり焼きいも」モードはその倍以上、70分ほどかかります
焼き上がりは、皮が破裂するのを防ぐため、焼く前にフォークで刺した穴から蜜が滲み出ていながら、皮がパリッパリ! 見た目からしてかなり違います。何これ! おいしい!
蜜たっぷりでねっとりしており、口に入れた瞬間にさつまいも本来の甘さがじわ〜っと口の中に広がります。甘い! バターいらない! 熾火に負けていない。石焼き芋売りのおっちゃんにも負けてないよ。これホントうまいわー(語彙力崩壊)。
芋の品種の違いもあるのでしょうが、オートメニューでこれだけの甘さ、おいしさを引き出せるなんて。正直言って、これだけでもこの「ビストロ」を買う理由があると感じます。
皮がぱりぱりで、皮と身の境に蜜があふれてうまい! こりゃすげえ!
筆者が最新のトースターを試す時に、必ずやることがあります。それは、惣菜の温め直し。ファンを使って庫内に熱をまんべんなく充満させるコンベクション機能を持ったトースターは、まず間違いなく惣菜の温め直し機能が優秀です。しかし、「ビストロ」はコンベクション機能を搭載していません。ヒーターの力だけでどこまで温められるのでしょうか。
まずは天ぷら。「フライあたため」モードで焼き加減「1」の約3分。少し表面に焦げ目ができますが、決してパサパサしておらず、衣に油を適度に残していながら、それでいてサクッとしており、中もしっかり温まっています。撮影時は少し時間が経ってしまったので温度計は40℃を指していますが、庫内から出してすぐに食べれば中もアツアツです。
ちょっと焦げましたが、衣はサクサク、中までしっかり温かい。電子レンジで温めたときのベチャッとした食感とは段違い
続いて、とフライドチキンを焼き加減「3」で7分ほど焼いてみると、同じく衣から適度に油が落ちてジューシー、中身もしっかり温まっています。単機能トースターのように表面だけアツアツなのでも、電子レンジのように油が染みてベチャッとしているのでもありません。昼食に買ってきたのり弁のおかずのあたためにも最適ですね。
油が染みてベチャッとならず、サクサクです
そして、迎えたカレーパン。実は筆者、40歳を超えるあたりからカレーパンが食べられなくなりました。それまでは好物のひとつだったので、惣菜パンを買う時には必ずカレーパンを加えていたのですが、年とともに揚げパン特有の油っこさで胃が持たれるようになり、ここ数年はカレーパンを食べていません。しかし、「ビストロ」の付属レシピの中にカレーパンの文字を見つけ、久しぶりに食べてみたくなったのです。
「そうざいパン」モードで焼き加減MAXの「5」。9分ほど待って取り出してみると、ジュージュー言っています。すぐに温度を計ってみると、表面が73℃、中のカレーは61℃。カレーもしっかりアツアツです。
驚いたのが、じっくり時間をかけて焼いたことで、揚げパンの油がほどよく抜け、しつこさがかなりやわらいだのです。これなら食べられる。表面はパン粉のサクサク感が戻り、中のカレーもアツアツになったことで香りと辛さが戻っています。うまいわー(語彙崩壊2回目)。ああ、カレーパンは常温で食べてはダメなパンだったんだと、生まれて初めて知りました。ありがとう「ビストロ」。
中のカレーまで温かいだけでなく、衣の油が適度に落ちてしつこさが激減。50歳を超えてカレーパンがまた食べられる喜びったら
というわけで、ここからは女子力を発揮していきたいと思います。
「ビストロ」は、予熱不要でオーブン料理ができる、というトースターならではの特徴があります。ならば、オーブン料理の定番であるグラタンを作ってみましょう。グラタンの場合、手動メニューを使います。
温度を220℃に設定してタイマーを10分にセット。チーズがこんがりきれいに焼けて、中はすぐに食べられないほどのアッツアツ。グラタンはオーブンでは時間がかかり、トースターでは表面だけが焼けて中はあまり熱くならない、という理由で個人的には避けてきたメニューですが、これなら今後も積極的に作りたくなります。
すぐに食べられないほど中までアツアツなグラタンが、予熱なしに10分でできます。食べたら上あごの裏をやけどしました
トースターなので庫内が小さく、グラタン皿が2つしか入らないというのが欠点かなあ、とも思ったのですが、予熱不要で早く焼き上がるため、4人家族でも特に問題はありませんでした。1回目のグラタンが食べごろに冷める間に2回目を焼いてしまえばよいのですから。
さらなる女子力アップのために、スイーツも作っていきますよ。ブラウニーという、おっさんには聞き慣れないスイーツです。無塩バター・三温糖・卵・ブランデー・薄力粉・純ココア・くるみを混ぜて焼くだけなので、簡単だと思ったのです。名前も何かカッコいいし。
不格好なのは許して。手動メニューで160℃、24分の設定です。見た目は不格好だけど、おいしくできました。少しパサパサして唾液が持っていかれるけど、何かの量を変えたらもっとおいしくなるんでしょうね。初めて作ってこんなにおいしくできたら及第点だよ! と娘からも褒められたのでOK! ありがとう「ビストロ」。
ケーキ型のしまい場所がわからないので、バッドにクッキングペーパーを敷いて焼いてみました
見た目は悪いけど、味はGoodよ!
「女子力」といえばチーズケーキでしょう!(異論は認めます)クラッカーを砕いて溶かしバターと合わせて生地を作り、その上にクリームチーズ・サワークリーム・砂糖・塩・卵・レモン汁を流し込んだものを、160℃で25分ほど焼きます。
今度はちゃんとケーキ型の場所を娘に聞きましたよ。おお! おいしい! チーズの濃厚な味をレモン汁の酸味が引き立てて、さっぱりした甘さ。冷蔵庫に入れておいたら、その日のうちにペロッとなくなっていました。父ちゃん、うれしい。
トースターで簡単チーズケーキ。さっぱりした甘さでいくらでも食べられると、夕食後に家族が平らげてしまいました。父ちゃん、女子力高くなった?
昼食も女子力発揮していきましょう。トースターでフレンチトーストを作るとどうなるかを試してみたかったんです。
バッドに卵と牛乳と砂糖、塩、コショウを入れて混ぜ、食パンをしばらく浸してから、刻みチーズを散らしたあと、「アレンジトースト」の焼き加減「3」で焼きました。表面はしっかり焼き色が付き、中まで火が通ったふわふわのフレンチトーストができあがり。
バターや油で焼いていないのでコクが足りない感じはありますが、逆に言えばさっぱりしているので量が食べられます。娘はバターで焼いたフレンチトーストだと途中で飽きてしまい、半部程度しか食べられませんが、「ビストロ」で焼いたものは4つ切りパン1枚分をペロッと食べてしまいました。油を使わないので、身体に少しやさしいフレンチトーストなのかもしれません。
バターを使わないので薄味になりますが、さっぱりしているので量が食べられます。サワークリームや生クリームと合わせてもよいかも
食パンが余ったので、しらすトーストとベーコンエッグチーズトーストを作ってみました。しらすをオリーブオイルで和えて、刻みチーズを軽く散らして「アレンジトースト」で焼き加減「2」。焼き上がったら刻み海苔を載せて完成。チーズをかけることでしらすがカリカリに乾かず、適度な水分を保っているのがGood! 磯の香りが口いっぱいに広がります。
大好きなしらすトースト。しらすを焼きすぎることなく、パンの中まで火が通ってフワフワです
ベーコンエッグチーズは、食パンの四辺をマヨネーズで囲って土手を作り、中に生卵を落としてベーコンとチーズを乗せて「アレンジトースト」で焼き加減「4」。黄身を割った写真を撮り忘れてしまったのですが、トロっと半熟の部分を残しており、広げて食べるとチーズとからまってとてもおいしいです。もちろん、ベーコンにもしっかり火が通り、ほんのり焦げた縁のカリカリ具合が最高です。
こうしたアレンジトーストを作る場合、一般的なトースターでは表面だけが焼けてしまい、パンの中まで温かくならないのですが、「ビストロ」は近赤外線ヒーターの力で中までフワフワに温かい。お腹もふくれる満足の1枚が簡単に出来上がります。
ベーコンと目玉焼きとチーズトースト。なんと贅沢な休日のブランチ
単純なエッグトースト(チーズのせ)も作ってみました。とろとろの黄身をご堪能ください
お正月のパック餅も余っていたので焼いてみました。自動メニュー「パックもち」に設定し、3個焼くので焼き加減は「3」。5分程度できれいに焦げ目ができて、やわらかくふくらんだ焼き餅になりました。
トースターで焼くと、焼きすぎてふくらみがはじけ、伸びた餅が下網にくっつくということがよく起こりますが、「ビストロ」なら焼きすぎることなくきれいにふくらみ、中はもちもち。簡単でいい。毎年、お正月のパック餅が余りがちですが、こんなに簡単ならば毎日のおやつで食べ切ってしまいます。
弾けることなくきれいに焼けたパック餅。バターと海苔を巻いて3時のおやつに!
最後に、野菜不足を補おうと、おやつ用に「シンプル塩味のグリル野菜」を作ってみました。好きな野菜を薄く切ってトレーに並べ、水・塩・オリーブオイルを混ぜたものをかけ、手動メニューで260℃、15分焼くだけ。
シンプルだけどうまい! 焼きすぎて硬いことはないし、逆に火が通らずに生焼けの部分もまったくなし。塩が野菜の本来の甘みを引き出し、ひと噛みごとに野菜のエキスがあふれて、口の中が幸せいっぱい。小腹が空いた時のおやつにと思って作ってみましたが、がっつり昼食レベルでした。
じっくり焼きいも、カレーパンに次いで気に入ったメニューがこのグリル野菜。野菜を薄くカットするのが少々めんどうですが、冷蔵庫に残っていた野菜の端切れで適当に作ることができ、それでいておいしい。ぜひ試してみてください!
毎年、さまざまな工夫を凝らした高級トースターが登場しますが、「ビストロ NT-D700」は一歩抜きん出た存在のように感じます。温度制御というソフトウエアの工夫によってここまで簡単に、おいしく調理できるようにしたパナソニックの技術力は、称賛に値するでしょう。少々大げさかもしれませんが、それほど、「じっくり焼きいも」がおいしかったのです(笑)。
1966年生まれ、福島県出身。大学では考古学を専攻。主に生活家電を中心に執筆活動する家電&デジタルライター。レビューや検証記事では、オジさん目線を大切にしている。得意分野は家電流通・家電量販店。趣味は、ゴルフ、ギター、山登り、アニメ、漫画、歴史、猫。