小寺信良のGadget 2 Go!
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現役バリバリ、使い出のあるレコーダー ZOOM H2n

音声収録用のポータブルレコーダーは、2005年前後にリニアPCMブームが起こったのをご記憶だろうか。2004年にローランドが楽器練習用としてリニアPCMのレコーダー「R-1」をリリース、これがヒット商品となったのをきっかけに、各社一斉にリニアPCMレコーダーを製品投入し、にわかにナマ録ブームが巻き起こった。

いっぽうで筆者もライターとして、ICレコーダーは必須道具のひとつである。インタビューをリニアPCMのハイレゾで録る必要はまったくないのだが、この手の製品は内蔵マイクがよくできている。MP3で録音しても明瞭感があるため、筆者はローランドの「R-09HR」をボイスレコーダーとして永らく愛用してきた。

ただこれも2008年の製品ですでに現役8年目、塗装ははげ、底面のSDカードスロットを塞ぐゴムのフタもちぎれるなど、満身創痍である。最近はビデオ取材も増え、レコーダーが画面に写り込むことが多くなってきたのだが、見た目がよくないことになってきたので、思い切って新しい製品を買ってみることにした。

ところがいざ探してみると、すでにブームが過ぎ去って幾年月、すでにローランドは2010年以降同様の製品を出しておらず、未だ音楽系メーカーで元気なのは、TASCAMとZOOMぐらいである。そこで発売から5年ほど経ってはいるが、ZOOM の「H2n」というモデルを購入してみた。ルックスが往年のソニー「C-38B」を彷彿とさせるのも、画面に写るインタビューマイクとしてなかなか面白そうだ。

ユニークなルックスのZOOM H2n

ユニークなルックスのZOOM H2n

2系統のステレオマイクを装備

H2nがユニークなのは、ルックスだけではない。このマイクヘッド部分に、2系統のステレオマイクが仕込まれている。液晶画面がある方向には、XYレコーディングスタイルのステレオマイクがある。これは2つのマイクを90度に交差させて配置する方法で、多くのリニアPCMレコーダーが採用している。ほとんどのステレオ録音に、安心して使用できる方式である。

上部にマイク切り替えスイッチがある

上部にマイク切り替えスイッチがある

もう1セットは背面方向に仕込まれている、MSレコーディングスタイルのステレオマイクだ。真正面に特性が伸びたモノラルのミッドマイクと、それに対して十字にクロスする双指向性のサイドマイクを配置することで、ステレオ感を得る方式だ。この方式のポイントは、双方向性マイクのレベル調整によって、あとからステレオ感を調整できることだ。

あとから調整するためにはリニアPCMで録らなければならないが、録音現場でステレオ感を決めてしまえば、MP3での記録もできる。筆者の場合、インタビューマイクとして使用するにはモノラルの方がいいので、サイドマイクをOFFに設定している。そうすると指向性ありのモノラルマイクになるのだ。なおボディを手で持つとグリップノイズが入りやすいので、別途ハンドルを取り付けている。底部に三脚穴があるので、こういった細工も簡単にできるのがいい。

インタビューにはこういうスタイルで

インタビューにはこういうスタイルで

もうひとつ本機のユニークな特徴は、この2セットのマイクを全部生かして、サラウンド収録ができるところである。このサイズのポータブル機でサラウンド収録ができる製品は、世の中にこれぐらいしかないだろう。

最近はVRの視聴環境が急速に整いつつあるが、実写収録のVRコンテンツでは、当然音声もサラウンド収録する必要がある。改めてこの製品に注目が集まっているところだ。

なお今年5月にファームウェアアップデートが行なわれ、Googleが提唱するVRプラットフォーム「JUMP」のサラウンドオーディオフォーマットに対応(ニュースリリース)した。VRでは視聴者が向いている方向の音をリアルタイムでセンターに配置する必要があるわけだが、本機のSpatial Audioモードで収録すると、JUMPプラットフォーム上でそういう処理が自動的に行なわれる。

JUMPはYouTubeでも使用されているので、今後多くのVRコンテンツは、H2nを使った音声が増えるかもしれない。すでに発売開始から5年が経過する製品ではあるが、性能的には今でも十分で、しかもファームアップによって機能が追加され続けている。価格的にもこなれており、今面白い音声収録をやるなら、1台持っていて損はないレコーダーではないだろうか。

小寺信良

小寺信良

AV機器評論家/コラムニスト。デジタル機器、放送、ITなどのメディアを独自の視点で分析するコラムで人気。メルマガ「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」も配信中。

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