レビュー

聴くか録るか? CD新時代到来を告げる対極的な2モデルを検証

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近ごろ、CDが見直されているという。時代が一周回った感もあるが、個人的には「さもありなん」という印象だ。Compact Discというだけに、アナログレコードと比較して物理的に小さく、曲スキップなど再生操作も簡単。中古品も豊富にあるし、よほど保管状態が悪いものでなければ新品と同じ音質で(理論上)聴けてしまう。

そのCDを聴く方法は2つ。CDをそのまま再生して聴く「プレーヤー」と、ファイル化したものを聴く「リッピング」だ。かつてはPCがその両方を担いうるデバイスとして普及していたが、ノートPCの薄型化とストリーミングの普及で光学ドライブ非搭載機種が支配的となり、CDを聴くことも録ることも難しくなってしまった。

そこに登場した2台の新製品。水月雨の「DISCDREAM 2 Ultra」は再生したCDの音をアナログ/ヘッドホン出力するプレーヤータイプ、Shanlingの「CR60」はデジタル出力とリッピングの機能を備えたトランスポートタイプ。どちらもCDの音を楽しめるが似て非なるもの、実際に使用してみることにした。

水月雨「DISCDREAM 2 Ultra」(写真上)とShanling「CR60」(写真下)

水月雨「DISCDREAM 2 Ultra」(写真上)とShanling「CR60」(写真下)

水月雨「DISCDREAM 2 Ultra」

水月雨「DISCDREAM 2 Ultra」

水月雨「DISCDREAM 2 Ultra」は、169(幅)×154(奥行)×34(高さ)mm、重量710g(いずれも実測値)というコンパクトなCDプレーヤー。8時間の音楽再生が可能な3,500mAhのバッテリーを内蔵し、ポータブル機として利用できる。筐体はアルミ製で質感上々、ふたが開閉するトップローディングタイプでメカ的な雰囲気が漂う。

水月雨のポータブルCDプレーヤー「DISCDREAM 2 Ultra」

水月雨のポータブルCDプレーヤー「DISCDREAM 2 Ultra」

天面のふたが開閉するトップローディング方式を採用

天面のふたが開閉するトップローディング方式を採用

CDの再生は簡単そのもの、ふたを開けてセットし再生ボタンを押すだけ。側面には3.5mmと4.4mmバランス、ラインアウト(光デジタル兼用)端子が各1基用意されているので、好みのヘッドホン/イヤホンで聴くもよし、コンポにつなぎスピーカーリスニングを楽しむもよし。リモコンは付属しないが、フロントパネルには再生/一時停止や音量調整ボタン、リピート再生やシャッフル再生を切り替えるボタンが用意されているので、用は足りる。

フロントパネルには、再生コントロール用のボタンが並ぶ。曲番号や再生時間、バッテリー残量などを確認できる小型のディスプレイも設けられている

フロントパネルには、再生コントロール用のボタンが並ぶ。曲番号や再生時間、バッテリー残量などを確認できる小型のディスプレイも設けられている

各種出力端子は本体右側面にまとまっている

各種出力端子は本体右側面にまとまっている

本機のユニークな点に、USB DACとして機能することがあげられる。フロントパネルの停止ボタン(■ボタン)を長押ししてPCモードに切り替えたあと、PCとUSB-Cケーブルで接続すれば、PCにUSB DACとして認識される。ドライバーなど特別なソフトは不要でWindows/MacはもちろんスマートフォンもOK、「iPhone 15 Pro」にもUSB DACとして認識された。

DACはCirrus Logicのフラッグシップ32bit DAC「CS43131」をデュアルで搭載、PCM384kHz/32bitおよびDSD256の再生に対応する。水月雨では、これまでにもこのチップを採用したUSB DACをいくつか発売しているから、使いこなしという意味でも安心感がある。

本体リアパネルのUSB-CとUSBケーブルでつなげればUSB DACとしても利用可能

本体リアパネルのUSB-CとUSBケーブルでつなげればUSB DACとしても利用可能

USB DACとしても機能するから、PCやスマートフォンと接続すればストリーミング再生も高音質で楽しめる

USB DACとしても機能するから、PCやスマートフォンと接続すればストリーミング再生も高音質で楽しめる

イヤホンで人気が高いブランドだけあって、サウンドはしっかりしている。4.4mmバランスでCDを試聴したが、見通しがいいうえに粒立ちがある。LRのセパレーションも良好、引き締まった印象だ。Macと接続しAmazon Musicで192kHz/24bitのハイレゾ再生も試してみたが、CDを上回る情報量とダイナミックレンジの広さを確かに感じる。個人的には、100ステップと細かく調整できるボリュームが気に入った。

PCとUSBで接続できるCDプレーヤーというと、CDリッパーとして使える外付け光学ドライブを想像しがちだが、この「DISCDREAM 2 Ultra」は光学ドライブとしては認識されない。リッピングは必要なし、むしろPCやスマートフォンと接続しストリーミングをいい音で楽しめるほうがいい、という向きにはいいチョイスとなるはずだ。

水月雨「DISCDREAM 2 Ultra」

Shanling「CR60」

CD再生環境が欲しい、しかしリスニング環境は変えたくない、そんな向きにはShanlingのCDトランスポート「CR60」がおすすめだ。CDを再生できるといっても、前段で紹介した「DISCDREAM 2 Ultra」とは方向性がまったく異なる製品であり、刺さる人には刺さるに違いない。

ShanlingのCDトランスポート「CR60」。CDドライブにはフロントからアクセスする形で、再生コントロール用のボタンや小型のディスプレイなども並ぶ

ShanlingのCDトランスポート「CR60」。CDドライブにはフロントからアクセスする形で、再生コントロール用のボタンや小型のディスプレイなども並ぶ

「CR60」は再生信号をデジタル出力するCDトランスポートだから、ヘッドホンアンプはもちろんDACも搭載されていない。「DISCDREAM 2 Ultra」とは異なり、ヘッドホン直挿しでCDを聴くことはできないのだ。

しかし、手元にUSB入力が可能なデバイス、すなわちUSB DACを搭載したデバイスがあればOK。DAC搭載コンポに接続してスピーカーリスニングに利用してもいいし、USB DACとして機能するDAPにつないでヘッドホンで聴いてもいい。DACとアンプはお気に入りのものを使いたい場合には、CDトランスポートを選ぶほうが合理的だ。

デジタル出力が3系統用意されているところもポイントだ。USB-Aとデジタル同軸(COAX)、光デジタル(TOS-LINK)の中から選べるので、USB-DACがないシステムとも組み合わせられる。サウンドバーや薄型テレビのようにUSB-DACは持たないがTOS-LINKはある、というデバイスでCDを聴くのも面白いだろう。

リアパネルには3系統のデジタル出力が用意されている

リアパネルには3系統のデジタル出力が用意されている

USB DACとしても動作するShanling「M1 Plus」を接続して試聴してみたが、なかなかイケる。このコンパクトなDAP、コンパクトながらデュアルオペアンプ回路やKDSフェムト秒低位相ノイズ水晶発振器を搭載する凝った仕様で、キレと透明感のあるサウンドが持ち味なのだが、それがそのまま生きている印象だ。ケーブル接続とバッテリー管理の手間はあるものの、「CR60」が据え置き型(USB-Cを電源にできるためポータブルで使えないことはないが)であることを踏まえれば、むしろいつでも好みの音に変更できるアドバンテージとなる。

Shanling「M1 Plus」をUSB DACとして接続して試聴を実施

Shanling「M1 Plus」をUSB DACとして接続して試聴を実施

ちなみに、「CR60」はCDリッパーとしても機能する。操作は超が付くほど簡単で、背面のディップスイッチを「RIPPER」に切り替えてから、リアパネルのUSB-AポートへUSBメモリーを挿し込めばOK。これだけで、トレーにセットしたCDの全曲がWAVフォーマットでUSBメモリーに保存される。FLACやAACにエンコードしたり(freedbなどの)CDDBから取得したメタデータをセットしたりはできないが、必要であればPCで処理すればいいだけのこと。

RIPPERモードに切り替え、USBメモリーを挿すだけでリッピングが開始される

RIPPERモードに切り替え、USBメモリーを挿すだけでリッピングが開始される

実際、「MacBook Air(M2、macOS Sequoia)」にUSB-C接続してみたところ、すぐに外部ドライブとして認識。フリーソフト「XLD」で「フォルダをディスクとして開く...」を選択したところ、そのままFLACエンコードに進むことができた。freedbから取得したCDメタデータの埋め込みもOKだから、機能的には文句なし。オーディオファンにとっては、USB光学ドライブよりCDトランスポートとしても活用できる「CR60」のほうがお買い得な気がするが、どうだろう?

Macの定番ソフト「XLD」を使い、CDをそのままFLACエンコードできる

Macの定番ソフト「XLD」を使い、CDをそのままFLACエンコードできる

海上 忍
Writer
海上 忍
IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。
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遠山俊介(編集部)
Editor
遠山俊介(編集部)
2008年カカクコムに入社、AV家電とガジェット系の記事を主に担当。ポータブルオーディオ沼にはまり、家にあるイヤホン・ヘッドホンコレクションは100オーバーに。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットにも手を出している。家電製品総合アドバイザー資格所有。
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