特別企画

アワード受賞製品から2016年のトレンドを振り返る(生活家電編)

去る2016年12月1日、その年、ユーザーにもっとも支持された製品を選出する「価格.comプロダクトアワード2016」の結果が発表された。本企画では、当アワードにて、各カテゴリーごとの賞を受賞した製品に着目。その製品のどういった部分がユーザーから高く支持されたのか、その理由を綿密に探りつつ、今年2016年のトレンドを振り返っていく。第2回は「生活家電編」だ(計5回連載)。

【調理家電部門】昨年から引き続き高級トースター製品が人気。炊飯器では、意外な伏兵の登場も!

まずは「調理家電部門」から見てみよう。この部門では、「電子レンジ・オーブンレンジ」「トースター」「炊飯器」の3カテゴリーでそれぞれ金賞・銀賞製品が選出されており、大賞になったのは、パナソニックの「3つ星 ビストロ NE-BS1300」だった。

パナソニック「3つ星 ビストロ NE-BS1300」

パナソニック「3つ星 ビストロ NE-BS1300」


「3つ星 ビストロ NE-BS1300」は、パナソニックの電子レンジでは最高級モデルに当たる製品。これまでもその火力の強さ(グリル時)や、多彩なスチーム機能などには定評があった製品で、昨年の「価格.comプロダクトアワード2015」でも金賞を受賞していたが、今年の「NE-BS1300」では、ヒーターの火力を落とさずに、天井面までフルフラットな庫内を実現。従来よりもはるかにお手入れがしやすくなったことなどから、ユーザー満足度が上がり、今回の大賞受賞に結びついた。

しかし、むしろ今年2016年は、電子レンジやオーブンレンジよりも、ぐっとコンパクトなオーブントースター系製品のほうに光る製品が多かったように思う。オーブントースターと言っても、構造的にはむしろ本格派オーブンに近い作りの、いわゆる「高級トースター」製品が人気で、特に、毎朝パン食という「パン党」の方々を中心に高い支持を得た。このカテゴリーで金賞を受賞した、日本エー・アイ・シー「Aladdin AET-GS13N」は、一般の赤外線ヒーターよりも高火力で、立ち上がりの早い「遠赤グラファイト」を採用。わずか0.2秒で発熱し、庫内温度を一般的な製品よりも30℃も高くできるため、一気にトーストを加熱。その結果、外側はこんがり、中はモチモチという、理想的な焼き加減を実現している。価格的には1万円を超える高級製品だが、パン党の方々からの満足度は非常に高い結果となった。

日本エー・アイ・シー「Aladdin AET-GS13N」

日本エー・アイ・シー「Aladdin AET-GS13N」


また、同カテゴリー銀賞の、シャープ「ヘルシオ グリエ AX-H1」は、同社のウォーターオーブン「ヘルシオ」をそのままコンパクトに仕上げた、れっきとしたウォーターオーブンである。100℃以上の過熱水蒸気で一気に焼くという、ヘルシオのコンセプトはそのまま受け継いでおり、トーストはもちろん、さまざまな料理に応用できるのが特徴。また、フライや揚げ物などの温めでも、外側をカリッと仕上げられるため、1人暮らしや、忙しい共働き世帯、また、ヘルシオを欲しかったが、サイズ的に置けないといった方々にも支持され、10月発売ながらも一気に今年の人気商品となった感がある。こちらも3万円を超える高額製品であるが、やはりパン党の方々からの支持が厚く、それだけの価値はある製品として高く評価されている。

シャープ「ヘルシオ グリエ AX-H1」

シャープ「ヘルシオ グリエ AX-H1」


このように、今年2016年は、昨年2015年のプロダクトアワードにて同カテゴリー金賞を受賞したバルミューダ「The Toaster K01A-KG」に引き続き、高級トースター製品(ミニオーブン?)が、パン党の熱い支持を得て人気となったのが印象的だ。

なお、「炊飯器」カテゴリーでは、意外な製品が金賞に輝いた。それが、アイリスオーヤマの「銘柄炊き RC-MA30」である。これまで同カテゴリーでは、パナソニックの「おどり炊き」シリーズなど、高級炊飯器のシリーズが金賞を受賞するケースが多かったが、「銘柄炊き RC-MA30」は価格にすると、わずか6,000円程度(2016年12月19日時点)で購入できる低価格製品。方式も「圧力IH」どころか「IH」ですらないマイコン式炊飯ジャーで、炊飯量も3合炊きと、1人暮らし世帯向けの製品というイメージだが、実際に炊いて食べてみると、かなりレベルの高い炊きあがりを実現しているということで、高評価を得た。製品名にもあるように銘柄別の炊き分け機能が特徴だが、トータルバランスにもすぐれており、6,000円程度の低価格ということもあって、相対的な満足度が高まった結果といえる。

アイリスオーヤマの「銘柄炊き RC-MA30」

アイリスオーヤマの「銘柄炊き RC-MA30」

【生活家電部門】安定のダイソン「Fluffy」が危なげなく大賞受賞。洗濯機は日立、冷蔵庫はシャープの健闘に注目

「生活家電部門」は、「掃除機」「洗濯機」「冷蔵庫・冷凍庫」「アイロン」「電子辞書」の各カテゴリーで受賞製品が選出された。その中で、まず注目したいのは、大賞製品も出た「掃除機」カテゴリーである。

「掃除機」カテゴリーで金賞・銀賞のワンツーフィニッシュを飾ったのは、ダイソンのスティック型掃除機「Dyson V8 Fluffy」と「Dyson V8 Fluffy+」の2製品。この2製品は、付属のノズルやブラシなどの種類が異なるだけで基本的には同一製品と考えてよく、そういう意味では、今年2016年は「Dyson V8 Fluffy」が圧倒的な人気を誇った年と言ってよいだろう。

ダイソン「Dyson V8 Fluffy」

ダイソン「Dyson V8 Fluffy」


これまでもダイソンの製品は価格.com上でも人気を博してきていたが、プロダクトアワードにて過去に金賞を受賞したことはない。それが、今年の「Dyson V8 Fluffy」については、5月の発売直後からかなり好調な売れ行きを見せ始め、ユーザーの満足度も高いまま推移した。「Dyson V8 Fluffy」が、これまでの製品ともっとも異なる点は、新採用の「ソフトローラークリーナーヘッド」。ナイロンフェルトで覆われたソフトローラーと、カーボンファイバーブラシを組み合わせることで、大きいゴミも小さいゴミも同時にキレイに吸い取れるこのヘッドは、想像以上に多くのユーザーの支持を得た。もちろん、これまでダイソンが作り上げてきた「吸引力の落ちない掃除機」というブランドはすでに定着しており、モデルチェンジを繰り返すごとに、さまざまなネガティブ要素をつぶしながら、進化してきたことが高く評価され、この結果につながったものと言える。価格としては高いダイソンの掃除機だが、それだけの価値があるということを、多くのユーザーが実感しており、他のライバルを寄せ付けない強さを年間を通じて見せつけた。今回の大賞選出も、実に自然な流れだったと言えるだろう。

日立「ビートウォッシュ BW-V80A」

日立「ビートウォッシュ BW-V80A」


そのほか、「洗濯機」カテゴリーでは、日立の縦型洗濯機「ビートウォッシュ」シリーズが金賞・銅賞のダブル受賞。「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーでは、シャープのミドルクラス製品が銀賞・銅賞のダブル受賞となり、この2メーカーの健闘が光った。特に、シャープの冷蔵庫については、冷蔵庫市場の中でもそれほどシェアが大きいわけではないが、実はさまざまな使いやすい要素が随所に盛り込まれており、使ったユーザーの満足度も概して高い。決して売れ筋の製品というわけではないが、コストパフォーマンスの高さも加味したうえで、非常にすぐれたお買い得の製品ということができそうだ。

シャープ「SJ-W352B」

シャープ「SJ-W352B」


また、「アイロン」カテゴリーでは、パナソニックの衣類スチーマー「NI-FS470」が金賞を受賞。アイロンというよりも、衣類をハンガーに吊したまま、しわ伸ばしができることに特化した製品であるが、この分野ではほかに有力なライバルもなく、圧倒的人気を得ての受賞となっている。

パナソニック「NI-FS470」

パナソニック「NI-FS470」

【健康家電部門】「ナノケア EH-NA98」が安定の大賞選出。スマートウォッチから進化した「活動量計」が熱い展開に!

パナソニック「ナノケア EH-NA98」

パナソニック「ナノケア EH-NA98」


次に「健康家電部門」を見てみよう。この部門では、大賞に「ドライヤー」カテゴリーの金賞製品であるパナソニック「ナノケア EH-NA98」が選出されているが、「ナノケア」シリーズは本アワードでは大賞の常連製品であり、今回も安定の大賞選出となった。こちらもほかに有力なライバルがなく、ドライヤー製品では人気を独占している。

この部門で注目したいのは、最近人気が上昇している「活動量計」カテゴリーだ。比較的新しい製品ジャンルで、製品数もそれほど多くはなかったが、昨年2015年くらいから「スマートウォッチ」が脚光を浴び始めたのに呼応するように、この市場に参入してくるメーカーが増え製品数も増えてきた。どちらかと言えば、スマートフォンの小型版あるいは連携機器という立場であるスマートウォッチに対して、活動量計は、歩数のカウントや、就寝時の動きの検知、心拍数のカウントといった機能に特化しており、ユーザーに高く支持された製品も、この分野では老舗のメーカーが作った製品が占めるという結果になった。

ガーミン「vivoactive J HR」

ガーミン「vivoactive J HR」


金賞を受賞したガーミン「vivoactive J HR」は、同社の活動量計シリーズの中ではハイエンドに位置する高機能製品。歩数をはじめとするアクティビティのカウントはもちろん、心拍計、さらにはGPS機能も内蔵しており、これ1台で自分のアクティビティのログを広く記録することができる。しかも、これだけ多機能でありながら、ライフログモードで最長8日、GPS使用時で最長13時間という、長時間駆動を実現しており、フルマラソンを超えるトライアスロンや100kmマラソン、トライアスロンといった競技にも対応できるタフさを身につけている。30,000円前後からという販売価格も手ごろだ。

EPSON「PULSENSE PS-600」

EPSON「PULSENSE PS-600」


また、銀賞のEPSON「PULSENSE PS-600」も、この分野では老舗の国内メーカーであるエプソンが作った本格派の活動量計として完成度の高い製品だ。さらに、銅賞のドコモ・ヘルスケア「ムーヴバンド3 WMB-03」も、製造元は老舗メーカーのオムロンであり、製品としての完成度、満足度は総じて高い。「アップルウォッチ」に代表されるスマートウォッチが不振と言われているが、機能を限定することで磨きをかけたこれらの活動量計に関しては、老舗メーカーならではのさまざまなアイデア、ノウハウが詰め込まれ、さらなる進化を続けている。今もっとも熱い製品カテゴリーのひとつと言っていいだろう。

ドコモ・ヘルスケア「ムーヴバンド3 WMB-03」

ドコモ・ヘルスケア「ムーヴバンド3 WMB-03」

【空調家電部門】特に目立った製品はなし。扇風機はDCモーター非採用機が金賞受賞

最後に「空調家電部門」を見てみよう。「エアコン・クーラー」「扇風機・サーキュレーター」「除湿器」の3カテゴリーから受賞製品が選出されているが、空気清浄機や加湿器などの該当製品はなく、やや寂しい結果となった。その他のカテゴリーでも、特に目立った製品はなく、コストパフォーマンスの高さがほぼそのまま満足度にもつながっているような結果になっている。

日立「HEF-110R」

日立「HEF-110R」


この部門で大賞に選ばれたのは、「扇風機・サーキュレーター」カテゴリーの日立「HEF-110R」であるが、同カテゴリーでは、銀賞、銅賞とも日立の製品が受賞しており、ほぼ日立一色という結果になっている。ただし、金賞、銀賞受賞の製品はいずれも、昨今流行のDCモーター採用の高級扇風機ではなく、従来通りのACモーター採用のスタンダードモデルで、機能的に特筆するようなところはない。しかしながら、日立ならではのしっかりした製造で、実用上の問題はなんらなく安定して稼働するところが、多くのユーザーの評価を得た。DCモーター機ではないものの静音性にもすぐれており、首振り時のきしみ音などもないという評価で、まさに「安定」がキーワードの製品と言えそうだ。

DCモーター採用の高級扇風機のブームもやや落ち着いた感があり、なかにはDCモーター採用機でありながら、組み立ての甘さなどから、静音性に欠ける製品なども見られたことから、コスト的に見合わない(多くの製品が1万円を超える)という判断も働いたのだろう。高級機であれば、そのコストに見合った価値を提供してほしいものだが、そうした面で現状のDCモーター採用機に対しては、やや厳しい評価となったのかもしれない。

鎌田 剛(編集部)

鎌田 剛(編集部)

価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
プレゼント
価格.comマガジン プレゼントマンデー
SPECIAL
ページトップへ戻る