彼女がいない僕にとって、クリスマスといえば毎年苦痛のイベントだった。しかしそんな僕でも、最近クリスマスが待ち遠しく思えるようになった。なぜかというと、兄の子が生まれるから! 甥っ子ができるのは初めてなので今から何をあげようかとワクワクしている。もう楽しみで仕方がない。
僕というサンタさんからプレゼントをもらって喜ぶ様子が目に浮かぶ(写真はイメージです)
しかし、いざクリスマスプレゼントを考えるとなると結構難しい。最近の子って何を欲しがるんだろう? 家庭によっても違うだろうけど、僕が子供だった頃とはかなり変わってきてるんじゃないだろうか?
ということで、幼稚園や小学生のお子さんを持つお父さんやお母さんに直接会って話を聞いてみることにした。やっぱりこういうのは当事者に聞いてみるのが早い(まだ甥っ子は生まれてもいないのに気が早いかもしれないが、かなり浮かれていることをわかってほしい)。
今回は5歳と2歳の娘2人を持つ夫婦と、小学3年生の息子を持つ方に話を聞かせてもらった。質問は主に以下の3つ。
また、2組に直接話を聞いたほか、さまざまなお父さんお母さんにアンケートを採って意見を聞いてみた。やっぱり各家庭でそれぞれ特色があっておもしろいし、何よりも幸せそうな感じがアンケートから伝わってきて、うらやましさのあまり奥歯をぐっとかみしめた。ああ、もう彼女を通り越して子供だけ欲しい…。
1組目は、埼玉県の三郷市に住む5歳と2歳の女の子を持つシイノキ夫婦に話を聞いた。シイノキさん(写真右)はwebデザイナーをやっており、みさとぴ(http://www.misatopi.com/ )という三郷市を紹介するサイトを夫婦で運営している。余談だけど、奥さんのみさこさん(写真左)はグイグイ来るコミュニケーション力の鬼だった。
みさこ
「本人に直接聞いちゃうよね。そこで聞いた本当に欲しいものはサンタさんからあげるようにして、私たちからあげるのは、自分たちが子供にあげたいものとかにしてるかなー!」
シイノキ
「2歳の次女もカタログ見ながら指さして『これ! これ!』って言ったりしてるよね。興味を示しているのはディズニーのクリスマスツリーだったり、おままごとセットだったりするかな」
子供の夢を壊さないように、「本当に欲しいものはサンタさんからあげる」というのは、小さいお子さんがいる親ならではの考え方かもしれない。僕の家もそうだったが、プレゼントはサンタからと親からで分けているようだ。
さらに「5歳の長女が小学生にあがるからキャラものが恥ずかしくなったのか、プリキュアとかじゃなくて文房具とか学習セットを欲しがるようになったよね」という話を聞いて、子供の成長は早いなーと思った。特に女の子はそういう思春期の恥ずかしさには敏感なのだろうなと思った。
ちなみに、シイノキ家が今年親としてプレゼントするのは、DIYで作ったキッチンとのこと(すごい)。今まであげたおもちゃなどもそこに整理整頓できるようにかなり大きいものを作るらしい。
「子供にはあげたいものをあげる」と言っていたが、これはクオリティが高すぎる…! 僕が甥っ子にあげられるものは何だろう…。
みさこ
「去年まではプリキュアシリーズのものをあげてたよね。プリキュアはクリスマスシーズンに合わせてグッズもすごい出るから子供も欲しがるし」
シイノキ
「最近はずっとプリキュアだったなー。ただプリキュアって1月にシリーズが終わって、2月にまた新シリーズが始まるから買ってもすぐに遊ばなくなるんだよね。毎年新しいプリキュアのグッズを買うことになる。そのあたりは売り方がうまいなーと思うよ(笑)」
やはり昔と変わらずキャラものは人気があるようだ。というか20代後半の僕が小学生のときからプリキュアは放送しているけどいまも人気あるんだな…! プリキュアすげぇ。
こちらは2016年放映の「魔法つかいプリキュア!」で登場した「リンクルスマホン」のおもちゃ
プリキュアシリーズでは、アニメに登場するアイテムがおもちゃとして発売される。去年は「リンクルスマホン」というスマートフォン型のおもちゃが出たのも世相を表していておもしろい。実際に見せてもらったところ、画面もキレイで今のおもちゃのレベルの高さを思い知った。
こちらはリンクルスマホンをパワーアップさせるリンクルストーンというアイテム
そしてすごいのが、別売りのリンクルストーンというアイテムを買うとゲームがどんどんとバワーアップしていくこと。しかもこれがカプセルトイやお菓子のオマケなどさまざまな形で発売されるので、買っても買ってもキリがないとのこと。シイノキさんは「カプセルトイで発売されたときは、子供が欲しいものが出るまで回し続けて6千円くらい使ったよ…」と嘆いていた。スマホゲームに課金する大人の世界と同じである。
結局、シイノキさんの家ではリンクルストーンなどの付属のアイテムのために3万円以上はお金をかけたらしい。カプセルトイなんて完全にランダムだから、お金かかるなぁ…!
リンクルストーンはこちらのモフルンというキャラクターのぬいぐるみをしゃべるようにすることもできる
シイノキ
「しかもこのおもちゃのゲームの内容が学習用にもなっているから、子供に勉強のためと言われたら買わざるを得ないんだよね」
みさこ
「毎年プリキュアグッズがどんどんとたまっていって家の中おもちゃだらけ!」
ゲームがパワーアップするだけでなく、リンクルストーン自体がコレクター心理をうまくついている戦略的な売り方だ…。僕が子供の頃のおもちゃといえば、買ったら終わりのものが当たり前だったけど、今はむしろ買ってもらってからが勝負になっているみたいだ。最近のおもちゃって、商品だけじゃなくてアニメと連動してたりして、子供が欲しがるような工夫がすごいんだな…!
みさこ
「子供が変わったというよりかはネットが楽に使えるようになったから、親が楽になったというのはあるよね。たとえば【知育玩具 ◯歳】とか【クリスマスプレゼント 女の子】で検索すれば簡単に見つかるし。注文も簡単だし」
シイノキ
「ただ、実物を見ると『これじゃない』って急に言うことが子供はあるから、やっぱり1回おもちゃ屋に行って反応を見るようにはしてるかな。実際に行ってみるとほかのおもちゃのほうが反応よかったりする場合があるんだよね」
みさこ
「ネットで調べて、見に行って、最終的にネットで買うってパターンを今やっている親は多いかもね」
値段を比べる際は価格.comも使用しているとのこと
確かに小さいときはおもちゃ屋さんに行ってプレゼントを買いに行っていたが、今はAmazonなどもあるし直接行かなくても楽におもちゃを買うことができる。そういえば小さい頃に行っていたおもちゃ屋って結構つぶれているもんな。切ない。
みさこさんから「あとクリスマスは関係ないけど、テレビ画面とかガラケーをスマホみたいにスワイプしたりしているのを見ると、今の子だなーって思うよね(笑)」ということを聞き、リアルなデジタルネイティブ世代というのを目の当たりにした。もう自分たちとはまったく違う世代なんだな…。
次は小学3年生の息子がいる田中さん(仮名)に話を聞いた。普段はSEとして新宿で働いており、息子さんとはよく一緒にゲームで遊んでいるという話だ。少し前に息子さんがサッカークラブに通い始めて土日が寂しくなったと嘆いていた。
田中さん
「今年は例外的にNintendo Switch(以下switch)が欲しいってハッキリ言われたんで早めに買いましたけど、いつもはクリスマス近くなるとヤマダ電機などのおもちゃコーナーに寄って様子を見ていました。様子を見るというか、行くと『あれが欲しい』『これが欲しい』と勝手に駄々をこねるので割とわかりやすかったですね。ただ難しいのは、数日たつと欲しいものが変わっていたりするので、やっぱりプレゼントをあげるまではわからないんですよね…」
先ほどのシイノキ夫妻は欲しいものは直接聞くというタイプだったが、田中さんの場合は家族で出かけて、子供にバレないようにリサーチするようだ。サンタさんからのプレゼントも親からのプレゼントは両方とも、おもちゃコーナーに行ったときの反応で決めているらしい。
最近はおもちゃコーナーに行くと、もっぱらゲームを見るそう
さらにおもしろいと思ったのがプレゼントの渡し方。自分たちのプレゼントもサンタからのプレゼントも両方一緒のタイミングに渡すとのことだ。子供が朝起きて枕元のプレゼントを発見したら、同時に自分たちからのプレゼントも渡すようにしている。そうすればどっちかが外れでも片方が当たりなら機嫌を損ねることがなくて楽だということだった。
確かに、プレゼントもらって「これかよ…」って思った瞬間ってめちゃくちゃテンション下がるし子供の機嫌ってなかなか戻らないからね。僕が小学生のときに「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」の上巻を2冊もらったときはさすがにブチ切れたのを思い出した。
田中さん
「幼稚園までは戦隊モノとか仮面ライダーとか…、あとプラレールもよく買っていましたね。小学2年生に上がってからは欲しいものが完全にゲームになりました。周りにゲームを持っている子が多くなったり、YouTubeでゲームの実況動画を見たりしている影響が大きい気がします。僕はゲームが好きで嫁がゲーム反対派なので、去年のクリスマスは結構言い合いになりましたね…(笑)」
やはり同級生の影響はかなり大きいようだが、YouTubeを見ていることにも驚き。今年はswitchが発売されたことにより、「〇〇くんがswitch持っているから欲しい!」とせがまれるようになったそうだ。
田中さん
「ただ今年のクリスマスにswitchをプレゼントしようと思ったら絶対に争奪戦になると思ったので、夏頃からずっと探していました。それでようやく買えて、ものすごく早いですけど11月の始め頃にクリスマスプレゼントとしてあげました。なんでそんなに早いのかというと、本当は僕がやりたくて我慢できなかったんですよね(笑)」
親も念願だったswitch
奥さんにはswitchを購入するのも最初は反対されていたが、あまりにも息子さんが欲しがるので結局は買ってあげることにした。何よりも「〇〇くんも〇〇くんも持っている!!」と散々言われたらしい。
今のゲームはネットで通信対戦ができるので、家にゲームがないと一緒にゲームができないということだった。みんなで集まって通信ケーブルでつないでた時代とは全然違うんだな…。
やっぱり男の子の場合は年齢が上がるにつれて、父親と一緒に遊べることが増えてくるのでかなり楽しいようだ。最近はスプラトゥーンに息子さんと2人してかなりハマっているらしい。今までは奥さんに負い目を感じながらゲームをやっていたが、今は「息子と一緒に遊ぶ」ということで大手を振ってゲームができるようになったと喜んでいた。田中さんは直接口にはしていないけれど、会話の端々から奥さんが鬼嫁みたいなイメージを感じるなぁ。
田中さん
「クリスマスプレゼントに限らずなんですけど、小学校にあがってYouTubeを見るようになってから、そこで紹介されているものを欲しがるときもありますね。やっぱり小学校ではYouTuberがすごい人気あるらしく、同級生でもその話題でもちきりみたいなんですよね。YouTubeを見てものを欲しがるのは今の子だなーって思うときもあるんですけど、テレビがYouTubeに置き換わっただけなので、結果としては変わってないなーとも思います」
「YouTubeを見てものを欲しがる」=「テレビを見てものを欲しがる」というのは、確かに本質的には変わっていない。いわれてみれば媒体が変わっただけで、やっていることは同じだからね。
テレビでYouTubeの映像などを検索して見ることができる
田中さんの家ではテレビにYouTubeのアプリが付いているらしく、晩御飯のときもテレビ番組ではなくYouTubeを見るとのこと。今の子がテレビを見る時代ではなくなってきているんだなーと感じられる話だ。
直接聞く以外にもいろいろな話を聞いてみたいと思い、アンケートも採ってみることにした。各家庭によっていろいろと差があっておもしろいけど、文章を読むだけで幸せそうな雰囲気が伝わってきて、独り身の自分としては読んでいて胃が痛くなる思いだった。
・小さい頃はなんとなく喜びそうなものを。大きくなって具体的に言えるようになったら、欲しいと言ったものをあげてます。あくまでサンタからのプレゼントという体裁は守っています。
・欲しいプレゼントをサンタさんへの手紙に書いてもらう。
・子供と話しながら何を欲しがってるか探る。
・欲しがるものをあげる(サンタさんから)。
・1〜4歳のとき、ブリオという木製の汽車やレールのおもちゃや絵本。9歳の今はDSだのゲームソフトだのと、いっぱしの小学生です。
・小さい頃は子供と一緒におもちゃ屋に行っていたが、最近はテレビの番組の取り合いになるのでタブレットを買い与えた。
・そのときはやっている戦隊物のベルトなど。
・3歳まではお菓子ブーツ、4歳以降は欲しいもの(女の子)。
・高級チョコレートが詰め合わせになったクリスマスギフト(9歳の女の子)。
・ネットでワンクリックで買えるのはすごい変わった部分だと思う。自分のときは欲しいものが見つかるまでおもちゃ屋を回ったことがあるので、今思えば親はかなり大変だったろうなと思う。
・本質は変わってなくて、友達が持ってるものと同じもので友達と遊びたいのだと思います。
・CMを見てこれが欲しいと動機付けられているのは昔も今も同じ。それをエサにいい子でいないとサンタさん来てくれないよと言われるのも同じ。
・アマゾンで注文できること。
・情報源がYouTubeであることは、自分が子供の頃にテレビで見たものを欲しがったのと同じだと思っているのであまり変わらないと思います。
・最近のことですが、7歳の娘が「スーパーカップのチョコ味が欲しいです」とサンタさんにお手紙を書きました。とても謙虚でかわいい娘です。
・今回Nintendo Switchをお願いすると言っていて、サンタを信じている息子の気持ちをくみ取ってあげたい半面、値段が…と思ってます。
・6歳のときに新しい自転車を買ったら「レゴが欲しかった」と言われて買いなおしました。
2組の親御さんに話を聞いたり、アンケートを採ったりしてみてわかったのは、プレゼント選びの大変さ、子供を喜ばせる苦労などはやはり昔から変わっていないということだ。おもちゃのハイテク化であったり、ネットで注文できたりする部分はもちろん違いはあるが、それは本質的なものではない。
「親側が楽になった」という話はいくつか出ているが、子供にとってのクリスマスプレゼントの文化は昔から変わっていないのかもしれない。
子供が欲しがるものについても、YouTubeで見たものを欲しがるというのは今の時代ならではのシーンだったが、昔のテレビがYouTubeに置き換わっただけのこと。やっぱり、動画で目にしたものやアニメに登場するもの、周りの友達が持っているものを欲しがるのは昔と変わらない。
今回話を聞いてみて、甥っ子へのクリスマスプレゼントの参考に大いになった。この話を僕の母にしてみたら「そんなことよりもあんたが結婚して、自分の子供にあげることを考えなさいよ」と言われたので、やっぱりクリスマスは独り身にはつらいなと改めて身に染みた。
大学中退→ニート→ママチャリ日本一周→Webプログラマという経歴で、趣味でブログをやっていたら「おもしろ記事大賞」で賞をいただき、記事をかくようになりました。デイリーポータルZ、それどこ(楽天)など。