かつて、男の子の家にはたいてい1台あった野球盤!
本物の野球自体にはまったく興味がなかったにもかかわらず、ボクの家にも野球盤があったので、メチャクチャ遊んでいました。
白熱しすぎてケンカになることも……
そんな野球盤が、今年でなんと60周年を迎えるんだとか。
最新の野球盤「野球盤3Dエース モンスターコントロール」は超絶進化をしていてビビりますよ。
2018年発売「野球盤 3Dエース モンスターコントロール」
なんと、ピッチャーの投げる球が宙に浮いてる!
しかも、うまいこと打ち返すと、本当に宙に浮いてスタンドインさせることも可能!
昔は、ゴロゴロ転がるだけだった球が……!
そんな、60周年を迎えた野球盤について、エポック社の数原さんにいろいろと聞いてきました。
野球盤は、この60年間で70種以上も出ているんだとか
――60周年って、おもちゃの世界でいうと、かなり古い部類ですよね?
数原 他社さんでいうと「人生ゲーム」や「リカちゃん」がだいたい50周年なので、野球盤は相当古いおもちゃだと思います。発表会をして、大々的にプロモーションをするようなおもちゃとしては最古なんじゃないですかね。
1958年発売・初代「野球盤」
――そもそもエポック社は60年前、野球盤を作るために創業した会社らしいですね。
数原 今の社長の父にあたる、前田竹虎という人物がいまして。もともと、おもちゃ会社に勤めていたんですが、野球盤を作る会社としてエポック社を創業したんです。
――「野球盤」って、たとえばアメリカなどに原型となるおもちゃがあったんですか?
数原 野球をモチーフにしたピンボール的なおもちゃはあったようですが、2人で投げて打ってという、対戦形式のものはなかったみたいですね。
――初代は伝統工芸品みたいな味がありますね。
数原 当時はプラスチックのおもちゃなんてなかったので、木製です。野球盤は家具職人が、選手の人形はこけし職人が作っていたんです。
確かにこけしだ!
――野球盤といえば「消える魔球」ですけど、意外にも「巨人の星 野球盤」には「消える魔球機能」がついていないんですよね。
1969年発売「巨人の星 野球盤」
「消える魔球」機能がついていない!
数原 消える魔球って「巨人の星」における「大リーグボール2号」なんですけど、漫画で登場するのは終盤ですからね。「巨人の星 野球盤」の頃にはまだ登場していなかったんですよ。
その後、大リーグボール2号の人気が高まったことで、それをヒントに消える魔球機能を搭載したわけです。
1972年発売「オールスター野球盤BM型」
消える魔球機能が初搭載された
――今の子供は巨人の星の元ネタは知らないでしょうけど、最新作にも消える魔球が搭載されているんですね。
数原 人気の機能でもありますし、元ネタはわからなくても、お父さんと遊ぶときに「昔、『巨人の星』っていう漫画があってね」みたいなコミュニケーションのきっかけになればいいかなと思っています。
最新版にもちゃんと搭載されている消える魔球
――ちなみに消える魔球の使い方って、公式でルールが決まっているんですか?
数原 公式では特に決めていないんですよ。まあ、あまり使いすぎるとケンカになるので「1イニング3回だけね」とか、決めて遊んでいるという話はよく聞きます。とにかく「仲良く遊んでね」ということです。消える魔球も、タイミングさえ合えば打てないことはないですし。
1974年発売「野球盤AM型」累計300万台以上という、最も売れたシリーズ。ウチにもコレがあった!
1978年発売「野球盤AM型人工芝球場」時代に合わせていろいろ変化してるんですねぇ
――その後もさまざまな新機能が採用されていますけど「ビッグエッグ」あたりのギミックはスゴイですよね。なんでも電動だったとか……。
1988年発売「ビッグエッグ野球盤」
数原 電動で自動的にボールが投げられるようになってるんです。1人でも遊べるように、ということですね。
――やはり時代的に、ファミコンの野球ゲームなどに対抗して1人用の機能を搭載したということでしょうか?
数原 それもあるでしょうね。ただ、現在は「1人用」という機能は継承されていないので、あまり評判はよくなかったんじゃないかなと思います(笑)。1人だったらファミコンで遊べばいいじゃんっていう話ですから。
1988年発売「ビッグエッグ野球盤Jr.」
――この「Jr.」のほうは、「サッカーゲームも楽しめる」と書いてありますけど……。何ですか、コレ!?
数原 僕も60周年ということで色々資料を調べている中ではじめて知ったんですよ(笑)。
――1988年ということはJリーグの開幕前ですし、「キャプテン翼」などでサッカー人気が高まってきたのに便乗して、ということなんですかね?
数原 まあ、担当者がサッカー好きで、思わずつけちゃった機能だったんじゃないですかね(笑)。
――それからの進化は「球を宙に浮かせたい」という挑戦が続いていますね。
2010年発売「野球盤スラッガー」
数原 「野球盤スラッガー」からは、バットに高反発の素材を使用することによって、バッターの打った球が宙に浮くようになりました。
バットの先端に高反発素材が使われている
――そして、2015年にはついにピッチャー側の球が宙に浮くように……。
2015年発売「野球盤 3Dエース」
数原 野球ゲームなんで、ピッチャーの球も浮かせたいというアイデア自体はずっとあったんですが、開発にはかなり時間がかかりましたね。
――ピッチャーの球を宙に浮かせることはできても、ちゃんとストライクゾーンに入るようにコントロールしないとゲームとして成立しませんもんね。
数原 ピッチャーとバッター、どちらかに有利になりすぎるとつまらなくなってしまうので、中のバネの素材や巻き数を何万回も検討して調整しました。
苦労はしましたが、これによって本当に「空振り」させることができるようになったんです。
――ここから、2018年の最新版ではどう進化しているんですか?
数原 2015年版は、ピッチャーが投げ分けられる球が左右と真ん中だけだったんですが、2018年版では、さらに上中下という高さも変化させられるようになりました。
ストライクゾーン9か所に投げ分けられるようになった!
――それに合わせてバッターの高さも変えられるようになりましたね。
数原 その読み合いを楽しんでもらいたいですね。より本物の野球に近い、本格的な勝負ができると思います。
ピッチャーの投球に合わせるため、バッターも上下に動く!
――そして、60周年記念として「ドラえもん」と「スーパーマリオ」の野球盤も発売されるんですよね。
数原 過去には「鉄腕アトム」や「巨人の星」の野球盤がありましたが、キャラクターとのコラボ商品は久しぶりですね。
2018年発売「ドラえもん野球盤」(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK
2018年発売「スーパーマリオ野球盤」(C)Nintendo
――どうして「ドラえもん」と「スーパーマリオ」だったんですか?
数原 東京オリンピックの予告動画にも登場していたように、日本を代表するキャラクターですからね。そして、野球盤も日本を代表するおもちゃだという自負があるので、60周年の記念にコラボさせていただこうと。
――ドラえもんには「秘密道具」も付属しているようですが、これはどのように使うんですか?
数原 「とおりぬけフープ」を通ったらホームランとか「エースキャップ」を使ったらストライクゾーンが変わるとか、ドラえもんならではの特別ルールが用意されています。
スーパーマリオのほうに特別ルールはないんですけど、人形をほかのスーパーマリオ商品に流用できるようになっています。
「とおりぬけフープ」の中を通ったらホームラン!
――コラボ物といえば、昔は原辰徳や松坂大輔など、実在の選手とコラボした野球盤もありましたよね。最近はやっていないんですか?
数原 昔は、時代時代でそういう大スターがいましたけど、今は1人の大スターというよりはチームごとの人気という感じになっていますからね。
ただ、大谷翔平選手は久々に大スターが出てきたなという感じがあるので、いつか野球盤とのコラボをやれたらいいなとは思っています!
――大谷選手だったら投手もバッターもやれますし、おもしろくなりそうですね!
野球盤って人生で何度も買ってもらうものではないので、自分の子供時代の野球盤のイメージで止まっていましたが、まさかの球が宙を浮きまくる迫力の野球ゲームに進化していてビビりました。60年の間にこんなに変わっていたとは。
ここから、さらに進化するとしたら、どうなっちゃうんでしょうね……? さらに幅広くコントロールをできるようにして、ビーンボールを投げられるようにするとかどうでしょうか!?(いらないな、その機能)