メディア向け説明会で試食した、シロカの電気圧力鍋「おうちシェフPRO」で作った豚の角煮のやわらかさに衝撃を受けた筆者。しかし、それはメーカーが用意したもの。高級な豚バラ肉を使うなどの条件付きでうまくできただけなのでは? という疑念が残ったので、実際に試してみました!
おうちシェフPROの構造を紹介する前に、筆者が感動した豚の角煮を見ていただきたい(下の写真参照)! 普通のスーパーで売っている手ごろな価格の豚バラ肉を使い、一般的な電気圧力鍋とおうちシェフPROで作ったものですが、写真で見るだけでも、やわらかさや味の染み方が違うように感じませんか?
おうちシェフPROで作った豚の角煮のほうが、肉が縮まっておらず、ネギもくったりしていてやわらかそう。脂も溶け出しており、照りもある印象。味の染み込み具合も違うようで、脂身と赤身ともに色が違います
この見た目どおり、本当にやわらかさが違うのです。一般的な電気圧力鍋で作った豚の角煮も味が染み込んでおり、十分やわらかいのですが、おうちシェフPROで作ったほうは次元が段違い! 下の動画のように、肉の線維に垂直に箸を入れても簡単に割れちゃうほどやわらかいのです。片手でカメラを持って撮影しながら、もう片方の手で箸を使っていたので割るのに時間がかかっていますが、軽く箸を動かすだけでスッと割ることが可能。それでいて、箸で持ち上げられないほどトロトロになりすぎてもいません。
箸で切った豚の角煮の断面を見ると、やわらかさと味の染み込み方の違いがよくわかります
写真でも伝わるこの違いは、食感やおいしさにもそのまま直結。おうちシェフPROで作った豚の角煮は、トロトロの脂身とホロッとくずれる赤身が口の中で溶け、さらにたっぷり染み込んだ出汁もジュワッと広がります。
どちらも電気圧力鍋なのにこれほど差が出たことに、もしかして手順を間違えたか、使った豚バラ肉のせいなのでは……と不安になり、違う豚バラ肉を用意して豚の角煮を計4回作りましたが、いずれも結果は同じ。一般的な電気圧力鍋よりもおうちシェフPROは、食材をやわらかく、そして味を染み込ませることができるようです。
今回、おうちシェフPROと比較するために使用した電気圧力鍋は、2017年に発売されたシロカ「SP-D131」。おうちシェフPROの1世代前のモデルで、最高圧力は70kPaとなっています。いっぽう、おうちシェフPROは95kPaと、業界最高クラスの最高圧力を保持。おうちシェフPROと比べるとSP-D131の圧力値は低く思えるかもしれませんが、現在流通している電気圧力鍋は大半が70kPaなので、一般的な性能です。圧力鍋は鍋の中の圧力を上げることで100℃以上の沸点での加熱を可能とし、普通の鍋で調理するよりも短い時間で調理できるのが特徴。圧力値が高いほど短時間で食材をやわらかくできると言われているので、この圧力の差が仕上がりの差につながったのは間違いないでしょう。
最高圧力はSP-D131が70kPa、おうちシェフPROが95kPaと差はありますが、消費電力はどちらも700W
普通の鍋、一般的な電気圧力鍋(最高圧力70kPa)、おうちシェフPRO(最高圧力95kPa)で作った豚の角煮のやわらかさを比較すると、普通の鍋より約4.5倍、一般的な電気圧力鍋より約2.4倍もやわらかく仕上がるそうです。今回、実際に作って試食した豚の角煮で感じたやわらかさの差はもっとあった印象!
さらに、おうちシェフPROは圧力のかけ方が違うのもポイントです。一般的な電気圧力鍋(SP-D131も同様)は、一定の圧力値に達すると圧力を下げる制御が行われますが、おうちシェフPROは高圧を一定にかけ続ける「一定圧力制御」を採用。シロカによると、圧力を変動させないほうが食材をよりやわらかく、味を染み込ませられるほか、栄養成分が溶け出すのを抑えることができるのだそう。
圧力は一定でかかっているかと思いきや、一般的な電気圧力鍋は圧力を変動させながら圧力調理しているとのこと。一説には、圧力が下がった時に食材に味が染み込むと言われているので、このような圧力制御が採用されているのかもしれません
味の染み込み方も、検証で感じたとおりの差が数値としても出ていました。イワシの梅煮で味の染み込み具合を比較すると、一般的な電気圧力鍋(最高圧力70kPa)とおうちシェフPRO(最高圧力95kPa)で約1.8倍もの差が!
イワシの梅煮も作ってみましたが、味がしっかり染み込んでおり、骨までやわらか! こんなにやわらかいのに煮崩れしておらず、仕上がりもキレイです
グラフは同じ圧力で調理した結果ですが、圧力のかけ方で栄養素の残存率に差が出るとのこと。おいしく食べながら、栄養素も多く摂れるのは大きなメリットではないでしょうか
電気圧力鍋は火を使わないので安全性が高く、圧力を使った時短調理が“ほったらかし”でできるのが大きな魅力。また、多くの製品が圧力調理以外の調理もできるようになっており、多様な調理が楽しめます。おうちシェフPROも「圧力調理」「無水調理」「蒸し調理」「炊飯」「スロー調理」「温め直し」「低温調理」「炒め」「発酵」「温度調理」といった計10種類の調理方法を完備。最適な圧力や、加熱温度/時間で自動調理されるオートメニューも83メニュー用意されています。
サイズは240(幅)×260(奥行)×270(高さ)mm。容量は調理 1.68L/満水 2.4Lなので、1〜2人世帯にちょうどいいでしょう
オートメニューは83メニューありますが、「おすすめ」「肉・魚」「野菜・豆」「スープ・卵」「米」というカテゴリーに分類されているので、メニュー数のわりには簡単に選択できる印象。ただし、数字でしか表示されないため、取扱説明書でメニュー番号を確認する必要はあります
一応、フタにオートメニューの「おすすめ」のみメニュー番号が記されています
調理する前に必ず行うのが、圧力切替弁の設定。圧力調理と圧力調理以外のメニューでつまみの位置を切り替えます
圧力切替弁の装備されているとこから蒸気が出るのですが、おうちシェフPROはそこに「蒸気ふた」を装着し、圧力調理の減圧時に噴き出す蒸気の勢いを抑えているのもポイントです
調理の準備は一般的な電気圧力鍋と同じ。調理メニューによって少々異なる部分もありますが、基本的には内鍋に食材や調味料を入れ、該当する調理方法とメニュー番号(マニュアルで設定する場合は時間や温度、圧力値)を設定して、スタートボタンを押すだけです。
カットした食材と調味料を内鍋に投入し、本体にセット。豚の角煮を作る際には、アルミホイルで落としぶたをします
ふたは本体と分離できるスライド式。取っ手を握り、ふたを本体に載せて右に回転させれば装着でき、左に回転させて持ち上げれば取り外せるので、操作性はいい印象です。また、きちんと閉まっていないと圧力調理はスタートしない設計になっているので、安全性もバッチリ!
該当するメニューを設定し、スタートボタンを押してできあがりのアラーム音が鳴るまで放置。圧力調理ではディスプレイには圧力値と総調理時間、メニュー番号が表示されるので、豚の角煮は95kPaの圧力で調理され、できあがるまで48分かかるということになります
ちなみに、調理時間ではなく「総調理時間」と記されているのは、圧力調理の場合、加圧(圧力調理)の前後に「予熱」と「減圧」という工程が含まれているからです。たとえば、豚の角煮を作る際の圧力調理の時間は15分ですが、総調理時間は48分。調理が終わっても、安全にふたを開けられる状態になったことを示す「ピン(圧力表示ピン)」が下がるのを待つ時間もプラスで必要になります。
表示されている総調理時間は、使用環境によって若干ズレはあるようで、今回、豚の角煮を作った時にはスタートボタンを押してから50分後に調理終了のアラーム音が鳴りました
本体内の圧力が下がり、安全にふた開けられる状態になると圧力表示ピンが下がります。このピンが下がってからふたを開けるのが鉄則。ちなみに、調理終了のアラーム音が鳴ってから約3分後にピンが下がりました
圧力鍋は、鍋の内部の圧力を上げることで沸点を100℃以上にし、調理時間を短縮する仕組みですが、減圧してからでないと安全にフタを開けることができません。通常であれば、鍋内の温度が下がっていくにつれて自然に減圧されますが、それなりに時間がかかります。おうちシェフProで作る豚の角煮を例に出すと、圧力調理の時間はたった15分なのにトータルで48分かかるので、電気圧力鍋を使ったことがない人からすると“時短”には感じられないかもしれません。
そんなウイークポイントを解消するため、強制的に減圧させる機能を搭載した製品もあります。おうちシェフPROにも減圧時間を短くする機能は搭載されており、豚の角煮の場合、この機能を使うと総調理時間48分が38分に短縮。しかも、多くの電気圧力鍋が手動で圧力弁を強制的に開放して減圧するのに対し、おうちシェフPROは、機械の制御で排気を行って減圧をうながす「自動減圧」を採用しているのが特徴です。一気に蒸気を排出させるのではなく、自動減圧で細かい間隔をあけて排気するため、勢いよく噴射した蒸気でやけどする危険性が防げ、急速な減圧の影響で鍋の中に激しい対流が起こり、煮崩れが起こる事態も防げるのだそう。
「自動減圧」機能を使うには「時短」ボタンを押す必要があります。時短ボタンのランプが点灯しないメニューでは、自動減圧機能は使えません。煮崩れしやすい食材を使用しているメニューは自動減圧の対象外としているそうですが、ほとんどの圧力調理メニューに対応しているとのこと
「時短」ボタンを押すと、総調理時間が48分から38分に短縮されました。メニューによって短縮される時間は異なりますが、数分でも短くなるのはうれしい!
「時短」設定にするとどのような変化が起こるのか、豚の角煮の工程で確認していたところ、総調理時間が残り2分くらいになったタイミングで自動減圧機能が作動しました(下の動画参照)
自動減圧が始まると、上の動画のように排気が間隔を空けて行われます。鍋内の蒸気を少しずつ排気しているので、一般的な圧力鍋で目にするような、蒸気が勢いよく噴き出す感じはありません。そもそも、おうちシェフProには噴出する蒸気の勢いを抑える蒸気ふたが装着されているので、そうした状況になりにくいのですが……。なお、動画は、自動減圧がスタートしてすぐに撮影したものなので排気音は大きめですが、徐々に小さくなっていくので、それほど運転音は気にならないでしょう。また、調理時間がゼロになるのと同時に圧力表示ピンも下がるので、時間どおりに調理が終えられます。
前述のとおり、おうちシェフProには圧力調理以外の調理モードもいろいろ用意されています。マニュアルモードでしか行えない調理もありますが、その中の、「温度調理・炒め」モードがとても便利。たとえば、肉じゃがを作る時、煮込む前に食材を炒めるのが一般的ですが、炒める機能がない電気圧力鍋の場合、別途、フライパンや鍋を使わなければなりません。おうちシェフProの前モデル(SP-D131)も炒め調理はできない仕様でしたが、新たに「温度調理・炒め」モードが搭載されたことで、電気圧力鍋だけで調理が完結できるようになりました。
マニュアルモードにある「温度調理・炒め」モードを使えば、食材を炒めることもできます。温度(80〜100℃/200℃)と時間(5分〜12時間)が設定できるようになっていますが、炒め調理を行う時は200℃を選択。なお、200℃を選んだ場合、時間は20分に限定されます
炒め調理はふたを開けた状態で行います。油をひいた内鍋をセットし、スタートボタンを押して予熱開始
ブザーが鳴り、ディスプレイの「温度」表示が点滅から点灯に変わったら予熱完了の合図。今回、予熱にかかった時間は10分程度でした。牛こまぎれ肉を炒めましたが、火が通るのはあっという間! 深さがあるので、周囲が油飛びで汚れないのもありがたい
牛こまぎれ肉に火がとおったら、じゃがいもや玉ねぎなどの具材を投入し、2分程度炒めます
時間は20分に設定されていますが、最後まで待つ必要はなし。炒める工程が終わったら、「取消」ボタンを押して終了しましょう
ここからは圧力調理に移行。調味料を入れ、フタを閉めて、「おすすめ7」を設定したら、再び、「スタート」ボタンを押します
圧力表示ピンが下がるまでの時間も含めると、炒めたあとに行う圧力調理でかかった時間は約45分。圧力調理で作ったので、味が染み込んでいるのはもちろんですが、じゃがいもがホクホクなのが最高にイイ! 野菜はやわらかく仕上がっていますが、牛肉に火が通りすぎて硬くなることもありませんでした
このほか、マニュアルモードには、好みの圧力値(50kPa〜95kPa)と時間(1秒〜1時間)で調理できる「圧力調理」モード、50〜75℃、5分〜12時間の範囲で調理する「低温調理」モード、沸騰させない95℃の温度で、5分〜12時間の範囲で調理する「スロー調理」モード、調理した料理を90℃で10分間加熱する「温めなおし」モードが搭載されています。
ちなみに、通常の調理後は自動で電源がオフになるので、あたため直すのがめんどうな人は調理後に「保温」ボタンを押して保温機能をオンにしておきましょう。ただし、オートメニューを予約調理した場合、調理後は自動で保温に切り替わります。
「保温」ボタンを押せば最長1時間保温できます
おうちシェフPROの予約調理は、最初に加熱し、その後、腐敗や細菌が繁殖しにくい温度帯でキープ。予約設定時間に近づいたら仕上げる制御になっているので、安心です。予約調理機能が搭載されていても、こうした温度制御が作動しない電気圧力鍋や電気調理鍋もあるので、予約調理したいなら確認しておいたほうがいいでしょう
電気調理鍋をはじめ、筆者はこれまでいろいろな調理家電をレビューしてきましたが、電気圧力鍋をじっくり使うのは今回が初めて。電気圧力鍋で作った料理は試食したことがあり、そのおいしさは知っていたものの、圧力調理の時間自体は短くても予熱や減圧に時間かかるため、必ずしも時短とは言えない印象があり、料理好きや料理をひんぱんにする人にこそ支持されるものだろうと、料理をあまりしない筆者は思っていました。しかし、実際に使ってみると、使えば使うほど電気圧力鍋が好きになっていきます。
まず、食材を入れて調理をスタートして放置しておけば、おいしいものができあがるというラクさは、やっぱり最高。今回、幼稚園〜小学校高学年の姪っ子3人がいる実家で調理していたので、姪っ子の相手をしながら“ほったらかし”で料理が作れるありがたみを改めて感じることができました。この点については電気調理鍋も同じですが、食材のホクホク感とトロトロ、味がジュワーッと染み込んだ圧力調理ならではの仕上がりがたまらない。料理下手な筆者でもうまくできちゃうので、料理上手になった気分になります(笑)。
操作が簡単なので、小学校高学年の姪っ子はレシピを見てひとりでおうちシェフPROの設定ができました。食材の計量をしたり、内鍋に食材や調味料を入れたり、おうちシェフProのボタンを押すなど、子どもでもできることが多く、それが楽しかったのか、次の日も料理がしたい! とせがまれました(笑)
超簡単に作れるポトフも、おうちシェフPROを使えばさらにおいしくなります。普通の鍋とおうちシェフPRO、それぞれでポトフを作ってみたので、その仕上がりをご覧ください!
加熱時間はどちらも43分くらいですが、見るからに、おうちシェフPROで作ったほうの玉ねぎがトロトロ。実際に食べてみても、じゃがいものホクホク感、玉ねぎのトロ〜とした感じ、そしてにんじんの甘みが段違い。家族全員、おうちシェフPROで作ったポトフほうがおいしいという評価でした。特別な食材を用意しなくても、おいしくなるのも魅力です
おうちシェフPROの低温調理で作ったサラダチキンも絶品。火加減が絶妙で、しっとりしていておいしい。これも家族に大好評でした
そして、おうちシェフPROは、高い圧力値と、一定の圧力をかけ続ける制御により、圧力調理のおいしさをさらに高めたのがすごいところ。実際に、一般的な圧力値(70kPa)の電気圧力鍋と作り比べた豚の角煮で、あきらかにやわらかさと味の染み込み具合が違うことを確認できたので、この機能の効果は絶大です。さらに、減圧時間を機械制御で短縮する「自動減圧」が搭載されているのも、大きな価値と言えるでしょう。これから電気圧力鍋を購入しようと考えているなら、圧力調理の魅力をさらに高め、かつ、ネックととらえられる部分を改善したおうちシェフPROは選んで間違いなし!
調理後、内鍋以外で洗浄するパーツは多めですが、慣れれば苦には感じません。おうちシェフPROの価格は14,220円(2022年5月8日時点の価格.comの最安価格)と、圧力鍋ではないものの電気調理鍋の中で人気高いシャープ「ヘルシオ ホットクック KN-HW16G」と比べると30,000円以上安いので、わりと緊張感なく洗ったり扱ったりできるのも気に入っています
そして、おうちシェフPROの手軽さと作った料理のおいしさに感動した筆者の母が、今回使用した「Mタイプ」(SP-2DM251)とカラー違いの「Pタイプ」(SP-2DP251)を購入しちゃいました。自分が作った料理の写真を送ってくるほど、圧力調理にハマっているようです
今回使用したMタイプとPタイプはカラーが違うだけで機能は同じ。グレー基調のPタイプのデザインが個人的には好みです
モノ雑誌のシロモノ家電の編集者として6年間従事した後、価格.comマガジンで同ジャンルを主に担当。アウトドアからオタク系まで意外と幅広くイケちゃいます。