レビュー

寒い季節にぴったり! あのAUREX(オーレックス)のお風呂スピーカーを試してみた

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お風呂向けBluetoothスピーカーAUREX「AX-FL10」

お風呂向けBluetoothスピーカーAUREX「AX-FL10」

「AUREX(オーレックス)」ブランドでオーディオ製品が発売されているのをご存じですか? ここではお風呂の壁を振動板にして音を出すという一風変わったBluetoothスピーカー「AX-FL10」をレビューします。

企画・製造・販売を行っているのは、冷蔵庫や洗濯機、エアコンなど東芝(TOSHIBA)ブランドで製品をリリースしている「東芝ライフスタイル」のグループ会社で、身近なライフスタイルオーディオなどを担当する「東芝エルイートレーディング」。大文字となった「AUREX」の左には、往年の“Aurex”ブルーを承継しつつ“心躍る感動を表現”したという音波のロゴが追加されています。

同社は、CDラジカセや災害時にも役立つラジオなど、「人にやさしいポータブルオーディオ」を次々リリース、最近ではカセットテープを再生できるBluetoothスピーカー「AX-R10」「AX-T10」を発売して話題になっています。

今回は、2023年11月発売の防水壁付けスピーカー「AX-FL10」を選び、自宅で使ってみました。はたして“Aurex”らしさは!?

立派な文鎮みたいなガッチリした本体

今回試聴用にお預かりしたデモ機(試作機)は、グレーとブルーの2色あるうちのブルー。現物は広報写真より濃い目のブルーグレーで、かなり落ち着いたカラーなのでインテリアにもなじみやすそう。手にした印象は意外にガッチリしっかりしており、“立派な文鎮”という感じ。

充電器は付属のドックの上に置くQi無線方式でUSBケーブルをつながなくてもよいのは便利です。

デザインは左右対称で、真ん中の三重丸(マルチファンクションボタン)5秒長押しで電源ONとなりブルーのLEDが点灯。再び5秒長押しでOFFになります。電源ONしてLEDが点滅しているときがペアリングのチャンス。ソース側(スマホなど)で本機を選び、「ピッ」という音でリンク完了。青のLEDが点灯します。

「AX-FL10」はIPX5の防水機能を備えたステレオスピーカー。アンプの最大出力は4.5W×2、連続再生時間は約6時間

「AX-FL10」はIPX5の防水機能を備えたステレオスピーカー。アンプの最大出力は4.5W×2、連続再生時間は約6時間

充電中は充電器がブルーに点灯

充電中は充電器がブルーに点灯

右下のオレンジのLEDでバッテリーの状態を表示。4つ点灯でフル充電

右下のオレンジのLEDでバッテリーの状態を表示。4つ点灯でフル充電

シンプルで直感的に使えるインターフェイス

使い方はきわめてシンプル。ペアリングさえできてしまえば、あとはカセットテープやCDを聴くような感覚で使えます。真ん中の「マルチファンクションボタン」1回押しで再生(青LED点灯)、もう一度押せば一時停止(青LED点滅)。右側にある「<」「>」で曲の戻し/送り、左側にある「ー」「+」で音量を調整できます。

なお、スマートフォンなどが接続されているときに中央三重丸の「マルチファンクションボタン」を押すと、通話も可能です。

音量調整や曲送りなどは本体中央のボタンで手軽に行えます

音量調整や曲送りなどは本体中央のボタンで手軽に行えます

マイク内蔵Bluetoothスピーカーとして、オンライン会議にも使えます。Zoomでテストしたところ、音声はクリアで、音量も十分(※試用した個体は試作機のため、デバイスの表記が「AUREX」ですが、製品では「AX-FL10」と表示されます)

マイク内蔵Bluetoothスピーカーとして、オンライン会議にも使えます。Zoomでテストしたところ、音声はクリアで、音量も十分(※試用した個体は試作機のため、デバイスの表記が「AUREX」ですが、製品では「AX-FL10」と表示されます)

振動板を“自分で選ぶ”普通じゃないスピーカー

ところで、このスピーカー、ちょっと普通のスピーカーとは違うのです。そこから説明しないといけません。

そもそも「音」とは、物体の振動が空気の波を起こし、やがて鼓膜に届くことによって知覚されるものです。一般的な(ダイナミック型の)スピーカーは、すり鉢状の振動板が空気を直接動かし、人に「音」として知覚させます。

それに対し、「AX-FL10」は、本体背面に接触する壁などの素材を振動させ、その振動を「音」として人に認識させます。言ってみれば、「壁などの素材」が、一般的なスピーカーで言うところの振動板の役割をしているのです。

手に持ったままでも音は出ますが、手はむしろ振動を吸収してしまうので音量は小さく、期待する効果は得られません。逆に、「寄生先」としてふさわしい振動板探しが“イイ音探し”の旅であり、この製品を使う面白さでもあります。

「AX-FL10」を壁などの平らな面に設置すると、その面がそのまま振動板になります。通常のスピーカーよりも拡散が少なく、お風呂場でエコーがかかりすぎない効果を期待できるそうです

「AX-FL10」を壁などの平らな面に設置すると、その面がそのまま振動板になります。通常のスピーカーよりも拡散が少なく、お風呂場でエコーがかかりすぎない効果を期待できるそうです

そういった事情から、密着面がしっかり平面性を保つこと、そこに本体がピッタリくっつくことが前提条件となります。密着面が平面でなかったり、スピーカーとの間にすきまがあったりすると、音量を上げたときに、ドラムやベースのような低音でビビり音が出ます。ちょうどバイブにした携帯電話が着信時にブーンブーン唸るような状態です。

もっともそこは心配ご無用。付属の「貼り付け専用シート」を貼り、これを介して本体を密着させれば、あら不思議、その平面素材がきちんとスピーカーとして機能します。

今回は写真の「貼り付け専用シート」を使ってさまざまな場所でのパフォーマンスを試してみました

今回は写真の「貼り付け専用シート」を使ってさまざまな場所でのパフォーマンスを試してみました

このシートを介することで、いろいろな場所に密着できます。ただし、貼ったりはがしたりを繰り返すと粘着力が弱くなると注意書きがありました。基本的には場所を決めて使う前提だと考えたほうがよさそうです

このシートを介することで、いろいろな場所に密着できます。ただし、貼ったりはがしたりを繰り返すと粘着力が弱くなると注意書きがありました。基本的には場所を決めて使う前提だと考えたほうがよさそうです

お風呂以外でも役立つまじめな音質

しっかりした机の天板は相性良好です

しっかりした机の天板は相性良好です

まずはまじめに素性をチェックしてみます。「MacBook Air」(M2 2022)とBluetoothでペアリングして再生します。

元東京JAZZプロデューサー八島敦子のジャズレーベルEight Islands Recordsのチック・コリアトリビュートアルバム「Spirit of Chick Corea」を音楽再生ソフトAudirvanaで再生します。ミカ・ストルツマンの淡々と響くマリンバ、スティーヴ・ガッドのシンバルのほか、クラリネットの鮮烈な叫びや、割って入るウッドベースの重厚な響きが聴きどころです。

始めに机を振動板にしてみました。天板が30mmほどある「北海道民芸家具」なのですが、本体のみを無造作に直置きして音量を上げると、ウッドベースがビビります。しかし「貼り付け専用シート」を使って密着させると、なかなかよいバランスで、ウッドベースの音階まで明瞭。なるほど、木の板は相性がよさそうです。

次に、15.6インチ有機ELモニターの画面に貼ってみます。「貼り付け専用シート」を介して貼ると、今度はガラス素材らしい音。ソニーの有機ELテレビに搭載されている画面を振動板化した「アコースティック サーフェス オーディオプラス」や、グラスサウンドスピーカー「LSPX-S3」のように、ちょっと高域に煌びやかなアクセントがあります。

いわゆる360度スピーカーのようなバーチャル感・拡散して薄まるサウンドとは一線を画し、クリアに、面でビーム状に音を放射して迫ってくる鳴り方です。

一般的なペアガラス窓に貼ってみましたが、これはビビり放題。位置によって共振ポイントが大きく変わるのがよくわかります

一般的なペアガラス窓に貼ってみましたが、これはビビり放題。位置によって共振ポイントが大きく変わるのがよくわかります

木製防音ドアはなかなかカッチリして良好な音色

木製防音ドアはなかなかカッチリして良好な音色

カラーボックスなど、中身が空洞の収納家具はボワンボワンと音が響いてしまいNG

カラーボックスなど、中身が空洞の収納家具はボワンボワンと音が響いてしまいNG

振動板にする素材によって面白いほど音が違う

ほうほう、これはなかなか面白い。では本製品の狙いに沿って、次は「iPhone 12」とペアリングして、いろいろな場所を振動板化して再生してみましょう。

そもそも本製品はマグネットキャッチ。そこで冷蔵庫に貼ってみます。がっちり扉にくっつきましたが、若干すきまができるのかややビビります。「貼り付け専用シート」を貼ってやるとよい塩梅になるので、常にこれを介したほうがよさそうです。

100円ショップなどでもマグネットキャッチできるシートやシールが売られていますが、適度な厚みとクッション性があるこの「貼り付け専用シート」にチューニングの秘密がありそうです。さらにいろいろ試してみましたので、以下を参考にどうぞ。

密着させる“振動板”は、面積が大きいと音量が出る傾向です。貼る位置は真ん中付近でビビりが出ないポイントを探るとよいでしょう

冷蔵庫は設置しやすいのですが、少しビビります

冷蔵庫は設置しやすいのですが、少しビビります

意外とよかったのは、石こうボード壁の中央ちょっと上。適度に音が膨らみます

意外とよかったのは、石こうボード壁の中央ちょっと上。適度に音が膨らみます

70mm厚の無垢板のダイニングテーブルに。このウッドベースはいい味出していました。ただし、テーブルの真ん中あたりに置くと共振が少ないのか、音量も音像も小さくまとまってしまいます

70mm厚の無垢板のダイニングテーブルに。このウッドベースはいい味出していました。ただし、テーブルの真ん中あたりに置くと共振が少ないのか、音量も音像も小さくまとまってしまいます

お風呂でもクリアな音で聴きやすい!

そしていよいよお風呂での再生にチャレンジ。拙宅のユニットバスの壁に密着させてみます。「貼り付け専用シート」を介するとビビりもありません

いろいろ聴きましたが、Alison Balsomの教会サウンド「JUBILO〜FASCH,CORELLI,TORELLI & BACH」の高らかに鳴るトランペットのホール感、バッハの前奏曲とフーガ ロ短調 BWV 544のような荘厳なオルガンも、確かに反響しすぎずここちよい。ピアノはユジャ・ワン、坂本龍一、べレゾフスキイなどいろいろ聴きましたが、繊細なピアノソロよりはオーケストラと一体になった荘厳な作品がよさそうです。

触れ込みどおりで音にエコーがかかった感じがなく、貼った壁全体が振動してこちら向きに迫ってくる感じなので、結構クリアで音量も上がります。一般的な防水Bluetoothスピーカーをお風呂に持ち込むとエコーがかかりすぎるものですが、「AX-FL10」はエコーが少なくて聴きやすいと感じました。

ポップスやロックのようなメリハリのある曲も得意ですし、YouTubeなど見始めたら長風呂になりそう。最近のスマートフォンは防水仕様が多いので、「AX-FL10」とあわせて持ち込めば、ゆったりお風呂タイムを楽しめます。

お風呂で楽しむのにぴったりだと思ったのは、岡田晴夫さんらが世界各地を旅した音を収録した「Sound Bum」。CDをリッピングしておくのもよいのですが、iPhoneアプリ「Global Sounds」なら、同音源を世界地図から選んで聴けるので、まるで旅先の露天風呂に入浴しているよう。すごく雰囲気があります

お風呂で楽しむのにぴったりだと思ったのは、岡田晴夫さんらが世界各地を旅した音を収録した「Sound Bum」。CDをリッピングしておくのもよいのですが、iPhoneアプリ「Global Sounds」なら、同音源を世界地図から選んで聴けるので、まるで旅先の露天風呂に入浴しているよう。すごく雰囲気があります

もちろん、YouTubeなどの再生にもぴったりです

もちろん、YouTubeなどの再生にもぴったりです

まとめ:きちんとした技術的裏付けが感じられる面白いスピーカー

密着させた素材を何でも振動板に変えてしまう、不思議なスピーカー「AX-FL10」。1kHzとさらに上あたりにちょっとアクセントがあり、接触する素材や位置によっては若干クセが出るものの、少なくとも50Hzぐらいから10kHzぐらいまでは平気で振動している様子で、全体の帯域バランスも良好でした。

総合的に見て、決して色物ではなく、平面スピーカー駆動のきちんとした技術とノウハウの裏付けがあるように感じられました。

予想した以上に音がクリアで音量も出るので、単なるお風呂スピーカーだけでなく、展示会のようなオープンスペース、スピーカーの置き場所が取りづらい場合などにも使えるのではないでしょうか

【付録】再び、考察

「AX-FL10」は使ってみると奥が深く、どんな仕組みになっているのか興味がわいてきたので最後にちょっと考察してみます。

「AX-FL10」は、本体背面中央を充電器の上に置いてQiワイヤレス充電するようになっています

「AX-FL10」は、本体背面中央を充電器の上に置いてQiワイヤレス充電するようになっています

本体裏側。中央がQi接点。裏側を触ると左右に丸い堅いモノを感じます。これらがそれぞれ、左チャンネル、右チャンネルを再生しているアクチュエーター(振動子)のようです。充電器の上に載せたまま(アクチュエーターと思しき部分を浮かせたまま)再生してみると、ビビりも出ず小さい音量で鳴るので間違いなさそう

本体裏側。中央がQi接点。裏側を触ると左右に丸い堅いモノを感じます。これらがそれぞれ、左チャンネル、右チャンネルを再生しているアクチュエーター(振動子)のようです。充電器の上に載せたまま(アクチュエーターと思しき部分を浮かせたまま)再生してみると、ビビりも出ず小さい音量で鳴るので間違いなさそう

本体も壁(振動板とする部分)も基本的にはL/Rch一体なので、再生音のL/Rの分離(ディスクリート感)は控えめですが、意外と位相はハッキリしていて、逆相の場合は拡がって聴こえるように響きの違いがしっかりと出ます。

あちこちの壁で試してみると、500Hzあたりは本体自体がわずかに共振しているようで、密着する素材次第では100Hz前後と300〜400Hzあたりがビビりやすいようでした。

最近流行の、周囲に拡散して反響したような聴こえ方を演出する方法とは異なり、正面にこちら向きにスピーカーが備わっているかのように、面でビーム状に迫ってくる印象です。平面スピーカーの特徴が表れていますし、いろいろな素材に密着さられますから、購入した際はひとつの場所に限らず設置場所を検討してみるとよいでしょう。

遠藤義人
Writer
遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。
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柿沼良輔(編集部)
Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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