レビュー

天井スピーカー不要でDolby Atmos!ヤマハの高コスパAVアンプ「RX-300A」の実力

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ヤマハのAVアンプ「RX-300A」をレビュー。5chパワーアンプ内蔵機ながらDolby Atmosのデコードに対応。足りないスピーカーはバーチャルで補ってくれる。その音質は……

ヤマハのAVアンプ「RX-300A」をレビュー。5chパワーアンプ内蔵機ながらDolby Atmosのデコードに対応。足りないスピーカーはバーチャルで補ってくれる。その音質は……

ヤマハから入門層向けの5ch(チャンネル)パワーアンプ内蔵AVアンプ、「RX-300A」が登場した。自室でその音をじっくりと聴く機会を得たので、そのインプレッションを報告しよう。ヤマハからAVアンプが発売されるのは超久しぶり。2021年発売の上位モデル「AVENTAGE」シリーズ以来ではないかと思う。

「RX-300A」は「シネマDSP」非対応のシンプルなモデル

右は1986年に発売された「DSP-1」。80年代から蓄積された技術が「RX-300A」にも継承されているという

右は1986年に発売された「DSP-1」。80年代から蓄積された技術が「RX-300A」にも継承されているという

「RX-300A」は艶消しブラックの美しいフロントパネルが印象的な外観。AVアンプというと、ツマミやボタンがたくさん並んでいてちょいとビビることが多いが、そんな気持ちを起こさせないとてもシンプルでよいデザインだ。

ヤマハは1980年代からAVアンプを手掛け、多くのファンを生み出してきた。1990年代からセールスポイントにしてきたのが「音場創生技術」である「シネマDSP」だ。ヤマハは1970年代から世界中の音のよいホールの音響データ(初期反射音や後部残響音など)を採取、それを実装した音場創成機「DSP-1」を1986年に発売し、大きな話題を集めた。

その後、それらの音響データをアレンジし、映画再生に最適化した響きを生成する音場プログラム(サウンドモード)として実装したのが「シネマDSP」だった。この手法は数多くのホームシアター・ファン、映画マニアに受け、一世を風靡した。ぼくにとって特に思い出深いのが「Mono Movie」モード。これはふるい昔のモノーラル映画を当時の映画館で観ているかのような気持ちにさせてくれるモードで、AVアンプならではのマジックを体感させてくれたのだった。

しかし、「RX-300A」には残念ながら「シネマDSP」は実装されていない。コストの問題だろうか。ヤマハにはぜひ同社AVアンプのシンボルともいうべきこの機能を搭載した製品を新たに出してほしいと思う。

もっとも本機には「MOVIE」や「MUSIC」などのサウンドモードがあり、それを利用することで映像コンテンツに最適な音場効果を得られる。サウンドモードの中には、小音量再生時でも低音が痩せたり高音が聴きづらくならないように周波数特性を調整した「NIGHT」モードもある。また、コンテンツに収録された音声をそのまま高純度な音で聴きたいという場合は「PURE DIRECT」モードを利用するとよいだろう。

5chアンプでもしっかりDolby Atmos対応できる

付属の専用マイクで行う「ルームコレクション」に対応。接続したスピーカーを判別し、部屋に合わせた最適化を図るものだ。ヤマハファンにはおなじみの「YPAO」やそれをベースにした「シネマDSP」には非対応であることには注意

付属の専用マイクで行う「ルームコレクション」に対応。接続したスピーカーを判別し、部屋に合わせた最適化を図るものだ。ヤマハファンにはおなじみの「YPAO」やそれをベースにした「シネマDSP」には非対応であることには注意

また本機は5chパワーアンプ搭載機ながら、Dolby Atmos対応機でもある。「Speaker Virtualization」機能を搭載していて、あたかもトップ/ハイト(天井)スピーカーがあるかの如く三次元立体音場が楽しめるというわけだ。その効果のほどは後述しよう。

ヤマハ製AVアンプには「YPAO(Yamaha Parametric Room Acoustic Optimize)」と名付けられた音場(ルームアコースティック)補正機能があり、その効能の高さに定評があった。本機にはやはりコストの関係か、この「YPAO」は搭載されていないが、その簡易版とも思える「ルームコレクション」機能が実装されている。付属の専用マイクを使用して、各スピーカーから視聴位置までの距離や室内の音響特性を計測し、その聴取環境に合わせて最適なサウンドを提供するというものだ。

「オーディオとはすなわち部屋の音を聴くことである」とよく言われるが、たしかに波長の長い低音は部屋の広さやプロポーション(縦・横・高さの寸法比)、スピーカーとリスニングポイントの距離によって大きく表情を変えることがある。低音が必要以上に盛り上がったり、聴こえにくくなったりするのである。スピーカーセッティングで補えないわけではないが、スピーカーはココにしか置けないというケースも多いわけで、そういう場合はこの「ルームコレクション」機能はとても重要なものになるはずだ。

入出力端子はシンプル。HDMI入力4系統、HDMI出力1系統などを備える。Bluetoothでの音楽再生も可能だ(レシーバー機能対応)。なお、「SURROUND」のスピーカー端子はサラウンドスピーカー、オーバーヘッド(トップ/ハイト)スピーカー、フロントバイアンプ用に切り替えて使える

入出力端子はシンプル。HDMI入力4系統、HDMI出力1系統などを備える。Bluetoothでの音楽再生も可能だ(レシーバー機能対応)。なお、「SURROUND」のスピーカー端子はサラウンドスピーカー、オーバーヘッド(トップ/ハイト)スピーカー、フロントバイアンプ用に切り替えて使える

天井のスピーカーなしでも「天井方向から音が降り注いでくる」!

フロントスピーカーはJBLの15インチウーハー搭載機「PROJECT K2 S9900」

フロントスピーカーはJBLの15インチウーハー搭載機「PROJECT K2 S9900」

さて実際に「RX-300A」をハンドリングしてみての感想だが、このAVアンプ、とてもよくできている。我が家の15インチウーハーを搭載した大型スピーカーJBL「PROJECT K2 S9900」を大きな不満を感じさせることなくドライブし、ぼくを驚かせた。ノイズを抑えて、必要十分と思わせるダイナミックなサウンドを聴かせてくれたのだった。

我が家のホームシアター・システムは、センタースピーカーを使わない(センターch信号はL/Rスピーカーに振り分ける)「6.1.6」構成だ。つまり、サラウンドスピーカー、サラウンドバックスピーカーをそれぞれ2基、それにサブウーハーを1基加えた6.1chに、Dolby Atmos再生などのイマーシブオーディオ用にオーバーヘッド(トップ)スピーカーを3ペア6スピーカー配置したシステムである。

本機「RX-300A」は5chパワーアンプ構成なので、ここではメインL/R用の「PROJECT K2 S9900」とサラウンドスピーカーのLINN「CLASSIK UNIK」を鳴らす4.1ch再生を試した(サブウーハーはイクリプス「TD725sw」)。

「RX-300A」の5chパワーアンプで鳴らせるスピーカーは5個(とサブウーハーの計6個)までだが、「Speaker Virtualization」を使えば、天井スピーカーなしでも高さ方向の三次元音場を再現できる

「RX-300A」の5chパワーアンプで鳴らせるスピーカーは5個(とサブウーハーの計6個)までだが、「Speaker Virtualization」を使えば、天井スピーカーなしでも高さ方向の三次元音場を再現できる

サラウンド(リア)スピーカーも置けない、という人はフロントスピーカーの上にイネーブルドスピーカーを置くのもよいだろう。この構成で「Speaker Virtualization」を使うと、サラウンドchをバーチャルで再生できる

サラウンド(リア)スピーカーも置けない、という人はフロントスピーカーの上にイネーブルドスピーカーを置くのもよいだろう。この構成で「Speaker Virtualization」を使うと、サラウンドchをバーチャルで再生できる

最初にDTS-HD Master Audio5.1ch収録のブルーレイ「クロスロード・ギター・フェスティヴァル 2010」からテデスキ・トラックス・バンドが演奏する「ミッドナイト・イン・ハーレム」を「PURE DIRECT」モードで再生してみる。シカゴのトヨタパーク(当時)での収録で、大観衆の臨場感がすごい。隣近所から苦情がこない(ぼくのシアタールームは集合住宅の一角)常識的な音量で再生するかぎり、歪みっぽさをまったく感じさせないのである。メーカー希望小売価格66,000円のAVアンプとは思えないよくしつけられたサウンドだ。

Dolby Atmos収録されたエリック・クラプトンのライブUltra HDブルーレイ「レディ・イン・ザ・バルコニー:ロックダウン・セッションズ」を「Speaker Virtualization」オンで観てみた。

「STRAIGHT」モードと「MOVIE」「MUSIC」両モードでは驚くくらい音量差があるが(後者の音量が大きい)、この3つのモードでバーチャルDolby Atmosが楽しめる。本作はコロナ禍の時期に英国サセックス州にあるふるい貴族の館で収録された無観客ライブを収録したものだが、その生々しい雰囲気が見事に甦ってくる。音質はやはり「STRAIGHT」モードが好ましかった。「MOVIE」「MUSIC」は音圧感こそ高いが、少しノイジーな印象もある。

同じくDolby Atmos収録の映画ブルーレイ「罪人たち」も「Speaker Virtualization」オンで観てみた。黒人たちが集まる酒場「ジューク・ジョイント」で少年がギターを弾きながら歌うブルーズが、現代のヒップホップにマッシュアップされる場面、「MOVIE」モードに設定すると音楽や効果音が立体的に広がり、天井方向から音が降り注いでくる生々しいイメージが得られ、Dolby Atmosのバーチャル効果の見事さに舌を巻いた次第。

5.1chや4.1chのサラウンド・システムを組むことはできても、「天井にトップスピーカーを取り付けてDolby Atmosに対応するなんてムリムリ」と言う方がほとんどだと思うが、本機のバーチャルDolby Atmosはそういう方々にとってとても効果的で、最適なソリューションになるだろう。

「Speaker Virtualization」を使ってDolby Atmosを楽しめるサウンドモードは、「STRAIGHT」「MUSIC」「MOVIE」の3種。再生コンテンツに応じて選び分けたい

「Speaker Virtualization」を使ってDolby Atmosを楽しめるサウンドモードは、「STRAIGHT」「MUSIC」「MOVIE」の3種。再生コンテンツに応じて選び分けたい

Bluetoothは使いやすく2ch音楽再生も心地よい

本機のBluetooth機能を用いて、サブスクのQobuzで聴き馴染んだ楽曲をいくつか聴いてみたが、これまた予想以上に聴き心地がよい。ヴォーカルは艶やかで、ストリングスの響きも美しい。またRadikoアプリを使って、ふだんよく聴いているFM番組も再生してみたが、パーソナリティの声に違和感はないし、スタジオ内の暗騒音までよく聴き取れる。

同価格帯の2chプリメインアンプと比べても音質で十分勝負できるこのAVアンプ、長いキャリアを誇るヤマハ製品ならではの出来のよさだった。次回は本機の兄機にあたる「RX-500A」のインプレッション・リポートをお届けしたい。

兄機にあたる「RX-500A」も同時に借用していたため、こちらは後日レビュー予定。見た目はそっくりだが、7chパワーアンプ内蔵、「Spotify Connect」や「Qobuz Connect」でサブスクの音楽再生もできるなど、より充実した1台だ

兄機にあたる「RX-500A」も同時に借用していたため、こちらは後日レビュー予定。見た目はそっくりだが、7chパワーアンプ内蔵、「Spotify Connect」や「Qobuz Connect」でサブスクの音楽再生もできるなど、より充実した1台だ

山本浩司
Writer
山本浩司
AV専門誌「HiVi」「ホームシアター」の編集長を経てオーディオビジュアル(AV)評論家へ。JBL「K2 S9900」と110インチスクリーンを核としたホームシアターシステムで、最高の画質・音質で楽しむAVを追い続けている。
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柿沼良輔(編集部)
Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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