近年、ライフスタイルなどの変化にともない少容量タイプの炊飯器が増えていますが、小容量とはいえ、ボリュームゾーンは3合炊き。しかし、ひとり暮らしで、まとめ炊きもしない場合、ちょっと大きい。むしろ、1食分を炊けるくらいでいい……という人に、エレコムの調理家電シリーズ「LiFERE(リフィーレ)」の1合炊き炊飯器「HAC-RCIH01」を紹介したい! この炊飯器、1合炊きなのにIH式なんです。
「HAC-RCIH01」の最大の特徴は、炊飯容量1合の炊飯器ながら加熱方法にIH式を採用している点です。1合炊きタイプでIH式というのは、本当に珍しい! 実際、価格.comで1合炊き炊飯器を検索すると5製品しか登録がなく、その中でIH式は「HAC-RCIH01」だけです(2023年6月14日時点)。これまでマイコン式しか選択肢がなかった1合炊きタイプでIH式が選べるのは大きな魅力。「HAC-RCIH01」は、ひとり分のごはんをおいしく炊きたいというニーズに応えてくれる炊飯器です。
「タイプ」が空欄の製品もIH式ではありません
そして、「HAC-RCIH01」は、スリムで炊飯器に見えないデザインなのもポイントです。上述の価格.comでの検索結果のとおり、「HAC-RCIH01」以外の1合炊きの炊飯器はすべて弁当箱型。加熱方法の違いだけでなく、デザイン性や設置性の高さも「HAC-RCIH01」の魅力でしょう。
スープメーカーやポットのようにも見える特徴的なデザイン。炊飯容量は0.5〜1合で、サイズは約169(幅)×127(奥行)×228(高さ)mm。ブラック(HAC-RCIH01BK)、ホワイト(HAC-RCIH01WH)、ブルー(HAC-RCIH01BU)の3色をラインアップしています
スリムボディなので、キッチン棚のちょっとした空きスペースに置くことが可能。デザイン的にも違和感なく、インテリアに溶け込んでいます
内釜が入った状態で、重量は約1.3kg。それほど重くないですし、取っ手が付いているので持ち運びやすいです
なぜ、マイコン式よりもIH式のほうがおいしいごはんが炊けるのか、簡単に説明しておきましょう。マイコン式が釜底にあるヒーターで加熱するのに対し、IH式は磁力線の働きを用いて釜全体を発熱させるため、単純に火力を比較した場合、IH式のほうがマイコン式より強く、米一粒一粒にしっかり火が通ります。もちろん、5.5合タイプや3合タイプのIH炊飯器でも1合分だけを炊くことはできますが、容量に対して炊飯空間が大きくなるため熱効率が落ち、水位も低くなるので米がかくはんされにくく、炊きムラが発生しやすくなるそう。その点、「HAC-RCIH01」は少量に最適なサイズと形状の内釜を採用しているので、1合分のごはんをおいしく炊くことができます。
5.5〜0.5合、3〜0.5合など、炊飯できる量の選択肢が多いのは便利ですが、すべての合数を同じ炊き上がりにするのは難しいのが実状。「HAC-RCIH01」は炊飯量を1〜0.5合に絞り、少量炊飯に特化した縦長の内釜を採用しています。米の量が少なくても水位が浅くならないため、対流が発生し、米がしっかりかくはんされるとのこと
内釜の素材はアルミとステンレスを組み合わせたもの。内側にフッ素樹脂をコーティングし、外側には耐熱塗装を施しています
少量炊きに合わせた構造に加え、加熱方式がIH式なため、おいしい炊き上がりが期待できます。IH式はマイコン式に比べ、温度制御が安定しているので、吸水工程でじっくり米の中まで吸水させることが可能。炊き上げ時には一気に温度を上げて素早く対流させ、沸騰維持もしやすいなど、炊飯工程の温度変化のグラフを見るだけで、IH式のほうがおいしいごはんが炊けるのは明らかです
さっそく、「HAC-RCIH01」でごはんを炊いてみましょう。搭載している炊飯モードは「炊飯」「低糖質」「早炊き」の3種類。今回は、標準的な炊き方「炊飯」モードで1合分の白米を炊きます。なお、「HAC-RCIH01」の炊飯プログラムには吸水工程も含まれているので、洗米後、すぐに炊き始めてOK。無洗米にも対応しています。
「HAC-RCIH01」で炊飯できるのは1/2合、3/4合、1合の3パターン。付属の計量カップにある目盛りに合わせれば計量できます
内釜で洗米できますが、内釜が傷つかないようにやさしく洗いましょう。内釜の直径が小さく、深さがあるので洗いづらいのでは? と心配していましたが、困ることなく洗えました
内釜の内側には水位線が記されているので、米の合数に合わせて水を入れます。その後、内釜を本体にセット
操作ボタンは取っ手部分に配置。「選択」ボタンをタッチして「炊飯」を選択し、5秒ほど待つと炊飯が始まります。硬さの設定などはできないので、少し硬めに炊きたいときは水の量で調整しましょう。なお、消費電力は400W
炊飯中は蒸気が出るので、影響がない場所で使いましょう
炊飯が終わるとブザーが鳴り、炊き上がったことを知らせてくれると同時に、自動で保温に切り変わります。保温時間は最大12時間です
約50分で炊き上がったごはんを見てみましょう。ふたは回して開ける仕様ですが、使いづらさは感じません
炊き上がったごはんは、一粒一粒にハリがあります。ツヤツヤしていておいしそう!
洗米のときと同様に、手持ちのしゃもじではよそいにくそう……と懸念していましたが、ちょうどいいサイズのしゃもじが付属しているので問題なし
炊きムラはなく、米の甘みや粘りも引き出されていました。粒感もあり、おいしいごはんです
試しに、ほかの1合炊き炊飯器でもごはんを炊いてみました。上述のとおり、「HAC-RCIH01」以外の1合炊きタイプは弁当箱形状で、マイコン式。炊き上がったごはんは、やや炊きムラがあり、均一な食感は得られませんでした。また、ごはんの風味や味も薄く、もちもち感はない印象
指をごはんに当てて持ち上げてみると、くっついてくる米粒の量に差が出ました。「HAC-RCIH01」で炊いたごはんのほうが、粘りが強い証拠です
この炊き上がり具合は、炊飯量を変えても同じでした。といっても、「HAC-RCIH01」で炊けるのは1/2合、3/4合、1合ですが、炊飯量の差がそれほど大きくないので安定した炊き上がりになるのでしょう。
最も量の少ない1/2合(0.5合)で炊いたごはんも均一に炊けている印象。甘みや粘りもほどよくあります
専用の炊飯モードは用意されていませんが、「炊飯」モードで炊き込みごはんを炊くこともできます。普段使っている普通の炊き込みごはんの素を使ってもよかったのですが、1合分ならちょっとリッチな炊き込みごはんを作ってみよう! と思い立ち、少々高級な炊き込みごはんの素と缶詰を入れて作ることにしました。
ちょっと奮発して、「北海道産 紅ずわいがに」の缶詰(1,620円/税込)と、1合用の炊き込みごはんの素「金目鯛めしの素」(1,280円/税込)を購入。たくさんの量を作るとなると躊躇しますが、ひとり分なら、たまにならイケる!
米と水、食材などを入れ、白米を炊くときと同じように「炊飯」モードで炊くだけ
「金目鯛めしの素」を入れた炊き込みごはんは、金目鯛の切り身付きの贅沢な一品。料亭に食べに来たかのような気分になれます
ちょっとリッチな炊き込みごはんの素でなく、缶詰を使って“ごちそうになる炊き込みごはん”を作ることもできます。かにの塩気でほんのり塩味の炊き込みごはんが完成しましたが、醤油などを入れたほうがもっとおいしかったかも。炊き込みごはんの素は出汁も用意されているので問題ありませんが、缶詰を使う場合は、缶詰の種類によっては調味料をプラスしたほうがいいかもしれません
そして、高カロリーな食材を使った背徳感たっぷりの炊き込みごはんも「HAC-RCIH01」で作るのに向いています。米の量を0.5合にして炊けば、食べ過ぎが防げるので安心!
コーンとベーコン、そしてバターをたっぷり入れた炊き込みごはんも、0.5合ならお茶碗1杯分。「HAC-RCIH01」は0.5合でも炊き上がりが安定しているから、お茶碗1杯分の炊き込みごはんでもおいしく炊けます
白米だけでなく、発芽玄米や雑穀米(白米に雑穀を混ぜたもの)も「炊飯」モードで炊飯可能。ただし、水加減は白米と異なることがあるので、使用する発芽玄米などのパッケージに記載されている水加減に合わせて準備します。それが面倒なら、白米と同じように炊けるタイプの商品を使うといいでしょう。
玄米は少し硬めの炊き上がりでしたが、マイコン式の炊飯器で炊いたようなポソポソとした感じではありません。ふっくらと炊き上がっており、食感も含め個人的には好みです
炊きたてのごはんは満足できるおいしさでしたが、保温したごはんや冷えたごはんのおいしさも気になります。ということで、試してみました。
「HAC-RCIH01」に炊飯の予約機能は搭載されていないので、基本的には炊きたてのごはんを味わうのが主な使い方でしょう。最大12時間保温できますが、構造を見る限り、長時間保温をするようには作られていないと思います。ただ、炊飯をスタートした後に近所に買い物に出かけたものの、予定よりも時間がかかってしまい、炊き上がり時間に帰宅できなかったというようなことがあるかもしれません。そんなケースを想定し、1時間30分保温してみました。
1時間30分保温したごはんの見た目は、炊き上がりとほぼ変わりませんが、食べてみると少し水分が失われていました。炊きたてのおいしさを知っているので、保温してしまうのはもったいない印象
「HAC-RCIH01」で1合分炊飯し、半分を食べて、残りをお弁当に入れて持っていくなんて使い方ができると便利。朝に炊飯して会社に持っていった設定で、常温の涼しい場所に5時間放置した結果を見てみましょう。
炊きたてと比べるとやや水分が減少した感じはあるものの、十分、おいしい。米本来の甘みや旨みをしっかり感じられるので、冷めたいままでもイケます
弁当箱に詰めずにおにぎりにする人もいるのではないかと思って、試してみました。こちらも5時間経過後に試食しましたが、ラップで包んでいたためかパサつきはありません(ということは、上述の結果は弁当箱の問題なのかも!?)。もっちりとした食感を残しつつ米粒はほろっとほどけます
ちなみに、今回は試していませんが、通常の「炊飯」モードよりも約15分短い時間で炊ける「早炊き」モードや、糖質を約20%抑制できる「低糖質」モードも搭載しています。
「低糖質」モードでは、付属のザル釜を使用。ザル釜に米を入れて炊飯することで、糖質を含んだ煮汁を内釜に排出する仕組みです。糖質を約20%抑制できるという点については、(一財)日本食品分析センターに「炊飯」モードで炊飯した米の糖質量と「低糖質」モードで炊飯した米の糖質量の測定を依頼し、その数値をもとに算出しているとのこと
一度にたくさん炊いて冷凍保存するような使い方はできないため、毎日ごはんを食べるとなると、「HAC-RCIH01」の場合、毎日お手入れしなければなりません。お手入れ点数が多いと洗い物が大変ですが、通常の炊飯の場合、毎回洗わなくてはならないのはふたと内釜のみ(正確には、しゃもじとお茶碗もですが……)。内釜が小さくて軽いので、シンクが小さめでも洗いやすいのもいいところです。
一般的な炊飯器にはふたの内側に反射板がありますが、「HAC-RCIH01」には付いていません。1合炊きのIH式なので、反射板がなくても火力は問題ないそう
洗浄する点数は少ないですが、ふたの内側にある「蒸気口パッキン」を取り外して洗う必要があります。かなり小さなものなのでなくさないように注意するとともに、使用時に付け忘れないようにしましょう。ちなみに、ふたの外周のパッキンは取り外せません
3,500円〜7,000円台で購入できるマイコン式の1合炊き炊飯器と比べると、「HAC-RCIH01」は11,636円と少々高めです(2023年6月14時時点の価格.com最安価格)。しかし、マイコン式とIH式は炊き上がるごはんの味に歴然とした差があり、今回食べ比べた結果、この価格差は妥当だと思いました。オフィスなどで炊きたてのごはんが食べられることを目的とした弁当箱型の炊飯器とはコンセプトが違うため、比較するものではないかもしれませんが、1合炊きの炊飯器に本格的な炊き上がりを追求したIH式が登場したのは、少量でおいしいごはんを食べたい人には魅力的な選択肢が増えたと言えるでしょう。
また、炊き込みごはんや発芽玄米を炊けるのもいいところ。ちょっと高級な食材を使った炊き込みごはんは、自宅にいながら非日常の食卓を楽しめ、たまに食べたくなる高カロリーなものも食べきりの量にしておけば自制できます。ひとり分のごはんをおいしく炊けるというだけでなく、ひとり分の炊飯器だからできる楽しみ方が発見できそう。
編プロでの広告制作、雑誌編集を経てフリーライター/エディターに。家電をはじめ、自動車、ファッション、ビジネス関連など幅広い分野で活動。86年、秋田県出身。「大曲の花火」とグミをこよなく愛する。