タカラトミーの「こえだちゃん」が今年で40周年なんだそうです。名前を聞いてぴんとこなくても、写真を見れば「あー!」となる人は多いのでは?
初代「こえだちゃんと木のおうち」(1977)
「こえだちゃん」といえば、もちろん女の子向けのおもちゃですが、木のおうちの屋根(?)がバカーンと開いたり、ハンドルを回すとエレベーターが上下したりと、男子心もくすぐるギミックが満載で、ボクも妹やいとこの「こえだちゃんと木のおうち」をコッソリといじくるのが好きでした。
こういうギミックが楽しかったのを覚えています
このCM、覚えてるなぁ〜…
ボクが遊んだときから考えても30年以上はたっていると思いますが、40周年を迎えた今の「こえだちゃん」ってどんなふうに進化しているんでしょうか? タカラトミーさんに行って聞いてきました!
来たぜ!
まずは歴代の「こえだちゃん」シリーズを見せてもらいました。あの木は正式には「こえだちゃんと木のおうち」という名前で、40年間「こえだちゃん」シリーズのシンボル的商品なんだそう。
歴代「こえだちゃんと木のおうち」がズラリ。うわーっ、懐かしい! うちにあったのは初代かなー?
年代とともに並べたのがこちら。みなさんはどれで遊びました?
――「こえだちゃん」、ボクもギミックが好きでよく遊んでいましたよ。
タカラトミー(以降、T):当時から女児向けの商品として発売していましたが、男児玩具(がんぐ)のギミックとまではいかないですけど「こえだちゃん」にも楽しいギミックがいっぱいで、遊んでくれた男の子も多いようですね。初代のパッケージを見てもらうと、実は男女両方の子供が写真に写っているんですよ。最初は、男の子も一緒に遊べますよと打ち出していたんですね。
初代のパッケージ。あー、見覚えある!
T:屋根が開閉するというギミックは、日本の住宅事情を考慮したというのもあります。あまり大きいおもちゃをそのまま置いておけないので、屋根を閉じてコンパクトにできるということです。
――人形や家具を屋根の中に入れて閉じれば、そのままおもちゃ箱になりますしね。あと、やっぱり印象的なのはエレベーターのギミックですよ。
T:百貨店など、エレベーターはすでに日常の中に浸透していた時代なので、子供たちにとっても憧れの存在だったんですよね。自分でボタンを押したかったのに、お兄ちゃんが先に押しちゃって、妹さんが泣いちゃった…なんて話も聞きます。そんなエレベーターで好きなだけ遊べるというのはポイントですね。
このギミックがたまらなかった!
こちらは5代目。歴代、子供をビックリさせるようなギミックが仕込まれてきたんですねぇ
――この「こえだちゃん」シリーズというのは、もともとどういう意図で企画されたおもちゃなんですか?
T:タカラトミー(当時タカラ)のもう1つの代表的なシリーズである「リカちゃん」は、着せ替えができる、頭身の大きなドール人形ですが、「こえだちゃん」のほうは手の中にスッポリ収まるサイズの人形を木のおうちの中で遊ばせる、ハウス玩具のシリーズとして企画されたものなんです。
――根本的な話ですが、こえだちゃんって何で木のおうちに住んでるんでしょう?
T:当時は少なかった自然のモチーフとメルヘンの世界を基調とし、こえだちゃんはさくらんぼの妖精として登場しました。だから木のおうちなんです。公園だったり、森の中だったり、子供たちの身近なところに、こんな妖精たちが住んでいるかもしれないよね…という世界観です。
――さくらんぼの妖精なのに、どうして身長はどんぐり3つ分なんですか?
T:「自然」がメインテーマのため、子供の身近にあるモチーフを使用しました。ただ、体重はさくらんぼ2個分ですよ。
割とリアルにどんぐり3つ分くらいのサイズ感ですね
歴代のこえだちゃん
4代目・こえだちゃん
――こう見ると4代目でかなり見た目が変わっていますね。こえだちゃんも、髪色がピンクになって、目も二重だし、何があったんだと!?
T:初代、2代目あたりが大ヒットして、その後のシリーズに続いているわけですけど、それが継続的に売れ続けていたわけではないんですね。売り上げが下がっていた少し厳しい時期もあり、そんな中、当時はやっていたさまざまなものを擬人化するというテイストを取り入れたのが4代目の木のおうちです。屋根の開閉に合わせて目が開くというしかけもありました。人形は、木のおうちに合わせてよりリアル感を増し、低年齢層へのアピールとして変化しました。
パッケージの雰囲気もかなり違うぞ!
木のおうちまでキャラクター化されている…ファンタジー!
――時代によって顔の雰囲気などもかなり変わっていますが、髪型がおだんごなのは共通ですね。
T:あの髪型は「こえだんご」というんですよ。子供たちが親しみやすいキャラクターを考えたときに、おかっぱなのか、2つ結びなのか、1つ結びなのか…その中で、おだんごが一番子供たちが親しみを覚え、まねしやすいうことで決まったようです。
――初代では人形が2人しかいませんけど、最近のはメチャクチャいろんな人形がいますね!
こう見るとちょっとさびしい初代…
最近はこんなにいろんなキャラクターがいるようです(これでも一部!)
T:初代に発売した人形としては「こえだちゃん」と友達の「みきちゃん」しかいませんでしたが、お話にはおともだちがたくさん登場しています。2011年ごろから、もっと世界観を広げるために多くのキャラクターを出してみようということで展開しはじめ、現在ではウェブアニメーションなども制作しています。
――こえだちゃんの彼氏もいたり?
T:そういうのはないですね。こえだちゃんに登場するおともだちは、あくまでも「おともだち」です。
――小さい子供が、付き合う付き合わないみたいな概念は持ってないですもんね。こえだちゃんって親もいるんですか?
T:います。パパとママが。ママに関しては2代目のころからいたんですけど、パパが定着するのはかなり後で、2011年からですね。
現在のパパとママ
――えっ! どうしてそんな複雑な設定に!?
T:子供目線から見たお家のごっこ遊びって考えると、子供たちにとって一番身近にいるのはママなんですよ。特に、昔はモーレツサラリーマンみたいな感じで、なかなかパパはお家にいなかったりするんで。
――そうなんだ…。今はおとうさんが家にいるようになってよかったなぁ。
――アニメのキャラクターなどではなく、オリジナルのシリーズがこれだけ長続きした理由はどうしてだと思いますか?
T:タカラトミーは、オリジナルコンテンツを自分たちで作り出して、それをロングセラーにしていくというのが得意な会社なんです。
――どういうノウハウがあるんですか?
T:「こえだちゃん」の場合、こういう小さなお家で遊ぶハウス玩具というものは以前からあったと思いますが、そこに「こえだちゃん」という子供が感情移入しやすいキャラクターを設定したところがポイントだと思います。
――なるほどー! 家が主役だったハウス玩具にキャラクターを設定したわけですね、
T:発売当初より、幼児誌でこえだちゃんのおはなし(絵本)を展開し、キャラクターや世界観を訴求してきました。また、パッケージの中にミニ絵本を入れたり、こえだちゃんにお手紙を書くと、こえだちゃんからポストカードで返事が届くサービスを行ったりして、子供たちが想像力を働かせられる余地を残しつつ「こえだちゃん」という世界を大事に育ててきたんです。
最新(左)と初代の木のおうち
――そして、こちらが最新のシリーズですけど…メチャクチャデカイですね!
T:これは1つの商品ではなく、基本の「木のおうち」の下に「きり株のパンやさん」、上に「花のかんらんしゃハウス」を合体させた状態なんです。今のシリーズではこういうふうに、ほかの商品と連結して遊ぶこともできるんですよ。
――合体! また男の子の心もつかみそうなギミックですね!
もちろん木のおうちがバカッと開くギミックも
T:そして今回、初めてエレベーターが電動になっているんです。
しかもしゃべったー!
――すごい進化! これは反響があったんじゃないですか?
T:お子さんたちは今のものしか知らないので、むしろ昔「こえだちゃん」で遊んでいたお母さんたちからの反響が大きいですね。
――昔のイメージを持っていたらビックリしますよね。今はどんな遊び方をされているんでしょうか?
T:カギを使っていろいろな動作をするようになったり、音声が出るようになったりしても、遊び方は今も昔も変わらないんじゃないでしょうか。木のおうちをベースにこえだちゃんと一緒に遊ぶ、ごっこ遊びがメインです。そして、今もやっぱりエレベーターで遊ぶのが一番人気なんです。
――やっぱりそこなんだ!
というわけでこえだちゃんの歴史について聞いてきましたが、歴代の木のおうちを見たときは懐かしさで歓声が上がっていましたね。どの時代の木のおうちもギミックが満載で、どんどん進化していっているのに驚きました。
ちなみに最新のこえだちゃんはこれ。目がキラキラになっていたり、ちょっとスタイルがよくなっていたり、座れるようになっていたりと、こえだちゃん自身も進化しているようです。
最新のこえだちゃん。スタイルがいいでしょ?
しゃべって、電動エレベーターで上下して、合体までしてしまう…予想以上の超進化を遂げていた「こえだちゃん」。子供がいたら買って、一緒に遊びたい! そしてこの先も続いて、将来的には子供が孫に買ってあげる…なんてシーンが生まれたらすてきじゃないでしょうか。はやり廃れが早い時代に、こうやって長く続くおもちゃがあるというのはなんだかうれしいですね!