イヤホン人気は相変わらず安定しており、2〜3万円のモデルもちゅうちょなく売れるようになっている。10年ぐらい前までは、イヤホンで8,000円は「高い!」と言われていたのが嘘のようだ。
さてイヤホンも高級モデルになると、リケーブルできるように作られている。ケーブルによる音質の変化を楽しむというのが主な目的だが、そこに注目したユニークな製品が、ソニーのワイヤレスオーディオレシーバー「MUC-M2BT1」である。
これは何かというと、リケーブル可能なイヤホンを、Bluetooth対応に変えるレシーバーだ。プラグは独自の同軸型とされているが、MMCX互換である。そもそもリケーブルして楽しむような層と、Bluetoothイヤホンを求める層はニーズが逆行する。一般的にBluetoothは音質が劣るとされており、ハイエンド層には馴染まないのである。
リケーブル対応イヤホンをワイヤレスに
端子はMMCX互換
だがそうは言っても、ハイエンド層の人がいつもいつも眉間にしわを寄せて高級DACで音楽を聴いているわけではなかろう。たとえばつけ心地のいいカスタムイヤホンを、通勤時にケーブルなしで気軽に楽しみたいという時だってあるはずだ。
実はこの手の製品は、これが最初ではない。2014年にはこれの前身となる「MUC-M1BT1」が発売されているが、細いケーブルのあちこちにコブのようなモジュールがくっついたような形状で、見た目にも気持ち悪かった。コーデックもaptX、AAC、SBCにしか対応しておらず、性能的には「普通」だ。
だが今回のM2BT1は、ソニーが推進するハイレゾ相当の伝送が可能となるLDACに対応した。逆の見方をすれば、自分が納得しているイヤホンでLDACを試してみたいというニーズにも応える製品となっている。
M2BT1は、デザイン的にも大きく変わった。同時発売のh.ear in Wirelessシリーズに合わせたネックバンドスタイルのデザインを採用しており、ファション的にも自然に装着できるようになっている。色は黒しかないのが残念だが、無難な色ではある。
ネックバンド部はやわらかい樹脂でできており、首にかける時に広げることができる。機能は左側に集中しており、電源とボリュームボタン、microUSBの充電ポート、音声通話に使うマイクがある。右側はNFCのポイントがあるのみだ。先端から細めのケーブルが出ており、その先がMMCX互換端子が付いている。通常のリケーブル用ケーブルと同様、端子の先も赤黒で色分けされており、左右を間違う心配はない。
左側にコントローラが集中
早速いくつかのイヤホンで使用してみた。同じソニー製のXBA-Z5は、ダイナミックドライバ1つとBAドライバー2つを組み合わせた3Wayドライバでハイレゾ対応の人気モデルだが、そもそもこのクラスでワイヤレスのイヤホンは存在しない。元々じっくり聴くためのイヤホンではあるのだが、ワイヤレスになることでリスニングのフィールドも広がる。場所を移動するたびに音源ごと持って行く必要がなくなるのは便利だ。
あのXBA-Z5もワイヤレスで楽しめる
もう一つ手持ちのイヤホンでお気に入りの、Just ear「XJE-MH1」を試してみた。こちらはソニーエンジニアリングが販売する、カスタムイヤホンである。自分の耳型を取って形を作るので、長時間の装着でも負担が少ないモデルだ。
こちらもリケーブルに対応しているので、M2BT1で利用することができる。元々XJE-MH1は、いわゆる「シュアー掛け」するように設計されているが、M2BT1でもケーブル長に余裕があるので、問題なくシュアー掛けができる。
カスタムイヤホンをワイヤレスにするのも面白い
カスタムイヤホンはかなり耳にガッチリはまって簡単に外れないようになっているので、何かの拍子にケーブルが引っ張られたりすると耳が痛い。その点では、ワイヤードで電車の中で聴くのはリスクが大きいわけだが、ワイヤレス化されればその懸念が大幅に減る。
ハイエンドモデルを、気合を入れて使うのではなく、普段使いでも便利に使う機器として、これはなかなかいいんじゃないかと思う。もうちょっとLDAC採用の再生機器が増えてくれるといいのだが、屋外で流し聴きする程度なら、aptXでも十分だ。リケーブルの一つの選択肢として、検討してみてはいかがだろうか。
AV機器評論家/コラムニスト。デジタル機器、放送、ITなどのメディアを独自の視点で分析するコラムで人気。メルマガ「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」も配信中。