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「X3800H」から何が進化した? デノンAVアンプ「AVR-X3900H」が初心者にも推せる理由

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9chのパワーアンプを内蔵したAVアンプ「AVR-X3900H」

9chのパワーアンプを内蔵したAVアンプ「AVR-X3900H」

デノンは2026年6月26日に9chのパワーアンプを内蔵したAVアンプ「AVR-X3900H」を発売した。価格は279,400円(税込)。マニアにとってはなじみのある型番からわかるとおり、2022年の発売以来、価格.comでも人気の「AVR-X3800H」の後継機種だ。

従来モデル「AVR-X3800H」が支持されていたのは、AVアンプとしての音のよさはもちろん、マニアックな機能を満載した高コストパフォーマンスモデルだったから。当然ながら「AVR-X3900H」はその特徴を引き継ぎつつ、音質をブラッシュアップ。ただでさえ多機能だったところに、独自の新機能まで追加している。

なお、価格が落ち着いて割安感のある従来モデル「AVR-X3800H」はしばらく併売されるとのこと。そこで、ここでは「AVR-X3900H」を紹介するとともに改めて「AVR-X3800H」にもスポットを当てたい。どちらもDolby Atmos(サラウンド)をよい音で聴きたい!という人に注目してほしい製品だ。

「AVR-X3900H」「AVR-X3800H」は異例なほどの多機能機

新モデル「AVR-X3900H」は、9chパワーアンプをはじめ、従来モデル「AVR-X3800H」の基本的な特徴をほぼ引き継いでいる。改めて従来モデルからの特徴を振り返ると、以下のとおり。詳細は「AVR-X3800H」発売時の関連記事もご覧いただきたい。

「AVR-X3900H」「AVR-X3800H」の共通特徴

全ch同一のディスクリートパワーアンプ搭載

内蔵する9ch分のパワーアンプは全ch同一構成のディスクリート(個別の部品で構成された)仕様。これはいかにもデノンらしいこだわりの部分だろう。汎用的なモジュールなどに頼らず、ベーシックな高音質を目指した跡ともとれる。出力についても105W(8Ω、2ch駆動時)で従来から変更なし。

内蔵パワーアンプは9ch分。下部に見えるヒートシンクに並ぶように増幅素子が取り付けられている

内蔵パワーアンプは9ch分。下部に見えるヒートシンクに並ぶように増幅素子が取り付けられている

最大6本のオーバーヘッドスピーカーと4本のサブウーハーを接続可能

AVマニアにとって、非常に重要な部分がDolby Atmosなどの再生時に何本のオーバーヘッドスピーカー(天井近辺に設置するハイト/トップスピーカー)を接続できるのか。一般的なミドルクラスの製品では、2本から4本接続できることが多いが、「AVR-X3900H」「AVR-X3800H」では最大6本の接続が可能。より濃密に空間を満たすDolby Atmos再生を狙えるというわけだ。

さらに、サブウーハーは4本まで接続可能。そこまでする人はマニアでも少数派のはずだが、ここまでできる懐の深いミドルクラス製品は非常に珍しい。

内蔵アンプは9ch分だが、外部パワーアンプを組み合わせれば最大11.4ch(「5.4.6」や「7.4.4」構成)のプロセッシングが可能。そのため、スピーカー端子は11個横に並んでいる

内蔵アンプは9ch分だが、外部パワーアンプを組み合わせれば最大11.4ch(「5.4.6」や「7.4.4」構成)のプロセッシングが可能。そのため、スピーカー端子は11個横に並んでいる

あえて内蔵パワーアンプを使わない「プリアンプモード」搭載

さらにマニアックな機能として「プリアンプモード」がある。これは内蔵した9ch分のパワーアンプをあえて使わないモードのこと。極まったマニアは単体パワーアンプを使いたいことがあるため、AVアンプをあくまでプロセッサー兼プリアンプとして使うモードが用意されているのだ。

元々パワーアンプを内蔵していない「AVプリアンプ」という製品もあるが、マニア向けのニッチな製品なので基本的に高価なことが多い。その点、「AVR-X3900H」「AVR-X3800H」ならば、比較的低価格でAVプリアンプ的な製品を導入できる。

有償で高度な音場補正機能「Dirac Live」にも対応

多数のスピーカーを扱うAVアンプには、自動音場補正と呼ばれる機能があることがほとんど。もちろん、「AVR-X3900H」「AVR-X3800H」も自動音場補正機能を持っている。補正機能は2つ。無償で使える「Audyssey(オーディシー)」による補正と有償で使える「Dirac Live(ディラク・ライブ)」だ。

一般的には「Audyssey」で十分だが、さらに細かな設定を追い込みたい、という人は「Dirac Live」もどうぞ、という建て付けだ。「Dirac Live」は主に北米市場でカスタムインストーラー(ホームシアターの設計や設定をする職人)向けに用意されたものだという。

その他、信号経路の最短化を図り、ノイズの影響を避ける設計が徹底されていること、コンデンサーなどのパーツ選定にこだわることなど、オーディオ機器としての作り込みのよさがデノン製AVアンプの共通した特徴だと言える。

と、「AVR-X3900H」および「AVR-X3800H」はミドルクラスのAVアンプとしては非常に力が入っている。一般的なユーザーには使われないことも珍しくないマニアックな機能が並んでしまうほどに。デノンのAVアンプが基本的に対応しているネットワークオーディオ機能「HEOS(ヒオス)」ももちろん利用できる。Spotify、Amazon Music、QobuzなどをAVアンプ単体でも再生可能だ。同価格帯の製品としては、異例なほどの多機能だと言ってよいだろう。

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2022/09/15 17:00

「AVR-X3900H」の進化ポイントは3つ

それでは、「AVR-X3900H」ならではの進化ポイントはどこにあるのか。大まかに言えば以下の3点に集約される。なお、増幅用のパワートランジスタはもとより、回路的な変更はされていないという。

D/Aコンバーターの変更

「AVR-X3900H」の音質に関わる最も大きな変更点はデジタル音声をアナログに変換するためのD/Aコンバーター(DAC)素子だろう。音質向上のための検討を重ねた結果、採用されたのは電流出力型DAC。このDACから出力される電流信号を電圧に変換(I/V変換)することになるのだが、この部分や周辺回路にこだわり、総合的な音質向上を図ったという。

カスタムメイドのブロックコンデンサーを搭載

コンデンサー1つひとつにこだわり、重要と判断した部分はカスタムパーツを採用するという手法は新製品でも健在。デノン最高級モデル「AVC-A1H」で得た知見をベースとして、材料を踏襲し、箔の引っ張り強度、巻きテンションまで管理するという徹底した作り込みを行った。

新機能:「ワイヤレスサラウンド」「チャンネルエキスパンダー」に対応

新機能については細かなものがいくつかあるが、特に有用なのは、デノン製ワイヤレススピーカーを組み合わせた「ワイヤレスサラウンド」(後日のソフトウェアアップデートで対応予定)、オーバーヘッドスピーカーを4本以上使った際に役立つ「チャンネルエキスパンダー」の2つだろう。

ワイヤレススピーカーでサラウンドできる「ワイヤレスサラウンド」

「ワイヤレスサラウンド」機能はソフトウェアアップデートで対応予定

「ワイヤレスサラウンド」機能はソフトウェアアップデートで対応予定

試聴位置の後ろに置くサラウンド(リア)スピーカーにデノン製ワイヤレススピーカーを利用できる。制限はあるものの、手軽にサラウンドスピーカーを設定したい人には非常に便利な機能だろう。対応スピーカーは「Denon Home 200」「Denon Home 400」「Denon Home 600」のみ。

オーバーヘッドスピーカーをフル活用できる「チャンネルエキスパンダー」

Dolby Atmos音声の再生時に有効な「チャンネルエキスパンダー」

Dolby Atmos音声の再生時に有効な「チャンネルエキスパンダー」

オーバーヘッドスピーカーを4本以上使っている場合に有用なのが「チャンネルエキスパンダー」。Dolby Atmos音声再生時、4本のオーバーヘッドスピーカーのうち、2本しか鳴らない音源がある。その場合にAVアンプが独自に拡張を施し、4本のオーバーヘッドスピーカーを鳴らしてくれる。

そのほか、アンプのアサイン(割り当て)の自由度がアップしている。具体的には、センターチャンネルを使う場合に、「バイアンプ」モードを選択可能になった。アンプを2つ割り当て、より強力に駆動するためのモードだ

そのほか、アンプのアサイン(割り当て)の自由度がアップしている。具体的には、センターチャンネルを使う場合に、「バイアンプ」モードを選択可能になった。アンプを2つ割り当て、より強力に駆動するためのモードだ

ゲーム関連の新機能として、1440p信号とAMD FreeSyncのパススルーに対応した

ゲーム関連の新機能として、1440p信号とAMD FreeSyncのパススルーに対応した

これぞDolby Atmos! と言いたくなる没入感を味わえる

D&Mホールディングスで「AVR-X3900H」の音質をチェック。スピーカーはBowers&Wilkinsの「800D4」シリーズを中心とした豪華な「5.2.4」システム

D&Mホールディングスで「AVR-X3900H」の音質をチェック。スピーカーはBowers&Wilkinsの「800D4」シリーズを中心とした豪華な「5.2.4」システム

上記のように音質と機能面双方で進化した「AVR-X3900H」。実際の音質、機能の有用性はどうなのか? D&Mホールディングスの試聴室で体験できた。

デモンストレーションとしてフォープレイのCDがかかると、エレキベースの弾力に富んだ響きが印象的に響く。フュージョン特有のタイトな演奏にしっかり追従する反応のよさだ。もちろん、この試聴室の環境のよさがあってのことだが、「AVR-X3900H」の基本音質がすぐれていることは明らか。

そうした美点はサラウンドにも反映されている。厚みのある音が自然に部屋を満たすのだ。Ultra HDブルーレイ「セッション」のビッグバンド演奏シーンは王道のDolby Atmos体験と言いたくなる包囲感と分離のよさ。あくまでステージ上での演奏が自然にミックスされているので、演奏が急に上から降ってくるようなことはない。映像に追従してその楽器へぴったりと音がフォーカスする。この映像と音のリンクが作品に入り込んだような没入感を高めてくれるのだ。

ドラムソロ演奏なんて生音を現場で聴いたらもっとやかましいはずだが、うまく映画の嘘の範疇で音響的に設計されている。それをもっともらしく、設計に忠実に再現してくれる「AVR-X3900H」は実にすばらしいと思う。

「チャンネルエキスパンダー」は積極的に使いたくなる気の利いた仕様

新機能「チャンネルエキスパンダー」のデモンストレーションも同じ環境で体験できた。オーバーヘッドスピーカー4本(フロントハイト+トップミドル設定)でUltra HDブルーレイ「トップガン マーヴェリック」に収録されたDolby Atmosを再生すると、通常はトップミドル(2本)だけ鳴るのだが、新機能を使うとフロントハイトも鳴るというものだ。

接続したオーバーヘッドスピーカーをすべて使わない「スタティック」(静的)なDolby Atmosが悪いわけではないが、せっかく4本あるいは6本のオーバーヘッドスピーカーを使っている人からすると、やや残念なのは間違いない。ただ、わざわざ拡張する必要があるのか……と思いつつ試聴したところ、この効果がなかなかよさそう。

短時間の試聴では「全然違う!」とまでは感じられなかったものの、部屋を満たす包囲感が強まる印象だった。試聴者の頭上をダークスターが通り抜けて離陸していく“いつもの”デモンストレーションシーンでは、より移動感がスムーズに感じられたのだ。

再生する素材によっても違いはありそうだが、効果の強弱が変更できるうえ、「Direct」や「Pure Direct」モードで再生すればこの効果はオフになるという気の利いた仕様。オーバーヘッドスピーカーを4本以上接続しているならば、積極的に使って楽しんでもらいたい。

既発売モデル「AVC-X2850H」で実装されていた「チャンネル・レベル・モニタリング」機能も使えるようになった。この機能で「チャンネルエキスパンダー」の動きも一目瞭然。音が出ていなかったフロントハイト(FH)から、しっかりと音声が出力されていた

既発売モデル「AVC-X2850H」で実装されていた「チャンネル・レベル・モニタリング」機能も使えるようになった。この機能で「チャンネルエキスパンダー」の動きも一目瞭然。音が出ていなかったフロントハイト(FH)から、しっかりと音声が出力されていた

簡単に“ちゃんとサラウンド”できる「ワイヤレスサラウンド」

「ワイヤレスサラウンド」機能のデモンストレーションはD&Mホールディングス内の部屋で実施された。「Denon Home 200」をサラウンド(リア)スピーカーとして2本設置したサラウンド再生だ。当たり前なのだが、これがちゃんとサラウンドしてる! 対応製品が限られているほか、若干制限もあるようだが、あるとないとでは大違い。サラウンドはできるだけ簡単に実現したい……と考えるユーザーに”刺さる”機能だろう。

普段は寝室で使っている「Denon Home 200」を映画を観るときにはAVアンプに接続して……という使い方を想定しているようで、設定は専用アプリで簡単に行える。もちろん、一度設定しておけば、次回からはよりスムーズに接続できる仕様だ。他メーカーのAVアンプでは似たような機能があるだけに、待望の新機能と言えるかもしれない。

ワイヤレススピーカー「Denon Home 200」をサラウンドスピーカーとして使い、5.1ch音源を再生。疑似的な再現とは一線を画すサラウンドのクオリティーだった

ワイヤレススピーカー「Denon Home 200」をサラウンドスピーカーとして使い、5.1ch音源を再生。疑似的な再現とは一線を画すサラウンドのクオリティーだった

【まとめ】見事なアップグレードが施された「AVR-X3900H」は初心者もマニアも買って損なし!

「AVR-X3900H」は従来モデル「AVR-X3800H」の実に見事なアップグレードモデルだ。「AVR-X3800H」の後継機種が登場すると説明されたときは、平常運転で音質をブラッシュアップしてくれているのだろう、と思ったのだが、ちょっとした音質強化を超えてしっかりアップデートされている。

昨今の円安基調もあり、両モデルの価格差はかなり大きいが、「AVR-X3900H」にはそれだけの価値がある。音質だけでも目を見張るものがあるが、より手軽にサラウンド(リア)スピーカーを設置できる初心者にありがたい「ワイヤレスサラウンド」機能のほか、オーバーヘッドスピーカーを4本以上使う人にしか関係のない「チャンネルエキスパンダー」というマニアックな機能も追加。ただでさえ懐の深い製品だった「AVR-X3800H」がさらに強化されている。

音楽を中心に楽しみたいというユーザーは2ch音楽再生用のプリメインアンプを選びがちだが、映画も、という考えがよぎるならば「AVR-X3900H」はマニアや中級者だけでなく初心者にとってもよい選択肢になるだろう。ネットワークオーディオ機能で音楽ストリーミングを手軽に楽しめるし、「ワイヤレスサラウンド」でサラウンド再生にも手が届きやすくなっている。今は使わない機能も、後々必要になることもあるかもしれない。そのときにも買い替えの必要なしに長く楽しめるはずだ。

冒頭のとおり、従来モデル「AVR-X3800H」もしばらくは市場で併売されることになるという。「チャンネルエキスパンダー」や「ワイヤレスサラウンド」が必要ないという人にはそちらもよい選択肢だ。前世代機にはなるが、音質や基本機能は文句なしにすぐれている。新世代機が発売された今、購入の最後のチャンスだろう。

どちらも、これから高音質でサラウンドを楽しみたい、と思うならば選んで間違いはない。特に「映画を観てる!」という満足感を求めるならば一度体験していただきたい。簡易的なサウンドバーなどでは味わえない没入感を味わえるはずだ。

柿沼良輔(編集部)
Writer / Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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