選び方・特集

音も機能も充実した中級機が狙い目! 5万円前後の注目ハイレゾプレーヤー5選

一部のオーディオファンだけでなく、一般の音楽ファンの間でもブームが高まっている“ハイレゾ”。配信されるハイレゾ音源も、一昔前に比べるとかなり増えてきている。そんなハイレゾブームを背景に、ハイレゾ音源をポータブルでも楽しめるハイレゾ対応DAP(デジタルオーディオプレーヤー)も近年かなり充実してきている。そのなかでも特にアツいのが、5万円前後の価格帯の製品だ。各社がしのぎを削っている激戦区の価格帯でもあり、価格と音質のバランスにすぐれた完成度の高い製品が非常に多くラインアップされている。本特集では、そんな5万円前後のハイレゾ対応DAPの中から、この冬特に注目したい5モデルを厳選ピックアップして紹介する。機種ごとの音質傾向もあわせて掲載しているので、ハイレゾ対応DAPの購入を検討している人はぜひチェックしてほしい。



目次
・【注目機種1】iriver「Astell&Kern AK70」
・【注目機種2】iBasso Audio「DX80」
・【注目機種3】INFOMEDIA「Lotoo PAW 5000」
・【注目機種4】パイオニア「XDP-300R」
・【番外編】ソニー「ウォークマン NW-A30」シリーズ

AKシリーズのサウンドを身近に楽しめる1台! iriver「Astell&Kern AK70」

ハイレゾ対応DAPブームという一大ムーブメントを起こしたiriverの「Astell&Kern」ブランド。2012年発売の「AK100」からスタートし、近年は(特にフラッグシップモデルが)高価格帯にシフトする傾向もあったが、その原点ともいうべきスタンダードクラスがリニューアルされた。それがこの「AK70」だ。

Astell&Kern AK70

Astell&Kern AK70

ラインアップ中最軽量となる小柄なボディは、AK300シリーズと同じ方向性を持つスタイリッシュなデザインがあしらわれており、カラーもメタリック調のペパーミントグリーンを採用するなど、個性的、かつ質感の高さを強く意識した作りとなっている。

音質の要となるDACには、シーラスロジック製「CS4398」を採用。また「AK240」への搭載以降、バランス・ヘッドホン出力のメインストリームのひとつとなっている2.5mm4極端子を搭載。さらに、WiFiとBluetoothを搭載。WiFiによってNASやPC内の楽曲を再生できるほか、Bluetoothは最新の高音質伝送規格である「aptX HD」にも対応するなど、多彩な機能を搭載している。また、USB AUDIOデジタル出力をサポートしており、外部DACを接続することで384kHz/32bitまでのリニアPCM、5.6MHzまでのDSD音源をネイティブ再生することもできる(ちなみにヘッドホン出力時のネイティブ再生は192kHz/24bitまで)。

コンパクトさと多機能さの両立が見事なAK70だが、そのサウンドもなかなかのレベル。特にバランス・ヘッドホン出力のほうは、十分な解像感を確保しつつ、丁寧な抑揚表現をも持ち合わせることで、アコースティック楽器の音色をリアルに再現してくれる。ボーカルは、男性/女性ともに自然な音色傾向を基調としつつも、普段よりもハキハキした、活気ある歌声を楽しませてくれる。いっぽう、低域のフォーカス感の高さも秀逸で、ドラムやベースの音がよく耳に届いてくる。正直な話、上位モデルよりもこちらの音のほうが好み、という人も少なからずいることだろう。スタイルも含め、完成度の高い製品だ。

■主な仕様
リニアPCM:最大192kHz/24bit
DSD:最大5.6MHz
内蔵メモリー:64GB
外部メモリー:microSDカードスロット×1(最大128GB)
連続再生時間:約10時間(FLAC 96kHz/24bit時)
本体サイズ:60.3(幅)×96.8(高さ)×13(奥行)mm
重量:約132g

DSD 5.6MHzのネイティブ再生にも対応したコンパクトな1台! iBasso Audio「DX80」

ウォークマンやAstell&Kernがハイレゾ対応DAPを広く普及させた存在であるのに対して、屋外でも手軽にハイレゾ音源を楽しるという世界観そのものを作り上げたのが、中国のヘッドホンアンプメーカーであるiBasso Audioだ。同社初のハイレゾ対応DAP「HDP-R10」は、やや大柄なボディサイズながらも6.3mmヘッドホン出力端子を搭載するなど、ヘッドホンアンプを得意とするメーカーならではのこだわりが盛り込まれていたことから、当時、大いに注目された製品となった。そんなiBasso Audioの最新モデルが、この「DX80」だ。

iBasso Audio DX80

iBasso Audio DX80

直線基調のアルミ製ボディは、DX80から初めて採用されたスタイルだが、ブラック基調のカラーやタッチパネル+大型ハードスイッチは、先にラインアップされた「DX90」の流れをくむもの。幅を63mmとすることで、ずいぶんと持ちやすい印象に変わった。とはいえ、機能美を優先したかのようなメカニカル感を強調したかのような無骨さと洗練さが掛け合わされたデザインは、iBasso Audioならではのセンスといえる。

いっぽう、メニュー体系はやや個性的で、慣れるまでに多少の時間がかかりそう。とはいえ、DX80最大のアドバンテージといえばやはり音質に対するこだわり。この価格としては異例といえるLR独立のデュアルDAC構成(DACチップはシーラスロジック「CS4398」)を採用するほか、クロックも抜群の安定度を誇るというSiTime社のMEMS発信機(水晶を使用しないシリコンベースのクロック)を2基搭載。これで5万円を切る価格帯を維持しているのは驚きだ。また、5.6MHzまでのDSD音源をネイティブ再生できることも、この価格帯のモデルとしては貴重な存在となっている。

はたしてそのサウンドはというと、ゴリッとした低域とダイレクト感の高い中高域により、メリハリに富んだマッチョなサウンドが楽しめる。おかげで、ハードロックなどとは抜群の相性を示し、グルーブ感の高いノリノリの演奏を堪能することができる。また、オペアンプ等の型番は公表されていないようだが、iBassoならではのこだわりが投入されているのだろう。イヤホンとの相性問題をほとんど感じず、比較的鳴りにくい高級イヤホン/ヘッドホンなどもしっかり実力を引き出してくれる。なかなかの実力派だ。

■主な仕様
リニアPCM:最大192kHz/24bit
DSD:最大5.6MHz
内蔵メモリー:なし
外部メモリー:microSDカードスロット×2
連続再生時間:約13時間
本体サイズ:63(幅)×120(高さ)×17(奥行)mm
重量:約178g

「PAW GOLD」の流れをくむコンパクトな本格派! INFOMEDIA「Lotoo PAW 5000」

Nagra製品の中国生産拠点としての役割も担っているオーディオ機器メーカー、Infomedia社がリリースするオリジナルブランドのハイレゾ対応DAP。先に登場した「PAW GOLD」がハイエンドモデルであったのに対して、この「PAW 5000」はスタンダードモデルに位置しており、スポーツなどのカジュアルユースにも配慮した製品に仕上げられている。

Lotoo PAW 5000

Lotoo PAW 5000

その外観は(ハイレゾ対応DAPのなかでは)かなりの個性派。同社製ポータブルレコーダーと基本コンセプトを共有するためか、操作はジョグダイヤルを含むハードウェアキーで行うようになっている。また、ディスプレイのインフォメーションも必要十分な内容といったイメージで、ID3タグ表示などは行われない。対応するハイレゾフォーマットも、96kHz/24bitまでのリニアPCM系と2.8MHzまでのDSD(こちらはリニアPCM変換再生)となり、ハイスペックさを追うことなくあくまでも必要十分なレベルを確保している、といった印象だ。

いっぽうで、出力に関してはかなり豊富な内容を持つ。ヘッドホン出力は一般的な3.5mm端子のほか、2.5mm4極バランス端子も用意。Bluetoothによるワイヤレス接続や、光デジタル出力も搭載されている。音質にこだわりたい人からBluetoothヘッドホンでカジュアルに楽しみたい人まで、幅広く対応する作りとなっている。また、ボディサイズのコンパクトさも嬉しいところだ。

欧州で圧倒的な人気のポータブルレコーダー「NAGRA SD」のDACチップを踏襲したというサウンドは、なかなかのレベル。ノイズ感のない、端正かつ丁寧なサウンドで、心地よい演奏を存分に楽しませてくれる。そのため、アコースティックな楽器との相性がよく、ヴァイオリンの演奏などはボーイングの力加減やボディの響きの違いなどがリアルに伝わってくる。思わず音楽の世界に没頭してしまう、良質なサウンドだ。

■主な仕様
リニアPCM:最大96kHz/24bit
DSD:最大2.8MHz(リニアPCM変換)
内蔵メモリー:なし
外部メモリー:microSDカードスロット×2(最大2TB)
連続再生時間:約10時間
本体サイズ:55(幅)×98(高さ)×17.5(奥行)mm
重量:約110g

人気の国産プレーヤーがデュアルDAC仕様にバージョンアップ! パイオニア「XDP-300R」

しばらくウォークマン1強だった国産DAPの世界に、2015年、新ブランドが参入した。オンキヨーとパイオニア、2つのブランドから同時発売された新型DAPは、Android OS採用によるスマートフォンと違和感のない操作性や、高品位DACや独立したオーディオ回路設計、さまざまなデジタル音響調整機能など、使い勝手のよさとマニアックなまでの音質追求の両立によって初心者からマニアまで幅広い層の好評を得て、瞬く間に人気モデルとなった。そして2016年、発売わずか1年で早くもモデルチェンジを迎えることとなったのが、パイオニア「XDP-300R」だ。

パイオニア XDP-300R

パイオニア XDP-300R

先代となる「XDP-100R」に対して、基本的な部分は踏襲しているものの、外観ではカラーリングの変更やバンパーの省略などが行われた。そのいっぽうで、音質に関してはかなりのグレードアップが施されている。ESS社製「ES9012K2M」DACは2基搭載となり、2.5mmバランス端子も新設。これまでオンキヨー版のみだったバランス・ヘッドホン出力に対応することとなった。そのほか、「e-onkyo music」からハイレゾ音源を直接ダウンロードが可能なことや、MQAフォーマットへの対応など、ソフトウェア面でもさまざまなメリットを有している点はXDP-300Rならではのアドバンテージといえるだろう。ハード面では、microSDカードスロットが2基用意されていることも見逃せないポイントだ。

基本的には、先代のオンキヨー「DP-X1」とほぼ同じ仕様になったといえる「XDP-300R」だが、外観だけでなく、サウンドキャラクターも大いに異なっているのが興味深いところ。端的にいえば、フォーカス感が高くパワフルなサウンドといった印象で、ハードロックやジャズなどは、ずいぶんとグルーブ感の高い演奏を聴かせてくれる。また、J-POPとの相性もよく、普段よりボーカルがダイレクトな印象で、しっかりとしたメリハリをも感じる。とはいっても、決して勢い一辺倒というわけではなく、細かい抑揚のニュアンスもしっかり拾い上げてくれるため、幅広いジャンルの音楽を楽しむことができる。ちなみに、デジタル設定は好み次第ではあるが、個人的には、ロックレンジアジャストはNarrowの−1、バランス出力はACGがオススメだ。

■主な仕様
リニアPCM:最大192kHz/24bit
DSD:最大11.2MHz(リニアPCM変換)
内蔵メモリー:32GB
外部メモリー:microSDカードスロット×2(最大200GB×2)
連続再生時間:約16時間(FLAC 96kHz/24bit、アンバランス再生時)
本体サイズ:75.9(幅)×128.9(高さ)×12.7(奥行)mm
重量:約200g

【番外編】2万円台前半から購入できる高コスパモデル! ソニー「ウォークマンNW-A30」シリーズ

本特集でこれまで取り上げてきた5万円前後のハイレゾDAPというくくりからは外れてしまうが、最後にもうひとつ。この冬発売のハイレゾ対応DAPでも特に注目度の高いソニー「ウォークマンNW-A30」シリーズを紹介したい。

ウォークマンNW-A30シリーズ

ウォークマンNW-A30シリーズ

気軽にどこでもハイレゾ音源を楽しめるハイレゾ対応DAPのエントリーモデルとして人気の高いウォークマンAシリーズ。先代のNW-A20シリーズも人気の高いモデルだったが、この冬発売のNW-A30シリーズは、ボディデザインを一新。先行して発表されていたウォークマン最上位シリーズ同様、サイドに丸みを帯びたデザインに生まれ変わった。また、ディスプレイが大型化し、タッチパネルとなったのもポイント。メニュー画面のデザインも変わり、より直感的に操作できるようになっている。

本体のカラーバリエーションは5色を用意。メモリー容量は16GB、32GB、64GBの3タイプがラインアップされているが、microSDカードスロットが1基用意されているため、内蔵メモリー容量をそれほど気にする必要はないかもしれない。いっぽうで、Bluetoothは、ソニー独自の高音質コーデック「LDAC」に対応。ワイヤレスでありながらも高音質なサウンドを楽しむことができるようになっている。

16GBモデルで2万円強というハイコストパフォーマンスな製品ながら、音質的な実力は侮れない。この記事で紹介した製品とは比べるべくもないが、下手な5万円クラスであれば充分に勝負できる高い実力を持ち合わせているのだ。音色傾向は、メリハリのしっかりした明瞭なサウンドを基調としつつ、細かい表現までしっかりと拾い上げてくれる素性のよさも兼ね備えている。もっとも向いているのはSME系のJ-POP、という基本的な方向性は変わりないものの、アコースティックな楽器もずいぶんリアルに感じられるようになった。まずは単体で楽しみ、のちのちDAC内蔵ポタアン(ポータブルヘッドホンアンプ)とデジタル接続してさらなる高音質を求めるというのも楽しそうだ。

■主な仕様
リニアPCM:最大192kHz/32bit
DSD:最大11.2MHz(リニアPCM変換)
内蔵メモリー:16GB/32GB/64GB
外部メモリー:microSDカードスロット(最大128GB)
連続再生時間:約33時間(FLAC 96kHz/24bit、デジタルノイズキャンセリング機能 ON時)
本体サイズ:54.8(幅)×97.3(高さ)×10.7(奥行)mm
重量:約98g

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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