トーストは香ばしくてサクサクとした食感がおいしいものですが、焼く前と比べるとやわらかさは失われてしまいます。そんなトーストの常識を一変するトースター「三菱ブレッドオーブン TO-ST1」(以下、ブレッドオーブン)を三菱電機が2019年3月20日に発表。これまでのトースターとは一線を画す構造により、“サクサクなのにやわらかい”新食感の焼き上がりを実現したといいます。そんなブレッドオーブンをいち早く使ってあれこれ試してみました!
おいしいトーストが焼けると評判の高いトースターといえば、スチームと温度制御で焼き上げる「BALMUDA The Toaster」や、0.2秒で発熱する「Aladdin AET-GS13NW」が有名です。給水したり、素早く焼き上げるなど“パンの水分蒸発を最小限に抑える”工夫が施されていますが、基本的な構造は一般的なトースターと同じ。上下に配置されたヒーター管でパンを焼き上げます。いっぽう今回紹介するブレッドオーブンは、これまでのトースターとはまったく異なる加熱方式と食パン1枚焼き専用という構造を採用。均一に焼けるように上下にフラットなヒーター(プレート)を搭載し、狭い庫内の密閉性と断熱性を高めることでパンから出た水分と香りを閉じ込め、クラスト(パンの耳の部分)までやわらかいトーストを実現しました。
サイズ(取っ手含まず)は240(幅)×223(奥行)×140(高さ)mm。基本的に食パン1枚を焼くトースターなので、サイズは小さめです。なお、市場想定価格は3万円前後で、2019年4月25日発売予定
筆者所有の「BALMUDA The Toaster」と並べてみると、幅は半分くらい。奥行も抑えられています
フタを開けた様子はホットサンドメーカーっぽいですが、ブレッドオーブンはプレートを直接パンには押しつけません。また、プレート全体がヒーターなのでムラなく焼けるのもポイントです
パンに近い位置で加熱できるように、庫内サイズは192(幅)×142(奥行)×44(高さ)mmと狭めの設計とされています。庫内が狭いので、素早く高温にでき、温度ムラができにくいのもポイント。そして、そのヒーターの熱やパンから出た蒸気や香りを閉じ込めるため、断熱材や密閉シールが装備されています
一般的なトースターに比べ、庫内のスチーム量は2.5倍にもなるそう。狭い庫内で蒸気が飽和状態となり、表面の水分がパンの内側に移動し、内側の水分はパンの耳に移動するため、しっとりとやわらかいトーストが焼けるといいます
なお、ブレッドオーブンの運転はすべて自動制御。温度センサーを使用し、最適に焼き上げます。トーストできるのは4枚切り、5枚切り、6枚切り、8枚切りの食パンで、常温、冷凍だけでなく、チーズなど具材をトッピングしたものも可能。このほか、フレンチトースト専用のプログラムも搭載されています。
パンの状態(常温、冷凍、トッピング、フレンチトースト)と「枚切」、焼き色を選択し、スタートボタンを押すだけ!
三菱電機によると、ブレッドオーブンで焼いた食パンは熱と水分でデンプンをしっかりとα化させることで、一般的なトースターで焼いた食パンよりも甘み、やわらかさ、しっとり感、香り、弾力が引き出されるといいます。そのバランスは、焼きたての食パンに近いそうですが、どんな味わいなのか実際にトーストしてチェックしてみましょう!
一般的なトースターで焼いた食パンと比べると、香りは倍以上差が出ています。しっとり感やふんわり感にも大きな差がありますが、それほど明確な違いが出るのでしょうか
さっそく、6枚切りの食パンを焼いてみます。
食パンをプレートにセット。フタの内側が凹んでいるのである程度高さがあるものも入れられそうですが、MAXの目盛りのある高さが上限となっています。筆者の測定によると約33mm。4枚切りの食パンが約30mmなので、トッピングする際には気をつけましょう
フタを閉めたら、パンの状態(常温)と枚切、焼き色を設定。焼き色は「ふわふわ」「薄め」「ふつう」「濃いめ」「サクサク」の5つが用意されていますが、今回は「ふつう」で焼いてみます
本体には断熱材が施されているのでやけどするほど熱くはなりませんが、加熱中や加熱直後は触らないようにしましょう
蒸気を閉じ込めるとはいえ、過度な水分は排気されます
加熱が終了すると「ピーッ、ピーッ、ピーッ」と音でお知らせ。運転中も「ピッピッピッ」と音が鳴っており、終了に近づくと音の間隔が短くなっていきます。
約3分後に焼き上がったトーストは、一般的なトースターで焼いたものと遜色ない感じ
裏面にも焼き色がついており、特別“やわらかそう”な感じはしません
しかし、トーストを手で裂いてみるとビックリ! 下の動画のように、焼き色がついているところはパリパリと音がしますが、パンに水分がたっぷり残っているためか、中央から裂こうとしてもクラム(パンの白い部分)はなかなかちぎれませんでした。そして、普通ならもっとも硬くなるクラスト(パンの耳の部分)は、パリパリと音もしない! 焼く前と同じくらい、クラストがしっとりしています。
手で裂いている動画のとおり、食べてみてもクラムの表面はパリッとしているのにしっとり&もちもち! 特にクラストは衝撃を受けるほどやわらかです。噛んでも音がしないクラストって初めて!
トーストして焼き色もついているのに、クラストは指でつぶしてもパリパリと音もしません。やわらかいとトーストとしての満足度が低いように思われるかもしれませんが、香ばしさもきちんとあるので食べた感は十分!
とはいえ、これだけでは一般的なトースターとの焼き上がりの差がわかりづらいので、筆者所有の「BALMUDA The Toaster」でも同じようにトーストしてみました。
トーストモードで6枚切りの食パンを焼きます
加熱時間は3分。ブレッドオーブンと時間的にはほぼ同じです
ブレッドオーブンと加熱時間はほぼ同じでしたが、パンの重さには3gの差が! これは、パンに残っている水分量の差かも
BALMUDA The Toasterで焼いたトーストを手で割ってみると、いい音が響きます(下の動画参照)。この音のとおり、クラストとクラムの食感もサクサク! 上にあるブレッドオーブンで焼いたトーストを裂いている動画とは音がまったく異なるように、食感も別物です。
手で裂いたパンを比べてみると、ブレッドオーブンで焼いたトーストのほうはクラムの高さが出ませんでした。これは水分量が多く、密度が高いためだからでしょう。生の食パンに近いので、クラムがもちもちで甘さを強く感じました
なお、冷凍した食パンのトーストも試してみましたが、常温のパンと遜色ない焼き上がりだったので、食べきれない時は躊躇せずに冷凍してしまって問題ないでしょう。
冷凍の食パンのトーストは、「薄め」「ふつう」「濃いめ」の焼き色しか選ぶことができません
「ふつう」で焼いた冷凍食パン。冷凍しても、クラストはやわらかでした
クラストもやわらかくトーストできるブレッドオーブンは、今流行の“耳までやわらかい”生食パンと相性がいいのでは?とひらめきました。生食パンはトーストしなくてもおいしいのがウリですが、それでも数日経てば焼きたてより硬くなります。そんな時にブレッドオーブンで焼けば、食感が復活するかも!?
連日行列ができている「乃が美」の高級生食パンを1時間30分並んでゲット!
初めて食べましたが、羽毛布団のようにクラストまでふわふわ! そして、水分量が多いようで、クラムもクラストもしっとりしています
そんなやわらかな生食パンを袋に入れ、3日間常温で放置。まだまだ水分はたっぷり含まれており、食べるとやわらかですが、焼きたての時ほどのふわふわ感はありません
6枚切りくらいの厚さにカットして、ブレッドオーブンで焼いてみます。目指すのは焼きたての時のやわらかさなので、焦げ色がつかないように焼き色は「ふわふわ」に設定
焼き色がもっとも薄い「ふわふわ」は短時間で焼き上がるかと思いきや、「ふつう」の時とほぼ同じ3分かかりました。フタを開いてみると、加熱する前とまったく変わらない状態です。失敗したかもとドキドキしながらパンに触ってみると……
ほんのり温かくて、ふわふわになっていました。焼きたてレベルに復活とまではいきませんでしたが、水分は保持したままやわらかさがよみがえったような気がします。生食パンの焼きたての食感を長く味わいたいなら、ブレッドオーブンは相性がよさそう!
基本のトーストが上々な仕上がりだったので、「トッピングトースト」にも挑戦してみます。まずは、とろけるスライスチーズとハムを載せたハムチーズトーストからスタート!
ハムとチーズを載せた食パンをセット
トッピングトーストメニューを選択し、枚切と焼き色を設定。ハムチーズの場合は、「薄め」がいいそうです
約3分で焼き上がり。トーストメニューとはプログラムが違うのか、「薄め」でもけっこうパンに焼き色がついています
焼き色がしっかりついていたのでクラストのやわらかさを心配していましたが、そこは問題なし! クラストが硬くないので、これだけ食べていてもあごは疲れません!!(笑)
続いて、生卵をトッピングしたメニューを試してみました。蒸気を閉じ込めて焼くブレッドオーブンなら、半熟卵に仕上げることができるのでは?と密かに期待!
6枚切りの食パンにハムを載せ、キャベツで土手を作って卵をオン! けっこう高さが出てしまいましたが、6枚切りなら問題なし。4枚切りだと高さの上限オーバーになってしまうかもしれません
取扱説明書には生卵の場合は「濃いめ」を選ぶと記されていましたが、どうしても半熟にしたかったので「ふつう」で焼くことにしました
約3分で焼き上がった様子。キャベツが若干焦げていますが、このくらいなら許容範囲!
卵を割ってみると、見事に半熟! 一般的なトースターなら、きっとキャベツはもっと焦げるでしょうし、卵も火が通り過ぎているかも
一般的なトースターはパンを載せる部分が網なので、トレイを用意しないと液体が垂れるようなものは焼けません。しかし、ブレッドオーブンはプレートなのでそういったメニューも問題なし。ということで、わざわざ搭載されたフレンチトースト専用のプログラムを試してみます。なお、フレンチトーストを作るためには、卵、牛乳、砂糖を混ぜた卵液に食パンを2時間以上浸しておかねばなりません。
プレートにバターを塗ります
卵液に浸漬しておいた食パンを並べます
フレンチトーストメニューを選択し、枚切をセット。このメニューでは、焼き色は「ふつう」しか選べません
約10分の加熱後、フタを開けてビックリ! 見たことがないくらいフレンチトーストがふくらんでいます
膨らみは早々にしぼんでしまいますが、食感がプルプル&ふわふわで2度目の衝撃! この食感はクセになるおいしさです
ここまでは基本的に取扱説明書どおりのメニューを試してきましたが、食パン以外のパンも焼いてみたい! ここからは完全に自己責任となりますが、こっそりやってみました。
コンビニで買ってきたサンドイッチやクロワッサンを軽くトーストすれば、もっとおいしくなりそう!
バターが多いクロワッサンは天面が焦げやすいですが、「4枚切」&「ふわふわ」でトーストしたところ、まったく焦げずにふわふわに!
サンドイッチはホットサンドのように焦げ色をつけたかったので、「4枚切」&「薄め」にしたところ大成功。中のチーズがトロリとして、トーストしたほうが断然おいしい!
コッペパンに具を挟んだパンは中まで熱が通りにくいもの。中心部まで温めようとすると天面が真っ黒になりかねませんが、「4枚切」&「薄め」で上手に焼けました
ブレッドオーブンは基本的には食パン専用の1枚焼きトースターと、かなりふりきった仕様なので、使う人を選ぶのは確かでしょう。複数人の家族で使う場合、連続で焼くことになりますが、プレートが熱を持っているため、焼き上がりの色に若干差が出ます。食感は変わらずやわらかですが、1枚ずつしか焼けないのでみんなでそろって食事をする家庭には不向きかも。また、プレートは取り外しできないので、布巾で拭くだけでしかお手入れできない点が気になる人もいそうな気がします。
パンしか焼かないとはいえ、できれば洗浄したい
ただ、これまでのトーストの概念が一変するくらい、やわらかでもちもちしているのは衝撃でした。トーストは香ばしさとサクサクな食感がおいしいという人も多いと思うので、ブレッドオーブンと一般的なトースターで優劣はつけられませんが、クラストが硬くて食べられない高齢者や、硬さを嫌って残す子どもにとってはサクサク感がありつつ、クラストもやわらかいトーストが焼けるブレッドオーブンは魅力的でしょう。また、甘みも増すので、クラストまでやわらかな生食パンが好きな人には好みな食感と味わいのトーストかもしれません。
焼き色を「サクサク」にすると、一般的なトースターで焼いたようなサクサクの食感にすることもできます
小さめのサイズで木目調のデザインなので、テーブルに出しっぱなしにしておいてもいいかも