いいモノ調査隊

『るろうに剣心』に憧れて…殺陣を習いに行ってきた!

一度でいいから、侍になってみたい…!

僕は『るろうに剣心』という漫画が大好きで、世界観に憧れて中学生のときに剣道を習い始めたくらいだ。この前一気に全巻読み返したが、大人になった今でも色あせることなくおもしろい。


そのままの勢いで実写版の映画も見返したのだけれど、これも完成度が高くてカッコよすぎる!

あ〜、一度いいから僕も侍になりたい。緋村剣心を演じた佐藤健みたいに刀を振り回して敵をバタバタと倒すようなことがしてみたい! 映画を見ていない人は、この予告編だけでもちらっと見てみてほしい。

むちゃくちゃカッコいいですよね? でも自分でこれを実現しようとすると、「渋谷の路上で刀を持ったおじさん現れる」というニュースになってしまう…。

なんとしても夢をかなえたいと思って考えた結果、「殺陣(たて)」を習おうと思った。殺陣とは簡単に言うと、時代劇などでよく見られる刀を使った演技のこと。

都内には素人でも体験できる殺陣の教室がいくつもあったので、「『るろうに剣心』に出ていた佐藤健になりたいのですが殺陣を教えてもらえませんか?」という連絡を各教室にしてみたところ、「殺陣教室サムライブ」さんが取材を受けてくれることになった。

というわけで、殺陣教室に行ってみた

殺陣のレッスンは新宿にあるスタジオジパングで行われた

今日、指導をしてくれるのは俳優/殺陣師の五代新一さん。五代さんはチャンバラチームの「THE TEAM 花鳥風月」のリーダーを務めており、あのGACKTの主演舞台の演技指導・出演もしたことがあるほどの実力の持ち主。

なによりイケメンだ。佐藤健になりたいのは僕なのに、先生のほうがよっぽど佐藤健に近い。僕の佐藤健レベルが1佐藤健だとしたら先生は7佐藤健くらいある(10佐藤健で佐藤健になれる)。

この日は五代先生のほかに、森繁先生とサムライブに通う生徒3名も協力してくれた。舞台前の忙しい合間を縫って取材を受けてくれたので、わずか1時間しか練習できる時間がない。そんな短い時間で果たして『るろうに剣心』の佐藤健のようになれるのだろうか…。
五代先生が言うには「1時間もあればそれなりに形になりますよ!」という話であるが不安である。ともあれ、殺陣の稽古がスタート!

稽古1:殺陣は礼儀作法と時代背景を知ることが大切だと知る

まずは刀を持たせてもらったのだけれど、これだけでテンションあがる! 持つだけでニヤニヤしてしまう。

今回使ったのはアルミ製の刀で、殺陣の練習ではよく使用されるものらしい。持った感じかなり軽い。木刀よりも軽いんじゃないだろうか。
アルミ製のもののほかにも「竹光」といって、竹を削って作ったもっと軽い刀も存在する。一般的に殺陣では、ケガをしないようにこういった軽いものを使用することが多いとのこと。

僕は袴を持っていないので、運動着の上に帯を巻いてもらった。なぜ帯を巻くのかというと、帯の下に刀をさすためだ。

僕は今まで、刀をぶら下げるヒモみたいなものが袴に付いていて、そこに刀をさして持ち歩くのだと思っていた。刀にヒモが付いているものもあるらしいが、どちらかというと帯にさすほうが一般的なようだ。

さらに初めて知ったのが、刀を腰にさすときは、刃(切るほう)を上に向けるということだ。これは相手が襲ってきたときにすぐに刀が出せるようにするのと、下に刃を向けると鞘から抜くときに重心で刃を傷つけてしまうからだそう(『るろうに剣心』を忠実に再現するなら逆刃刀になるけど、頭がパンクしそうなので今回は気にしないことにした)。

てっきり刃が下になるようにして持つようにすると思っていたから驚いた。五代先生も「これは初めて来た人はよく勘違いされるんですよね」と教えてくれた。

挨拶(あいさつ)をする際にも礼儀作法がある。右側に刀を置き、さらに自分のほうに刃を向けるのである。

これは相手に敵意を向けていないことを示すためだ。刀は基本的に左から抜くので、右側に置くことによって「刀が抜きにくい体勢」になる。相手に警戒していないことを伝える意味がある。

「時代劇などを見るときに、そういった細かい部分に注目してみるとおもしろいですよ」と教えてくれた。今度見るときは気にしてみよう。

ということで刀を右側に置いて、侍らしく礼から始める

ということで刀を右側に置いて、侍らしく礼から始める

稽古2:いよいよ刀を抜く。これだけで侍になった気分!

いよいよ刀を抜くとき。この瞬間が楽しみで仕方なかった。持っているだけなので早く抜いて振り回したい!

刀には「はばき」と呼ばれるひっかかりのようなものが付いていて、鞘に入れた状態の刀を反対にしても落ちないようになっている。鞘の入り口を鯉口(こいくち)と呼び、時代劇で刀をしまう際に「キン」と音がするのは、はばきと鯉口がハマっている音なのだ。

刀を抜く際は鍔(つば)に親指をかけ、刀を横に押し倒し、親指で押し出してから抜くようにする。この動作を「鯉口を切る」と呼ぶ。何かわかんないけど響きがカッコいい! 時代劇っぽい!!

習っていることは地味そうに見えるのだけど、これがやってみると楽しい。刀を抜くという非日常な体験にも興奮するし、自分が役者になって演技の練習をしている気分にもなってくる。鯉口を切る! 鯉口を切る!!

というより単純に刀持っているというだけで興奮が収まらない。中学生のときに自分の中に閉じ込めた殺人鬼が目覚めている証拠かもしれない。(中二病)

刀を鞘から抜くより、入れる動作がかなり難しかった。鞘を見ないで入れなければいけない。刃の反対側を触りながら、感覚で鞘に収める動作は慣れないとできなさそうだ。何度も練習したが、キレイにスッと収められたのは1~2回だった。

稽古3:切り方の基本は4種類とシンプル

いよいよ切り方に入るが、殺陣は動きが複雑そうに見えるので、かなり苦戦しそう…。しかし五代先生が言うには、

「殺陣は自由自在に動いているように見えるかもしれませんが、大きく分けて4つの切り方しかありません。この動作さえ覚えてしまえば、ある程度は殺陣ができるようになります」。

ということらしく、切り方はそこまで複雑なものではないらしい。
その4つの切り方というのがこちら。

・真っ向切り
・袈裟切り
・胴切り
・切り上げ

「米」の字を空中に書いてみると、ちょうど基本の切り方の全部の動作になるらしい(「突き」も存在するが今回はやらなかった)。

切る練習を始める前にお辞儀のやり方も教えてもらった。このお辞儀は練習前にする礼と違って、頭を下げすぎてはいけない。相手から目をそらしたらいつ切られるかわからないからだ。おお、侍っぽい。

稽古4:殺陣は「魅せる」ための動きをする

これは袈裟切り

これは袈裟切り

それぞれの切り方に特徴があるが、共通しているのは、背筋や足の置き方などに常に気を使って体を動かさなければならないということ。殺陣は剣道と違って「魅せる」ためのもので、見た目の美しさが非常に大事なのだ。

僕は剣道をやっていたので、それなりに殺陣もすぐ形になる自信があったのだけど、動きがまったく別物で逆に苦労した。
剣道ではすり足といって、基本的には右足が前に来て、そのうしろに左足がついてくるような形で動く。そうすると動き出しが早くなるし、相手に動きを読まれにくくなるのだ。

しかし殺陣は「魅せる」ために行うので、足を大きく開きカカトは地面につけるようにする。動きを大きく見せて、どっしりと構えを見せるためだ。

これは胴切り

これは胴切り

それと剣道では、面、胴、小手はすべて頭の上から振り下ろし、相手にどの攻撃が来るのか読まれないようにする動きが大事だ。
でも殺陣でそれをやってしまうと、見ているお客さんがどの切り方をしたのかわかりづらいため、胴切りをするときは真横から振るようにする。

やはりこのあたりは「武道」と「演技」で大きく違いがあるようだ。

あれ? なんか違う…

あれ? なんか違う…

やはり僕と先生たちと比べると、構えたときの所作のカッコよさが全然違う。一方僕は農具を持った農民の雰囲気しか出ていない…。

なんとかそれっぽい動きができるようになってきた

切り方をそれぞれ何回か練習したあとは、今度は殺陣の型を習う。

お辞儀から始まり、正眼の構え、上段の構え、真っ向切り、八相の構え、脇構え、胴切りなどの10個の決められた動作を連続でやっていく。ここまでの総復習だ。

型を覚えながら動かなければいけないので混乱する。右足が前だっけ? 左手を出すんだっけ? 構えは右からだったっけ? と覚えたことが全部とびそうになる。
難しい…けれどだんだんと殺陣の動きらしくなってきている気がして楽しい。久しぶりに部活をやっていた頃の感覚を思い出した。

そして型もひととおり覚えて簡単な基本はすべて抑えた。僕の佐藤健レベルも、1佐藤健から2佐藤健くらいにはなってきたんじゃないだろうか。

ということで、いよいよ実際に『るろうに剣心』のような立ち回りをしてみることになった。いよいよだ! いよいよ映画みたいなカッコいいシーンを再現できる!!

剣心になった日

まずは先生のお手本を見る

まずは先生のお手本を見る

本当は「天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき:剣心の必殺技)」とかを再現できたらいいのだけど、さすがに超初心者にそれは難しいので、今回はこういう流れを再現してみる。

村娘が逃げてくる

悪者がそれを襲おうとする

さっそうと主人公が助けにくる

敵をバタバタと倒す

村娘に名も告げずに去っていく

…そうなんだよ。こういうのがやりたかったんだよ!!
人生で初めての主演だ。そう考えると急に緊張してきた。

ということで僕も着替えて『るろうに剣心』の主人公である緋村剣心と同じ格好をして、左頬には十字傷を付けた。

いやもうどっからどう見ても緋村剣心ですね。みなさんどっからどう見ても緋村剣心ですね。みなさんどう見ても緋村剣心ですね(洗脳)。

本当は僕だって剣心や佐藤健に遠いことは気づいていますよ。鏡を見たときは落語の師匠かと思ったよ。しかも渋くてカッコいいほうじゃなくておとぼけ系のやつ。

ちなみに十字傷はマジックで書いてもらった。本当は十字傷のタトゥーシールも買ったのですが、それがまったく張り付かずに苦肉の策として直接マジックで書くことにした。なんとも安上がりなコスプレである。

練習時間はわずか10分ということで、外見は低クオリティーながら必死にやった。そして本番は一発撮りというものすごい緊張感!

1時間でどのくらい立ち回りができるようになったのか、動画を撮ったのでぜひご覧ください。

一発撮りにしてはなんとなくそれっぽくなっているんじゃないだろうか? 3佐藤健くらいにはレベルがあがったのでは!?

この動画を撮っているとき、自分が世の中すべての主役になったような気がして、ものすごい高揚感があった。超気持ちいい。あの瞬間だけは僕が緋村剣心であって、緋村剣心は佐藤健である。つまり僕が佐藤健になれたと言えるのではないだろうか?

最後は黙祷と礼をして終わる。礼に始まり礼に終わる。殺陣を通して、心の所作というものも学ぶことができそうだ。

殺陣をやってみて

もっと堅苦しいものかと思っていたけれど、スポーツに近い爽やかなものがあった。適度に体を動かせるし、剣を振るときに声も出すので、いいストレス発散になるかもしれない。

「そこまで激しく動かないので、運動が苦手な方やダイエット目的の方も安心して参加できますよ」と五代先生が練習の最後に言っていた。最後にそれぶっこむとか営業上手かよ。


なかでも自分が敵をバタバタと倒していく感覚は、ほかのスポーツや習い事では味わえないような快感だった。「役者みたいなことがしてみたい」という人にもいいかもしれない。動画を撮っている最中は、楽しすぎてつい顔がニヤニヤしそうになった。立ち回りをやっているときの自分が「主人公」だという感覚は人生でなかなか味わえないと思う…。もっと佐藤健レベルをあげて、またやりたいなぁ…本当に楽しかった!!

ちなみにこの撮影は午前9時から行っており、僕はそのあとすぐに本業の会社のほうに行かなければならなかったので、頬に書いた油性の十字傷が付いたまま仕事をした

やはり十字傷は剣心と同じように、常に背負って生きていかなければならない運命なのだ。

【協力】
殺陣教室サムライブ
http://tate-school.com/
入会金は1万円かかるが、体験レッスンが1,500円で2回まで利用できるので、まずはそちらのコースで入会すれば気軽に体験できます。
初級、中級、上級コースのほかに、剣舞コース (女性限定)やカルチャーコース (健康目的や趣味を目的)などもあるので、自分にあったコース選びができます。

スタジオジパング
http://studiozipang.com/

megaya

megaya

大学中退→ニート→ママチャリ日本一周→Webプログラマという経歴で、趣味でブログをやっていたら「おもしろ記事大賞」で賞をいただき、記事をかくようになりました。デイリーポータルZ、それどこ(楽天)など。

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