ずいぶん前からミキサーの購入を悩んでいる筆者だが、友人宅でバイタミックス「TNC5200」で作ったジュースを飲んだ際、あまりにもなめらかな喉越しに心がときめいた。しかし、TNC5200は90,000円弱する“高嶺の花”。加えて、パワフルなだけにサイズが大きめなことも気になる。そんなふうに迷っていた時に目に留まったのが、TNC5200よりもコンパクトな「S30」だ。正直、S30の価格も安いわけではないが(80,000円強)、小さいことは魅了的。そこで、筆者にとってどちらが買いなのかを比較してみた。
※価格は、2016年5月13日現在の価格.com最安値を参考にしています
ひと目でわかる両機の違いはサイズ。大容量でパワフルなファミリーユースのTNC5200に対し、S30はパーソナルユースとされており、一度に作れる量(コンテナ容量)も0.8Lの差がある。そのほか、消費電力が250W違ったり、操作方法が異なるといった相違点もあるが、メーカーによると攪拌効率はほぼ同等だという。小さいながら、S30も“アボカドの種まで砕くパワー”を備えているのだ。
TNC5200(右)のサイズは190(幅)×510(高さ)×220(奥行)mmで、コンテナ容量が2L。S30(左)はサイズが150(幅)×400(高さ)×220(奥行)mmで、コンテナ容量は1.2Lとなっている。1.2Lでも大きめのグラス4杯分は作れるので、4人家族ならS30でも問題なさそう
両機とも、同じステンレス製のブレードを採用している。TNC5200の定格消費電力は900Wで、S30は650W
ブレードの回転スピードはダイヤルで操作する可変式となっており、どちらも10段階用意。TNC5200は操作が少し複雑で、左側のスイッチを「Variabule」にした状態でしか速度調整できない。ちなみに「High」は最速の回転数となるが、「Variabule」でスピードを徐々に上げてから「High」に切り替える
ほぼ同じパフォーマンスが発揮できるというTNC5200とS30だが、パワー(定格消費電力)の違いで味に差が出ないのかが気になる。そこで、ジュースやフローズンドリンク、パワフルなバイタミックスのミキサーだからできる調理で出来栄えを比較。まずは、果物や野菜を使ったフレッシュジュースからチェックしてみよう。
それぞれに同量のオレンジと水を入れて、運転スタート。ブレードの回転速度を徐々に上げていき、最高速度で約1分間ミキサーしてみた
パッと見ただけでは違いはわからないが、喉越しに歴然の差が! TNC5200はサラッとしているのに対し、S30は繊維質を少し感じる飲み応えのある仕上がりだ。グラスの縁に付いた繊維も、S30のほうが粗かった
今度は、人参や皮の付いたりんごといった硬さのあるものから、バナナやイチゴのようなやわらかめの果物、そして葉物野菜(小松菜)、皮付きレモンでスムージーを作ってみよう。運転方法は、上で紹介したオレンジと同様
いろいろな食材が入っているのでどちらもドロドロとしているものの、TNC5200のほうがなめらかで飲みやすい。同じ分量の材料を入れたにも関わらず、TNC5200のスムージーの色が緑がかって見えるのは小松菜がより細かく粉砕されたからなのだろうか
続いては、凍らせた果物を使ってフローズンドリンク作りにトライ! アボカドの種を砕くバイタミックスのミキサーは、氷も楽々粉砕できる。定格消費電力が650WのS30でも問題ないのか気になるところ。
凍らせたブルーベリーとラズベリーは、半解凍せずにカチカチのまま投入。ヨーグルトやハチミツも入れて、上で紹介したものと同じ運転方法でスタートした
ここまではTNC5200のほうがなめらかな仕上がりとなっていたのだが、フローズンドリンクではブルーベリーの皮が粗く残ってしまった! どうやら分量が少ないことが原因のようだ。水分が少なく、凍ったものや粘り気のある食材を少量だけミキサーする場合は、S30のほうが向いているかもしれない
ジュースやフローズンドリンクを作るだけでなくフードプロセッサーのような使い方もできるので、5cm角にカットした半冷凍状態の鶏ムネ肉1枚をミンチにしてみる。取扱説明書のとおりに、フタの穴から少しずつ投入して挽く。食材の水分が少ないうえにTNC5200にとっては分量も少なめとなるため、フローズンドリンクの時のような結果になるのかも?
分量の少なさを心配していたが、TNC5200は問題なく挽き肉が完成。いっぽうS30は、途中でブレードが回転しにくくなってしまった。粘り気が強いため、鶏ムネ肉1枚を一度にミンチにするのは厳しそう。たくさん作りたい時は、「少量ずつ挽く→取り出す」を繰り返すのがよさそうだ
バイタミックスのミキサーだからできる、おもしろい調理方法でも比較してみよう。なんと、常温の食材から温かいスープを作ることができるのだ。そのヒミツは、高速回転にあり! コンテナ内で食材が高速でぶつかり合うことで生じる摩擦熱を利用するという。さっそく、ホールコーンとアスパラ、玉ねぎを使ったポタージュスープを作ってみる(牛乳と水、コンソメも一緒に投入)。
摩擦熱をスープの温めに利用するため、ミキサーは約5分間稼働。その結果、50℃ぐらいの温かさ(飲んだ際の体感)で仕上がった。できあがったスープの温度にはそれほど差を感じなかったが、食感には差が! S30はコーンの粒感が少し残っており、TNC5200は裏ごししたかのようになめらか。どちらもアリな出来栄えだ。ちなみに、投入する液体を事前に温めておけば、熱々にもできる
ここまでは基本性能の違いによる操作性や料理の仕上がりの差をチェックしてきたが、S30には通常のコンテナと、「TO GOカップ」と称された“持ち運べるコンテナ”が付属するので紹介しておきたい。基本的な使い方はどちらのコンテナも同じだが、TO GOカップは食材を入れてミキサーしたあとフタをすれば、そのまま持ち歩いたり、タンブラーのように直接飲んだりできる。TNC5200にはない要素なので、選択の決め手にもなるだろう。
通常のコンテナの容量は1.2Lなのに対し、TO GOカップは600mlと持ち運ぶのに適したサイズになっている。TO GOカップは1つ付属(2016年4月18日から、1つセットが発売となった)。なお、TO GOカップは単体で購入もできる
TO GOカップでジュースを作る場合には、フタを外した部分に通常のコンテナで使っているブレード部分を装着する。ちなみに、TNC5200のコンテナはブレードと分離できない
ミキサーで作るフレッシュジュースは繊維が丸ごと摂れることが魅力だが、いっぽうでその繊維っぽさが苦手という人もいる。バイタミックスのミキサーはブレードの回転が速いので、一般的なミキサーよりも繊維が粉砕されやすい。今回、TNC5200とS30それぞれの最高回転速度で作ったジュースを飲み比べてみたところ、圧倒的にTNC5200のほうがなめらかだった。もちろん、S30のジュースも一般的なミキサーよりも繊維を感じないのは確かだ。食感は個々で好みが異なるが、とにかくサラッとした喉越しがいいならTNC5200をチョイスしてみて。
ただし、TNC5200はパワフルだが、使う食材によっては分量が少ないとパワーを生かしきれないことがあった。少量を作ることが多いなら、S30を選ぶのも手。もちろん、TNC5200でも少量の調理ができないということはないので買って損をすることはない。もっとも利用頻度が高いであろうフレッシュジュースにいたっては、少なめの量でも問題なし! そして、もう1つS30を選ぶ決め手となるのがTO GOカップだ。グラスに注がずそのまま飲めるのがラクというのもあるが、冷蔵庫で冷やしたり保存したりも容易にできるのは予想以上に便利。自分用と子ども用で異なるフレッシュジュースを作り、それぞれ好きな味を楽しめるのも心が動かされる。
このような結果をふまえ、筆者が選んだのはTNC5200。ミキサーの中でも別格と言える、細かくできる粉砕力に惚れたのだ。大きさは気になるが……なんとかなるだろう!
筆者が気に入っているのが、米を粉砕して米粉にする調理。TNC5200のレシピブックには載っていたが、S30のほうにはなかったもののトライしてみたところ、大成功! 我が家では揚げ物には米粉を利用するので、米粉の粗さはいい感じ。ただし、この調理もTNC5200のほうが細かく仕上がる。米粉パン作りに利用するような場合には、S30で作った米粉だと粗過ぎるかもしれない