特別企画

CDリッピングの手法・必要機器など基本まとめ! 青春の資産をデータ化しよう

今や、音楽鑑賞と言えば、デジタルデータ再生が一般的になって久しい。最近はYouTubeや聴き放題のストリーミングサービスも活況だし、新曲をCDで買う機会はどんどん少なくなっている。……が、過去にコレクションしていた大量のCDが自宅の棚に眠っている人は、まだまだ多いだろう。「早いところ思い出のCDをパソコンに取り込まなきゃ」なんて言いつつ、そのままになっている人も少なくないと思う。

そこで今回は、青春のCD資産を早いところ整理したいと思っている人へ、今現在、CDをデジタルデータ化するときの選択肢と、必要機材やコツ、注意点などをまとめてお伝えしよう。

ファイル形式、タグ……CDのデータ化前に覚えておきたい基本事項

CDのデジタルデータ化作業=リッピングとは、CDの記録面に収録されているデジタルデータをパソコンや対応機器で抽出して、デジタル楽曲ファイルにすること。CDを再生しながらカセットテープなどに録音するものとは全く別種の手法である。

改めて言うまでもないかもしれないが、CD音源をデジタルデータ化するといいことずくめだ。データ化された楽曲ファイルは、ホームオーディオはもちろん、スマホに入れて持ち出したり、車載オーディオで聞いたりなど、さまざまな場所で楽しめるようになる。かさばるCDとは違って物理的な保管スペースも節約できるし、リッピングしたデータのタグ情報をちゃんと管理すれば、アーティストやジャンル別に整理整頓された状態でスマートに音楽再生することができる。

とはいえ、最適にCDリッピングするにはちょっとした注意点や知識も必要。具体的なリッピング方法の説明に入る前に、覚えておきたい基本事項をざっとおさらいしよう。

▼音楽ファイルの代表的なファイル形式

CDをデータ化して作られる音楽ファイルは、複数のフォーマットが選択できる。現在代表的なフォーマットはWAV、FLAC、AAC、MP3など。その種類は、(A)非圧縮ファイル、(B)可逆圧縮ファイル、(C)圧縮ファイルの3つに分類される。以下の表をご参照いただきたい。

(A)(B)は、CD音質を規格上音質劣化なくデータ化することが可能だが、ファイルサイズは大きくなる。(C)はファイルサイズがコンパクトだが音質は劣化する。音質を重視するなら(A)か(B)。とにかくファイルサイズをコンパクトにしたいなら(C)がよい。なお、リッピングに使う機材およびソフトウェアによっても、対応するフォーマットが異なるので注意しよう。

フォーマットを選ぶときは、さまざまな再生機器で再生できる汎用性の高いフォーマットを選択するのがよい。また、自分が使っているオーディオ機器がそのフォーマットに対応しているかどうかを確認するのも大切だ。もちろん、同じ楽曲で複数種類のファイルを作成しておいてもよい(保存するための容量が必要になるが)。

▼音楽ファイルに付与されるタグ情報

CDからリッピングした音楽ファイルを再生すると、再生機器の画面上に楽曲名やアルバムジャケットが表示されたり、アーティストごとにソートすることができるようになる。これを実現できるのは、音楽ファイルの中に「タグ」という文字情報や画像情報が格納されているからだ。

タグ情報は「Gracenote」など、インターネット上にあるCDデータベースの情報から自動取得され、楽曲ファイルに書き込まれる。CDをリッピングしたときに、自動でアルバム名、アーティスト名、アルバムアート、ジャンルなどの情報が表示されるのは、このようにタグ情報を取得しているから

タグ情報は「Gracenote」など、インターネット上にあるCDデータベースの情報から自動取得され、楽曲ファイルに書き込まれる。CDをリッピングしたときに、自動でアルバム名、アーティスト名、アルバムアート、ジャンルなどの情報が表示されるのは、このようにタグ情報を取得しているから

音楽CDから取り込んだ楽曲データを再生すると、リッピング時に自動で取り込まれた楽曲目やアーティスト名、ジャケット画像などが表示されるようになる(なお、WAV形式だとタグの入力ができないため、ジャケット写真の表示などがされないので注意)

取り込んだ楽曲データを再生すると、リッピング時に自動で取り込まれた楽曲目やアーティスト名、ジャケット画像などが表示されるようになる(なお、WAV形式だと基本はタグの入力ができないため、ジャケット写真の表示などがされないことに注意)

タグの情報は、一般的にリッピング時にインターネット上から自動取得されて付与されるが、アルバムによっては楽曲情報やアルバムアートが自動的に取得できない場合もある。そのような場合は、リッピング用ソフト上で手動でタグを入力することができる。ちゃんと楽曲管理するなら、細かいタグ情報を手動で修正するとよりよい。

今CDリッピングするならこの手法! 3つ+αの選択肢を紹介

それではいよいよ、CDリッピング方法の具体的な選択肢を紹介しよう。ここでは、大きく3つの手法+αを取り上げている。それぞれの長所、短所も含めてお伝えしたい。

【1】パソコンを使う

CDリッピングの最もスタンダードな方法は、パソコンを使うことだ。必要なものは、「WindowsまたはMacのパソコン」「データ抽出用のソフトウェア」。ディスクドライブが搭載されていないパソコンを使う場合は、USB接続可能な「外付けディスクドライブ」も用意しよう。

パソコンでリッピングすることの長所は、昔からある最も有名な方法なので、初心者からヘビーユーザーまでわかりやすく使えること。短所は毎回パソコン/ソフトを立ち上げる必要があることと、最低限のソフトウェアの操作スキルが必要といったところだろうか

パソコンでリッピングすることの長所は、昔からある最も有名な方法なので、初心者からヘビーユーザーまでわかりやすく使えること。短所は毎回パソコン/ソフトを立ち上げる必要があることと、最低限のソフトウェアの操作スキルが必要といったところだろうか

楽曲データの抽出は、Windows/Macともプリインストールされている無料の純正ソフトウェアを使えば手軽にリッピングできる。ただ、純正ソフトウェアは選択できるファイルフォーマットのバラエティが少ないので、こだわって管理するならサードパーティー製の有料/無料ソフトを推奨したい。

▼「Windows Media Player」(Windows OSにプリインストール/無料)

Windowsユーザーなら、パソコンにプリインストールされている「Windows Media Player」でCDリッピングが行える。リッピング時のフォーマットはWAV、FLAC、Apple Lossless、MP3のほか、Windows Media オーディオやWindows Media オーディオ ロスレス等の独自フォーマットに対応。

▼「Apple Music」(Mac OS Catalina以降にプリインストール/無料)

Mac(Mac OS Catalina以降)ユーザーは、プリインストールされている「Apple Music」でCDリッピングが行える。リッピング時の対応フォーマットはWAV、AIFF、Apple Lossless、AAC、MP3等 。

▼「dBpoweramp CD Ripper」(サードパーティー製アプリ/Windows版&Mac版/有料)

筆者も使用するWindows/Mac対応の高性能リッピングソフト。39ドルで販売されているメディアコンバーターソフト「dBpoweramp Music Converter」に同梱される機能だ。有料版だが、インターネット上にあるデータベースを利用して、エラーなく正確にリッピングされたかを確認できたり、アルバムアートの取得率も高いなど、すぐれた機能を持っている。リッピング時のフォーマットはWAV、FLAC、AIFF、Apple Lossless、MP3等に対応する。

▼バッファロー「DVSM-PLV8U2-BK/N」

価格.comの「DVDドライブ」カテゴリー売り上げランキング1位(2020年12月時点)のスタンダードな外付けドライブ。

【2】「CDレコ」を使ってスマホに直接リッピングする

続いては、スマートフォンに直接CD音源を取り込む方法だ。アイ・オー・データ機器が発売するディスクドライブ「CDレコ」シリーズを使うことで、パソコンを使わず、スマホにダイレクトでCDリッピングが行える。必要なものは「CDレコ」と「CDレコミュージックアプリをインストールしたスマホ」のみでよい。

「音楽リスニングで使うメイン機器はスマホ」という人にはもってこいの方法となる。ちなみに、「ウォークマン」などAndroid OS搭載のDAPと接続しても同じように直接リッピングができる

「音楽リスニングで使うメイン機器はスマホ」という人にはもってこいの方法となる。ちなみに、「ウォークマン」などAndroid OS搭載のDAPと接続しても同じように直接リッピングができる

▼アイ・オー・データ機器「CDレコ CDRI-LU24IXA」

本体にiPhone/iPadやAndroidスマホとケーブルで接続することで、CD音源の取り込みが行えるディスクドライブ。操作が簡単で女性の愛用者も多い。注意点としては、Android端末はスマホ側がHOST機能を持っていないケースもあり、その場合は使用できないこと。同社のWebページから対応モデルを確認しておこう。

▼アイ・オー・データ機器「CDレコ5 CD-5W」

Wi-Fi接続に対応したCDレコ。スマホに直接CDリッピングできるという基本機能は上述の有線タイプと同じだが、こちらはWi-Fi経由でスマホとワイヤレス接続できるので、より使い勝手がよい。スマホを充電しながら作業できるので、大量のCDをリッピングしてもスマホがバッテリー切れにならないというメリットも。

【3】据え置き型のオーディオ機器を使う

CDドライブを搭載する据え置き型オーディオ製品の中には、内蔵するHDDやSSDにCD音源をリッピングできるものがある。ただし基本的にこれらの製品は、リッピングした機器そのもので音楽再生することを前提としており、リッピングした音楽データの汎用性については機器ごとに変わってくる。

▼ソニー「HAP-Z1ES」

本機はCDドライブ非搭載のHDDオーディオプレーヤーだが、別売の外付けUSBドライブを使うことで、内蔵する1TBのHDDにCD音源をリッピングして保存・再生することができる。リッピング時のフォーマットはWAVとFLACに対応している。

▼NOVATRON「cocktail Audio X35」

CDドライブのほか、ストレージ+DAC+アンプを内蔵する多機能なネットワークオーディオプレーヤー。アンプ内蔵なので、スピーカーを接続するだけで使用できる。搭載するCDドライブより、FLAC、ALAC、WAV、MP3などさまざまなフォーマットでCDリッピングが可能だ。また、リッピングした音楽ファイルのコピーにも対応しており、本機以外のオーディオ機器でも再生可能となる。

【4】その他リッピング対応機器

以下、そのほかにCDリッピング機能に対応するストレージ機器や外付けドライブ製品を個別に紹介しよう。

▼パナソニック「おうちクラウドディーガ DMR-4CT40」

パナソニックのBlu-rayレコーダー「DIGA」シリーズの中には、内蔵するHDDにCD音源をリッピングしてデータを保管できるものがある。本機は、4Kチューナーを3基搭載し、4TBのHDDを内蔵するモデル。なお、専用アプリを使えばリッピングした音楽データをスマホで持ち出すことも可能だ。

▼アイ・オー・データ機器「Soundgenic HDL-RA2HF」

2TBのHDDを搭載するエントリー向けネットワークオーディオサーバー。別途ディスクドライブをUSB接続すれば、直接CDリッピングすることが可能なNASである。

▼アイ・オー・データ機器「DVRP-U8ATV」

Android TVと組み合わせてCD再生できる外付けドライブ。基本機能としては「Android TVの画面に楽曲情報を表示させながらCD再生できる」というのが売りだが、CDリッピング機能も搭載されている。ただし、Android TVの多くは内蔵ストレージが少ないので、テレビにUSBメモリー等を接続して保存場所を別途確保する必要がある。

CDリッピング時の注意点

続いて、CDリッピング時に注意したほうがよいポイントをまとめてみた。細かいことではあるが、ご参考いただければと思う。

▼リッピング前に、インターネット回線とCD面を確認しよう

冒頭でお伝えした通り、リッピングの際にはインターネット上からアルバム・楽曲の「タグ」のデータを取得する必要があるので、必ず機材をインターネット回線が利用できる状態にしておこう。そして、リッピングするCDの盤面はそれなりにキレイにしておこう。あまりにも汚れていたり傷が多いと、データ化の時間がかかったり、場合によってはリッピングができない場合もある。

▼リッピングが終わったら、データのバックアップを取ろう

データ化された楽曲ファイルは無形の存在だ。不意なデータ消去から守るために、USB外付けハードディスクやUSBメモリー等にバックアップをとっておこう。

▼リッピングデータ活用の基本ルール

そもそもだが、CDのデータ化は音源のコピーにあたる。つまり自分やその家族が購入したCDであればコピーは許されるが、リッピングしたデータを知人にあげたりすると著作権法違反になるので注意。また、以前に極少数販売されていた「違法コピー対策対応CD」など、リッピング自体ができないケースもある。(参考:日本レコード協会 音楽利用についてのQ&A集

無事にCDのリッピングが終わったら、あとは存分に音楽を“データ再生で”楽しもう! ホームオーディオで聞くのはもちろん、外出先でスマホから再生したり、ドライブ中に車載オーディオで楽しんだり。CDをいちいち入れ替える手間のない、スマートな音楽リスニングが楽しめる

無事にCDのリッピングが終わったら、あとは存分に音楽を“データ再生で”楽しもう! ホームオーディオで聞くのはもちろん、外出先でスマホから再生したり、ドライブ中に車載オーディオで楽しんだり。CDをいちいち入れ替える手間のない、スマートな音楽リスニングが楽しめる

さいごに

文頭で書いた通り、CDからリッピングした楽曲ファイルは、スマホ、パソコン、ホームオーディオ機器、カーオーディオなどさまざまな機器で再生できるようになる。青春のCDが再生機器に“データとして”表示されたときの、懐かしさと新鮮さが混じる何とも言えない気持ち、そして再生をシームレスに楽しめる感動はひとしおだ。

また、リッピング時に付与されたタグは、タグ編集ソフトを用いて手動で内容を変更することもでき、そういった管理をしっかり行うことでよりスマートな音楽リスニングが可能となる。少々手間がかかる面もあるが、大切な思い出の1枚をデジタル化する喜びも実感できるので、ぜひともチャレンジしていただきたい。

土方久明

土方久明

ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。

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