レビュー

テレビスピーカーとしても使えるELACのHDMI搭載スピーカー「DCB41」レビュー

ELAC(エラック)から、HDMI搭載のアクティブスピーカー「Debut ConneX DCB41」(以下、「DCB41」)が発売された。読者のみなさんの中にはELACをご存知ないという方もいるかもしれないが、1947年にドイツで設立されたELACはHi-Fiオーディオ界隈では高音質スピーカーの老舗ブランドの一角。今回紹介する「DCB41」は、同社が2016年に発表した入門機「Debut」シリーズの流れをくむ最新のアクティブスピーカーだ。2023年8月24日時点の価格.com最安価格は80,415円と8万円台から購入できる。

ELAC「Debut ConneX DCB41」

ELAC「Debut ConneX DCB41」

「DCB41」のコンセプトは、Hi-Fiオーディオメーカーが作った音質重視、そして入力端子豊富なアクティブスピーカーだ。テレビ接続用のARC対応HDMI端子と、PC接続用のUSB Type-B端子(96kHz/24bitまでのUSB DAC内蔵)を搭載しているのが最大の特徴。スマートフォンとのワイヤレス接続用にBluetoothも用意されており、高音質なaptXコーデックにも対応したワイヤレススピーカーとしても活用できる。

もちろん基本的なオーディオ機器との接続性も、光デジタル入力、アナログRCA入力(フォノイコライザー搭載でスイッチによりPHONO端子にもなる)となかなか充実している。サブウーハー出力端子を搭載している点もユニークだ。

電源スイッチを兼ねる音量ノブは本体背面に用意。HDMI、USB Type-B、光デジタル入力、アナログRCA入力(PHONE対応)など端子はかなり豊富だ

電源スイッチを兼ねる音量ノブは本体背面に用意。HDMI、USB Type-B、光デジタル入力、アナログRCA入力(PHONE対応)など端子はかなり豊富だ

「DCB41」の外見は極めてオーソドックスなブックシェルフ型スピーカーだ。オーディオ愛好家にとってELACというと「BS312」のような金属素材系&JETツイーターのイメージが強いが、「DCB41」は「Debut」シリーズの系譜ということで、JETツイーターは搭載されておらず、19mmソフトドーム・ツイーターと115mmポリプロピレン・ドーム・ウーハーによる2ウェイ仕様を採用。周波数特性は50Hz-25kHzとなっている。

「DCB41」のツイーターはJETツイーターではなく、オーソドックスなドーム型のツイーターだ

「DCB41」のツイーターはJETツイーターではなく、オーソドックスなドーム型のツイーターだ

スピーカー左右はスイッチで切り替え可能。左右はスピーカーケーブルで接続する形だ

スピーカー左右はスイッチで切り替え可能。左右はスピーカーケーブルで接続する形だ

業界全体を俯瞰すると、“老舗Hi-Fiオーディオメーカーが手がけ、多彩な接続方法をサポートしたアクティブスピーカー”という点では、JBL「4305P」が近い。ただし、「4305P」がネットワーク機能対応でHDMI非搭載なのに対し、「DCB41」はネットワーク機能非対応でHDMI搭載という点が異なる。「DCB41」なら、HDMIケーブルでテレビと接続することでお手軽なテレビスピーカーとして利用できるので、テレビの音質改善のためにアクティブスピーカーの導入を検討しているなら、「4305P」よりも有力な選択肢になってくれるだろう。

付属リモコン。入力切り替えのほか、HDMI接続時やUSB接続時には楽曲の再生/停止などの操作も行える

付属リモコン。入力切り替えのほか、HDMI接続時やUSB接続時には楽曲の再生/停止などの操作も行える

現在の入力ステータスを確認できるLEDは本体前面下部に搭載。フロントグリルを装着すると見づらいのが難点

現在の入力ステータスを確認できるLEDは本体前面下部に搭載。フロントグリルを装着すると見づらいのが難点

「DCB41」の実力をいろいろな使い方で体験!まずはデスクトップオーディオシーンでチェック

まずは今どきのオーディオの楽しみ方で最もポピュラーなPCと組み合わせたデスクトップオーディオ用に「DCB41」を導入してみた。「DCB41」はPCとUSBケーブルで簡単に接続でき、最大96kHz/24bitのハイレゾ再生も行える。USB DACとして接続されるため、スピーカーの音量はPCからもコントロール可能だ。

PCとUSBケーブルで接続して試聴スタート。「Amazon Music」でハイレゾ再生できることは確認済み

PCとUSBケーブルで接続して試聴スタート。「Amazon Music」でハイレゾ再生できることは確認済み

Amazon Musicで宇多田ヒカル『あなた』から再生してみると、まさに見た目どおりのオーディオ用ブックシェフ型スピーカーの音が空間に広がる。歌声はややシャープながら音の分離がとてもよい。中低域の楽器の音も情報量豊富ながらどこかやわらかく、ピアノの音の余韻、ベースの深みまでていねいに再現してくれる。

BTS『Dynamite』は、音楽的なノリに全フリしない制御の効いたサウンドで、リズムパートも深く空間的な広がりを持って刻んでくる。ハキハキと分離してキレと立体感のある高域も心地よい。ちなみに、リモコンから有効にできる「X Bass」は単純に低音をブーストするだけでなく、躍動感も出てくるので積極的に使いたいところだ。

そして抜群の相性のよさを感じたのがジャズ楽曲、ダイアナ・クラール『夢のカリフォルニア』だ。ジャズボーカルの艶やかさと、情感あふれる楽器の再現性、アコースティックな楽器の再現性はすばらしく優秀だ。

なお、今回は主にWindowsのデスクトップPCでテストしたのだが、別途MacやスマートフォンとUSB接続を試してみると……ケーブルの互換性に注意したいポイントがあることがわかった。

手持ちの「Macbook Air」と「iPad Pro」との接続を試してみたところ、USB Type-C to Bケーブルの直結ではまったく認識してくれなかった(OTGケーブルを利用してもダメだった)。ただ、これらの環境でもUSB Type-C端子をUSBドッグなどに接続してUSB Type-Aに変換、USB Type-A to Bケーブルで接続してやることで認識、再生できることは確認できた。同様に「iPhone」もLightning端子にカメラコネクションキットを接続、USB Type-Aに変換したうえでUSB Type-A to Bケーブルでつなぐことで問題なく再生できた。

上記のような回避方法はあくまでアップル製のデバイスのみのようで、WindowsおよびAndroidはUSB Type-C to B(いわゆるプリンターケーブルのType-C版)のケーブルで直結しても認識する(もちろんUSB Type-Aに変換しても接続可能だ)。

アップル製のデバイスは市販のUSBドックなどでUSB Type-Aに変換したうえで接続することで動作してくれた

アップル製のデバイスは市販のUSBドックなどでUSB Type-Aに変換したうえで接続することで動作してくれた

「DCB41」にFiiO「R7」をプラス。最新コンポとして運用するのも面白い!

続いて、「DCB41」を使ってミニマルオーディオを構築してみた。今回組み合わせたてみたのは、据え置きAndroid搭載オーディオプレーヤーのFiiO「R7」だ。ヘッドホン出力だけでなく、アナログRCA出力や光デジタル出力まで搭載。アクティブスピーカーの「DCB41」とお互いに補完してくれるので、この2台を用意するだけで簡単に令和最新のミニコンポを構築できるというわけだ。ちなみに、2023年8月24日時点の価格.com最安価格なら、「DCB41」と「R7」両方あわせて20万円以下で揃えられる。

「DCB41」と「R7」でミニコンポ化して使ってみた

「DCB41」と「R7」でミニコンポ化して使ってみた

「R7」はAndroidアプリを導入できるため、今回は「Amazon Music」のアプリをダウンロードしてそのまま利用した。まずはアナログRCAで接続してYOASOBI『三原色』を聴いてみたが、小気味よい音の鳴りは“ミニコンポ”の域を超えており、しっかりとしたオーディオを堪能できる。軽やかで情報量豊富な歌声、そしてスピーカーサイズを超えたリズムとスケール感が最高に心地よい。

オーディオファンとして気になるのが、「DCB41」と「R7」の接続で、アナログRCA、光デジタル、USB(FiiO「R7」にはUSBホスト機能があるため、USB DACを接続可)のどれがベストなのかということ。さっそく、アナログRCAから光デジタルにケーブルを替えてみたが、一聴した時点では「DCB41」のサウンドはていねいに揃えられている印象だった。時間をかけて聴き比べてみると、アナログRCAは低域が若干タイト、光デジタルのほうがゆったりとした鳴り方に感じられたが、音質差はそれほど大きくはない。

そして、アナログRCAと光デジタルを上回って最も高音質だったのがUSB接続。楽曲の隅々の音がみずみずしく聴こえる。USBを使ったデジタル接続が試せる環境を用意できるなら、ぜひこちらを使用したいところだ。

アナログRCA、光デジタル、USBで接続し、それぞれの音質をチェックしてみたが、USB接続がもっとも高音質だった

アナログRCA、光デジタル、USBで接続し、それぞれの音質をチェックしてみたが、USB接続がもっとも高音質だった

テレビとHDMI接続でテスト。意外と映画視聴向けにもアリ!?

「DCB41」はARC対応のHDMI端子を搭載しており、テレビとHDMIケーブルで接続し、テレビスピーカーとして活用することができる。テレビとHDMI接続=サラウンド!? と思ってしまいがちだが、「DCB41」で受けられるのはあくまでPCMのステレオ音声のみ。HDMI搭載のプリメインアンプなどを活用し、テレビにHi-Fiオーディオのスピーカーを組み合わせるというのが最近流行っているが、「DCB41」はプリメインアンプなどを用意しなくても単体でテレビと連携できるというのがポイントだ。

テレビとHDMI接続した「DCB41」。コンパクトなボディなので、テレビ横に設置しやすい

テレビとHDMI接続した「DCB41」。コンパクトなボディなので、テレビ横に設置しやすい

実際にHDMIケーブルを使って「DCB41」をテレビに接続、テレビの地デジ放送の音声をチェックしてみたが、やはりと呼ぶべきか、声の質感、情報量のよさはテレビのスピーカーとはまるで異なる。音は左右に配置した「DCB41」の中心あたりで定位し、人の声がしっかりと浮かんでくれるので、テレビの映像と音の一体感もしっかりとある。YouTubeの動画などを見ると、収録時のマイク音質の良し悪しまでよくわかってしまう。

映画『トップガン マーヴェリック』では、序盤のマッハ10を目指す離陸シーンの音の一致感、そしてセリフの質感再現がとてもよい。そして驚いたのがBGMの音質のよさ。離陸前のシークエンスに流れるBGMは楽器の鳴りが見通せるほど。低域も余裕があり、重低音のスケールが桁違いだ。サラウンドを再生できるわけではないので、音が後ろに回り込むということはないのだが、それでも臨場感たっぷりのサウンドを味わえる。

テレビのNetflixアプリから映画『トップガン マーヴェリック』を再生

テレビのNetflixアプリから映画『トップガン マーヴェリック』を再生

ただ「DCB41」をテレビスピーカーとして使用していた際、1点気になったことがある。それが、HDMI ARC経由で「DCB41」をスタンバイから復帰することができないことだ。入力なし15分でスタンバイに落ちてしまうので、毎回リモコンや本体操作で電源を入れ直す必要があり、やや不便さを感じてしまった。

「DCB41」はBluetooth接続も可能。なので最もカジュアルに音楽リスニングを楽しみたいならBluetooth接続で……と言いたいところなのだが、長めのUSBケーブルを用意してスマートフォンと「DCB41」を有線で接続、スマートフォンをハイレゾプレーヤーとして利用するほうがより高音質で楽しめる。個人的にはこちらの方法を推したい。もちろん、BluetoothもaptXコーデックでそれなりの高音質で音楽リスニングは可能だが、ここは音質をとるか、利便性をとるかでうまくチョイスしてほしい。

Androidスマートフォン・タブレット端末ならUSB Type-C to Bケーブル、「iPhone」や「iPad」などのアップル製のデバイスならカメラコネクションキットとUSB Type-A to Bケーブルで有線接続が可能だ

Androidスマートフォン・タブレット端末ならUSB Type-C to Bケーブル、「iPhone」や「iPad」などのアップル製のデバイスならカメラコネクションキットとUSB Type-A to Bケーブルで有線接続が可能だ

【まとめ】音質・使い勝手・価格のバランスに秀でた手軽に使える1台

ELAC「DCB41」をさまざまなスタイルで使ってみた感想は、“多彩な接続方法に対応、しかも高音質”、これに尽きる。音の情報量とやわらかさを両立させた「Debut」シリーズらしいサウンドは、音楽リスニングにもテレビ視聴でも十分使えるクオリティであることが確認できた。

また、今回はテストしなかったが、PHONO入力を活用してレコードプレーヤーと組み合わせた運用もできる。使い勝手重視のアクティブスピーカーが価格.com最安価格で8万円台から購入できるという点でも十分納得感があるし、Hi-Fiオーディオ級の音質を手軽に楽しめる1台としてぜひ注目してほしい。

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

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