1980年代、男子小学生を中心に爆発的ブームを巻き起こしていた「ビックリマンチョコ」。
30〜40代の人は子供の頃、メチャクチャ集めてましたよね? ビックリマンシール!
あまりの人気に「1人3個まで」などと個数制限されたり、入荷されてもすぐに売り切れちゃうから、なかなか手に入れられなかったりと、当時の男子小学生の心を惑わしまくった憧れのお菓子です。
大人になった今、そんなビックリマンチョコを箱買いしてしまいました!
いやぁー、大人になってよかった! 当時のボクが見たら涙流して喜ぶよ。
当然、お目当てはチョコよりもシール!
ヘッド出ろ〜ヘッド出ろ〜…。
ヘッド=レアカードみたいなもんだと思ってください
と思ったら、割とどれもキラキラしてるね…。今ってこんな感じなんだ
80年代のブーム当時は、ヘッドを手に入れるために、みんな血眼になっていました。
箱の左列のうしろから4番目を買うといいとか、右列の前から8番目がいいとか。緑より黄色いパッケージのほうがいいシールが出やすいとか、いろんな噂(うわさ)がありましたが…。アレ、本当だったんですかねぇ?
…というわけで発売元のロッテさんに「ビックリマンチョコ」の噂について、今さらながらいろいろと聞いてきました!
ロッテの本原(ほんばら)さん
――「ビックリマン」といえば「悪魔VS天使」シリーズのイメージが強いですけど、その前は全然違うシールでしたよね?
本原 ビックリマンチョコは1977年に発売開始しましたが、当初は透明なシートに血痕やタバコの吸い殻が印刷された「どっきりシール」という、いたずら用のシールだったんです。
「どっきりシール」。透明のシールに印刷されているので、机の上に貼られているとホントにどっきりさせられた
その後は、下敷き+キリンで「シタジキリン」みたいなダジャレをシールにした「まじゃりんこシール」など、いろんなシリーズがありました。
「まじゃりんこシール」。この手の直球すぎるダジャレに子供たちは大ウケ!
そして、1985年に皆さまご存じの「悪魔VS天使」シリーズが始まったんです。
「悪魔VS天使」のパッケージ
――「悪魔VS天使」以前からビックリマン人気は高かったんですか?
本原 うーん、テコ入れを繰り返した結果、売り上げもだいぶ落ちちゃって、「これでビックリマンを終わらせようか」というときに思い切ってリニューアルしたのが「悪魔VS天使」シリーズだったんですよね。
ビックリマンには「みんなをビックリさせる」というコンセプトがあるんですが、それまではシールをいたずらなどに使ってビックリさせていたのを、「悪魔VS天使」ではシールの素材やストーリー性、どんなシールが出てくるかわからない…といった部分でビックリさせていこうと。
――確かに、初めてヘッドのキラキラシールを見たときはビックリしました!
このキラキラにみんなヤラれてたんですよ…
本原 天使、悪魔、お守り、ヘッドとカテゴリー分けされていますが、キャラクターを知らなかったとしても、シールの素材を見れば直感的に当たりなのかハズレなのかわかるじゃないですか。
キラキラしているシールが出れば「当たりだ!」って思いますからね。そのへんが巧みに設計されていると思います。
――「悪魔VS天使」になってからは、すぐにブームになったんですか?
本原 いきなりブームが来たわけではなくて、徐々に…という感じですね。
「悪魔VS天使」が1985年に始まって、1986〜87年あたり。ブラックゼウスなんかが登場した頃に、「コロコロコミック」で取り上げられるようになったんです。そこからブームが加速していって、最盛期が1988〜89年ですね。ヘッドロココとかの時代。
――ブラックゼウスのホログラムシールにはビックリさせられました!
本原 あれはクレジットカードなどで使われているセキュリティ技術の応用なんですよ。それを子供用のシールに使ったというのは、初めてじゃないかと思います。
写真じゃわかりづらいですが、飛び出して見えるホログラムシールにみんな魅了されていました!
――ちなみに、全盛期にはどれくらい売れていたんですか?
本原 ピークのときで、年間4億個です。
本原 時代が違うとはいえ、今は年間100万〜200万個も売れればヒットといわれるので、本当にすごい数です。
――しかも買ってたのはほぼ小学生男子だけなのに!
写真を再掲しますが、この真相に迫ってみましょう
――当時、箱のこの位置にヘッドが入っている…みたいな噂がありましたけど、アレは本当だったんですか?
本原 いや、完全にランダムですね。
――1箱買えば絶対にヘッドが1枚は入っているみたいなことも…。
本原 時期によってヘッドの混入率が変わっているので一概には言えないですけど、それもランダムなんで、1箱に1個と決まっていたわけではないです。
――緑と黄色のパッケージがありましたけど、黄色のほうが天使が出やすいとか…。
本原 それもないですね。
――うわー全否定! 当時の子供たちの噂は何だったんだ! でも、インターネットもない時代に、全国的にそういうデマが流れていたっていうのもすごいですね。
――絶対に聞いておきたかったんですけど…ビックリマンチョコって昔、ピーナッツが入ってましたよね? どうして変わっちゃったんですか?
ここにピーナッツが入っていたハズなのに!
本原 2010年からピーナッツの代わりにビスケットクランチを入れています。その頃からアレルギーの問題が取り沙汰されるようになっていて、実際にピーナッツアレルギーがあるお子様が多いんですよ。ビックリマンは大人を狙っているとはいえ、やっぱりお菓子なので子供たちにも安心して食べてもらいたいので。
――当時食べていた側からすると、味が違うのはさびしいですけどね…。
本原 そういう問い合わせはものすごく来ますね。ほかの商品ではほとんど来ないんですけど、ビックリマンは「30年前の味と違う!」という問い合わせが来るんです。それだけ強烈に記憶してくれているということでしょうね。
意外なところでは、主婦の方からも問い合わせが来るんですよ。
――女の子もビックリマンシールを集めてたんですねぇ。
本原 いや、お兄ちゃんがシールを集めてて、妹はお菓子を食べる係だったから味を覚えているんです(笑)。
――(笑)ああー!
――最近もちょくちょくコンビニでビックリマンが置かれているのを見かけますけど、今のシリーズは完全に大人を狙ってきてますよね?
本原 まあそうですね。駄菓子屋がなくなって、お菓子を買う場所がコンビニ中心になっているというのもあるんですが、子供向けのお菓子ってあまり売れないんですよ。
だったらビックリマンを懐かしく感じる大人に向けたほうが当たる確率が高いだろうということで、2006年から復刻版を出すようになり、それからさまざまなシリーズを展開しています。
――アニメやゲームとコラボしたシリーズも展開していますけど、あれはいつ頃から?
本原 2013年の「ももクロマン」が最初です。
――ああ、ももいろクローバーZとのコラボ!
本原 「ももクロマン」はすごく売れましたね。
ビックリマンのターゲットって30〜40代の男性なんですが、コラボではそれ以外の層も開拓しようという意図があります。ももクロファンは20代の若い子たちも多いので、これをきっかけに本家ビックリマンにも興味を持ってもらいたいと。
――いろいろなコラボをやっていますけど、印象に残っているのは?
本原 やっぱり「スター・ウォーズ」ですね。まさかルーカスフィルムからオッケーがもらえるとは!
これがあったおかげで箔(はく)が付いて、その後の「ワンピース」や「AKB48」のコラボにつながったんじゃないかと思っています。
いろんなコラボをやってるんだなー
――コラボ相手はどういう基準で選んでいるんですか?
本原 ビックリマンのファン層を広げてくれるような、みんなが知っているメジャーどころを狙っています。
あとは、代理店さんを通さずコンテンツは自ら探して交渉します! 商品は魂を込めておもしろくしなきゃいけないんで! 代理店さんが入ると、そこが丸くなっちゃうんです。
「これはやったことがないから難しい」とかいわれて無難な方向に落ち着いてしまいがちだけど、初めてだからみんなビックリするんじゃん! っていうことですよ。
「進撃の巨人」とのコラボが始まりますんでよろしくお願いします!
80年代のブーム当時から、今も変わらない熱い思いで作られていたビックリマン! 子供の頃に狂ったように集めていた人も、ビックリマン初体験の人も、コンビニなどで見かけたら手に取ってみよう。箱買いならネットも便利ですよ。
藤子・F・不二雄先生に憧れすぎているライター&イラストレーター。「デイリーポータルZ」「サイゾー」「エキサイトレビュー」他で連載中。